Into the リンク次元 作:手札から失礼
「それでシグ、昨日のデュエルはどうだった? オレのランキングは上がったかっ!?」
ひょっこりと目の前にブルーベリーかと思うくらいの青髪の少年が現れた。休み時間が来るなり、わざわざ俺の前に来てデュエルの話をするコイツは
俺は目の前にあるパソコンで『リンケージ』のランキングサイトを開き、ユーザー名:EUCを検索した。10位を通り過ぎ、50位を通り過ぎ、100位代…まだ無い。500位代に目を通す。……あ、あった。
「見つかったよ。お前は現在の人気ランキングは525位、前回の537位から大幅躍進。派手なことをやってるから当り前だな」
「やったーっ!」
「投げ銭ランキングは変わりなし。勝率は低いぞ、もう少し上げろよな」
「えーっ!」
「えー、じゃない。昨日のデュエルだって気になるとこがいっぱいあるぞ。初手で……」
「わーっ! お説教は放課後にしてくれよ! ほらほら、そろそろ休み時間終わり! 授業始まる!」
そう言いながらユークは勝手に俺の席の方に来たのに、話を切って自分の席へと戻っていった。
少ししてチャイムが鳴り、教科担任がやってきて教壇に立つ。この授業は基礎デュエルだ。俺はぼんやりノートを取りつつ思索に耽る。
俺の名前は
そんな俺はある日ぽっくり死んでしまって、この世界に転生してきた。ネットの二次創作小説でよく見かけるいわゆる転生者ってやつだろう。まさかこんなシステムに巻き込まれるとは思わなかった。
最初は前世とそう変わりない世界だと思っていたのもつかの間、この世界はデュエルが最も発展した娯楽であり、ありとあらゆるところでデュエルが存在していた。そう、俺が転生したのは「遊戯王が常識となっている世界」だったのだ。
そしてもう一つ驚いたのが、この世界はどうやらフルダイブ式のVR世界が発達していることだ。
「Into the Linkage」と唱えれば、この俺が暮らすノードタウンのどこからでもアクセス可能なVR空間に接続できる。そこでは日夜様々なデュエリストがデュエルを行っており、中にはカリスマと呼ばれるデュエリストがいるんだとかで……
……それってどんなVRAINS?
というわけで、俺はどんな運命の導きかわからないが、VRAINS的な世界観に転生してきたらしい。
この世界にはPlaymakerやイグニスは存在せず、それっぽい世界なだけ……といった方が正しいみたいだ。まあ、俺は前世でデュエリストだったから、この世界で生きることは結構居心地がいい。
居心地がいい理由はもう一つある。あのユーク……見てわかるとおり結構主人公気質で気のいい性格だ。素直であいつと友達やってるのは結構楽しいし飽きなかった。正直、前世の記憶込みであいつの兄貴分みたいな気持ちもあったかもしれない。ユークとは家が隣同士だったからという理由で、ガキのころからの付き合いだったしな。
小さい頃、ユークがテレビでやってるデュエリストを見ながら俺もあんなデュエルをしたい!デュエルでエンタメをするんだ、なんてキラキラの目で言われたら……よっしゃ俺がお前のプロモーターになってやる!って言うしかなかった。
俺は正直あんまり目立ちたくないタイプだし、いわゆる『椅子の人』もちょっとやってみたかった。俺のプロデュースでユークをナンバーワンプロデュエリストにするのも悪くない話だ。
かくして、俺とユークはコンビでデュエリストとしての道を突き進み始めたのだった。
回想終了。
教壇では教師がカードテキストの任意効果と強制効果がなんやかんやの解説をしている。前世でも翻弄されたカードテキストだ。難しすぎる。
◆
放課後、俺とユークは学校の片隅にあるPCルームに集合していた。
俺達はデュエル同好会として活動しているため、部室としてこのPCルームが与えられている。当然この学校にはデュエル部はあるが、彼らは普通にスタンディングデュエルと机上デュエルを主に行っており、こっちはリンケージ主体としての活動というわけで別に同好会を設立させてもらったのだ。
なぜ同好会を設立したのかというと、好きに使えるスペースが欲しかったから、に尽きる。流石に家じゃバタバタするからな。ゆくゆくはVRAINSの草薙さんのホットドッグキッチンカーみたいなのが欲しい……とそう思うのは、影響受け過ぎか?
「それで、お説教の時間だ」
「ハイ……」
表情だけしょんぼりした様子を見せているユーク。俺は長年の付き合いでわかっているが、案外余裕なときこそこういう態度をするんだ。
「まず先攻は向こうだったろ?
手札ログを見たんだが、あのとき手札誘発をここで打ってれば間違いなく相手の展開は止まってた。そしたらあそこまで追い詰められなかったんじゃないか?」
「だ、だってえ! 相手がどんな感じで来るのか見たいだろ?次のターンで盤面を崩せばモーマンタイ……」
「まったく……モーマンタイじゃないから言ってんだよ。デッキトップ頼みのデュエルってヒヤヒヤするし」
ユークはあまり効いていない様子で相槌を打つ。
俺はこいつのデュエルタクティクスとか、土壇場の諦めなさには一目置いているが、細かいところのセオリーやら詰めの甘い部分が気になって仕方がない。元の世界でのデュエルに慣れ親しみ過ぎたのだろうか。
期待しているからこそ、気になっていることが一つあった。今日はそこを少し突いてみるか。
「いいか、ユーク。エンタメるのは悪くない。みんなを楽しませたいっていうのはわかるぞ。ただ、そのためにどうしたいのかっていう芯がブレてるんだ」
俺は遊戯王のアニメシリーズに登場した、デュエルをエンターテイメントとしてプレイしたデュエリストたちを思い出す。
「たとえばギャンブルカードを組み合わせて、それ自体を見せ場にするのはエンタメだよな。
相手を好きなだけ展開させたあと、圧倒的な威力でワンキルで叩き潰すのもエンタメだ。
あとは圧倒的な力を持つエースモンスターで戦うキング的なあれそれだったり、希望を与えたあと奪うファンサービス的なデュエルもまあ……エンタメか」
「やけに具体的だな〜」
元ネタがいるからな。
「それで大事なのは、お前がどんなデュエルでどんなエンタメをしたいのかってこと」
「どんなデュエルでどんなエンタメ……? たしかに……気持ちの良いデュエルを出来たら楽しいかな〜とは思うけど……」
「自分が他人からどう見られるのか、意識できないならまだまだだな」
そう言いながらぼんやりとARC-Vのことを考える。エンタメデュエリスト……か。
◆
「そんで武者修行とはね」
《リンケージ》を歩きながらオレはシグと会話している。
『文句言うんじゃないぞ。とにかくユークには経験値が足りないんだ。なるべくデュエルして、相手の出方とか、見せ方とか学ばなきゃならないんだ』
「はあーい」
と、まあこんな感じでモニタリングと説教をされながら、マッチ相手を探すべく歩いてるわけだ。なるべく自分よりもランクが高そうなヤツか、エンタメってるヤツと戦いたいな。
とにかく注目度高そうな対戦ができたらインプも増えて、人気も上がってより多くいろんなヤツに見てもらえるし……
その時だった。視界端でノイズが走る。そういえば……とオレは思い出した。このリンケージには別の世界と通信できる場所があるっていうウワサ!
オカルトは信じちゃいないが、そういう面白そうなモンには全力で行くのがオレのスタンスだ。
オレはそのノイズを探しに周囲を見回した。……が、その時だった。
⸺え?
背後にポッカリと空間が開いて、ノイズが走っている。しまった、と思った瞬間オレはそのノイズに飲み込まれてしまい、意識が途切れた。
◆
「おい、こんな道端で何寝てんだよ」
そう言われて目を開ける。良い晴れだった。……って、イテテ……一体何が起きたんだ?
身体を見ると、アバターでリンケージに来たはずなのに、姿は生身で、感触もリアル。どう考えてもリンケージ内じゃない。
あたりを見るとそこはたくさんの広告に、賑やかな人通り。広告にはデュエル塾? 変なの、デュエルって塾で習うものなんか?
もしかして……まさか……オレってホントに別世界に来ちまったんじゃないのか……?
そして目の前には少し不機嫌そうな顔をした少年が一人。前髪が金髪で、茶色の上の少年。瞳はグレー。歳はオレと同じくらいで制服を着ている。学生か?
「アンタ誰?」
「? この俺のことを忘れたのか? 俺は沢渡シンゴ。榊遊矢、お前のエンタメデュエリストとしてのライバルだ!」
「は? オレはユーク。人違いじゃねえの?」
沢渡と名乗ったやつが驚いたように目を見開く。そういえば遊矢とそっくりのやつが……なんだかんだとぶつぶつとつぶやいてやがる。意味わからん。
それはそうとして、アイツはたしかにエンタメデュエリストって言った。暫定別の世界でもエンタメデュエルってあるらしい。ならば……
「なあ、それデュエルディスクだろ? アンタもデュエリストってことだよな」
オレは未だにグルグルと考え事してるらしき沢渡のデュエルディスクを指差した。
「あ、ああ……?」
「俺もデュエルディスク持ってるんだよな! 旧型で、カードはまだ物理だけど……」
オレは旧型のデュエルディスクを掲げて沢渡に見せた。
「デュエリストなら何をするか、もうわかってるだろ? オレとアンタ、とりあえずデュエルしようぜ!」
毎晩ネットの巡回してたときに出会った面白い遊戯王オリ主小説に感化されて書き始めました。
デュエルは次回です。
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