ブルーアーカイブ二次創作短編集(健全版) 作:ダルメシアン0426
深夜から立て込んでいた仕事をしていた。
それがようやく終わった。
疲れた……。
ふぅ~、と溜息を一つ吐く。
固まった身体を凝りほぐすかのように伸びをする。
ゴキッゴキッ……と骨が鳴る音がする。
眠気はほとんどない。ふと時計を確認するともうお昼近かった。
ぐぅ~……とふいにお腹の音が鳴り響く。
そういえば、昨日からほとんど何も食べていなかったことに気付く。
飲みかけのコーヒーを流し込み立ち上がる。
外はとても良く晴れていて気持ちよさそうな気候だった。
「何か食べに行くか……」
ぽつりと言葉が溢れる。
何処に行こうか?
考えつつ上着を手に取り外へと出る。
眩しい……。
照りつける太陽が徹夜明けの目に染みる。
ミーンミンミンミンミンミー……。
蝉の合唱。
夏だなぁ……。
そういえばこの前、子ウサギ公園の近くに美味しそうなお店があったな。
そこにしよう、そうしよう。
ついでと言ってはなんだが、あの子たちにも差し入れを持っていってあげよう。
そうと決まれば早く行かないとね。
───────────。
しばらく歩いてようやく辿り着き、時間を確認する。
13時を少し回った程度だった。
「さて……何処だったかな?」
辺りを見回してみると行列が出来ていた店を見つけることが出来た。
しかしながら、お腹が空き過ぎてもう限界……。
その時、甘いお香りが漂ってくる。
それもすぐ近くから。
「っ!?」
慌てて振り向くと……。
果たしてそこに居たのは……大きな耳が特徴なピンク色の少女だった。
「先生。こんにちは」
「もしかしなくてもお腹空いてますか?」
「それなら私お手製のおいなりさんがあるんですけど……お一ついかがですか?」
そう言って、おいなりさんを目の前に差し出すかのようにして微笑むニコ。
「……ニコ」
ニコ。
不思議な女の子だ。
大きな耳、ボブカットで綺麗なピンクの髪をした穏やかな雰囲気の少女だ。
「……あれ? そういえば今日は制服じゃないんだね?」
「あはは。私、今日はお休みなので」
「どうですか? 似合いますか?」
年頃の少女のように笑い見せつけるかのようにくるっと一回転をして感想を求めてくるニコ。
「……うん、似合ってるよ。とても」
一瞬、見惚れてしまった。
白の無地のラウンドネックの半袖のTシャツ、ベルト付きの黒いラインスカートを合わせたカジュアルな恰好がとてもよく似合っていた。
それにしても、意外だったな……。
てっきり……
「てっきり、ズボンを履いていると思った、ですか?」
「っ!? ど、どうして……?」
どうしてわかったのだろうか。
疑問に思っていると。
「ふふ、先生。顔に出ていますよ」
「え? 嘘でしょ!?」
「さて、どうでしょう?」
唇に手を当て首をかしげてからかうように微笑むニコ。
……敵わないな。
そう思わせられる。
舌戦では勝てそうにない。
勝てる未来が見えない。
何を言ってもひらりふわりとかわされる。
からかわれて終わる。
そんな予感がする。
──だから。
話題を強引に変える!
「ニコ。おいなりさん一つくださいな」
きょとんとした後に意図を察したのか。
仕方ないなぁと言いたげに私を見て、優しく微笑む。
「ふふっ、はい。どうぞ♪」
再び差し出されるおいなりさん。
甘い香りが風に乗って鼻を擽り腹の虫を刺激する。
ぐぅ~……。
音が鳴りつい腹を抑えて愛想笑いを浮かべてしまう。
「おやおや。そんなにお腹が減っているんですか?」
ニマニマと口元を緩めて覗き込んでくる。
ああ、まぁね。──そう言葉にしようとした瞬間。
おいなりさんが口に突っ込まれる。
「にほっ!?」
いたずらが成功した子供みたいに笑うニコ。
口に広がるおいなりさんの味。
甘くて美味しい……。
ニコに文句を言おうとしたけどそんなことはどうでもよくなるくらいに美味しくて。
「美味しいでしょう? 今日も上手に出来たんです」
こくっ、と首を縦に振る。
あの時以来だけど……本当に美味しいな……。
無言で食べる。
いくらでも食べられそうだったが……ふと気付いたら無くなってた。
「あれ? もう無い……」
呆然として呟く。
「そんなに慌てて食べるからほっぺにお弁当ついていますよ」
呆れを含んだ声音。
それでも何処か母性を感じられるような響きを持っていて。
すっ……と私の頬に手が触れる。
そして、くすくす笑いながらそれを口に運ぶニコ。
「うん、美味しいですね」
きゅ、急に恥ずかしくなってきた……!
赤くなっているだろう顔を見られないように背ける。
……ごほん。
咳払いを一つ。
「と、ところでニコはこれからどこか行くの?」
あからさまに話題を変えたことに気付いているだろうにそれについて言及しない。
私にとってはありがたいけど……。
「ウインドウショッピングでもしようかと思いまして
」
「そうなんだ」
「えぇ。あ、そうです。先生、ここで会ったのも何かの縁ですから──」
「お付き合いいただけませんか?」
驚きに言葉が一瞬詰まる。
「……もちろん、いいよ。生徒の頼みだからね」
「ふふっ、先生、ありがとうございます」
「では、行きましょうか」
そう言って私の手を取り、軽やかに歩き出すニコ。
私は躓きそうになりながらも彼女の隣に並んで歩く。
歩幅を調整しながら──。
「それで最初は何処に行くの?」
「うーん、洋服を見に行こうかな、と」
「洋服?」
今一度、ニコの姿を横目で盗み見る。
白の無地のラウンドネックの半袖のTシャツ、ベルト付きの黒いラインスカートを合わせたカジュアルな動きやすそうだけど女の子らしい格好だ。
それに小さい肩提げバッグ。
「そうですね。この格好も悪くはないんですけどね」
「最近、また暑くなってきたのでもう少し涼しい服が欲しいですし」
ちらっとスカートをたくし上げるニコ。
……確かに少し暑そうだ。
──そんな話をしてる内に洋服屋に着いた。
「いらっしゃいませー」
声と共に店員が来る。
その店員が何故か私たちを微笑ましく眺めてくる。
「……?」
視線を辿ると手を見てた。
……手? あっ!?
ニコと手を繋ぎっぱなしだった……!
は、恥ずかしいな……離したいけど……私から離すのは……。
葛藤。
ニコはなんとも思っていないのだろうか?
横目で見た彼女は澄ました顔をしていたが……微かに頬が赤くなっていた。
「あの……ニコ?」
「……なんでしょうか?」
「その……離そうか?」
「……離したいんですか?」
少し拗ねたような言い方。
そんな言い方されたら答えは一つしかないでしょ。
「ううん、離したくないかな」
「……そ、そう、ですか……ふふっ」
はにかむニコ。
ぎゅっと握り合う。
そのまま2人して握りあった手を緩めたり指を摩ったりしていた──。
それに耐えきれなかったのか。
「あの〜?」
と、店員が声を掛けてくる。
2人してばっ、と振り向く。
「な、何かあったら呼んでくださいね〜……」
フェードアウトしていく店員。
……なんか悪いことしちゃったなぁ。
「なんだか悪いことをしてしまいましたね」
「うん、そうだね」
「では、先生。ここからは目を閉じていてくださいね?」
「どうして?」
「ふふっ、私の選んだ服の感想が欲しいからですよ」
「服の感想?」
それなら今でも……。
そう言い掛けた口を人さし指で優しく塞がれる。
「私のファッションショー。見たくないですか?」
ぐっと、顔を近付けて耳元で囁くニコ。
「……見たいです」
欲に負けてつい本音を溢してしまう。
くすっ、と笑う。
「それでは目を閉じてください。私が良いと言うまで、ね?」
目を閉じる。
ニコの息遣い、女の子特有の甘い匂い。
視界が闇に閉ざされているからそれが余計に鮮明に。
いけないいけない……ニコは生徒。
邪な感情を抱いてはいけない。
別のことを考えよう。
仕事……減らない書類……過ぎ去る時間……消え行く睡眠時間……。
うん、止めよう。これ以上は……。
そんなことを考えていたら、耳を澄まさなくても聞こえてきてたカチャカチャと金属が擦れる音がいつの間にか止んでいた。
「先生。もう目を開けてもいいですよ」
目を開ける。
「それでは、試着をしていくので感想、よろしくお願いしますね?」
ウインクをして試着室へと消えていくニコ。
離れた手に何故か少し違和感を覚える。
こんなに長い時間、誰かと手を握りあったことなんて何時ぶりくらいだっただろうか?
思い出せない程遠い記憶だな……思わず苦笑してしまう。
さて、彼女の選んだ服の感想を考えておかないと。
そして始まったファッションショー。
もちろん女優はニコで観客は私だけだ。
「まずはこれです。どうですか?」
──シンプルな白のワンピース。
「うん、いいね!」
夏! という感じで良かった。
私の感想を聞いて首を傾げつつまた試着室へと戻っていく。
「では、これは?」
──透かし編みハーフスリーブカーディガン(黄色)、白のブラウス、紺のプリーツスカート。
「おぉー! 女の子らしさがぐんと上がったよ!」
少し不満気な表情でまた試着室へと戻っていく。
……何かしたかな。
「……これはどうですか!?」
──白のゴスロリ。
「お姫様みたいだね!」
元より赤い顔を更に赤くして試着室へと戻っていく。
……あれ? 言葉の選択間違えたかな……。
「…………」
──無地のシャツに短パン。
「うん、いいんじゃないかな」
短パンが短過ぎるのが気になるけど。
「はぁ……」
深い溜息を吐いて元の格好で出てくるニコ。
なんか疲れてる?
「お疲れ様」
「先生……。はぁ……」
「えーっと……何も買わないの?」
「……えぇ。元よりそのつもりでしたし」
「そっか」
入店した際のテンションの差に困惑しながら店を出る。
「ありがとうございました〜!」
店員さんの声を背中で聞きながら。
き、気まずい雰囲気が……。
やっぱりさっきのかなぁ……。
もう少しなんかこう……言ってあげた方が良かったのだろうか。
でも、本音だったし……。
考えこんでいた私の手が急にぎゅっと、握られる。
「ニコ?」
「なんですか?」
不思議そうに言うニコ。
手を繋ぐことが当然と言わんばかりで。
つい頬が緩む。
「ううん、なんでもないよ」
次は何処に行こうか──。
そう問いかけようとした瞬間。
誰かが走ってくるような足音が複数聞こえてくる。
それが徐々に近付いてきて。
音の持ち主が、マスクをした三人の少女たちが私とニコの前に立ち塞がる。
「シャーレの先生だな?」
ジャキッ! と銃口が向けられる。
冷や汗がしたたり落ちる。
内心、恐怖に震えていた。
それでも、態度に出すわけにはいかない。
「そうだけど……君たちは? 何を望むの?」
問いかける。
「シャーレの先生を人質にして連邦生徒会に金銭を要求する!」
その言葉と共に、
ダダダダダッ!
空に向けて発砲する少女たち。
「っ!?」
トントン……っと握りあった手を指で叩かれ小声で、囁くように。
(先生、彼女たちの隙を一瞬でいいから作ってください。そうしたら私が制圧します)
(了解。でも制圧って?)
(フラッシュバンを使って体術とハンドガンで)
(なるほど。じゃあ、今から作戦開始だね)
(えぇ、お願いしますね)
視線を逸らさず話し合う。
さて、ここが腕の見せ所かな。
一歩前へ。
手を上げてまた一歩前へ。
にやにやと嗤ってる少女たちへと近付く。
そして──スっと膝を折り流れるように地面に手をつき、頭を擦り付ける!
「「「ど、土下座ぁ!?」」」
驚いたような声。
そうだろうな、と何処か他人事のようだった。
なるほど、土下座ですか。
「「「ど、土下座ぁ!?」」」
驚いたような声と顔が見えますね。
確かに大人がいきなり土下座をするのは驚くでしょうね。
意表を突く方法としては最適解とは言い難いですが、良い方法ですね。
さて、先生が作ってくれた機会を逃さないようにしましょうか。
ピンを抜き地面に滑らせるように投げそれと同時に目を瞑ってしゃがみ込みます。
すぐに動けるように。
瞬間。
暗闇に包まれていた視界が明るくなりました。
作動しましたか。
ぐっと身体を前に出し距離を詰めつつスカートの中に隠してあったハンドガンを取り出す。
先ずは……先生の真正面の敵からですね!
引き金を三度引く。狙うは頭。所謂、ヘッドショット。
発砲音が響き渡る。
衝撃で宙に浮き、後ろ側に倒れこむ。
相手側に動きが見られますね。
……流石に気付かれましたか。
相手がサブマシンガンを乱射しようとしてますが……そうはさせません。
右肩に一発、左肩にも一発、最後にヘッドショット。
崩れ落ち膝を突く寸前に更に回し蹴りで吹き飛ばす!
もう一人は──!
困惑してるみたいですね。
音も無く近付き、銃床で顎を跳ね上げる。
地面から離れ宙に浮いた相手の片腕を掴み、 同時に握った袖を引く。その勢いのまま地面に叩き付ける!
地に肉が勢いよく叩きつけられる音が響く。
辺りを見回し安全確保をする。
終わったみたいですね……。
「ふぅ……。先生、もういいですよ」
そう言葉を掛けると先生は私を見上げる。
「もう終わったんだ……」
何処か呆然としたように呟く先生。
「えぇ。戦闘の素人だったのが幸いでしたね」
先生のおでこをハンカチで拭く。
「あ、ありがとう。それ洗って返すよ」
「いえいえ、大丈夫ですよ。では、行きましょうか」
再び、手を握りあい歩き出す。
先程よりも強くしっかりと繋いで──。
薄暗い路地裏にある建物。
ニコは鍵を差し入れ扉を開ける。
「私の拠点の一つへようこそ」
微笑み私を招き入れる。
「お邪魔します」
殺風景な部屋だった。
見渡す限り、生活に必要最低限の物以外は無かった。
「そこに座っててください。今、お茶でも出しますから」
椅子に座って大人しく待つ。
「ペットボトルのお茶ですがどうぞ」
手渡されたのは冷えたお茶だった。
蓋を開け流し込む。
渇いた喉に沁み渡る。
「先程は災難でしたね」
「そうだね……」
なんだか疲れたな……。
ふぅ……と思わず溜息を吐いてしまう。
「ここは安全ですからここで少し休みましょう?」
私の様子を察したのかそう提案してくるニコ。
「そう、だね……少し休ませてもらおうかな」
テーブルに突っ伏して目を閉じる。
幾許もしない内に眠気が……。
おや、眠ってしまいましたか。
何か掛ける物を……。ああ、これで良いでしょうか。
私が寝る時に使っている薄い掛け布団を掛けます。
目にかかっていた髪を梳いて退かす。
ふふっ、先生の寝顔。子供みたいで可愛いですね。
……さて、私はおいなりさんを作りましょうか。
先生が目覚めたらきっとお腹が減っていることでしょうから──。
陽が差し込み私の顔を照らしていた。
熱くて目を開ける。
寝てたか……。
ここは……?
あ、ニコの部屋か。
そういえば、ニコは……?
「ニコ? どこに居るの?」
「はい、ここに居ますよ」
その言葉と共にテーブルに、こと、っとお皿が置かれる。
「おいなりさん?」
「えぇ。小腹が空いてるのでは? と思いまして」
「そっか。ありがとうね。じゃあいただこうかな」
「はい、どうぞ♪」
「うん、やっぱりニコの作るおいなりさんは美味しいね」
「ふふっ、ありがとうございます」
「これだけは誰にも負ける気がしませんので」
誇らしげに語るニコ
その言葉に偽りはないだろうことは私が知っている。
私が知る限りでは、ニコの作るおいなりさんが一番美味しい。
あ、(そうだ。伝え忘れていた言葉があった。
「今まで食べた中で一番美味しいよ」
そう伝えるとニコは少し照れ臭そうに微笑んでいた。
────────────────────────。
穏やかな時間が流れていた。
ふと時間を確認すると18時を少し回ったくらいだった。
「あ……そろそろあの子たちに差し入れを持っていかないと……」
独り言のつもりで呟いた。
だけど、ニコがそれに返事を返してくれる。
「差し入れですか?」
「そうだね。子うさぎ公園に居る生徒たちに、ね」
「いらない、って言われてるんだけど……どうしてもほってとけなくてね」
「なるほど。では、このおいなりさんを持っていってください」
差し出されたのは大きめのタッパに入ったおいなりさんだ。
「……いいの?」
「えぇ」
「ありがとう、ニコ」
「それじゃあ、私はこのおいなりさん届けてくるよ」
部屋から出て行こうとする私の裾をぎゅっと握って制止するニコ。
「えっと……?」
「私も近くまで一緒に行きますよ。さっきみたいな事があっても困るでしょう?」
軽い感じの言い方だけど不安に揺れている瞳。
心配掛けちゃったなぁ……。
「うん、それじゃあお願いしようかな」
「はい、お任せください」
「じゃあ、一緒に行こうか」
「あ、ちょっと待ってください」
タッパを風呂敷に包み、お待たせしました、と言う代わりに私の手を取るニコ。
私はその手をぎゅっと繋いで指を絡める。
離さないように──。
しっかり施錠をして部屋から出る。
無言のまま子うさぎ公園ヘと向かう。
入口付近でお互いにどちらからともなく手を離す。
「……じゃあ、行ってくるね」
「行ってらっしゃい」
ニコと別れて公園の中央まで慎重に歩いていく。
「また来たんですか」
呆れを含んだ声。
困った人を見るかのような顔をした、銀色の髪を靡かせ、夕陽に反射しきらきらと黄金色に輝く少女がそこに居た。
「やぁ、ミヤコ」
「こんにちは、先生」
「他の三人は?」
サキとミユ、それにモエの姿が見えない。
「サキは銃の整備をしていて、ミユは小石集めです」
「モエはあちこちへ電話を掛けて何やら交渉してるみたいです」
「そっか」
相変わらずだなぁ。
そんなありきたりな感想しか出てこない。
「それで先生は一体どういった要件ですか?」
嘆息し尋ねるミヤコ。
「あ、今日はこれを」
風呂敷に包まれてる物を差し出す。
「これ、なんですか?」
「おいなりさんだよ」
「おいなりさんですか?」
「以前もおいなりさん持ってきてくれましたよね」
「おいなりさんを作るの得意な先輩が居たなぁ……。元気にしてるかな……」
素直に受け取るミヤコ。
中身を聞いて懐かしむかのように呟いていた。
「……んん、とりあえず、これはありがたく貰っておきますね」
「うん。あ、そうだ、ぴょんこは?」
「お昼寝中です。見ていきますか?」
「ううん。それならいいや。じゃあ、また来るからね」
「はい、先生、ありがとうございました」
ぺこり、と頭を下げるミヤコ。
それを見て私は手を振って来た道を戻っていく。
公園の入口に着くと柵に寄り掛かっていたニコが待っていた。
「おかえりなさい」
「ただいま」
どちらからともなく笑い合う。
手を取り合い再び歩き出す。
「何処へ行こうか?」
今日一日で何度言ったかわからない言葉を口にする。
「そうですね……少し歩きませんか?」
それ以降、言葉を交わすこと無く、人気の無い木々が生い茂っている小道に入っていく。
あれだけ煩かったミーンミンミンミンミンミー……という蝉の鳴き声が今は……。
その代わりと言ってはなんだけど、カナカナカナ……とひぐらしが鳴いている。
場所の雰囲気と相まって少し不安になる。
彼女も何も喋らない。
ふいに手を離される。
!?
驚いて手を掴もうとするもするりと躱され一歩分距離を取られる。
「ニコ……?」
夕陽に照らされた彼女の顔。切なさな表情を浮かべていて寂しそうで何処か泣きそうな……。
カナカナカナ……。ひぐらしが鳴く。不安を助長するかのように。
「先生、今日は……」
彼女は言葉に詰まりそれ以上声にしない。
「……まだだよ。まだ……時間はあるでしょう?」
彼女は口を引き結び首を横に振る。
「先生、今日はお付き合いいただきありがとうございました」
でも、明日からはまた──。
言葉を濁す。
何処か泣きそうな顔をして背を向け走り去る。
その姿が見え無くなる寸前に、くるりとこちらを向きペコリとお辞儀をする。
そしてそれ以降一度も振り返ること無かった。
私はニコの姿が見えなくなるまでその場で呆然と立ち尽くしていた。
ニコ……。
寂寥感。
やるせない気持ち。
私は彼女に何かしてあげられたのだろうか?
そんな考えがぐるぐると頭の中を駆け巡る。
いや……これが今生の別れというわけじゃない。
また会える。
そして──。
いつかまた手を取り合う日まで──。
その未来を信じて今は──。
2022年7月16日
「第一回ブルアカ概念祭』用の作品です。
ニコの可愛いさが少しでも伝わってくれればそれだけで――。
とあるニコ推しの方に捧ぐ―――。
※aube さん(https://www.pixiv.net/users/83633545)との合作です。
aube さんの作品『soir(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17963651)』
は自分が書いた文に加筆修正してもらったものとなっております。
ラスト前までの文章をお渡して、中盤の下りは少し加筆していただきラストも全文書いていただきました。なので、中盤は少し展開が違っております。ラストの展開も全く違ったものとなっております。
まぁ、監修していませんが。当方、無監修でございます。
是非とも、aubeさんの作品『soir (https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17963651) もどうぞ。
2026/10/12追記:懐かしい。ただただ、懐かしい。ごめんなさい。結局逃げて迷惑掛けてしまった。出来れば会いたくはない。何を言えばわからないから。怒るだろうか?怒るだろうな。当然、そうする権利はあるし。⋯⋯どうか見つけないで。見つからないことを祈る。⋯⋯地の文書き直したいなぁ。