『公安警察外局特定脅威処理記録:コード「削除済み」』 作:平素練磨
成田空港の搭乗ゲート前。緑谷出久だけが、なぜか巨大なオールマイト柄のキャリーケースを抱えて冷や汗を流していた。
「え、えーっと……! 僕、オールマイトの公式ファンクラブの『超・限定くじ引き』に当選しまして……! プライベートジェットで一足先に現地入りすることになりました……!」
「あんだとぉ!? なんだそのクソみたいな運の良さは!!」
オールマイトに後継者として誘われ、なんとかごかましながらであった。爆豪勝己が掌をバチバチと鳴らして威嚇するが、出久は「あはは……」と引きつった笑いを浮かべながら、案内係に連れられてオールマイトのプライベート機専用の搭乗口へと消えていった。
残された爆豪、切島鋭児郎ら数名の1-A生徒たちは、引き締められた緊張感を保ったまま、引率役のイレギュラーと共に特約便へ乗り込むこととなる。
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数時間後——。
太平洋上に浮かぶ巨大人工移動都市『I・アイランド』のランド空港。
ゲートを抜けると、巨大なドーム状の建造物と最先端科学都市のパノラマが広がっていた。
「すっげぇ……! タワーも街並みも全部が未来みたいだ……!」
切島が目を丸くしてホログラム看板を見上げる横で、爆豪は周囲の浮ついた観光客に目をむけることもなく、朝夕の稽古で叩き込まれた『武の理』。一度叩きのめされたからこそ理解できる「本物の怪物」に対する極限の警戒心が、爆豪から無駄な隙を完全に削ぎ落としている。
「これより夜のレセプションまでは自由行動とする」
空港のロビー中央で、代用フレームのケースを引くイレギュラーが感情のない声を落とした。
「各自、指定されたホテルへチェックインを済ませろ。現地でのトラブルは当方の管轄外だ。不要な問題を起こせば、帰国後学校側が対応し罰則を下す」
「……言われなくてもしねえよ!!」
爆豪がチッと激しく舌を鳴らす。
生徒たちがそれぞれの目的地へ散っていくのを見届けたイレギュラーは、彼らの引き締まった歩行姿勢を横目で一瞥すると、迷いのない足取りで一般観光ルートを外れた。
向かうのは、観光客の立ち入れない地下インフラ搬入路。
私服のコートのポケットから端末を取り出し、島全体の公開ネットワークと防衛アーキテクチャへアクセスを試みる。
手元に引くキャリーケースの中には、元技術者が突貫で手直しした武骨な代用フレーム。
2号機より3割スペックが落ち、シリンダーの応答遅延が生じる『なまくら』だが、この島に漂うわずかな防衛の歪みを察知し、解体するには十分だった。