お労しいナギサ様へ   作:ムテケル

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初投稿です!

頭の中で思い浮かんだ話を、AIに手伝ってもらいながら文章にしてみました。

至らないところもあると思いますが、楽しんでもらえたら嬉しいです!



桐藤ナギサが目覚めなかった朝

 初夏の未明。

 

 静まり返った部屋の中、一人の少女がベッドに横たわっていた。

 

「……っ、う……」

 

 苦しげな声とともに、少女はゆっくりと目を開く。

 

(……あれ?)

 

 頭がぼんやりする。身体は鉛のように重く、胸の奥から強烈な吐き気が込み上げてきた。

 

 風邪でも引いたのだろうか。そう思いながら身体を起こした瞬間、胃の中がひっくり返るような感覚が襲う。

 

「うっ……!」

 

(やばい……吐きそう……!)

 

 反射的にベッドを降り、トイレへ向かおうとする。

 

 だが、数歩進んだところで足が止まった。

 

(……あれ?)

 

 部屋が見知らぬ場所だった。

 

 広々とした室内。重厚な家具。上品な調度品。

 

 どれも、自分の部屋ではない。

 

「……ここ、どこだ?」

 

 一瞬混乱するが、次の瞬間にはそれを上回る吐き気が思考を押し流した。

 

(考えてる場合じゃない……!)

 

 慌てて辺りを見回す。

 

 初めて見る部屋のはずなのに、不思議と「この扉の向こうが水回りだ」と分かる気がした。

 

(なんで……? いや、今は……!)

 

 勘に任せて扉を開く。

 

 そこは広く清潔なトイレだった。

 

 少女は便器に駆け寄ると、その場に膝をつく。

 

「っ……げほっ……うっ……!」

 

 何度も込み上げる吐き気に身体を震わせ、涙を滲ませながら胃の中のものを吐き出す。

 

 しばらくしてようやく波が収まると、壁にもたれかかり荒い息を吐いた。

 

「はぁ……はぁ……なんなんだよ、これ……」

 

 その時、自分の声に違和感を覚えた。

 

(……今の声)

 

 聞き慣れた自分のものではない。

 

 高く、澄んだ少女の声だった。

 

「……え?」

 

 嫌な予感がする。

 

 震える手を見下ろすと、細く白い指先が目に入った。

 

 肩からは、白銀の長い髪がさらりと流れ落ちている。

 

「……なんだ、これ」

 

 ふらつきながら立ち上がり、洗面台の鏡を見る。

 

 そこに映っていたのは、白く長い髪と透き通るような肌、そして頭に特徴的な翼を持つ、一人の少女だった。

 

「…………」

 

 何度瞬きをしても姿は変わらない。

 

 その顔には見覚えがあった。

 

 画面越しに何度も見てきた。忘れるはずがない。

 

「……桐藤、ナギサ……?」

 

 その名前を口にした瞬間、胸の奥に強い痛みが走った。

 

 息が詰まり、理由も分からないまま涙が浮かぶ。

 

『……失敗は、許されません』

 

 誰かの声が聞こえた気がした。

 

『皆が、私を信じてくださっているのですから』

 

(……なんだ、今の)

 

 頭の奥に、知らないはずの記憶が流れ込んでくる。

 

 机に積み上がる大量の書類。

 

 夜が明けても終わらない仕事。

 

 疲れ切ったまま、それでもペンを走らせ続ける白髪の少女。

 

「っ!」

 

 頭痛とともに映像は途切れた。

 

 気づけば、自分は洗面台に手をついていた。

 

(……まさか、ナギサの記憶か?)

 

 記憶だけではない。

 

 焦りも、苦しみも、誰にも弱音を吐けない孤独も、自分のもののように胸に残っている。

 

 その時、洗面台の隅に置かれたティーカップが目に入った。

 

 違和感を覚え、部屋へ戻る。

 

 ベッド脇の机には、二つの空瓶が置かれていた。

 

 一本には『睡眠導入剤』。

 

 もう一本には『覚醒促進剤』と書いてあった。

 

「……なんだ、これ」

 

 瓶を手に取る。

 

 中身は空だった。

 

 その瞬間、さっきまでの吐き気、頭痛、身体のだるさが一本の線で繋がる。

 

「……オーバードーズ?」

 

 思わず呟いた。

 

(睡眠導入剤だけならまだ分かる。でも、どうして覚醒促進剤まで……?)

 

 一つの可能性が脳裏をよぎる。

 

(もしかして……ナギサは、自殺しようとしたのか?)

 

 震える手で薬瓶を見つめ、静かに首を横に振った。

 

「……まだだ。本当にそうなのか、まだ分からない……それよりまずやらなきゃいけない事がある……」

 

 考えるべきことは山ほどある。

 

 しかし、嫌な事ばかり思いついてしまう。

 

 もし予想通りなら、まだ胃の中には薬が残っているかもしれない。

 

(……とにかく、いろいろ考える前に、死ぬわけにはいかない)

 

 ふらつく身体を支えながら洗面台へ向かい、ティーカップに水を注いで一気に飲み干す。

 

(……これが正しいとは分からないけど、やるしかない……)

 

 覚悟を決め、喉の奥へ指を差し入れた。

 

「っ……う、げほっ……!」

 

 何度か繰り返すと、水に混じって溶けきっていない薬の欠片のようなものが見えた。

 

(……やっぱり、残ってた)

 

 まだ残っているかもしれないと思い、何度も繰り返す。

 

「はぁ……はぁ……少しは、楽になったか……」

 

 その後、洗面台をきれいにしてから部屋に戻り、ベッドに腰を下ろし、深く息を吐いた。

 

(……落ち着け。まずは整理だ)

 

 目が覚めたら、自分は桐藤ナギサになっていた。

 

 しかも、この身体は薬を大量に飲んでいた形跡がある。

 

 さらに、自分は彼女の記憶や知識を断片的に共有しているらしい。

 

 試しに机の上の書類を手に取る。

 

 初めて見るはずの専門用語も、内容も、不思議なくらい自然に理解できた。

 

「……エデン条約」

 

 その文字を見た瞬間、原作の記憶が蘇る。

 

 日付、参加者、進行予定。

 

 間違いない。

 

「……今は、エデン条約の前なのか」

 

 つまり、この先にはあの悲劇が待っている。

 

 そして、本来そこにいるはずだった桐藤ナギサは、その直前に自ら命を絶とうとしていたのかもしれない。

 

(……何があったんだ、原作では、自殺した描写なんて無かったのに)

 

 静まり返った部屋を見回す。

 

 すると、机の引き出しがほんの少しだけ開いていることに気付いた。

 

 引き寄せられるように近づき、中を覗き込む。

 

 そこには、一冊の古びた黒革の手帳が、誰にも見つからないようにしまわれていた。

 

 手に取った瞬間、不思議な感覚が胸をよぎる。

 

 ――誰にも、見つからないように。

 

 それは自分の考えではなかった。

 

 けれど、この手帳の中に、この世界で何が起きているのか、その答えが眠っているような気がしてならなかった。

 




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

頭の中にある展開を少しずつ形にしていけたらと思っています。

続きも楽しんでもらえたら嬉しいです!
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