Into the リンク次元 作:手札から失礼
ノードシティの夜は眠らない。
無数のビル群を縫うように走る光のラインに、空中に浮かぶ巨大な広告。街のいたるところに投影された、デュエルの中継映像。
そして、その中心にあるのが、仮想空間デュエルサービス《リンケージ》だった。
『さあ、ここからどうする!? ユークは絶体絶命だぁーッ!』
実況者に煽られてフィールドに歓声が響く。ここは電脳空間、リンケージ。現実のスタジアムではない。それでも、そこにいる観客たちは確かに熱狂していた。
無数のアバターが浮かぶ観客席と、画面の向こうから送られてくるコメント。そして、デュエルフィールドへ降り注ぐ無数の光。
『おおっと! 観客から大量の投げ銭だ! エフェクトがなんとも美しい!』
リンケージではデュエリストに投げ銭を送ることができる。デュエルフィールドごとに特有の演出があり、このスターリー・ナイトフィールドでは投げ銭をされるごとに、フィールドに流れ星が降り注いだ。
圧倒的没入感。デュエリストだけでなく、観客とも一体となった最高のエンターテイメント。
この夜空を模したフィールドに流れ星が走る。その中心で、一人の少年が楽しそうに笑っていた。
「オレのターン、ドロー! ……来た」
少年⸺ユークは、対戦相手と観客に向き合ってこれからどうショーを演出してやろうかと、いたずらっぽい笑みを浮かべた。
「ここからがクライマックス!」
少しだけ目を閉じ、ここから展開できる道筋を計算し、そして勝利へのヴィジョンを明確に捉えた。
目を開けると、対戦相手のモンスターは、今か今かと、3桁になったユークのライフを削り取るために待ち構えている。
対戦相手は勝ちを確信し、余裕綽々の様子だ。こんな子供なんてひとひねりで倒せるんだと言いたげに、こちらを見下ろしている。
だが、ユークは一つも諦めてはいなかった。どんな面白いどんでん返しをしてやろうかと考えているのだ。
観客たちは彼が何をするのかを知らない。もちろん、対戦相手も知らない。ユークだってこのデュエルの行き先はどうなるかわからない。
この起死回生の一手だって、止められてしまえばあとはもうやるべきことはないだろう。しかし、だからといって諦める理由にはならないし 一歩踏み出す勇気がなければ勝ちは届かない。
それに負けたって『エンターティナーなら観客を楽しませたほうが勝ち』なのだ。だからこそエンタメデュエルは面白いのだ。
「さあ、みんな。オレを、オレのデュエルをよく見て!」
ユークはたった今ドローしたカードを一枚、指先で弾いた。
「⸺エンタメの始まりだ!」