ブルーアーカイブ二次創作短編集(健全版) 作:ダルメシアン0426
今日は朝から目が回る程に忙しかった。
昨日の内に片づけられる仕事は全て片づけたのに……!
どうして今日に限って……こんなことに……。なあにこの書類の山……。幻覚かな?
いや、現実逃避はやめよう。
なぜか、次から次へと起こる問題。
とある高級レストランの爆破事件に始まり、温泉開発部による道路破壊、そういった事態を制圧する為にゲヘナ風紀委員会が半数以上動員でてんやわんや。トリニティではヘルメット団が暴れ、正義実現委員会が制圧に向かったっけ。ああ、後、何故か矯正局に収容されている生徒たちの脱走劇もあったなぁ。
どれもこれも大事には至らなかったけど、よくもまぁ、こんな短時間でこうも問題が起きるものだ……。数日分の事件が一斉に起きたと言っても過言じゃない。そう思い返しながらも手を休めることなく積み上がった書類を処理していく。
はぁ……。一度休憩するか。
冷めきったコーヒーを口に含み伸びをする。
窓から見える風景が茜色に染まっているのが見える。
時計を確認すると、もう夕方だった。いや、もう少ししたら日が落ちて夜になる、そんな時間だった。
「ああ……やばいなぁ……」
うん、やばい。本当にやばい。スマホに表示されているモモトークの画面を見ながら頭を抱える。そこには昨日送ったトーク履歴が映っていた。
『明日の夕方……いや、夜に会えないかな?』
『明日ですか?』
『うん。あ、いや無理なら……』
『い、いえ! 私も先生と会いたいです……』
『じゃあ、明日の夜に』
『はい。お待ちしておりますね』
『今日も平和と安寧が皆さんと共にありますように……』
…………。
デスクの中に閉まってある丁寧に包装された細長い箱──プレゼントを取り出し書類の前に置いてみる。書類とそれを交互に見る。ついでに時計も見る。
……つれぇわ。
諦めるか? いや、仕事を放り出すとか先生としてあるまじき行為だ。でも、約束を破るのも人として最低な行為だ。
じゃあ、頑張るしかないだろ! 生徒を悲しませる訳にはいかない。
まだ時間はある! 後1……いや、2時間で仕上げてみせる! 頑張れ! 出来る出来る! 先生としての意地を見せるんだ!
うぉおおおお! やるぞー!!
段々と暗くなる景色を尻目に今まで以上に手を動かしていく。
一心不乱に頑張ったおかげでなんとか処理し終わった。
時間は……? 約束した時間までのタイムリミットぎりぎりかぁ……。
『ごめんね、少し遅れる』
そう打ち込んでプレゼントを持ち、走る。
神聖で荘厳な建物──トリニティ大聖堂を目指して。
息も絶え絶えになりながらトリニティの校門前まで辿り着いた。膝に手を付き息を整え、時間を確認する。……約束の時間から大分遅れてしまっている。
流石に遅れすぎだろう……。モモトークを確認すると。
『はい、わかりました。先生のことを祈りながら大聖堂でお待ちしていますね』
うっ、罪悪感が……。あの子のことだから多分、いや絶対無事を祈って待ってるんだろうなぁ……。
そんなことを考えつつ足を速める。そして、ようやく大聖堂が目の前に。深呼吸を一つ。
ゆっくりと扉を開ける。
そこには────月明かりがステンドグラスが漏れ出て幻想的な光景の中で祈っているシスター────マリーが居た。
神秘的で声を掛けるのを躊躇ってしまう程の何者にも犯しがたい雰囲気だった。
つい、見惚れてしまう。でももっと近くで見たくて歩き出す。
月明かりに照らされた横顔が言い表すことが出来ない程綺麗だった。一言で言うのなら女神、これしかないだろう。
足音が聞こえたのだろう。祈りを中断し伏せていた瞳を上げ、私を見つめ、すっ、と立ち上がり私の手を取るマリー。
「先生」
いつもと同じようだけど、どこか安堵したような声音。
「ごめんね、遅くなっちゃって」
「い、いえ、先生になにかあったんじゃないかと……。でも無事で良かったです」
「……ごめんね」
何をやってるんだ、私は……。生徒に──マリーに心配をかけるだなんて。
「あ、あのそれで今日はどのような……?」
期待、でもどこかしら不安が混ざったような声と目。
もしかしたら……「先生は何か懺悔したいことがあったから来たのでは?」とそう思っているのかもしれない。
そんなことないのに。ああ、でもそんな風に思わせてしまったのは私の責任か。
「マリー」
「せ、先生⁉」
安心させるように抱きしめる。
不安にさせてごめん。
「……い、いえ、先生がご無事なら私は……」
「ううん、全面的に私が悪いから。だから、ごめん」
やばい。こうして抱いてるとマリーから良い匂いと女の子特有の柔らかさにささやかな胸の膨らみが当たって……!
さりげなく肩に手を当て身体を離す。
「先生?」
私の行動に疑問を持ったのか首を傾げ上目遣いで私を見つめるマリー。
私は平常心を心掛けながら話しかける。
「マリー、誕生日おめでとう」
「ぁ……覚えててくれたのですね……ありがとうございます」
頬を染めて嬉しそうに微笑むマリー。
「当たり前だよ。だって可愛い生徒だからね」
「ふふっ、ありがとうございます」
ここだ。このタイミングしかない!
「マリー」
「はい?」
「これを」
そう言ってプレゼントを渡す。
「あ、あの、これって⁉」
ふふふ、びっくりしてる。
「マリーへの誕生日プレゼントだよ」
「誕生日プレゼント、ですか……? 私への?」
「うん」
「わぁ……ありがとうございます……!」
包装を丁寧に剥がしていく。包装を剥がし終え、箱を開けたマリーが感嘆の声を上げる。
「綺麗」
ほっ……喜んでもらえたようで良かった。
「あ、あの、私がこんな綺麗なペンダント貰ってもいいんでしょうか……?」
そんなこと。
「もちろん。マリーへのプレゼントだからね。むしろ貰ってくれないと先生困っちゃうな」
とおどけるように言う。
「あ、ありがとうございます! ずっと大事にします」
胸に抱いて、蕩けるような笑顔なマリー。
「はは、そんなに喜んでもらえると嬉しいな。あ、着けてあげようか?」
「えっ⁉」
……おっとぉ? この反応は調子に乗りすぎたか?
「あ、いや、これはその、ごめ「い、いえ! あ、そ、その、お願い、出来ますか?」」
被せるようにそう言うマリー。
「じゃあ、ちょっと失礼」
ペンダントを持つ手が首に触れてしまう。
「ひゃっ⁉」
「⁉ ご、ごめん!」
「い、いえ、そのちょっとびっくりしただけですので……///」
顔を赤くしわたわたと手を振るマリー。
「そ、そっか……。じゃあ、もう一回やるね?」
「は、はい」
「…………」
ふぅ……。あ、また手が触れちゃった。
「んっ……」
なんか色っぽい声が聞こえたけど、集中集中……。
「よしっ! 着け終わったよ、マリー」
「先生、ありがとうございます」
「うん、よく似合ってるよ」
「そうですか? ふふっ、ありがとうございます」
「あのさ、マリーはさ、これからまだ時間ある? いや、私がマリーともう少し一緒に居たいだけなんだけどね」
「はい、大丈夫ですよ」
「でも、私のお誕生日を祝ってこうして先生と一緒にいられるだなんて……幸せ過ぎてなんだか、あとで罰が下ってしまわないか心配です」
「それはないから大丈夫だよ」
それから私たちは今日あったこと等を日付が変わるまで話しをしていたのだった。
2023年9月13日
マリー誕生日おめでとう!(遅い)
2026/10/12追記:ちゃんとお祝いしようとしてたけど、やっぱり1日遅れてるよ、こいつ⋯⋯。