今回は、ナギサ様がミネさんに今後の計画を説明するお話です。
そして、以前から気になっていた、とある悩みについても……。
それでは、お楽しみください!
「……ところで、ナギサ様」
「はい?」
「先ほど、アリウス自治区へ潜入するとおっしゃっていましたね」
「……ええ」
……ああ。
そういえば、まだ詳しく説明していなかったな。
セイアが生きていると分かって、すっかり舞い上がってしまった。
「その件について、詳しくお聞かせいただけますか?」
「もちろんです」
俺は、椅子に座り直した。
……うん。
まだ少しお腹は痛むけど、さっきよりは随分ましになった。
「まず、今回の潜入の目的ですが……」
俺は、机の上に置かれた資料へ手を伸ばした。
「アリウス自治区の内部情報を集め、ベアトリーチェとの交渉に向けた準備を整えることです」
「……ベアトリーチェ、ですか」
「ええ」
ミネの表情が、険しくなる。
「それは、危険な相手なのでしょうか?」
「……非常に」
俺は、迷わず答えた。
「正直なところ、まともな話し合いが通用する相手だとは思っていません」
「……それでも、交渉を?」
「はい」
……まあ。
普通なら、そう思うよな。
「ですが、だからこそ準備が必要なんです」
俺は、資料の一部を指さした。
「相手の目的を把握し、こちらが取れる手段を増やす。そして、相手が交渉を選ばざるを得ない状況を作る」
「…………」
「そうすれば、少なくとも交渉の席には着かせられるでしょう」
……もちろん。
そんなに簡単な話じゃないことは分かっている。
相手は、あのベアトリーチェだ。
何をしでかすか分かったものじゃない。
(……だからこそ、あの女には俺の用意した舞台に上がってもらうんだけどな)
「……なるほど」
ミネは、静かに頷いた。
「ですが、なぜナギサ様ご自身が潜入される必要があるのですか?」
……ああ。
やっぱり、そこを聞かれるか。
(……先生にも同じことを聞かれたなぁ)
まあ、当然だよな。
「……実は、アリウス自治区への経路には、少々厄介な問題がありまして」
俺は、カタコンベに関する資料を広げた。
複雑な地下通路。
古い時代の記録。
そして、暗号化された地図。
「仮に内部への侵入に成功したとしても、安全に帰還できるとは限りません」
「……経路が複雑なのですね」
「ええ。それに、経路そのものが変化する可能性も考えています」
……もちろん、まだ仮説の段階だけどな。
「そのため、現地で得られた情報をすぐに読み解き、進むべき経路を判断する必要があるんです」
「……それを、ナギサ様が?」
「はい」
俺は、頷いた。
「古文書の読解や暗号の解読には、ある程度自信があります。それに、原作の知識もありますから」
もちろん、俺より優秀な専門家はいるだろう。
だが、古文書と暗号、そして原作知識。
この三つを合わせて考えられるのは、現時点では俺だけだ。
「……なるほど」
ミネは、少し考え込んだ。
「ですが、それでも危険です」
「ええ。承知しています」
「ナギサ様は、ティーパーティーのホストなのですよ? 万が一のことがあれば、トリニティ全体にも影響が及びます」
……うん。
それも分かっている。
だからこそ。
「もちろん、一人で潜入するつもりはありません」
俺は、先生に説明した内容を、改めてミネにも伝えた。
SRTの生徒たちに護衛を依頼していること。
先生にも現地まで同行してもらう予定であること。
そして、作戦中の指揮は先生にお願いすること。
「……SRTですか」
「ええ。潜入任務に必要な専門的な訓練を受けた生徒たちですから」
「確かに、彼女たちの能力であれば……」
ミネは、小さく頷いた。
……おお。
やっぱり、SRTの実力は評価されているんだな。
「ただし、まだ協力が決まったわけではありません。現在、先生に調整をお願いしているところです」
「……そうですか」
「それに、現地で危険だと判断された場合は、潜入そのものを中止する予定です」
「……中止、ですか?」
「ええ」
俺は、頷いた。
「先生が危険だと判断された場合も、SRTの皆さんが撤退すべきだと判断された場合も、それに従います」
……そう。
俺は、別に無謀な冒険がしたいわけじゃない。
必要なのは、情報だ。
そして、安全に帰還するための経路。
その二つを確保することが目的なんだから。
「……そこまで考えていらっしゃるのですね」
「ええ。先生とも、そのようにお約束しています」
「…………」
ミネは、しばらく資料を見つめていた。
そして、静かに息を吐いた。
「……正直に申し上げれば、賛成はできません」
「……そうですよね」
「ですが、無計画に危険へ飛び込もうとしているわけではないことは理解しました」
「ありがとうございます」
「ただし、先ほどのようなこともあります」
「……はい?」
「ご自身が思っている以上に、危険に対する備えが必要なのではありませんか?」
…………。
(……うっ)
……それは。
非常に耳が痛い。
いや、お腹も痛いんだけど。
「……善処します」
「善処、では困ります」
「……はい」
……うぅ。
先生に続いて、ミネにも怒られてしまった。
(……まあ、当然か)
実際、つい先ほど身をもって自分の弱点を思い知ったばかりだしな。
……ん?
弱点。
…………。
(……ああ、そうだ)
俺は、ふと思い出した。
そういえば。
ミネに会えたら、聞いておこうと思っていたことがあったんだ。
……いや。
正確には。
(……ミネにしか相談できないと思ってたんだよな)
俺は、目の前の少女を見つめた。
救護騎士団の団長。
医療に関する知識を持ち、救護に携わってきた人物。
そして、今は俺の事情も知っている。
……うん。
相談するなら、この人しかいないだろう。
「……あの、ミネさん」
「はい?」
「もう一つ、ご相談したいことがあるのですが……」
「……もちろんです。何でしょうか?」
……さて。
どう切り出したものかな。
正直、かなり話しにくい内容なんだよなぁ。
「……その」
「……?」
「少々、個人的なお話になるのですが……」
「構いません。どうぞ、お話しください」
「……ありがとうございます」
……よし。
覚悟を決めよう。
「実は、以前からミネさんにお会いできたら、相談したいと思っていたことがあるんです」
「……私に、ですか?」
「ええ」
俺は、頷いた。
「……いえ、正確には」
一度、言葉を区切る。
「ミネさんにしか、相談できないと思っていました」
「…………」
ミネが、少し驚いた表情を浮かべた。
「……そこまでのお話なのですか?」
「……はい」
……いや。
そんなに深刻な顔をしないでほしい。
こっちまで緊張するから。
「先ほど、私は元々男性だったとお話ししましたよね?」
「……ええ」
「そして、現在はナギサの身体で生活しています」
「……はい」
「そのことで、一つ気になっていることがあるんです」
……ああ。
言いにくい。
めちゃくちゃ言いにくい。
(……でも、ここで聞かないと、また後回しになるんだよなぁ)
俺は、意を決して口を開いた。
「……実は」
「はい」
「……この身体になってから、一度も性的な欲求を感じたことがないんです」
「…………」
…………。
(……言っちゃった)
……ああ。
何だか、ものすごく恥ずかしい。
でも、仕方ない。
気になっていたのは事実なんだから。
「……なるほど」
ミネは、驚いた様子こそ見せたものの、すぐに真剣な表情になった。
「それは、いつ頃からでしょうか?」
「……目覚めた時からです」
「つまり、この身体で生活を始めてから、一度も?」
「……はい」
俺は、頷いた。
「元々、そういった欲求が全くない人間だったわけではありません。ですが、こちらに来てからは不思議なくらい感じなくなってしまって……」
「……そうですか」
ミネは、考え込むように顎へ手を添えた。
……よかった。
変な顔をされなくて。
……いや。
救護騎士団の団長なんだから、当然か。
「……それで、ナギサ様。もう少し詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「ええ。もちろんです」
「欲求を感じないというのは、まったく意識しなくなったということでしょうか?」
「……いえ、そういうわけではないんです」
俺は、少し考えてから答えた。
「元々男性だったので、以前の習慣というか……女性の胸元などに、つい視線が向いてしまうことはあるんです」
…………。
(……ああ、恥ずかしい)
何を真面目な顔で説明しているんだ、俺は。
「ですが、それだけなんです」
「……それだけ、ですか?」
「はい。以前のような性的な高揚感は、まったくありません」
……そう。
そこが不思議なんだ。
女性を見て、綺麗だと思うことはある。
可愛いと思うこともある。
だけど、それ以上の感覚につながらない。
(……まあ、綺麗だとか可愛いとかは、今までだって思ってたんだけどな)
でも。
今は、そこから先がない。
「……なるほど」
ミネは、静かに頷いた。
「ちなみに、ナギサ様ご自身は、何か原因に心当たりがありますか?」
「……いくつか、考えてはいるんです」
「お聞かせください」
……よし。
ここからは、いつもの調子でいこう。
俺は、一度頭の中を整理した。
「まず、一つ目ですが……」
俺は、指を一本立てた。
「私自身が、無意識に欲求を抑えている可能性です」
「……無意識に?」
「ええ」
俺は、自分の胸元へ視線を落とした。
「この身体は、私のものではありません。あくまでも、ナギサから借りているものです」
……そう。
俺は、いずれこの身体を本人に返すつもりでいる。
そのために、今できる限りのことをしているんだ。
「ですので、私自身が無意識のうちに、この身体でそうした欲求を持つことを避けているのかもしれません」
「……なるほど」
「もちろん、単なる推測ですが」
俺は、続けた。
「二つ目は、ナギサの自殺未遂の影響です」
「…………」
ミネの表情が、少しだけ険しくなった。
「……あの件ですか」
「はい」
目覚めた時の身体の状態。
残されていた薬の空き瓶。
そして、日記に記されていた苦しみ。
……あれほど精神的に追い詰められていたんだ。
何らかの影響が残っていたとしても、不思議ではない。
「服用した薬や、それ以前の精神状態が影響している可能性も考えています」
「……確かに、確認すべき点ではありますね」
「ええ」
俺は、二本目の指を立てた。
「そして、三つ目です」
「はい」
「……ナギサ本人の記憶や感情が影響している可能性です」
「…………」
「この身体には、今もナギサの記憶や感情が残っていると考えています」
俺は、胸元へ手を当てた。
「時折、自分のものではない感情を感じることもあります。ですので、そうしたものが何らかの形で影響している可能性も否定できません」
……もっとも。
具体的にどういう仕組みなのかは、さっぱり分からないけどな。
「……なるほど」
「それと、もう一つ」
俺は、少し恥ずかしくなりながら続けた。
「……単純に、身体の変化にまだ慣れていないだけという可能性もあります」
「……身体の変化、ですか?」
「はい」
男性と女性では、身体の仕組みも違う。
性的な欲求の感じ方も、必ずしも同じではないだろう。
「ですので、単に欲求が生じる状況や時期が、以前とは違うだけなのかもしれません」
……そう。
まだ、その時が来ていないだけ。
それなら、別におかしなことではない。
……はずだ。
「……以上が、私の考えている可能性です」
俺は、指を下ろした。
「ですが、どれが正しいのか判断できなくて……」
……というか。
(……そもそも、こんなのどうやって調べればいいんだよ)
俺は、医学の専門家じゃない。
頭が良いからといって、何でも分かるわけじゃないんだ。
「……なるほど。よく整理されていますね」
「……ありがとうございます」
「ただし、今のお話だけで原因を断定することはできません」
「……そうですよね」
……まあ、当然か。
俺自身、いくつも可能性を考えてはいるが、どれが正しいのか分からないんだから。
「ちなみに、他に体調の変化などはありますか?」
「いえ。特にはありません」
俺は、首を横に振った。
「救護騎士団には、これまでも時間がある時に足を運び、忙しくて時間が取れない時には団員の方に来ていただくなどして、健康状態を確認していただいています」
「……そうですか」
「ですので、普段の体調については、それほど心配していないんです」
……まあ。
ナギサの身体を預かっている以上、健康管理は大切だからな。
むしろ、以前より気を遣っているくらいだ。
「……なるほど。では、今回の件については、今後の変化も確認しながら考えていくのがよいでしょう」
「……分かりました」
「そもそも、性的な欲求の強さや現れ方には個人差があります。欲求を感じないこと自体が、必ずしも病気というわけではありません」
「……そうなのですね」
「ええ。ですが、以前とは大きく異なる状態とのことですから、気になるのも当然でしょう」
……うん。
やっぱり、相談してよかった。
原因は分からなくても、ひとまず急いで結論を出す必要はないらしい。
「……それにしても、ナギサ様」
「はい?」
「一つ、気になったことがあるのですが」
「……何でしょうか?」
「これまでも救護騎士団で健康状態を確認させていただいていましたが、なぜ今回の件は、私に直接ご相談されたのでしょうか?」
……ああ。
やっぱり、そこは気になるよな。
「……実は、以前からミネさんにお会いできたら、ご相談しようと思っていたんです」
「……私に、ですか?」
「ええ」
俺は、頷いた。
「正確には、ミネさんにしか相談できないと思っていました」
「…………」
ミネが、少し驚いた表情を浮かべた。
「……理由をお聞きしても?」
「……そうですね」
俺は、少し考えてから口を開いた。
「まず、私の立場の問題です」
「……立場、ですか?」
「ええ」
……言うまでもなく。
桐藤ナギサは、トリニティの最高指導者の一人だ。
そんな人物が、一般の救護騎士団員に何を相談するのか。
(……性欲がないんです、ってか?)
…………。
(……いや、無理だろ)
さすがに、それは無理だ。
もちろん、救護騎士団の生徒たちを信用していないわけじゃない。
だが、こんな話を気軽に相談できるかと言われると、話は別だ。
「……内容があまりにも個人的ですので、一般の団員の方には相談しづらかったんです」
「……なるほど」
「それに、場合によっては、もう少し詳しく身体の状態を確認する必要があるかもしれませんよね?」
「……ええ。原因によっては、そうした検討が必要になる可能性もあります」
「……やはり、そうですよね」
……そして。
ここが、一番重要なんだ。
「ミネさん。先ほどもお話ししましたが、この身体は本来、ナギサのものです」
「……ええ」
「今は私が動かしていますが、いずれ本人に返すつもりでいます」
俺は、自分の胸元へ視線を落とした。
「ですので、もし診察のために身体を見せる必要があるとしても、私の都合だけで軽々しく決めてよいものか、悩んでいたんです」
「…………」
……そう。
俺は男だった。
だからこそ、今の身体がどれだけ他人にとって大切なものなのか、考えておかなければならない。
ましてや、ナギサ本人に許可を求めることもできないんだから。
「……では、先生には?」
「……それも考えました」
……いや。
考えはした。
したんだけど。
(……無理だな)
先生に自分の性欲について相談する。
……まあ、そこまでは何とかなるかもしれない。
だが。
もし、詳しく身体を診てもらう必要があると言われたら?
…………。
(……いやいやいや!!)
それは駄目だろ!!
ナギサの身体だぞ!?
元男の俺が、自分の判断で先生に見せるなんて、さすがにできない!!
「……先生は男性ですし、もし身体的な診察が必要になった場合、お願いするわけにはいきませんから」
「……なるほど」
「それに、先生には普段から随分とお世話になっていますが……」
俺は、少し視線を逸らした。
「……この身体は、本来私のものではありませんから。こういった身体に関することを、私の一存で男性である先生に相談するのは、ナギサのプライバシーを侵害してしまうような気がして……」
…………。
(……ああ、もう)
考えすぎなのかもしれない。
けれど、この身体は本来ナギサのものだ。
俺が勝手に使わせてもらっている以上、本人の意思を無視していいわけがない。
(……先生を信用していないわけじゃないんだけどな)
ただ、それとこれとは別の話だろう。
「……ふふっ」
「……ミネさん?」
「いえ。失礼しました」
ミネは、穏やかに微笑んだ。
「そこまで慎重に考えていらしたのですね」
「……ええ」
俺は、小さく頷いた。
「ですので、救護騎士団の団長であるミネさんなら、と思ったんです」
救護に関する知識があり、女性であり、そして何より、救護騎士団の最高責任者だ。
万が一、詳しい診察が必要になったとしても。
事情を理解したうえで、必要な範囲を判断してもらえる。
そして、この話を他の生徒に知られる心配も、できる限り抑えられるだろう。
「……もちろん、ミネさんだからといって、何でもお願いしてよいとは思っていません」
「…………」
「ですが、ナギサ本人の許可を直接得られない以上、もし誰かに身体のことで相談するとしたら、信頼できる医療関係者であるミネさんしかいないと思ったんです」
……そう。
こればっかりは、俺一人で判断していい問題じゃない。
「……なるほど」
ミネは、しばらく考え込んでいた。
そして、ゆっくりと頷く。
「お考えは、よく分かりました」
「……ありがとうございます」
「それでは、私からも一つお約束しましょう」
「……はい?」
「今回のお話は、救護に関する相談として、慎重に取り扱います」
「……!」
「また、仮に詳しい診察が必要になったとしても、その理由や方法を事前にご説明します。必要のないことを無理に行うつもりはありません」
「……ありがとうございます」
……ああ。
よかった。
それを聞いて、ようやく肩の力が抜けた気がした。
「それにしても……」
「……はい?」
「ナギサ様は、ご自身のことよりも、本来のナギサ様のことをずいぶん大切に考えていらっしゃるのですね」
「……そうでしょうか?」
「ええ」
ミネは、静かに頷いた。
「身体のこと一つを相談するにしても、そこまで慎重に考えていらっしゃるのですから」
…………。
……まあ。
そう言われると、少し照れくさいな。
「……当然のことですよ」
俺は、小さく微笑んだ。
「この身体は、いつかナギサに返すものですから」
「……そうですか」
「ええ。ですので、できる限り大切にしたいんです」
……もちろん。
俺自身も、健康でなければ困る。
これからアリウスに潜入するんだし、体調を崩している場合じゃないからな。
(……まあ、今日は思いっきりお腹を殴られたけど)
…………。
……いや。
そこは、もう忘れよう。
「……ミネさん」
「はい?」
「本日は、本当にありがとうございました」
俺は、深く頭を下げた。
「セイアさんのことも、私自身のことも、お話を聞いていただけて嬉しかったです」
「……こちらこそ。お話しいただき、ありがとうございます」
ミネは、穏やかに微笑んだ。
「今後も、何か気になることがあれば、遠慮なくご相談ください」
「……ええ。そうさせていただきます」
……うん。
これで、一つ気がかりが減った。
結局、原因は分からなかったけど。
少なくとも、相談できる相手ができたんだ。
(……やっぱり、一人で考えるだけじゃ限界があるよな)
……さて。
今日は、本当に色々あった。
補習授業部の合宿。
アリウスへの潜入準備。
突然のミネの来訪。
そして、セイアの生存確認。
最後には、ずっと気になっていた悩みまで相談できた。
(……いやぁ、充実した一日だったなぁ)
……まあ。
途中で殴られたことを除けば、だけど。
「……では、ナギサ様。私はこれで失礼します」
「ええ。本日はありがとうございました」
ミネが、立ち上がる。
そして、窓の方へ視線を向けた。
…………。
「……あの、ミネさん?」
「はい?」
「……帰りは、扉からお願いしますね?」
「…………」
……いや。
さすがに、また窓から出ていかれたら困る。
ここ、三階なんだぞ?
「……承知しました」
ミネは、真面目な表情で頷いた。
…………。
(……よかった)
……というか。
今、一瞬考えたよな?
窓から帰るつもりだったのか?
…………。
(……まあ、ミネさんだしなぁ)
……うん。
もう、深く考えるのはやめておこう。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
今回は、ミネさんへの潜入計画の説明と、ナギが以前から抱えていた悩みについてのお話でした。
普段は色々と考えて行動しているナギですが、やはり自分だけでは分からないこともあるようです。
そして、ようやく相談できた相手がミネさんだったわけですが……出会い方は散々でしたね。
引き続きよろしくお願いします!