ブルーアーカイブ二次創作短編集(健全版) 作:ダルメシアン0426
──!
音が聞こえる。まるで誰かを呼ぶような。それは音というよりは声みたいだ。
……──い!
ああ、また聞こえてくる。先程より声に近い音が。
せ──せい!
それは明確な響きを持っていた。誰かを必死に呼ぶ声。その声は焦燥感に塗れていた。だが、その呼び掛けに対する反応は何処からも無くて。
声の主はそれでも、呼び掛け続ける。
それしか言葉を知らないように……。
──せんせい!
言葉と共に悲哀に満ちた雫が『せんせい』と呼ばれている者の顔に落ちる。
それに反応したかのように重たい瞼を開く。
眼を開けると果たしてそこに居たのは──涙を流し祈るように手を組んだオレンジ色の髪をし、耳付きのシスター ベールを身に着け、黒と白のシスター服を着た『普段』は慈愛に満ちた少女──マリーだ。
生憎、今は悲哀に暮れているが……それでも優し気な雰囲気は損なわれていなかった。
「せんせい! ぐすっ、せんせい、良かった……本当に良かったです……」
涙声。
良かった、と繰り返し繰り返し呟く。
「えっと……私は確か……」
先生は目の前で泣いているマリーに慌てながらも記憶を探る。
何故──ベッドで寝ているのかを。
ああ、そうだ……私は確か……節電の為に空調を切り窓を全開にして仕事をしていたんだ。そこから先の記憶が無いことを先生は思い出した。
「そっか、私は倒れたのか……」
呆然としたように呟く。
「ごめんね、マリー。心配掛けちゃったね。」
後悔に塗れた心情を一切おくびに出さず。
泣いているマリーの涙を拭い、頭を優しく……優しく撫でる。
抱き着くマリー。そっと身体を離し意図せず上目遣いになる。口にするは安堵の言葉。
「先生……。本当に、本当に心配したんですよ!」
今回ばかりは看過出来ないのか、説教をするマリー。
だが、その顔は笑顔だ。それなのに眼が笑っていなくて……。それがただただひたすらに怖かった。
先生は平謝りする他に無かった。
倒れた原因は熱中症だ。この灼熱地獄のような世界に空調設備無しで挑む等、自殺行為だ。それを理解[[rb:理解 > わか]]っていたつもりだった。何処かに慢心があったのだ。自分は大丈夫だと。
その結果がこれでは笑い話にもならないが。いや、生きているのだから笑い話にはなるか。まぁ、笑い話というよりかは慢心が生んだ喜劇、とでも言うべきか。
「で、ですから……その、やっぱり心配なので明日からは毎日ここに来てもいいですか……?」
上目遣いで心配そうな潤んだ瞳でお願いするマリー。その健気さ、可愛さに先生は挙動不審になりつつも、うん、と頷いたのだった。
2023年2月21日
前のTwitterのアカウントで投稿したものを改稿したものになります。
2026/10/12追記:投稿日あってる?w 何で冬に投稿してたんだろう⋯⋯謎だ⋯⋯。