ミカの今後も決まり、いよいよ具体的に動き始めます。
それでは、第24話をお楽しみください!
……さて。
ミカの意思も確認できたことだし、そろそろ具体的に動くとしよう。
「それでは、早速ですが、ミカさんにお願いしたいことがあります」
「うん! 何でも言って!」
「まず、これまでアリウスとやり取りしたメールを確認させてください」
「あっ、そっか!」
ミカが、ぽんっと手を打った。
「今までのメールも見た方がいいよね!」
「ええ。相手がどの程度の情報を持っているのか、把握しておきたいんです」
特に気になるのは、十五日延期が決まってからの動きだ。
原作とは状況が変わっている以上、アリウス側も何かしら対応を変えている可能性がある。
……いや。
すでに、その兆候は現れているか。
「それと、先ほど見せていただいたメールについても、返信内容を考えておきましょう」
「……ああ、盗聴のことを聞いてきたやつだね!」
「ええ。放置しておくのも不自然ですから」
「分かった! じゃあ、これまでの通話とかしてた端末とか取ってくるね!」
ミカは勢いよく立ち上がった。
……が、扉へ向かう途中で、ふと足を止める。
「……あ、そうだ」
「どうしました?」
「もし、その間にまたメールが来たらどうすればいい?」
「返信は、私たちに確認してからにしてください。ただし、返事の仕方まで急に変える必要はありませんよ」
「……今までどおりでいいってこと?」
「ええ。詳しいことは、戻ってから説明しますね」
「うん! 分かった!」
今度こそ、ミカが部屋を出ていく。
扉が閉まり、室内には俺と先生だけが残された。
「……ふぅ」
俺は、椅子の背もたれに身体を預けた。
「お疲れさま、ナギ」
「ありがとうございます」
先生が、穏やかに微笑む。
「ミカ、自分でちゃんと決められたね」
「ええ。あとは、彼女の決意を無駄にしないようにしなければなりませんね」
「うん。私もできる限り協力するよ」
「ふふっ。頼りにしていますよ、先生」
……さて。
ミカが戻ってくる前に、一つ確認しておきたいことがある。
「ところで先生。少しお聞きしたいことがあるのですが」
「うん? 何かな?」
「先生は、これまでにセイアさんと夢の中でお会いしたことはありますか?」
「……夢の中?」
「ええ」
先生は、少し考え込んだ。
「……いや、ないと思うよ」
「…………」
俺は、思わず肩を落とした。
「……はぁ」
「……ナギ?」
「…………」
「どうしたの? そんなに落ち込んで」
「……いえ。少し期待していたことがありまして」
「……期待?」
「ええ。実は、セイアさんの生存を確認したかったんです」
「…………えっ?」
先生が、目を見開いた。
「それって……セイアが生きているかもしれないってこと!?」
「はい。原作では、セイアさんはあの襲撃で亡くなっていません」
「……そうなの!?」
「ええ。救護騎士団のミネ団長に保護され、匿われていたんです」
先生が、驚いたようにこちらを見つめる。
「……じゃあ、今回もミネがセイアを助けているかもしれないんだね!」
「はい。私はその可能性が高いと考えています」
「……でも、ナギ」
「はい?」
「今回、原作とは状況が違うよね?」
「ええ」
「だったら、セイアも原作どおりに助けられているとは限らないんじゃないかな?」
「……もちろん、その可能性はあります」
俺は頷いた。
「ですが、原作知識以外にも、根拠はあるんです」
「……根拠?」
「実は、以前救護騎士団を訪ねた際、ミネ団長が長期間不在にしていることを確認しています」
「……ミネが?」
「ええ。それに、ナギサの記憶に残っているミネ団長の人物像も気になります」
「……人物像?」
「はい。私はまだ直接お会いしたことがありませんが、ミネ団長は救護活動に非常に熱心な方だと聞いています」
それも、少々行き過ぎていると言っていいほどに。
……まあ、その辺りは原作でも知っているんだけどな。
「そんな方が、救護を必要としている生徒たちを放置して、何の理由もなく長期間姿を消すとは考えにくいんです」
「……なるほど」
「もちろん、別の救護活動に従事している可能性もあります。ですが、原作でセイアさんを保護していたことまで考えると……」
俺は、静かに続けた。
「今回もセイアさんを匿っていると考えるのが、最も自然ではないでしょうか」
「……確かに、その可能性はありそうだね」
「ええ。ですから、以前救護騎士団を訪ねた際、セリナさんにミネ団長宛ての手紙を預けたんです」
「……手紙?」
「はい。少々、挑発的な内容でしたが」
「……挑発的?」
先生が、不思議そうに首を傾げた。
「どういうこと?」
「簡単に言えば、他人から見れば普通の文ですが、ミネ団長から見ると私がセイアさんの生存と、ミネ団長が彼女を匿っていることを知っている……そう受け取れる内容です」
「……えっ!?」
先生が、驚いたようにこちらを見つめた。
「そんなこと書いて大丈夫なの!?」
「ふふっ。むしろ、そう思っていただくのが狙いなんですよ」
「……狙い?」
「ええ。考えてみてください。もし本当にミネ団長がセイアさんを匿っていたとして、そのことを知っているらしい人物から突然そんな手紙が届いたら、どう思うでしょう?」
「……あっ」
先生が、何かに気づいたように目を見開いた。
「もしかして、ナギが襲撃に関係しているんじゃないかって……?」
「ええ。その可能性を疑うでしょうね」
……そう。
セイアを匿っていることは、ミネにとっても重大な秘密のはずだ。
その秘密を知っていそうな人物が現れたとなれば、警戒するのは当然だろう。
ましてや、そいつが襲撃に関係しているかもしれないとなれば……。
「ミネ団長の性格を考えれば、黙って見過ごすとは思えません。直接、私のところへ問い詰めに来るのではないかと考えたんです」
「……なるほど」
先生が、小さく頷いた。
「ナギが探しに行くんじゃなくて、ミネの方から会いに来てもらおうとしたんだね」
「ええ。その方がセイアさんの居場所を探し回る必要もありませんから」
……まあ、ミネから疑われる危険はあるが。
直接会えさえすれば、説明する機会はある。
少なくとも、セイアの居場所を無闇に探すよりはいいと判断した。
「ただ、残念ながら、まだミネ団長にはお会いできていないんです」
「……そっか」
「ええ。そもそも、手紙がご本人の手に渡ったのかどうかも分かりません」
……やれやれ。
セイアの世話に必要な備品を補充するため、ミネもいずれ救護騎士団へ戻ってくるはずだ。
そう考えて、セリナに手紙を預けたんだが……。
正直、読んだミネが怒鳴り込んでくるところまで想定していたんだけどな。
どうやら、そう簡単にはいかないらしい。
「だからこそ、先生の夢に期待していたんです」
「……ああ!」
先生が、納得したように声を上げた。
「原作では、セイアが夢の中で私に会っていたんだね!」
「ええ。もし今回も先生が夢の中でセイアさんと接触していたのであれば、少なくとも生存は確認できます」
「……なるほどね」
「ですが、先生もお会いしていないとなると……」
……はぁ。
「……マジかぁ。これも駄目ですか……」
思わず、素の言葉が漏れた。
「……あはは」
先生が、小さく笑った。
「ナギ、今ちょっと素が出てたね」
「……お恥ずかしい限りです」
……まあ、先生には今さらか。
「……それじゃあ」
先生が、少し考え込む。
「私が直接、ミネやセイアを探してみるのは……」
そこまで言って、先生は口を閉じた。
「……いや、難しいか」
「ええ。少なくとも、表立って捜索することは避けるべきでしょう」
「……アリウスに気づかれるから?」
「はい」
俺は、静かに頷いた。
「仮にセイアさんが生存しているとアリウスに知られれば、今度こそ確実に始末しようとするかもしれません」
「…………」
「それに、もし私たちがセイアさんの居場所を突き止めたとしても、そこへ向かう途中でアリウスに察知されたら……」
俺は、一度言葉を切った。
「セイアさんの命が、本当に危険にさらされます」
「……そうだね」
先生の表情が、険しくなった。
……そう。
生きている可能性が高いからといって、安易に動いていいわけではない。
むしろ、生きているのなら、なおさら慎重になる必要がある。
「……じゃあ、救護騎士団の人たちに内密に聞いてみるのは?」
「それも考えましたが、ミネ団長の居場所を知っている方がいるとは限りません」
俺は、首を振った。
「それに、事情を知らない方々を巻き込めば、それだけ情報が漏れる危険も増えます」
「……そっか」
「正直なところ、この件に関しては八方塞がりですね」
……まったく。
原作知識があっても、どうにもならないことはある。
ミネがどこにいるのかも分からない以上、こちらからできることには限界がある。
「ですから、今はミネ団長かセイアさん、どちらかからの接触を待つしかありません」
「……待つしか、ないんだね」
「ええ。少なくとも、今は」
俺は、先生を見つめた。
「それと、この件はミカさんにはまだ伝えないでください」
「……うん。分かってるよ」
先生が、静かに頷く。
「まだ、生きているって確認できたわけじゃないもんね」
「ええ」
ミカは、セイアが亡くなったと思っている。
今の彼女に、確証のない希望を与えるわけにはいかない。
「確認が取れてから、伝えましょう」
「……うん」
先生が、穏やかに微笑んだ。
「でも、ナギ」
「はい?」
「セイアが生きている可能性があるって分かっただけでも、私は嬉しいよ」
「……そうですね」
俺も、小さく微笑んだ。
……できれば、すぐにでも確認したいところなんだがな。
だが、焦ってセイアを危険にさらしては本末転倒だ。
(……頼むぞ、ミネ)
もし本当にセイアを保護しているのなら。
今は、何よりも彼女の安全を優先してくれ。
◇
「お待たせー!」
しばらくして、ミカが戻ってきた。
手には、先ほどまで持っていなかった別の端末が握られている。
「持ってきたよ!」
「ありがとうございます。こちらへどうぞ」
ミカが隣へ座る。
「それで、まず何から見る?」
「そうですね……先ほどのメールへの返信から考えましょうか」
「うん!」
「持ってきていただいた端末の通話履歴については、その後で先生と一緒に確認させてください」
「分かった!」
ミカが、普段使っている端末を取り出した。
「……そういえば、ミカさん」
「ん? なあに?」
「今回のメールは、いつも使っている端末に届いているのですね」
「ああ、うん! 今日のこの時間に先生との会談があるって、前から伝えてたからね!」
「……なるほど」
つまり、会談後にすぐ報告できるよう、こちらに連絡してきたわけか。
……随分と熱心なことだ。
「では、内容をもう一度確認しましょうか」
「うん!」
ミカが画面をこちらへ向ける。
そこには、今日アリウスから届いたメールが表示されていた。
『昨日から、ティーパーティー会場の音声が拾えなくなっている。何かしたのか?』
『今日のシャーレの先生との会談内容については、後で必ず報告しろ』
……ふむ。
改めて読んでも、随分と直接的な聞き方だな。
特に気になるのは、盗聴について隠そうとすらしていないところだ。
まあ、今までミカが協力していたのだから、向こうにとっては当然なのかもしれないが。
「……ねえ、ナギおじさん」
「はい?」
「これ、どう返せばいいのかな?」
ミカが、不安そうにこちらを見つめた。
「何か変なこと書いたら、怪しまれちゃうよね……?」
「ええ。ですから、基本的には今までどおりのミカさんの言葉で書いていただきたいんです」
「……今までどおり?」
「はい。ただし、今回の事情については絶対に触れないでください」
俺は、静かに続けた。
「私の正体や、ミカさんが自白してくださったこと。そして、これから私たちに協力してくださることも、すべて秘密です」
「……うん!」
「それ以外については、特に問題のない内容であれば伝えていただいて構いません」
「……じゃあ、盗聴器のことは?」
「そちらは、事実を交えて説明しましょう」
……そう。
昨日、会場を調べた際、古い小物の内部から実際に盗聴器が発見されている。
かなり巧妙に隠されていたらしく、調査しても製造元や設置した人物までは分からなかった。
だが、アリウスがこちらの情報を得るために仕掛けたと考えれば、納得はできる。
(……十五日延期で予定が狂った以上、情報収集の手段を増やしたかったんだろうな)
もっとも、それ以前から設置する準備をしていた可能性もある。
今のところ、断定できるほどの証拠はない。
「最近の私は、セイアさんの事件もあって疑心暗鬼になっている。そう伝えてください」
「……ナギおじさんが? ……あっ、向こうにはナギちゃんって言わないとね!」
「……ええ。まあ、そうですね」
……本人を目の前にして、呼び方を使い分ける必要があるというのも妙な話だな。
「そのため、会場を調べさせたところ、古い小物の中から盗聴器が見つかった、ということにしましょう」
「それと、疑心暗鬼になっていると聞けば、アリウス側も私が誰を疑っているのか気になるはずです」
「……確かに、そうかも!」
「それに、アリウスにとってミカさんは重要な情報源です。もし私の疑いがミカさんに向いていると思われれば、向こうも警戒してしまうでしょう」
「……そっか」
「ですから、ミカさんは疑われていないと、相手に思わせる必要があります」
「うん! 分かった!」
「そのためにも、補習授業部の中に裏切り者がいるのではないかと、私が疑っていることを伝えてください」
「……補習授業部?」
「ええ。セイアさんの襲撃以降、疑い深くなっているようだ、と」
……まあ、これも原作のナギサが実際に疑っていたことだ。
そして、補習授業部にはアリウス出身のアズサがいる。
向こうからすれば、ナギサが補習授業部を警戒しているという情報は、むしろ想定の範囲内だろう。
余計な変化を見せるより、原作どおりの流れに見せておいた方がいい。
(……ここは、いつものナギサだと思ってもらいましょうか)
「それと、先生との会談についても、差し支えのない範囲で報告していただければ結構です」
「……じゃあ、今日話したことも全部?」
「いえ。あくまで、表向きの会談内容だけです」
「……あっ、そっか!」
ミカが、納得したように頷いた。
「分かった! じゃあ、書いてみるね!」
「ええ。お願いします」
ミカは画面に向き直ると、指を動かし始めた。
時々首を傾げながら、文章を打ち込んでいく。
……そして、数分後。
「……できた!」
「では、確認させてください」
「うん!」
ミカが端末をこちらへ向けた。
……ふむ。
古い小物から盗聴器が発見されたこと。
俺がセイア襲撃事件をきっかけに疑心暗鬼になり、補習授業部を警戒していること。
先生との会談についても、差し支えのない範囲で書かれている。
……悪くないな。
だが、一箇所だけ気になる部分があった。
「……ミカさん。少しよろしいですか?」
「ん? 何?」
「この『ちなみに、私は疑われてないよ!』という部分ですが……」
「……うん?」
「少々、不自然ではありませんか?」
「……えっ?」
ミカが、不思議そうに首を傾げた。
「どうして? 本当に疑われてないよ?」
「ええ。ですが、アリウスの方々は、ミカさんが疑われているかどうかなど尋ねていませんよね?」
「……あっ」
「それなのに、わざわざ自分は疑われていないと説明すれば、かえって不審に思われる可能性があります」
「……そっか」
ミカが、納得したように頷いた。
「じゃあ、そこは消した方がいいのかな?」
「いえ。むしろ、逆ですね」
「……逆?」
「はい。ミカさん、一度、今回のことを忘れて考えてみてください」
「……今回のこと?」
「ええ。もし、まだ私にアリウスとの関係を打ち明けていなかったとしたら、どうでしょう?」
俺は、少しだけ微笑んだ。
「セイアさんの事件以来、疑心暗鬼になっている私が、会場から盗聴器を発見した。そして、もしミカさんのことまで裏切り者ではないかと疑い始めたら……」
「…………」
「ミカさんなら、どう反応しますか?」
「……えっ?」
ミカは、少し考え込んだ。
そして。
「……いや、ちょっと待って!?」
突然、声を上げた。
「それって、私が裏切り者だって疑われるってことだよね!?」
「ええ。そうなりますね」
「ひどくない!? アリウスが仕掛けた盗聴器のせいで、私までバレるところだったじゃん!」
「ふふっ。そうです。それですよ」
「……へ?」
「ミカさんなら、疑われていないとわざわざ説明するよりも、今のように文句を言う方が自然ではありませんか?」
「……あっ!」
ミカが、目を見開いた。
「そっか! そっちの方が私らしいね!」
「ええ」
俺は頷いた。
「これからアリウスへ情報を伝える際には、今回の事情を知らないミカさんなら、何を考えて、どう行動するのか。それを基準にしてください」
「……今回のことを知らない私……」
「はい。ですから、もし今回の事情を知らないミカさんならやっていたと思うことがあれば、遠慮せずに行動してください」
「……えっ?」
ミカが、驚いたように目を丸くした。
「そ、それって大丈夫なの? 変なことしちゃったら、怪しまれない?」
「ふふっ。むしろ、今までのミカさんならするはずのことを、急にしなくなる方が不自然ですよ」
「……あっ、そっか!」
「ええ。それに、そうした行動によって相手の裏をかくことこそ、私の役目ですから」
「…………!」
ミカが、感心したようにこちらを見つめた。
「……なんか、すごいね。ナギおじさん」
「ふふっ。ですから、ミカさんは今までどおりに振る舞ってくださればいいんです。ただし、何か重要な行動を起こす際には、事前に相談してくださいね」
「うん! 分かった!」
ミカが、嬉しそうに頷いた。
「じゃあ、ちょっと書き直してみるね!」
そう言って、再び端末を操作し始める。
……そして、数分後。
「これならどう!?」
俺は、差し出された画面へ目を向けた。
『返事遅くなってごめんね!』
『音声が拾えなくなった件だけど、たぶんナギちゃんのせいだと思うよ!』
『最近、セイアちゃんの事件で疑心暗鬼になってて、会場を色々調べさせてたみたいなんだよね』
『そしたら、古い小物の中から盗聴器が見つかったんだって!』
『誰が仕掛けたのかは分からないみたいだけど、ほんと勘弁してほしいよ!』
『危うく私まで疑われそうになったんだから!』
『今は補習授業部の中に裏切り者がいるんじゃないかって疑ってるみたい』
『あと、今日の先生との会談だけど、補習授業部のこととか、これからのことについて話してたよ!』
『先生にはロールケーキも出したんだ! 結構喜んでくれてたと思う!』
『また何か分かったら連絡するね!』
「……どうかな?」
ミカが、少し不安そうにこちらを見つめた。
……なるほど。
こちらの方が、ずっと自然だな。
盗聴器が見つかったことは事実だし、補習授業部への疑念も、原作のナギサが実際に抱いていたものだ。
そして、何より。
ミカ自身が疑われそうになったことへの不満が、実に彼女らしい。
「ええ。こちらの方がいいですね」
「……本当!?」
「はい。先ほどよりも、ずっと自然です」
「えへへっ! やった!」
ミカが、嬉しそうに笑った。
「では、その内容で送信してください」
「うん!」
ミカが、送信ボタンを押す。
「……送ったよ!」
「ありがとうございます」
……さて。
これで、アリウスにはこちらの状況が伝わったはずだ。
ナギサは疑心暗鬼に陥り、補習授業部を疑っている。
盗聴器は、その過程で偶然発見された。
そしてミカは、今までどおりアリウスへ不満を漏らしている。
……少なくとも、そう受け取ってくれればいい。
「……ねえ、ナギおじさん!」
「はい?」
「私、ちゃんとできたかな?」
「ええ。上出来ですよ」
「えへへっ!」
……まったく。
こういうところは、いつものミカだな。
「……それにしても、ナギおじさん!」
「はい?」
「よくそんなこと思いつくよね!」
ミカが、感心したようにこちらを見つめた。
「私、言われるまで全然気づかなかったよ! 相手に怪しまれないようにするだけでも大変なのに!」
「ふふっ。少し考え方を変えただけですよ」
「えー? その少しがすごいんだって!」
……そうだろうか。
今回は、相手の立場からどう見えるかを考えただけなんだが。
「まあ、何にせよ、ミカさんのお役に立てたなら何よりです」
「えへへっ! やっぱりナギおじさんって頼りになるね!」
……まったく。
褒めてくれるのは嬉しいんだが、その呼び名だけは何とかならないものだろうか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
今回はセイアの生存についての考察と、ミカの二重スパイとしての初仕事でした!
ナギおじさん、相変わらず色々と考えていますね。
そして、ミカも少しずつ成長しているようです。
果たして、セイアの安否を確認できる日は来るのでしょうか?
次回もお楽しみいただければ幸いです!