迦具土・炎次郎   作:KAGUTSUCHI

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これは迦具土・炎次郎が武蔵坂学園に入学するまでに起こった出来事の記録である。



炎次郎の過去

「おとん…おかん…姉貴…」

 

ここは京都のある山間部。少年は無残にも焼死体になってしまった家族を揺さぶる。その目の前には雄叫びをあげる虎のような魔物がいた。その魔物の名は『イフリート』。破壊欲と殺戮欲にまみれた凶悪な幻獣である。

 

「てめえがやったんか…許さん!てめえだけは許さねえ!」

 

この少年、『迦具土・炎次郎』は火の神である『迦具土神』をこの身に降ろし、魔物や化け物から人々を守護する家系に生まれた。両親は神降ろしができ、姉も『神薙使い』と呼ばれる潜在能力(ポテンシャル)を持っていた。しかし、炎次郎にはどういうわけかその力が目覚めず、神降ろしは今でもできない。それでも家族は炎次郎を暖かく迎えてくれた。炎次郎は家族皆ができる神降ろしができないことがコンプレックスであったが、優しい家族が好きだったのである。

 

「ナカマ…ナカマ…。」

 

突然、イフリートがまるで人間のような言葉を話す。いや、本来イフリートは人間と意思疎通を行なうことはほとんど出来ないので鳴き声の空耳なのかもしれない。しかし、炎次郎の耳には確かにそう聞こえたのだ。

 

「誰が仲間や。寝言は寝てから言え!」

 

だが、両親と姉が3人掛かりで戦っても勝てなかった相手。炎次郎1人で敵うはずもなく、簡単に打ちのめされる。

 

「ナカマ…オマエモ…イフリートニナレル…」

 

「黙れえええ!!」

 

そのとき、瀕死の炎次郎の身体に異変が起こる。何と身体からみるみる内にイフリートのような体毛、角が生え、その姿は獣のようであった。

 

「ヤミオチ…!」

 

「うおらぁー!死ねやあぁぁ!」

 

闇堕ちした炎次郎の一撃を受け、炎次郎の家族を殺したイフリートは消え去った。

 

「はあはあ…あかんこのままでは…本当にあいつが言うとったみたいにイフリートになって…グルルル。」

 

しかし、もう手遅れであった。闇堕ちした炎次郎は突然、四つん這いになる。そして、何の因果か今先ほど倒したイフリートに似た虎のようなイフリートとなって一気に山を駆け下りだしたのであった。

 

 

それから3日後、イフリートと化した炎次郎は麓にいた。山の近くに建っている人家は全焼し、住人の死体も転がっていた。

 

(オレハ…イフリート…アイツトオナジ…)

 

闇堕ちに抗おうとするも、止まらない破壊欲と殺戮欲。イフリートの炎次郎は次の獲物を探して歩き出そうとしていた。

 

「待て!」

 

突如、炎次郎の目の前に巨大な火の玉が現れた。

 

「我が名は『迦具土命』。お前を救いに来た。」

 

火の玉はそう言うとイフリートの炎次郎を包む。

 

「グォギャアルガアアァ!」

 

迦具土神の聖なる炎はイフリートにとっては苦痛なのかもしれない。悲鳴をあげながらイフリートの炎次郎は火の玉の中でのたうちまわる。

 

「聞こえるか?迦具土・炎次郎。お前の家族を救えなかったことは謝る。だが、私はお前をも見殺しにしたくはない。しかし、私がこの魔物を押さえつけるのには限界がある。だから、返事をしてくれ!まだ、お前に人間の心が残っているなら、私はお前を元に戻せる!」

 

(カグツチノミコト…サマ…オリテキテ…クダサッタ…アリガトウ…ゴサイマス…)

 

炎次郎はわずかに残る理性で思いっきり自らの足に噛み付く。これはイフリートの破壊欲を少しでも抑えようと試みているのだ。

 

「そのままだ。次は私の術で…!」

 

迦具土神は何かの呪文のような言葉を唱える。それは祝詞に似ていた。すると、炎次郎の身体から虎のようなイフリートが分離した。そのイフリートはまるで幽霊のようにフワフワしているが、殺戮本能はまだあるため迦具土神に襲いかかる。

 

「私に刃向かうか小童。不浄なる炎の魔物が火の神に勝てると思っているのか!」

 

その直後、火の壁から巨大な腕が伸びる。そして、そのままイフリートを握り潰してしまった。

 

炎次郎はやがて、火の玉から放り出される。これで闇堕ちから救われた状態になった。

 

 

 

 

だが、我に返った炎次郎が見たのは焼け野原だった。

 

「そんな…これ…全部俺がやったんか…?」

 

絶望に打ちひしがれる炎次郎。闇堕ちする前に戦ったイフリートは炎次郎の行く末を予言していたのだろうか。

 

「しゃあない…足りやんかもしれんけど、責任はとらな…」

 

炎次郎は装備していた腰の刀を抜く。

 

「腹を斬るしかないな…。もうこうするしか道が…」

 

「本当にそれで良いのか?」

 

自刃しようとしていた炎次郎の背後から声がする。声の主は炎次郎を闇堕ちから救った迦具土神。ただ火の玉に包まれているため姿が見えない。

 

「イフリートになって暴れた俺に責任はあります。士道に背き、人の道を外れた俺に生きる資格はありません。」

 

「命を落とした家族の分まで生き抜こうとは思わないのか?」

 

「何言うてはるんですか!迦具土命様は俺の家族を見殺しにしたんやろ!俺を引き止める義理がどこにあるんですか!?」

 

その時、火の玉がゴウっと一瞬、天まで届きそうな火柱をあげて燃え上がる。

 

「すまない。わかった、本当のことを話してやろう。お前の両親と姉は実に10体のイフリートと戦っていた。私ももちろん降臨を求められ、イフリートの討伐に力を貸した。しかし、10体ものイフリート相手に3人では無茶であった。3人の神通力は限界に達し、私も手を貸すことが出来なくなった。それでもお前の家族は協力して数を残り1体まで減らした。だが、とうとう私を降ろすための神通力が尽き、3人は…命を落とした。」

 

神の世界の掟。必要以上に人間に干渉してはいけない。依代の神通力が尽きれば神と人間は共に戦うことはできないのだ。神にも救えない命があるというのはこの掟が所以である。

 

「待ってください…。じゃあ、なぜ迦具土命様はここにいらっしゃるんですか?」

 

「私は今、神の世の掟に背いてここに来ている!」

 

その言葉に炎次郎は握った刀を投げ捨て、火の玉に向かって涙を流してながら土下座をする。

 

「すみませんでした!俺は迦具土様の優しさをないがしろにするような言葉を言ってしまって…!」

 

「わかれば良い。なら、神罰をお前に与えよう。『自殺を禁ずる。これからは正義の道を進め。弱きを守り、悪を挫くことを心がけよ』。以上だ。」

 

「はい!」

 

迦具土神の言葉に炎次郎は顔を上げる。その顔は心なしか嬉しそうだった。

 

「それと、最後に話しておこう。何故、お前達が『迦具土』の姓を持つかわかるか?それは私が力を貸すと認めた人間であるからだ。つまり、お前にも私の力を使う資格があるということだ。」

 

「そうだったんですか…。ありがとうございます、俺を認めてくださって。」

 

すると、火の玉はすうっと空に浮かぶ。

 

「迦具土・炎次郎よ。後でお前の家に行け。まだ、少し話がある。いいな。」

 

それだけ言うと火の玉は空高く舞い上がり、彼方へ消えた。

 

「どういうことなんやろか…?」

 

炎次郎は迦具土神の最後の言葉に疑問を持ちつつ、刀を拾って家路を急いだ。

 

 

 

 

家に戻るとがらんとしていた。それもそのはず、この家には炎次郎しかいない。家族の団欒はもう見ることはできないのである。炎次郎はしばらく、黙祷のように目を閉じた。目がしらが熱くなり、また悲しさと寂しさと悔しさが込み上げてきた。その後、家の裏の神社へ足を運ぶ。ここは『迦具土神』を祀る神社であり、炎次郎の家は分家ではあるものの、所謂社家なのである。

 

「待っていたぞ。」

 

神社に黒づくめの忍者のような装束に赤い手ぬぐいを首に巻いた男がいた。しかも、まるで知り合いのような口ぶりである。

 

「あの…どちら様でっか?」

 

「私は迦具土神だ。まあ、今は化身の術を使っておる。」

 

「か、迦具土命様でしたか!これはとんだご無礼を!」

 

炎次郎は迦具土神の化身に平身低頭するが、迦具土神は手で炎次郎を制す。

 

「待て待て。そのようなことは後で良い。して、迦具土・炎次郎よ。私がわざわざ化身してまで下界に来たのは他でもない、お前に稽古をつけるためだ。」

 

「え?迦具土命様御自ら俺に稽古をつけてくださるんですか?」

 

「さよう。ただし、私はこの地に約10日間しか居れぬ。10日以上留まると処罰されかねぬからな。だが、私は10日間でお前をまともにイフリートと戦えるようにしてやろうぞ。」

 

「これは思ってもいないありがたき提案。ぜひ、お願いします。」

 

「うむ。では、まずは場所を移そう。」

 

 

 

 

炎次郎と迦具土神の化身がやって来たのは山の中である。迦具土神の化身は山の片隅に張られている御幣のついたしめ縄をくぐる。

 

「本来、ここは聖域のためお前は入ることはできぬが、特別に私が入れてやろう。」

 

炎次郎はしめ縄をくぐる。そこには何処と無く神秘的な雰囲気が漂う場所があった。

 

「さあ、早速始めよう。刀は持って来たか?」

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

「先手は譲る。どこからでも来い。」

 

「では、失礼します!」

 

炎次郎は刀で斬りかかるが、迦具土神に手刀で簡単に刀を弾かれる。そして、驚く炎次郎に回し蹴りを食らわす。

 

「ぐわっ!?」

 

炎次郎は大きく吹っ飛ばされ、聖域の木に身体を強く打つ。

 

「立て。その程度ではイフリートを相手にすることはできぬぞ。」

 

「く、まだまだ!」

 

そして、9日間人間離れ、いや、まるでバトル漫画のキャラクターがそのまま現実世界に出てきたような動きの迦具土神の化身との特訓は続いた。しかし、炎次郎はまだ迦具土神に一太刀も入れていなかった。しかも、反撃に飛んでくる拳や蹴りは一撃くらうだけで卒倒しそうな威力であった。そして、迎えた10日目最終日。頭や腕に包帯を巻きながらも炎次郎は聖域にやって来た。

 

「さて、私の稽古もいよいよ最終日。では、最後の特訓をしよう。迦具土・炎次郎。『サイキック』を使ってみよ。」

 

「サ、サイキックって何ですか?」

 

「ふ、私が今まで行ってきた特訓はお前が『ファイアブラッド』の力を使いこなせるようになるためのものだ。単に身体を頑丈にする、痛みに耐える、武術を磨くなどというのは二の次に過ぎん。」

 

「せやけど、俺はサイキックなんて使ったことありません。」

 

焦る炎次郎に迦具土神はやれやれというリアクションで首を振る。

 

「まったく、情けない。普通ならお前ぐらいの歳の灼滅者ならばファイアブラッドのサイキックぐらい使えて当たり前なのだがな。それにお前は神薙使いの力が目覚めなかった代償として、迦具土家の中では1番火力が強い。才能には恵まれているはずなのだが…」

 

「だからサイキックとは何ですかって…」

 

狼狽える炎次郎に迦具土神は跳躍する。そして、炎次郎目掛けて火球を大量に放つ。

 

「ならば、教えてやろう。まずは私の火球をサイキックで止めてみよ!」

 

「そんな無茶な!」

 

だが、四の五の言っている暇はない。当たったらただでは済まない火球が目の前に迫ってきているのだ。炎次郎は破れかぶれになり、腕を振り回して止めようとする。そのときだった。

 

バシュウッ!

 

「な、なんやねんこれは!?」

 

炎次郎の手から出た炎の奔流。その技で火球を相殺した。

 

「そのサイキックは『バニシングフレア』。炎の奔流で敵を焼き払う技だ。そして、他にも…はあっ!」

 

初めて撃ったバニシングフレアに呆気に取られている炎次郎の頬を迦具土神は装束の懐に隠していた小刀で斬る。

 

「ぎゃあっ!?な、何を…ってなんじゃこりゃあ!」

 

突然、炎次郎の背中から炎の翼のようなものが生える。その翼の力か傷がみるみるうちに塞がった。ついでに包帯を巻いていた腕と頭の傷も完治した。

 

「それは『フェニックスドライブ』だな。不死鳥の治癒能力を使って傷を癒すサイキックだ。それと、最後にもう一つ、お前にはサイキックがある。それはいつもの修行で使ってみせよ。」

 

「は、はいっ!」

 

しかし、迦具土神の格闘術はやはり強かった。だが、炎次郎はあることに気づく。

 

(迦具土様の動きが少し見えるようになってきた…!そりゃあ、毎日こんなスピードで戦ってたら目も慣れてくるか…。よし、絶対にサイキックを決めたる!)

 

いくら神とは言え、人間と同じ姿をしているなら必ず隙ができる…そう信じて炎次郎は猛スピードで襲ってくる攻撃をかわしたり、受け止めたりしていた。

 

(見える…!見えるぞ…!今だ!)

 

炎次郎は一瞬の隙を突いて刀を振りかぶる。すると、刀に突然炎が纏わりつく。炎次郎は炎を帯びた刀を一閃、ついに迦具土神に一太刀入れた。

 

「ふっ、見事だ。これは武器に炎を宿す技『レーヴァテイン』だ。よくやった。これでお前はすべてのファイアブラッドのサイキックを会得したな。」

 

「あ、ありがとうございます!迦具土命様!」

 

すると、迦具土神は装束を少し緩める。ちらりと見える肌には大きな切り傷が入っていた。

 

「迦具土命様…その傷は…」

 

「ああ、お前も知っておろう。これは私が父上である『伊邪那岐命』に十握剣で斬られた痕だ。私に刀傷を負わせたのは父上と、迦具土・炎次郎…お前だけだ。私はお前を誇りに思うぞ。」

 

「そうだったのですか…。」

 

炎次郎は驚きを隠せなかった。

 

 

 

 

 

 

「これでお前はイフリートとも互角に戦えるはずだ。今日会得したサイキックとお前が家族との修行で身につけた剣術、これからお前を大いに助けるであろう。」

 

「10日間、ありがとうございました!」

 

「そうだ。お前に渡す物がある。これだ。」

 

迦具土神は炎次郎に1通の手紙を差し出す。

 

「何でしょこれは…送り主は『武蔵坂学園』?」

 

武蔵坂学園といえば灼滅者の互助組織であり、生徒が全員灼滅者という学園だ。

 

「お前とお前の姉、『迦具土・焔』に武蔵坂学園からスカウトが来ていたのだ。」

 

「な、何やって…?ホンマですか、それ。」

 

「だが、お前の姉は先のイフリートとの戦いで命を落とし、学園に行くことは叶わなくなってしまった。迦具土・炎次郎よ。お前は1人でだが、明日からその学園に入学してもらう。大丈夫だ、入学に必要な手続きなら私が近親者に成りすまして済ませておいたからな。」

 

(さすが神様…何でもありですな…)

 

そんな心境ながらも、炎次郎は改めて所信表明をする。

 

「わかりました。姉貴の分まで頑張ります。そして、強き灼滅者に必ずなります。でないと、天国にいる皆に…合わせる顔がありませんから!」

 

 

 

 

「うむ、よく言った。では、私から入学祝いを贈ろう。さあ、出てこい。」

 

すると、迦具土神の背後からちょこんと1匹の犬が現れた。

 

「あの、この犬は…?」

 

「こいつは私を守る獣。所謂、守護獣だ。しかし、こいつはまだ子供でな。そこで、立派な守護獣にするためにお前に託そうと思う。『霊犬』と呼ばれるサーヴァントとして、こいつも一緒に学園に連れて行ってやってくれないか?」

 

「わかりました。じゃあ、これからよろしゅうな?」

 

炎次郎は霊犬に手を差し伸べる。霊犬は嬉しそうに炎次郎の手をペロリとなめた。

 

 

 

 

 

 

「早よ、荷物をまとめやなあかんな。」

 

迦具土神と別れた後、炎次郎は武蔵坂学園へ行くために荷物をまとめていた。そこへ、ちょこちょこと霊犬がやってきた。

 

「おー、来たか犬。って、犬では何か可哀想やから名前つけたらんとな…何がええやろ?」

 

すると、炎次郎の部屋の本棚から1冊の本が落ちた。その本は『古事記』と書かれていた。

 

「あっ、古事記や。そういえば、おかんがよくガキの頃にたくさん神話を教えてくれたな…。あかん…また涙が出てきた…」

 

そのとき、たまたま開いた項に書かれていた神様の名前が目に入る。それは軍神と呼ばれ、人々に信仰されてきた神『建御名方神』である。

 

「おっと、霊犬の名前決めやな。せやな、武勇の神、タケミナカタ神から名前をいただいて…『ミナカタ』にしよかな。今日からお前の名前はミナカタや!どうや、強くなるためには縁起の良い名前やろ?」

 

炎次郎は霊犬のミナカタを撫でる。すると、ミナカタは突然鉛筆を口に咥え、炎次郎のノートに何と文字を書き始めた。

 

(よろしく)

 

「すごいな…さすが神に仕える守護獣の子供だけあるわ。どれくらい文字が書けるんや?」

 

再び、ミナカタは鉛筆を走らせる。

 

(かんたんなものなら)

 

「見たところ、ひらがなしか書けやんみたいやけど、それでも十分すぎるほど賢いなあ!」

 

(ありがとう)

 

炎次郎とミナカタは2人で微笑み合った。

 

 

 

 

 

それから京都から新幹線に乗り、東京都は武蔵野市にある『武蔵坂学園』に炎次郎は編入することになった。いろいろな手続きを済ませたあと、炎次郎は少し散歩に行くことにした。

 

「へえ、ここにも神社があるんやな。」

 

鳥居をくぐるとそこに可愛らしい金髪の巫女服を着た少女がいた。おそらく、この神社の巫女であろう。元気良く挨拶してくれた巫女によればここは『水各務神社』と言うらしい。

 

「せっかくやから、御賽銭でも入れてあげよかな。」

 

炎次郎は賽銭を入れ、二礼二拍手一礼した後、ふと、神社の屋根に目をやる。すると何とそこには赤い手ぬぐいを首に巻いた黒装束の男がいた。

 

「か、迦具土命様!?」

 

しかし、その男は一瞬で消えてしまった。炎次郎は再び、柏手を打ち、目を閉じて祈るのであった。

 

(迦具土・炎次郎よ。私はいつでもお前を見守っているぞ。)

 

 

『迦具土・炎次郎の過去』終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【登場人物設定】

『迦具土・炎次郎』…火の神、『迦具土神』の依代として、人々を魑魅魍魎(ダークネス)から守護する家系に生まれた青年。性格は不器用だが、真っ直ぐであり、正義感は強い。昔は真面目で堅い喋り方だったが、あるとき家族で行った寄席に感銘を受け、自分もやってみたいと思い、今のような冗談を混じえた喋り方になった。しかし、ギャグのセンスは大抵ひどい。特技は大祓などの祝詞の暗唱と長時間の正座。趣味は剣の修行と書道とギャグのネタ作り。

炎次郎は迦具土家で唯一、『神薙使い』のポテンシャルが目覚めず、神降ろしもできないことがコンプレックスであった。事実、親戚や本家の人々の中には炎次郎を蔑む者もいたが、迦具土家は炎次郎を家族として暖かく迎えた。それゆえ、炎次郎は何よりも家族が心の支えであった。あの事件が起こるまでは…。
なお、炎次郎は神薙使いのポテンシャルが目覚めなかった代わりに迦具土神が認めるほど迦具土家で1番炎の火力が強い。( ICV 遊佐浩二さん)



【故】『迦具土・焔(かぐつち・ほむら)』…迦具土家の長女にして炎次郎の姉。ルーツはファイアブラッド、ポテンシャルは神薙使いである。神薙使いとしての神通力や剣の技術はかなり高く、迦具土家から期待を寄せられていた。性格は明るく活発であり、炎次郎と同じく正義感も強かった。特技は神楽舞。

しかし、ルーツなのにも関わらず、ファイアブラッドのサイキックを扱うことが苦手であった。炎次郎が中学3年生の頃、大量発生したイフリートを両親と討伐しに行くが、多数のイフリートを相手にした所為で神通力が尽き、神を降ろすことができなくなる。その際にイフリートの反撃を受け、両親とともに命を落とした。実は死亡する前日、武蔵坂学園からスカウトが来ていた。( ICV 白石涼子さん)





『迦具土神(火之迦具土神)』…『カグツチノカミ』と読む。迦具土家では『カグツチノミコト』と呼ぶが、これは神への敬称『命』と命をかけて迦具土神を降ろして戦うという迦具土家の覚悟を意味する所謂ダブルミーニングである。古事記では伊邪那美命が迦具土神を出産する際に伊邪那美命を死亡させたことから夫である伊邪那岐命に斬り殺されている。しかし、その後蘇り、それ以後、自分が認めた人間達に加護を与えたり、火や鍛治、さらには防火の神として太古の昔から崇めれてきた。

代々自分が認めた血筋に『迦具土』の姓を与え、力を貸していた。文明化が進む中で人々の信仰やダークネスへの危機感が薄れていったために迦具土家が次第に落ちぶれていってもなお、迦具土神は迦具土家を見捨てることはなかった。

そして、イフリートにより炎次郎の家族が死亡したことに責任を感じ、炎次郎の闇堕ちを救い、化身を使って下界に降りて炎次郎を鍛えた。化身の姿は黒装束に首に真紅の手ぬぐいを巻いた忍者を彷彿とさせる服装である。武器は腕から放つ火球と目にも留まらぬすばやい体術。その威力は炎次郎の修行に割り込んできたアンブレイカブルやデモノイドを瞬殺するほど。 ( ICV 中田譲治さん)




『ミナカタ』…炎次郎のサーヴァントである霊犬。命名したのは炎次郎で由来は軍神『建御名方神』からとった。元々は迦具土神を守護する幻獣の子どもであり、迦具土神は守護獣として一人前にするために炎次郎に託した。未熟ではあるが、潜在能力は計り知れないようで、そのことは迦具土神も気づいている。神に仕える獣のため、平仮名だけだが文字も読み書きできる。ただし、熱くなると周りが見えなくなる性格なので、不器用な印象を受けるのが欠点。好きな食べ物は鳥のささみ。





【その他の設定】

迦具土家…『迦具土神』の依代となり、神の加護を受けて戦う退魔の一族。その歴史は古く、奈良時代にまで遡ると言われている。迦具土家の者は皆総じて炎を操ることができるが、神を降ろすことができるのは迦具土家の中でも厳しい修行に耐え、迦具土神に認められた者のみであった。

その家系でイレギュラーな存在となったのが迦具土・焔、迦具土・炎次郎姉弟である。焔は神薙使いの力が幼い頃から覚醒していたため、修行をせずとも生まれつき神降ろしができた。炎次郎は神薙使いの力が覚醒せず、さらに神降ろしができる両親の行った修行を自らも行い、努力を重ねたが一向に迦具土神が炎次郎を認めず、今もまだ神降ろしができないという状態である。

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