『公安警察外局特定脅威処理記録:コード「削除済み」』 作:平素練磨
崩壊した鉄くずが夜空から降り注ぐ中、オールマイトと緑谷の身体が完全にシンクロしていた。
個性を虚によって乱され、制御が出来なくなり崩れ去る重装甲の奥、防壁を完全に失って目を見開くウォルフラムへ向かい、二つの影が風を切り裂いて肉薄する。
全身の骨格を一本の軸へと通し、過剰な力みを捨てて拳の先端へ質量を伝える。緑谷の『フルカウル』が弾き出す緑の光条が、オールマイトの放つ圧巻の質量と重なり合った。
「「デトロイト・スマッシュ!!!」」
叩き込まれた二条の威力が、空気を歪ませる衝撃波となって解き放たれた。
直撃。
増幅された力押しも、かき集めた金属の質量も、全てが失われ、その身に届く絶対的な打撃。ウォルフラムの身体は一瞬で上空へと打ち上げられ、夜空の闇へ消えた後、気絶したまま放物線を描いてヘリポートの床面へ激しく落下した。
激しい爆煙と爆風がヘリポート全体を駆け抜ける。
「……はぁ……っ……はぁ……」
緑谷が荒い息を吐きながら、自身の右拳を見つめる。
オールマイトは仁王立ちのまま拳を握り締め、ゆっくりと息を吐き出した。限界を迎えた肉体がかすかに軋む音を立てるが、その背中は依然として「平和の象徴」としての姿勢を崩さない。
爆炎の渦が風に流されていく中、イレギュラーは淡々とウォルフラムの倒れた地点へ歩み寄っていた。
彼がすべきことは、完全な捕縛作業のみだ。
気絶して動かなくなったウォルフラムの側へ膝をつき、慣れた手つきで両腕を背後へ回す。拘束具を取り出し、関節の可動域を潰す確実な角度で手首と足首を固定。さらに意識を取り戻した際の一切の抵抗や能力発動を未然に防ぐため、物理的な圧迫固定を施す。
そして、頭部で光っていた装置が、光を失い機能を喪失しているのを確認、取り外すとその場に踏みつけ完全に粉砕してしまう。
道具として、与えられた処理を粛々とこなす。
「……あ、先生……」
爆風が収まりかけた頃、後ろから緑谷が息を整えながら声をかけた。
イレギュラーは捕縛の結び目を最後に一度強く引き締めると、何事もなかったかのように立ち上がり、振り返る。
「対象の完全捕縛を完了」
感情の起伏がない声。
「……うん。助かった、ありがとう」
オールマイトが振り返り、短く頷く。
ヘリポートの奥から、事態の収束を確かめるように1-Aの生徒たちの駆けてくる足音が近づいてくる。
彼らがこの場に到達する前に、イレギュラーは代用フレームの駆動音を忍ばせながら、静かに影の中へと身を引いていった。