『公安警察外局特定脅威処理記録:コード「削除済み」』 作:平素練磨
爆炎と土煙が舞う廃墟の中、言葉も吐かず、2号機の排気音だけを低く響かせるイレギュラー。
その時——上空の雲を破り、閃光のような圧力が地上へと叩きつけられた。
「すべてを取り戻す……! 返してもらうぞ、オール・フォー・ワン!!」
凄まじい衝撃波とともに上空から降臨したのは、怒れる「平和の象徴」——オールマイトであった。
「また私を殺すのかい? オールマイト」
黒いマスクの男、オール・フォー・ワンが嘲笑交じりに応じると同時に、二人の絶対的強者が衝突する。
拳と拳がぶつかり合うだけで地表が爆発し、強烈な衝撃波が同心円状に広がっていく。破滅的な爆風の連続に、周囲の建造物が跡形もなく砕け散っていく。
オールマイトはすぐさま爆豪の安全を確保すべく鋭く踏み込むが、オール・フォー・ワンが放つ変幻自在かつ容赦のない複合個性の連打がそれを阻む。全力を出せば爆豪を巻き込みかねないため、オールマイトは攻め切れずにいた。
——その時だった。
イレギュラーが「虚(Void)」によって直撃の衝撃波を視覚範囲を減衰させた、まさにその背後。運よく壊滅的な威力を逃れていたMt.レディが、激痛に顔を歪めながらも身を起こした。
血を流しながらも土壇場で『巨大化』を発動。巨大な手掌が地面を薙ぎ払い、敵連合の牽制を跳ね返しながら、間一髪で爆豪勝己の身体を掴み取った。
「がはっ……!? なにすんだババア!!」
「逃げなさい……!!」
Mt.レディは渾身の力で腕をしならせ、爆豪の身体を戦場から遥か遠く、安全な街の方向へと全力で放り投げた。
夜空へと高速で打ち上げられる爆豪。
「——今だ!!」
瓦礫の影で待機していた緑谷出久、轟焦凍、飯田天哉が跳躍する。轟が作られた巨大変形氷柱を滑走路にし、飯田の『レシプロバースト』と緑谷の身体操作が爆破の軌道上へと交差した。
空中で爆豪の手をガッチリと捉え、そのまま勢いを利用して敵の射程外へと全力で離脱していく。
「あいつら……っ!!」
死柄木達が反応するが、踏み込んできたイレギュラーに邪魔され対応が出来なかった。
後顧の憂いが、完全に絶たれた。
オールマイトの眼光に、黄金の閃光が宿る。
「よくやった……プロヒーロー……!!」
周囲の被害を恐れる必要が無くなったオールマイトの全身から、全盛期をも想起させる圧巻の威圧感が溢れ出す。
イレギュラーは一切の無用な接触を避け、静かに距離を保ちながら低く身を引いた。AFOに己の能力の真価を悟らせぬまま、崩れかけた2号機の油圧シリンダーのトルクを抑え、平和の象徴と不滅の悪意が激突する真の決戦を静かに見渡した。