ISクロスGS ザ・グレート・ゲーム  【IS世界に横島忠夫を放り込んでみた】   作:監督

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第9話

 

 

 

「地脈の枯渇、か……」

 

 千冬は、モニタに映る世界地図を見つめたまま呟いた。

 

 声は低かった。

 

 怒りではない。

 恐怖でもない。

 だが、そのどちらにも近いものが、確かに混じっていた。

 

 IS学園地下の解析室。

 

 厚い隔壁に守られたその部屋は、学園の明るい廊下や教室とはまるで別世界だった。

 壁に埋め込まれたモニタ群。

 低く唸る空調音。

 機密区画特有の、空気の乾いた匂い。

 

 強化ガラスの向こうには、先日回収された無人機の残骸が横たわっている。

 

 その残骸から得られた解析結果。

 束が残したデータ。

 横島がここ数年かけて集めてきた、地脈とDD出現地点の照合結果。

 

 それらは一つの結論を示しつつあった。

 

 防衛のために展開される大規模シールド。

 その維持に消費される霊的エネルギー。

 地脈から引き出される力。

 

 今すぐ世界が破綻するわけではない。

 

 だが、このまま続ければ、いずれ限界が来る。

 

 世界を守るために張った盾が、世界の足元を削っている。

 

 千冬は、考えたくもなかった。

 

「真耶。束からの報告は?」

 

「ここ何ヶ月かはありません」

 

 真耶は端末を操作しながら答える。

 

「その代わりの無人機襲撃、と言えなくもないんでしょうけれど」

 

「束ちゃんらしいっちゃあ、らしいけどな」

 

 横島が乾いた笑いを漏らした。

 

 その笑いは、重苦しい地下室の空気に吸い込まれていく。

 

「実験するならするで、一言欲しいもんだぜ。いきなり無人機を投げ込まれて、はいデータ取ってね、はないだろ」

 

「一言あったところで、お前は怒るだろう」

 

「怒るけど、心の準備くらいはできるだろ」

 

「お前の心の準備に配慮する束ではない」

 

「知ってる」

 

 横島は苦い顔で肩をすくめた。

 

「相変わらず、『我が輩は猫である』でどっかに?」

 

「私にも、たまに秘匿回線で連絡がある程度だ」

 

 千冬は眉間に皺を寄せる。

 

「ステルスと光学迷彩で見つけるのは不可能だよー、なんて呑気なことを言っていたが」

 

「呑気というか、腹立つというか」

 

 真耶が小さく溜息をついた。

 

「ISコア搭載の移動研究所、でしたか。ISの基本機能も装備されているから、少々のミサイルも効かない……。研究所と言うより、まさに要塞ですね」

 

「積極的な攻撃機能はついてないらしいけど、どこまで本当だか」

 

 横島は腕を組む。

 

「あいつの“ついてない”は、だいたい“今は使わない”くらいの意味だからな」

 

「否定できんな」

 

「でも、今の俺たちには、とりあえずアレに搭載した対悪魔高精度探査装置――スーパー見鬼君からのデータがあればいい」

 

「その名前はどうにかならなかったのか」

 

「俺は気に入ってるぞ。見鬼君二号より強そうだろ」

 

「強そうかどうかで装置名を決めるな」

 

「美神さんなら絶対、こっちの方が売れるって言う」

 

「その美神という女も、相当だな」

 

 千冬は呆れたように言ったが、横島はどこか誇らしげだった。

 

 真耶は、苦笑しながら端末を横島へ渡す。

 

「どうぞ」

 

「真耶ちゃん、借りるよ?」

 

「壊さないでくださいね」

 

「俺をなんだと思ってるんだ」

 

「壊す人です」

 

「即答かい」

 

 軽口を叩きながらも、横島の指は止まらなかった。

 

 端末へコマンドを打ち込む。

 

 モニタの地図が切り替わる。

 

 世界地図。

 

 そこに、赤い光点が一つ、また一つと表示されていく。

 

 DD出現ポイント。

 

 過去数年分の記録が、時間軸に沿って再生された。

 

 最初はまばらだった光点が、少しずつ増えていく。

 ある地域に集中し、そこから散るように広がる。

 海沿い、山脈、地下資源帯、古い都市、聖地と呼ばれていた土地。

 

 次に、青白い線が地図へ重ねられた。

 

 地脈。

 

 世界中に走る霊的エネルギーの流れ。

 横島の世界ならば、古い神社や寺、霊場、土地の伝承と結びついて説明されたかもしれないもの。

 

 この世界では、長らく観測されなかった流れ。

 

 だが今は、違う。

 

 DDの出現によって、世界の裏側にあるはずだった線が、徐々に浮かび上がり始めていた。

 

「前回、束ちゃんからもらったデータと、今回の俺のデータで、ある程度の実証データは揃った」

 

 横島の声が、少し低くなる。

 

「予想通りだったな。ここんところの地脈と精霊石探索も、無駄じゃなかったわけだ」

 

 光点は、時間を追うごとに増えていく。

 

 増えながら、ある法則を示していた。

 

 DD出現ポイントは、地脈の上に重なるように増加していた。

 

 完全一致ではない。

 ずれもある。

 例外もある。

 

 だが、無関係とは到底言えない。

 

 現在を示すタイムスタンプで再生が止まる。

 

 世界中に広がる赤い光点と、青白い地脈の線。

 

 それを見ながら、横島は告げた。

 

「あいつらが出現するポイントは、大まかには地脈と重なる。これが分かっただけでも収穫だよ」

 

「つまり」

 

 千冬は目を細める。

 

「奴らが現れたポイントを探れば、地脈が見つかる可能性が高いわけか」

 

「ああ。その逆もしかり、だな」

 

「地脈がある場所は、奴らの出現候補になる」

 

「そういうこと」

 

 横島はモニタを見たまま頷いた。

 

「地脈と奴らの関係性に、一定の目処をつけることができた。ってことは」

 

 そこで、横島は一度言葉を切った。

 

 普段の軽い笑みはない。

 

 顔を伏せ、何かを思案するように押し黙る。

 千冬も真耶も、その沈黙を待った。

 

 この男は、黙っていると別人のように見える。

 

 ふざけている時は、どうしようもなく軽い。

 若い女を見ればすぐに騒ぐ。

 美人に弱い。

 痛い目を見ても懲りない。

 

 だが、霊的なものを扱う時。

 悪魔や妖怪、死者や土地の気配に触れる時。

 横島忠夫は、確かに専門家の顔をする。

 

 やがて横島は、二人へ振り返った。

 

 そして、笑顔で言った。

 

「反撃の糸口を掴めたってこと、だろうな」

 

「……反撃、ですか」

 

 真耶の声が震えた。

 

「ああ。まあ、今までの防戦一方から比べれば、だけどな」

 

「それでも」

 

 真耶は、モニタを見つめる。

 

「それでも、ようやくです。ようやく。ようやく、ですよ……」

 

 嬉しい。

 

 その言葉は、小さかった。

 

 けれど、地下室にいる三人には十分だった。

 

 千冬も、無言のまま頷いた。

 

 真耶と千冬。

 

 外見も、性格も、服装も、まるで対照的な二人だった。

 

 真耶は柔らかく、少し頼りなく見える。

 千冬は鋭く、揺るがないように見える。

 

 だが、二人は同じ時代を生きてきた。

 

 十年以上前からの戦争。

 

 DDがこの世界に初めて出現し、確認されてから続く破壊と混乱。

 束が「緩慢に滅んでいく」と評した窮状。

 

 それを、二人は経験してきた。

 

 今の一夏たちよりも、ずっと深く。

 ずっと長く。

 

 反撃。

 

 その言葉には、二人にとって特別な重みがあった。

 

 ただ守るだけではない。

 ただ耐えるだけではない。

 ただ、次の襲撃に備えるだけではない。

 

 こちらから手を伸ばす。

 法則を掴む。

 発生源を探る。

 地脈を読む。

 

 ようやく、世界が一歩前へ進むかもしれない。

 

「ともかくも、選択と集中の次のステップには間に合ったわけだな、忠夫」

 

「ああ、ひとまずはな」

 

 横島は頷く。

 

「だけど、俺の世界の常識からすると、理屈に合わないこともたくさんある。もうちょっと精査したいところではあるけどな」

 

「と言うと?」

 

 千冬は訝しげに問い返す。

 

 横島は少し考え、それから指を一本立てた。

 

「例えば一つ」

 

「ああ」

 

「そもそも俺の世界では、悪魔ってのは神様から転じたとか、魔界で生まれたとか、陰と陽の関係性の中で必然的に創られたとか、ともかく何かしらの大きな背景があるんだよ」

 

「背景?」

 

「そう。悪魔ってのは、ただ強い陰の気が溜まったから自然発生的に人間界にポンと誕生しました、みたいなもんじゃない。強い陰の気が溜まれば、妖怪程度なら生まれることもある。土地に憑くとか、怨念が形を持つとか、そういうのはあるんだけど」

 

「悪魔や魔族となると、違うわけか」

 

「だな」

 

 横島はモニタの赤い光点を見る。

 

「地脈に関係してるのは間違いない。でも、地脈があるからって、それだけであいつらみたいなのがポコポコ生まれるってのは、俺の感覚だと変なんだよ」

 

「なるほどな」

 

 千冬は少し口元を緩めた。

 

「なら、お前みたいな男の陰の気が溜まれば、夏のビーチあたりに妖怪が発生したりするのか?」

 

「夏のビーチなんか、明るい太陽なんか大嫌いだ、どちくしょう……」

 

 横島は突然、さめざめと泣き始めた。

 

 千冬は呆れた目で見る。

 

 真耶は、横島と夏のビーチを想像したのか、思わず吹き出した。

 

「横島さん、何かあったんですか?」

 

「あったんだよ、真耶ちゃん……」

 

 横島は顔を覆う。

 

「夏のビーチ。輝く太陽。肌色多めの水着のお姉さんたち。そこにいるだけで幸せなはずの場所なのに、隣には美神さんがいて、仕事で、妖怪退治で、しかも俺だけひどい目に遭って……!」

 

「だいたい自業自得だろう」

 

「決めつけるな! いーじゃねえか、イケメンやカップル共の明るい青春に水を差してやりたかったんだよ。あの妖怪のことを、俺は他人とは思えねー」

 

「……やはりお前は一度死んだ方がいいと思うぞ」

 

「ひでえ」

 

「死んでもすぐ起きるだろう」

 

「そういう問題じゃねえ!」

 

 重かった空気が、少しだけ緩む。

 

 だが、モニタに映る赤い光点は消えない。

 

 冗談を挟んでも、現実は変わらない。

 

     ◇

 

「あの横島という教師は、おかしいですわ!」

 

 寮の食堂に、セシリア・オルコットの声が響き渡った。

 

 夕食時。

 

 生徒たちでごった返す食堂は、いつものように賑やかだった。

 トレーを持った生徒たちが行き交い、あちこちのテーブルから笑い声や話し声が上がっている。

 

 その中で、セシリアの声はひときわよく通った。

 

 同席していた専用機持ちたちはもちろん、近くにいた生徒たちまで振り返る。

 

「織斑先生や生徒にセクハラをする教師など、なぜこの学園に在籍していられるのか。皆さんも疑問に思いませんこと?!」

 

「……だよねえ」

 

 シャルロットが苦笑いで頷く。

 

「女子の貞操を脅かすなど、男の風上にも置けん」

 

 箒も真面目な顔で言った。

 

「いや、あれを男の代表みたいに言われると、一夏が可哀想だけどね」

 

 鈴はそう言いつつも、頷いている。

 

 横島忠夫。

 

 IS開発部の教師。

 対DD装備の開発に関わっているらしい人物。

 織斑先生や山田先生と古くからの知り合いらしい男。

 

 だが、一年生たちからすれば、まず目に入るのはその奇行だった。

 

 ナンパ。

 セクハラ。

 自爆。

 制裁。

 復活。

 またナンパ。

 

 どう考えても教師として問題がある。

 

「嫁であれば、決してあのような真似はせんな」

 

 ラウラが腕を組んで言う。

 

 皆が一斉にラウラを見る。

 

「まあ、方法の是非はともかく、多少あの積極性を学んでほしいところではある」

 

「……だよねえ」

 

 シャルロットが、今度は別の意味で頷いた。

 

「……確かにそうだな」

 

 箒まで真顔で同意する。

 

「ま、まあ、私も一夏さんになら、やぶさかではありませんけれど……」

 

 セシリアは頬を染めながら視線を逸らした。

 

 鈴も、箸で回鍋肉をつつきながら小さく唸る。

 

 彼女たちの想い人は、横島とは正反対だった。

 

 手を出しすぎる横島。

 

 手を出さなすぎる一夏。

 

 いや、手を出さないどころか、自分たちの好意に気づく気配すら薄い。

 優しい。

 優しすぎる。

 そのくせ肝心なところでは鈍感で、距離感がおかしい。

 

 織斑千冬という、自他ともに認める女傑が姉であることを考えれば、多少仕方ないのかもしれない。

 

 それでも、もう少しどうにかならないのかと思う。

 

「ではなくて!」

 

 セシリアは自分で話が逸れたことに気づき、慌てて声を上げた。

 

「あのセクハラ男に、一夏さんへの反面教師を期待してもしょうがありませんわ! 私たちでとっちめて、さっさと退職に――」

 

「なあに。随分楽しそうね?」

 

 声がした。

 

 皆が振り返る。

 

 そこには、学園生徒会長の更識楯無が、トレーを持って立っていた。

 

 つい数時間前。

 

 定期便の迎撃で指揮を執っていた人物。

 

 ミステリアス・レイディを操り、迎撃部隊を手足のように動かし、DDの群れを叩き潰した指揮官。

 

 その姿をコア・ネットワーク越しに見たばかりの一年生たちに、緊張が走る。

 

 箒や鈴は警戒して何も言わず、ただ楯無の顔を見ていた。

 

 楯無は、そんな視線を楽しむように微笑む。

 

「騒がしいと思えば、なあに。一夏君を巡って恋の鞘当て?」

 

「なっ?! ち、違いますわ!!」

 

「やあねえ。冗談よ、冗談」

 

 楯無はころころと笑う。

 

「仲が悪いなら、なんのかんの、一緒に食事しないでしょうし。なんていうの、おひとり様同盟?」

 

「お、おひとり様……」

 

 シャルロットが、がっくりと肩を落とした。

 

 一夏と出会ってからしばらく。

 

 訓練に、学園生活に、専用機の調整に、いろいろと忙しかった。

 充実していると言えば充実している。

 

 だが、恋に関する現状については、楯無の指摘通りだった。

 

 進んでいない。

 

 いや、進んでいるように見えて、決定打がない。

 

 他のメンバーも似たようなものだ。

 

「ふふふ。まあ、勉強熱心な後輩たちをからかうのは、ほどほどにしておきましょうか」

 

 楯無は空いていた席へ腰を下ろすでもなく、トレーを持ったまま言う。

 

「久々だったし、戦闘報告とかめんどくさいのよねー。お腹すいちゃって」

 

「……やはり気づいて?」

 

 ラウラの口調には、少し棘があった。

 

 コア・ネットワーク越しに見ていたこと。

 

 それを楯無がどう受け止めたのか気になっているのだろう。

 

 楯無の瞳に、かすかな光が浮かぶ。

 

「気づかない方がどうかしてるわね」

 

 声の調子が少し変わった。

 

「部隊外からの接続は邪魔にはならなかったし、先生方が許可を出したんだから、私から言うことはないけど」

 

 楯無は、五人を順番に見た。

 

「どう? 参考になった……って聞くまでもないか。あれを見た後に、きちんと食事を取ってるんだから」

 

 楯無の視線が、鈴のトレーに落ちる。

 

 回鍋肉定食。

 

 大盛り。

 

「普通なら、しばらくお肉なんか食べられないわよ?」

 

「うっさいわね!」

 

 鈴は顔を赤くする。

 

「スタミナつけるにはお肉が一番なのよ。これでも足んないくらいだわ」

 

「その割には、あんまり栄養が行き渡ってないみたいだけど?」

 

 楯無は、まず箒を見た。

 次にセシリア。

 次にシャルロット。

 

 そして、改めて鈴の胸元へ視線を戻す。

 

 ちなみにラウラはスルーした。

 

 ラウラはジトっとした目で楯無を睨んでいる。

 

「……うっさいうっさいうっさい! あたしにはまだ未来があんのよ、未来が!」

 

 鈴はテーブルを叩く。

 

「あーもう、アンタ何しに来たのよ。忙しいんでしょ。さっさとご飯食べてISの整備にでも行きなさいよ」

 

「もちろん、口の利き方を知らない可愛い後輩を指導しに、と言いたいところだけど」

 

 楯無は腹をさする。

 

「本当にこれまでにしておきましょうか。お腹と背中がひっつきそうだし」

 

 そう言いながらも、楯無はすぐには立ち去らなかった。

 

 表情を、ほんの少しだけ引き締める。

 

「立ち会ったからには、約束」

 

 五人が顔を上げる。

 

「一年後には、同じ空で、一緒に戦うわよ」

 

 いいわね。

 

 その口調は、命令に近かった。

 

 だが、誰も不快には思わなかった。

 

 むしろ、望むところだった。

 

「望むところですわ」

 

 セシリアが真っ先に答える。

 

「一年後と言わず、もっと早く追いついてみせます」

 

「頼もしいわね」

 

 楯無は笑った。

 

「そういういい顔を、一夏君の前でしてみせれば、彼だって惚れるかもしれないのに。もったいないわね」

 

「な、な、な、何をおっしゃるんですのっ?!」

 

 セシリアの顔が一気に赤くなる。

 

 楯無は食堂を見回した。

 

「でも残念。一夏君、いないのかあ」

 

 普段であれば、すぐ見つかるはずの男子生徒の姿がない。

 

 からかって遊びたかった、とでも言いたげに、楯無はつまらなそうな顔をした。

 

 その様子に、箒がついこぼす。

 

「一夏なら、部屋にいます。誘ったのですが、食べたくないと言って……」

 

「あら、そう。ふうん……」

 

 楯無の目が少し細くなる。

 

 五人とも、まさか一夏が怖気づいたとは思っていない。

 

 だが、今日の定期便で何かを感じたのだろうとは思っていた。

 初めて見る、本当の戦場。

 コア・ネットワーク越しに感じた恐怖。

 外で戦っている上級生たちの現実。

 

 あるいは、一緒にいた千冬との間に、何かあったのかもしれない。

 

「ま、いいんじゃない?」

 

 楯無は軽く言った。

 

「彼だって男の子なんだし、女子に顔を合わせたくない時だってあるでしょ」

 

「あんたが言うと、真実味がないわね……」

 

 鈴がじとっと見る。

 

 普段、一夏の部屋へずけずけ踏み込んでいるのは誰だ。

 しかも水着とエプロンなどという破廉恥な格好で。

 

 鈴の全身が、そう訴えていた。

 

 楯無は柳に風と受け流す。

 

「しょーがない。虚のとこ行こ」

 

 じゃあね、と手をひらひらさせて歩き出す。

 

 しかし、ふと立ち止まった。

 

 何かを思い出したように指を立て、そのままセシリアを指す。

 

「ああ、セシリアさん?」

 

「は、はい?」

 

「そう言えば、横島先生のことだけど」

 

 セシリアの肩がわずかに跳ねる。

 

「き、聞いてらしたんですか?」

 

「聞こえちゃったし」

 

 楯無はクスクス笑う。

 

「ま、この学園の生徒なら、大なり小なり知ってはいるわね。必ず一回はナンパされたことがあるだろうし、最初はイライラするのも分からなくもないけど」

 

「はあ……」

 

 セシリアは困惑気味に返す。

 

「退職に追い込むのは難しいんじゃない?」

 

「え?」

 

「あの先生、ここ何年かの対DD用装備の大半を開発したって聞いてるわよ」

 

「え」

 

 セシリアは目を白黒させた。

 

 それは、彼女だけではなかった。

 

 シャルロットも、鈴も、箒も、ラウラも、同じように固まる。

 

 横島忠夫。

 

 あのセクハラ教師が。

 

 対DD用装備の大半を開発した。

 

 にわかには信じがたい。

 

 だが、楯無が冗談で言っている様子ではなかった。

 

「そんじゃーねー。ご飯冷めちゃったかしら」

 

 楯無は今度こそ、生徒会メンバーが集まるテーブルへ急ぎ足で立ち去った。

 

 残された五人は、しばらく沈黙する。

 

「……ただのセクハラ教師ではなかったんですの?」

 

 セシリアがぽつりと言った。

 

「IS学園にいるくらいだから、多少は能があるのだろうとは思っていたが……」

 

 箒が腕を組む。

 

「全然知らなかったわよ」

 

 鈴が呟く。

 

「……ふむ」

 

 ラウラは考え込んだ。

 

「ISパイロットも貴重なら、あれも貴重だということか。なぜ教官がさっさと始末しないのか不思議だったが、なるほど」

 

「始末前提なんだ……」

 

 シャルロットは苦笑した。

 

「そう言えば、学内でもよく一緒にいるところ見るよね。織斑先生と横島先生。山田先生もだけど」

 

 その言葉に、全員がむむむ、と首をひねった。

 

 自分たちが受ける印象。

 

 横島の行動。

 

 楯無の言う実績。

 

 千冬や真耶の態度。

 

 どうにも噛み合わない。

 

 ただの問題教師なら、あの織斑千冬が容赦なく叩き出しているはずだ。

 山田真耶も、あれほど振り回されながら、完全に拒絶しているわけではない。

 更識楯無は、笑いながらも横島の価値を認めていた。

 

 三人寄れば文殊の知恵という。

 

 この場合は女三人どころか五人で姦しいと言うべきかもしれない。

 

 食事の間中、彼女たちは穏やかでない議論を続けた。

 

 どうやったら、あの教師の正体を探れるか。

 

 結論は、しばらくそれぞれが観察すること。

 

 至極もっともで、同時に少し危険な結論に落ち着いた。

 

     ◇

 

「ぶえっくしっ……」

 

 地下解析室で、横島が大きなくしゃみをした。

 

「誰か知らんが、世紀の美女が俺のことを噂してやがんな」

 

「何をどう考えたら、そういう結論になる」

 

 千冬が冷たく返す。

 

「大体、馬鹿は風邪をひかんというぞ?」

 

「あはははは……」

 

 真耶は愛想笑いを浮かべた。

 

 横島が馬鹿をやり、千冬が嫌味を返す。

 

 このやり取りが続いた場合、最終的に自分が被害を受けることがある。

 真耶はそれを経験で知っていた。

 

 だが、身構えているとまたいじられる。

 

 だから黙って笑っていた。

 

「まあ、やはりお前は馬鹿だという結論が出たところでだな」

 

「いつ出たよ?!」

 

「地脈の話だがな」

 

「美神さんよりひでぇ……」

 

 反論を受けるどころか、千冬は涼しげに切り捨てる。

 

 横島は机に突っ伏した。

 

「ちくしょう。男としてここは一発ガツンと言わねばならん。言わねばならんが、千冬を怒らすと怖い。怖いんじゃぁぁぁっ! こうまで言われんなら、もういっそ、後の戦いは千冬に任せて、俺は家で寝てよう! 大体、千冬みたいな嫁のもらい手もない男女――」

 

「声に出てるぞ、忠夫っ!!」

 

「どげふっ?!」

 

 千冬の鉄拳が炸裂した。

 

 横島は吹き飛び、壁に叩きつけられ、窓向こうの無人機もかくやというほど手足があらぬ方向に曲がった。

 

 真耶は一瞬だけ心配そうに見た。

 

 だが、すぐに慣れた表情へ戻る。

 

 放っておけば治る。

 

 事実、ほどなくして横島はむくりと立ち上がった。

 

「痛てて……。お前に心配されんでも、私なら婿の一人や二人すぐに見つかる、とか言うんだろ」

 

「分かっているなら言うな」

 

「婿の一人や二人、すぐ見つかるんだな?」

 

「当然だ」

 

 千冬は胸を張る。

 

「あいつらとの戦いに目処が付けば、だがな」

 

「その頃にはもう嫁き遅れなんじゃねーのか」

 

「何か言ったか?」

 

「イエナンデモアリマセンスイマセンデシタ」

 

「横島さんも、よせばいいのに……」

 

 真耶は苦笑した。

 

 だが、ふと想像してしまう。

 

 千冬が嫁に行く。

 

 その時、一夏はどう反応するだろうか。

 

 きっと黙っていない。

 表向きは祝福しようとする。

 だが、内心では大きく揺れるだろう。

 

 それを千冬に言えば、横島と同じ扱いを受けるに違いない。

 

 真耶は思わず身震いした。

 

 冷房のせいだけではない。

 

「で、だ」

 

 千冬は話を戻す。

 

「観測データでは、今度の校外特別実習……臨海学校の付近にも、地脈が走っている可能性が高いのか?」

 

「ああ、まあな」

 

 横島は真面目な声に戻った。

 

「できるなら調査したい」

 

「教師としてならNGだがな」

 

 千冬は即座に釘を刺す。

 

「女生徒に手を出したら、鎖で封印したトランクごと海に沈めるぞ」

 

「夏のビーチで水着も拝めんのかいっ!!」

 

「そこではない」

 

「って違うわ」

 

 横島は肩をすくめた。

 

「また轡木さんに迷惑かけることになるのが嫌だと思っただけさ」

 

 ぴくり、と千冬の眉が動いた。

 

「二十一カ国会議か……」

 

 部屋の空気が、少し重くなる。

 

「すまんな、忠夫」

 

「俺に謝ることじゃないから、気にすんなって。つうか、何回目だ、この会話」

 

 横島は軽く肩をすくめた。

 

 口調はいつものものだったが、そこに含まれる諦めは軽くない。

 

 千冬は、それを知っている。

 

 この男が、どれほどこの世界で役に立ってきたか。

 

 DDへの対処技術。

 地脈の解析。

 精霊石の探索。

 IS用対悪魔装備の基礎理論。

 

 そのどれもが、横島なしには今の形になっていない。

 

 それでも、横島忠夫という人間は、この世界において扱いにくい。

 

 あまりにも扱いにくい。

 

「お前に行動の自由があれば、あいつら相手の戦いも有利に進められるに違いないのに……」

 

 千冬は吐き捨てるように言った。

 

「下らん。全くもって下らん」

 

「しょうがねえよ」

 

 横島は苦笑いした。

 

「力を持った身元不明の異世界人と、訓練を受けたISパイロットたちのどっちを信用するかって言ったら、俺でもISパイロット取るぞ」

 

「お前は身元不明ではない」

 

 千冬が即座に言った。

 

 横島は、片眉を上げる。

 

「いや、身元不明だろ。俺、この世界に生まれてないし」

 

「書類上は違う」

 

「書類上は、な」

 

 横島は椅子の背にもたれた。

 

「この世界の横島忠夫さん、すごいよな。どっかの地方都市出身で、通信制高校を出て、防衛系の研究機関で働いて、極秘部署にいたせいで経歴の大半は黒塗り。家族なし、親族なし、昔の知人なし。いやあ、なかなか寂しい人生を送ってきたらしいじゃないの」

 

「……必要な行政処理だ」

 

「それを世間では戸籍の偽装って言うんじゃねえの?」

 

「偽装ではない」

 

 千冬は平然と言い切った。

 

「行政処理だ」

 

「言い張ったよ、この人」

 

「横島さん、それ機密です……」

 

 真耶が慌てて口を挟む。

 

 横島は、悪びれずに手をひらひら振った。

 

「真耶ちゃん、今この部屋にいるの、機密を作った側と、機密を押しつけられた側と、機密に胃を痛めてる側しかいないだろ」

 

「私は胃を痛めてる側ですか……?」

 

「違うのか?」

 

「……否定しづらいです」

 

 真耶は小さく肩を落とした。

 

 横島は笑ったが、その笑いはすぐに薄れた。

 

「まあ、助かってるのは本当だけどな。戸籍も、住民票も、給料口座も、保険も、税金も。なんか知らんうちに全部そろってたし」

 

「知らんうちではない。轡木さんと理事会と、いくつかの関係部署が処理した」

 

「だから、その“いくつかの関係部署”ってのが怖いんだよ」

 

「必要だった」

 

 千冬の返答は短い。

 

 それ以上でも、それ以下でもなかった。

 

 必要だった。

 

 横島忠夫をこの世界で動かすためには、身分がいる。

 IS学園の教職員として雇用するには、履歴がいる。

 研究機関に出入りさせるには、認証がいる。

 給与を支払うには、口座がいる。

 国内外の会議で存在を示すには、説明可能な経歴がいる。

 

 存在しない人間を、存在することにしなければならなかった。

 

 だが、それは逆に言えば、この世界における横島忠夫が、書類の上でしか存在しないということでもある。

 

「一般人が見る分には問題ない。そういう風には作ってある」

 

 千冬は言った。

 

「だが、本気で調べる国家機関や、各国の代表候補生の実家筋から見れば、違和感は出るだろうな」

 

「人生の匂いがない、ってやつか」

 

「ああ」

 

 千冬は否定しなかった。

 

「記録はある。だが、薄い。過去の写真も、卒業記録も、職歴も、最低限だ。機密指定で隠している部分が多すぎる。疑おうと思えば、いくらでも疑える」

 

「しかも本人はこれだしな」

 

 横島は自分を親指で指した。

 

「ナンパする。セクハラする。屋上から落ちても生きてる。DD相手の兵器開発は天才的。そりゃ疑うなって方が無理だわ」

 

「自覚があるなら少しは改めろ」

 

「いやあ、そこは俺の魂の根幹に関わるから」

 

「なら根幹から叩き直すか」

 

「すんませんでした」

 

 横島は即座に頭を下げた。

 

 真耶は小さく笑い、すぐに表情を引き締める。

 

「でも……二十一カ国会議が警戒するのは、分からなくもありません」

 

「だろ?」

 

 横島は、意外にもあっさり頷いた。

 

「俺が逆の立場でもそうする。力を持った異世界人なんて、便利だけど怖すぎる。しかも俺がISを持ち出して、あいつらの側についたら、この世界で止められる奴なんかほとんどいない」

 

「そんなことをするはずがない」

 

 千冬の声は、少しだけ強かった。

 

 横島は、千冬を見る。

 

「千冬はそう思ってくれるんだろうけどさ」

 

「思っているのではない。知っている」

 

 横島が、わずかに黙った。

 

 真耶も、思わず千冬を見る。

 

 千冬はモニタを見たまま続けた。

 

「お前は馬鹿で、助平で、軽薄で、隙あらば女に手を出そうとするどうしようもない男だ」

 

「そこまで言う?」

 

「だが、あいつらの側には行かん」

 

 千冬は、ようやく横島を見た。

 

「それだけは分かる」

 

 横島は口を開きかけて、やめた。

 

 普段なら、ここで茶化す。

 「千冬さんが俺を信じてくれてる!」と大騒ぎする。

 抱きつこうとして殴られる。

 

 だが、今はしなかった。

 

 少しだけ目を逸らし、鼻の頭を指でかく。

 

「……そりゃ、どうも」

 

「礼を言われることではない」

 

「いや。そこは言わせろよ」

 

 横島は、小さく笑った。

 

「ありがとな」

 

 千冬は答えなかった。

 

 ただ、ほんのわずかに目を細める。

 

 真耶は、それを見て少しだけ笑った。

 

 この二人は、分かりにくい。

 

 分かりにくいが、長い時間を共にしてきたのだと分かる。

 

 千冬が横島を信用していること。

 横島が、それを軽く受け流せない程度には大事に思っていること。

 

 それだけは、真耶にも分かった。

 

 だが横島は、すぐにいつもの顔へ戻る。

 

「まあ、俺がこの世界で自由に動けないのは分かってる。戸籍も後付け、人生も後付け、嫁もなし。いやあ、泣けるねえ」

 

「最後は関係ない」

 

「関係あるわ! 戸籍があるなら結婚できるってことだろ? この世界で俺にも希望が――」

 

「まず相手を見つけろ」

 

「美神さんよりひでぇ……」

 

「当然だ。お前がよく言う美神さん、とは違う」

 

 千冬は涼しい顔で言った。

 

「私は、必要な時にしか搾取しない」

 

「自覚あるんかい!」

 

「忠夫」

 

「はい」

 

「話を戻すぞ」

 

「はい……」

 

 横島は大人しく座り直した。

 

 その様子を見て、真耶は少しだけ安心する。

 

 重い話をしていたはずなのに、いつもの調子に戻る。

 それは逃避ではない。

 

 この三人なりの、呼吸だった。

 

「この世界の魔族の連中は、俺の世界の魔族とは違うのが分かったからな」

 

 横島は椅子に腰を下ろし、モニタを見直した。

 

「ジークみたいな、話の通じる連中なんかいやしねえって」

 

 この世界に来た当初。

 

 横島は、彼なりに試みた。

 

 相手が魔族なら、話が通じる可能性もあるのではないか。

 知性があるなら、交渉できるのではないか。

 目的があるなら、落とし所があるのではないか。

 

 だが、希望はなかった。

 

 DDたちは、ただひたすらに動いていた。

 

 破壊衝動。

 本能。

 生存域の拡大。

 霊力を求める何か。

 

 言葉を話す高位体でさえ、こちらと同じ土台には立たなかった。

 

 その事実に、横島はひどく失望した。

 

 けれど、やがて気持ちを切り替えた。

 

 それができたのは、千冬や真耶、この世界で知り合った友人たちの存在があったからだ。

 

 守る相手ができた。

 

 文句を言いながらも、そこに留まる理由ができた。

 

「ああ、そう言えば。さっき話してた、理屈に合わないことなんだけど」

 

「あいつらに関する疑問か?」

 

「だな」

 

 横島は椅子に座り直した。

 

「高位体……俺の世界で言う魔族の連中が、こうも短期間にこの世に誕生するってのが、どうも引っかかる」

 

「地脈の力を考慮に入れてもか」

 

「ああ。地脈の力を考慮に入れたとしても、発生してる数と、高位体の持つ魔力が釣り合ってない気がする」

 

 横島はモニタの赤い光点を指す。

 

「下級の妖怪や、土地に憑く程度の怪異なら、まだ分かる。濃い陰の気が溜まって、形を持つ。地脈が乱れて、霊的な穴が開く。そういうのは俺の世界でもある」

 

「だが、高位体は違う」

 

「違う。あれは、ただ自然に生まれましたって顔をしてるが、中身が重すぎる」

 

 横島の声には、確かな警戒があった。

 

「それにだよ。前からずっと疑問に思ってたんだけど」

 

「前からずっと?」

 

 真耶が首をかしげる。

 

 横島は、苦々しい面持ちで奥歯を噛むように言葉を押し出した。

 

「何かしらの原因で魔族がこの世界に生まれてくるとして……」

 

 部屋の空気が止まる。

 

 横島は、千冬と真耶を見た。

 

「なんで、その対になるはずの神族が生まれてこないんだ?」

 

 沈黙。

 

 空調の音だけが聞こえた。

 

 千冬はモニタを見る。

 赤い光点。

 DD出現ポイント。

 地脈。

 消耗するシールド。

 壊れた無人機。

 

 真耶は、言葉を探すように唇を動かした。

 

 だが、すぐには何も言えない。

 

 神族。

 

 この世界には、本来なかった概念。

 

 魔族に相当するDDが生まれつつあるのなら、その対になる存在はどこにいるのか。

 

 なぜ、悪魔だけが来るのか。

 

 なぜ、光は現れないのか。

 

 千冬は、ようやく口を開いた。

 

「……生まれていないのか」

 

「少なくとも、俺は見てない」

 

「見落としている可能性は?」

 

「ある。だから断言はしない。けど、DDや魔族にあれだけの反応があるなら、神族側の何かが生まれた時、俺が気づかないとは思いづらい」

 

「では」

 

 千冬の目が鋭くなる。

 

「可能性は二つか。そもそも対になるものが、この世界では生まれない。あるいは――」

 

「もう、どこかにいる」

 

 横島が続けた。

 

 真耶が息を飲む。

 

 千冬は、しばらく黙った。

 

 そして、ゆっくりと椅子にもたれる。

 

「厄介だな」

 

「ああ」

 

「本当に、厄介な世界になった」

 

「今さらだろ」

 

「そうだな」

 

 千冬は小さく笑った。

 

 疲れた笑みだった。

 

 だが、その目は折れていない。

 

「なら、探すしかない」

 

「神族を?」

 

「違う」

 

 千冬は横島を見た。

 

「答えを、だ」

 

 横島は、少しだけ目を丸くする。

 

 そして、笑った。

 

「そういうところ、やっぱ千冬だわ」

 

「褒めているのか?」

 

「褒めてる」

 

「そうか」

 

 千冬はほんのわずかに口元を緩めた。

 

「なら受け取っておく」

 

 真耶は、そのやり取りを黙って見ていた。

 

 ほんの少しだけ、胸が温かくなる。

 

 世界は重い。

 状況は悪い。

 分からないことだらけで、時間も足りない。

 

 それでも、この三人で話していると、前へ進める気がする。

 

 その感覚が、真耶には少しだけ嬉しかった。

 

 

 

     ◇

 

 

 

 千冬さんのデレを書きたいので続け。

 

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