『公安警察外局特定脅威処理記録:コード「削除済み」』 作:平素練磨
地下の特別整備ドックは、金属を削る甲高い研削音とスパークの火花、油圧配管の圧縮空気音に支配されていた。
「発目! 背骨フレームの主軸、2号機(Mk-2)のテレメトリーから引っ張った曲げ剛性の要求値に届いてねえぞ! 補強プレートを追加して圧力を分散させろ!」
パワーローダーの声がドック内に響く。重圧なアームで固定されたフレームに対し、サポート科の選抜生徒たちが手際よく工具を走らせていた。
「言われなくてもやってますよ! 2号機のCPUとメインセンサーの移植、完了です! 産業用パーツと2号機の残骸、それにウチらが急ごしらえした加工部品の合わせ技ですから配線は無骨ですけど、応答速度優先でダイレクト制御に組み替えてあります!」
発目はオイルと煤で顔を汚しながらも、手元のタブレットで制御プログラムのコードを高速で打ち込んでいく。
ドックの中央に吊り下げられているのは、完成予定の1号機(Mk-1)が持つ緻密な流体制御ユニットも削ぎ落とされた、剥き出しの工業用フレームと急造パーツの集合体——応急プロトタイプ(ベータ版)だ。
作業区画の壁際では、主任技師が腕を組み、不機嫌そのものの顔でモニターの数値群を睨みつけていた。
「チッ……発目、その減圧弁の設定値じゃ、奴の急激な重心移動の瞬間、サージ圧力が直撃して右腰のアキュムレータが爆ぜるぞ。俺の基礎設計の圧力逃がしラインを殺すな」
「殺してません! 代わりに、背骨側のリリーフバルブに過剰圧力を一時的にバイパスさせる逃げ道を作ったんです! 骨組(フレーム)自体のしなりを緩衝材として利用しますからね!」
「……ほう。寄せ集めの突貫構造にしては、理にかなった圧の逃がし方だ」
技師は忌々しそうに吐き捨てつつも、発目が提示したバイパス設計に素早く油圧の適正数値を割り込ませた。
48時間という限られた猶猶の中で、産業用規格品、破壊された2号機の残骸、そして生徒たちが削り出した試作部品が、歪な形で一つの機体へと組み上げられていく。
「フレームの耐久限界は、実戦稼働でおよそ3回……無茶な過負荷をかければ、持って1回で自壊しますよ」
発目がグラインダーの火花を背に、八重歯を見せて不敵に笑う。
「現場で当座の仕事をこなすだけの機動性なら、これで100%確保してみせます!お任せください!!」
最後の固定ボルトがエアインパクトレンチで締め上げられ、無骨な金属の骨組みが重厚な金属音とともに立ち上がった。