ーサラ・ヒューイットー
今日もいつも通り席に着き、いそいそと鞄の中身を机の中へと移していると、普段早く学校に来ているはずのアスナちゃんとこのちゃんが教室に入ってきた。
このちゃんは相変わらずほんわかした笑みを浮かべてるのに、アスナちゃんは少しカリカリしてる。
これは遂にネギ君が麻帆良に来たってことかな?
そしてアスナちゃんは原作の最初に描かれていたように、大好きな高畑先生の前で下着姿を晒されたと…。
同性としては御愁傷様と言うしかないけど、アスナちゃんはネギ君の大事なパートナーになってもらわないといけないからね。
ドンドン魔法に接してもらわないと。
そしてチャイムが鳴って、いよいよSHRの時間となりました。
クラスの皆も着席完了ですよ。
しかし、本来ならこの時間には担任の高畑先生か、高畑先生が出張なら代わりの先生が来ているはずなのに、教壇には誰もおらず、いつもと違う様子に普段は騒がしいクラスメイトも静まり返ってます。
そして教室内に扉をノックする音が響き渡り、
「失礼しまs…」
という声とともに扉が開かれました。
開かれた扉の下にはスーツをピシッと来た赤毛で鼻眼鏡を掛けた男の子、間違いなくこの世界の主人公であるネギ・スプリングフィールド君がいました。
言葉が途中で止まったのは扉に仕掛けられていた黒板消しトラップが落ちてきたからですね。
まぁ、魔法障壁を展開しているネギ君には黒板消しも当たらないんですが、それだと魔法秘匿の義務に違反することになるので、すぐにチョークの粉をネギ君は頭から被ります。
しかし彼の受難はこれだけではありません。
ネギ君が一歩踏み出すとロープにつまずき、転けた先ではバケツが落ちてきて頭にスッポリはまり、勢いそのまま転がる彼に吸盤付き弓矢が当たって、最後に教卓に天地逆さまでぶつかることでようやく罠から解放されました。
この罠を仕掛けたのは双子の鳴滝姉妹と私のルームメイト美空ちゃんですね。
鳴滝姉の風香ちゃんと美空ちゃんは悪戯大好きだし、鳴滝妹史伽ちゃんはお姉ちゃんにいつもくっついてるんですよ。
高畑先生なら手慣れたように罠を受け止め、このクラスを知ってる先生なら罠を避けるでしょう。
ネギ君はこのクラスが初めてなのでこれからの成長に期待ですね。
そうこうしているうちにクラスメイトに揉みくちゃにされ、質問攻めを受けるネギ君。
見た目は本当に可愛いですから、仕方ありませんね。
ネギ君の指導教員の源しずな先生も悪ノリして
「食べちゃダメよ」
なんて笑いながら言ってます。
ここまでは朗らかな雰囲気だったんですが、納得できない人が1名。
そう、大好きな人の前で下着姿にさせられたアスナちゃんです。
服をひん剥かれたことと、黒板消しが一瞬止まったのを見てネギ君のことを怪しんでるみたいで、ネギ君の胸倉を掴んで片手で教卓の上に座らせてしまいました。
いやぁ、力持ちですねぇ。
そしてネギ君のことを詰問していると、遂にこの騒々しさに耐えられなくなったと言わんばかりに、委員長が声をあげます。
この委員長、雪広あやかさんは容姿端麗、成績優秀、文武両道とこの世の者とは思えないスペックを誇るのですが、唯一残念な性格、いえ性癖を持ってます。
それがショタコンなんですよねぇ。
まぁ、本来弟が産まれるはずだったのが流れてしまったせいで、そういう趣味に走ってしまったと言えなくもないのですが…。
方や容姿は悪くないけど成績が悪く、粗暴者に見られるアスナちゃん、方や典型的な委員長気質で渾名も委員長のあやかさん。
両極端の二人は事ある毎に喧嘩です。
一方がショタコンと罵れば、もう一方はオジコンと言い返す。
これで小学生の頃からの付き合いなんですから、本当に親友なんですねぇ。
「どうですか、エヴァさん?サウザンドマスターの息子を見た感想は?」
隣のエヴァちゃんに声をかけます。
「ふん、見た目はそっくりだが中身はまるで違うな。本当に
「彼は真面目で典型的な英国紳士体質なんですよ。だから多くの女性に囲まれると混乱してああなっちゃうんです。そもそも彼はまだ9歳ですから、そこら辺も考慮に入れてあげてください」
「全く、どうしてあの馬鹿からこんなぼーやが産まれたんだか…」
ブツブツ何か言ってますが私には関係のない事ですね。
教室の後ろでコソコソ話している間に授業も進んでたみたいです。
黒板に文字が書かれていますが、またアスナちゃんと委員長が喧嘩してます。
そうこうしている間に授業の終わりを告げるチャイムが鳴りました。
まぁ、このクラスを相手に初日はこんなものでしょう。
ー神楽坂明日菜ー
全く、朝から服を脱がされるし、それを高畑先生に見られるなんて最悪の1日だったわ。
よくわからないけど、絶対あのガキンチョのせいね。
しかも私に失恋の相が出てるなんて、一体何様のつもりよ。
それに比べて高畑先生は落ち着きがあるし、ダンディだし、カッコいいし…。
あぁ、なんであんな
「アスナさん、今お時間よろしいですか?」
「あら?サラじゃない。どうしたのよ?」
この娘は1年の夏休みにこのクラスにやってきたサラ・ヒューイット。
最初は英語しか話せなくて、私も考えを伝えるのに身振り手振り使って苦労したのよね。
それなのにサラはあっという間に日本語をマスターして、2学期始めにはその日本語力に高畑先生も驚いていた。
高畑先生がサラのことを知ってたのは彼女が麻帆良に来た時、先生が迎えに行ったかららしい。
とにかく彼女はクラスでも上位に位置する程頭がいい。
私なんて日本人なのにイギリス人に日本語で負けるなんて…。
まぁ、それは今は関係ない話ね。
いつもは明るくてニコニコした顔のサラがちょっと困ったような顔をしている。
「ちょっとお願いがあるんですが…」
「別にいいわよ。どうせ今暇だったところだし」
「大丈夫ですか⁈よかったぁ」
さっきの困り顔が嘘のように晴れやかな笑顔に変わる。
やっぱり、サラはいつものように笑顔の方がいいわね。
「それじゃあ、ネギ先生の歓迎会をこの後行うので、先生を迎えに行ってもらえませんか?」
ビシッと薄い氷が割れる音が聞こえたような気がした。
「え⁈…ごめん、もう一回言ってもらえない?」
「ですのでネギ先生を、この教室に連れて来て欲しいんですよ」
「えぇーっと、なんで私をご指名なのかなぁなんて思うんだけど…」
「他の皆さんは歓迎会の準備で今手が離せなくて。ですがアスナさんは上の空でしたので、ひょっとしたら手が空いてるかもって思ったんです。それに授業の時も先生と楽しくおしゃべりされてるように見えたので…」
「違う、違う‼︎私はあんなガキンチョと楽しくおしゃべりなんてやってないわよ!」
「では迎えに行ってもらえないんですか?」
サラがさっきの笑顔から一気に泣き出しそうな顔になる。
「あぁーっ‼︎アスナがサラちゃん泣かしてるー!」
げっ⁈鳴滝'sのふーちゃんに見られた⁉︎
「ち、違うのよ!泣かそうとかじゃなくて‼︎あーっ!わかった、わかったから‼︎サラ!私があのガキンチョ迎えに行くから」
「本当ですか⁈」
あれ?さっきの泣き顔はなんだったの⁈っていうくらい笑顔なんだけど…。
ひょっとして私はめられた?
「よかったです。アスナさんに駄目と言われたら他に頼む人がいなかったので」
確かに私以外は飾り付けやテーブルの準備、買い出しなんかでバタバタ動いている。
それを考えたら私しか迎えに行く人間はいないか。
「わかったわよ。仕方ないから私が行くわ」
「ありがとうございます!ではよろしくお願いしますね」
なんか納得いかないなぁ〜。
ーサラ・ヒューイットー
フッフッフッ、計画通り‼︎
これでアスナちゃんはネギ君を探しに行かねばならず、後は本屋ちゃんこと宮崎のどかちゃんを助けるためにネギ君が魔法を使い、アスナちゃんがそれをバッチリ目撃すれば万事オッケーよ。
あれ?ちゃんと魔法バレのイベント起きてくれるよね⁈
っていうかちゃんとネギ君が広場にいて、本屋ちゃんが大量の本を持って階段から落ちて、さらにその場にアスナちゃんがいないとイベント起きないんだけど‼︎
大丈夫かなぁ?
なんか改めて考えるとすっごい心配になってきた。
ちょっと様子を見に行かないと。
「すいませ〜ん、買い出しで必要なものができたので、ちょっと出かけてきます」
クラスの皆に聞こえるように声をかけ、一目散に広場の方へと走って行きました。
幸い学校からイベントが発生するはずの広場は離れてなくて、すぐに目的の3人を発見!
ネギ君は広場中央でクラス名簿を開いたまま本屋ちゃんを見ており、本屋ちゃんは…よし!
いや、よくないけど階段を踏み外した。
アスナちゃんはネギ君を見てるし、そこで…ネギ君本屋ちゃんを助けるべく魔法発動!
はい、これでネギ君の魔法バレ達成‼︎
いやぁ、よかったよかった。
原作通り行けば、この後ネギ君がアスナちゃんの記憶を消そうとしてブレザー以外の制服を消しちゃうんだよね。
しかも、その姿をまた愛しの高畑先生に見られてしまうと…。
合掌。
さて、アスナちゃんがネギ君を拉致って行ったことだし、放心状態の本屋ちゃんを手助けしますか。
「大丈夫ですか、のどかさん?」
「あ、サラさん。何があったんでしょうか?」
「いやぁ、危なかったですよ。のどかさんは階段を踏み外して落ちたんです。ネギ先生がのどかさんを受け止めてくれたんですから」
「そ、そうだったんですかぁ。ネギ先生が…」
はい、これでのどかちゃんはネギ君に惚れましたぁ。
ネギ君のある意味被害者第1号ってところですかね。
ネギ君は天然ジゴロだからなぁ。
さすが英国紳士というべきなのかな?
「とりあえず、この散らばった本を集めましょう。これは図書館に返す本ですよね?この後は歓迎会があるんですから、急ぎましょう」
「は、はい。そうですね。ところで…、ネギ先生は?」
「ネギ先生はアスナさんが連れて来てくれますよ。早く本を返さないと歓迎会に遅れますよ」
「わ、わかりました!」
普段ののんびりした雰囲気とはかけ離れた速さで本をかき集める本屋ちゃん。
うんうん、内向的な性格の彼女もこれをきっかけに変わっていくんだから、怖い思いをしたかもだけど結果オーライね。
まだ介入してない状況だったけど、私というイレギュラーが原因で原作から離れるかなって少し心配になったけど、まだ大丈夫みたい。
でもこの先も上手くいくかはわからないから、原作が始まったからにはこれまで以上に注意しよう。
本屋ちゃんが借りてた本を返すのを手伝って、原作でアスナちゃんが買っていたジュース類を私が買って教室に戻りました。
本来はアスナちゃんも買い出しに出ていたのを、私がネギ君捜しに行かせたからね。
これくらいのズレなら問題ないとは思うけど、何が禍するかわからないし。
教室に戻ってしばらくするとアスナちゃんとネギ君も教室に戻ってきました。
途端に教室内に響くクラッカー音。
それで思い出したかのようにアスナちゃんが一言。
「そうだ、今日はあんたの歓迎会をするんだった!」
やっぱり忘れてたんだね…。
さすがこのクラスの成績不良者バカ
本人はその不名誉な称号に納得してないかもしれないけど、成績が悪いのは事実だから仕方がない。
お⁈さっき助けてもらった本屋ちゃんが早速ネギ先生に図書券でアピールだ。
それに負けじと委員長もネギ君の銅像を渡してる。
っていうか今日来たばかりのネギ君の銅像なんてよく準備できたなぁ。
さすが委員長、腐っても財閥令嬢ということか。
あ、ネギ君が高畑先生に読心術使ってる。
アスナちゃんが高畑先生の気持ちを知りたくてネギ君を仕向けたんだけど…。
さっきの魔法バレイベントの流れでほぼ全裸姿を、今朝は下着姿を晒した所為で高畑先生のアスナちゃんの印象はそのイメージしか残ってないんだよねぇ。
その結果に項垂れてアスナちゃんは教室から逃げ出し、あとを追うようにネギ君も走って行きます。
いやぁ、恋愛とかそんな甘酸っぱいものじゃないですが、青春ですねぇ。
前回ずいぶん時間をすっ飛ばしましたが、
やっと原作にたどり着きました。
でもまだ始まったばかりなんですよねぇ。