ペルソナ5R×無職転生 〜怪盗団と異世界からの来訪者〜 作:和井江一
ルブランから出た一行は渋谷駅の地下鉄前を目指す途中で竜司から電話がかかってきた。
『オイ、いきなり予定変更ってどういう事だよ! だいたい異世界から来た人間とか、いきなりそんなん言われたって全く実感わかねぇしよ! ソイツの言うこと、本当に信じて大丈夫なんだよな!?』
「リュウジか……相変わらず電話越しでも聞こえるくらい声がデケェぜ」
だが、竜司も心配して電話をくれたのは分かる。それにその場にいなければ混乱するのも当然だ。
本当ならゆっくり説明したいところだが……期限が一日ともなればそうも言っていられない。
それに……ベルベットルームで見た、父のことを語る時のララの目は……信頼できそうだと直感的に思った。
「俺達なら大丈夫だ。竜司達も焦らず、しっかり準備が整ってから来てくれ」
『お、おう……お前がそう言うなら、分かったよ』
「最初の道は俺達が開けておく。皆で集まってから突入を頼んだ」
『――分かった。必ず後で追い付くからな、待ってろよ!』
「あぁ」
竜司との通話を終える。
他の仲間達からもメッセージが届いていた……返信しておこう。
道中、ララは物珍しげに辺りを見回しながら歩いていた。
四軒茶屋駅に着くと電車を待つ人々からも目を向けられていた。
日本では青い髪は当然だが目立つ。いや、外国でも目立つか。
「ひぃぃ……私まわりから一斉に視線向けられるのやっぱまだ苦手……」
「前だけ見て周りの目なんか気にしなくていいんだよフタバ」
何故か双葉が流れ弾を受け、見られている張本人のララは「仕方ないなぁ」と言わんばかりの顔でアドバイスをしていた。
「そこ逆じゃねえのかお前ら……」
言おうとしたツッコミはモルガナがしてくれたのでおとなしく電車を待つこと五分。
ララは電車が走ってきて停車する光景を見て「おーすげー」と棒読みながらも感動しているのが伝わる声を漏らす。
やはり初めて見たのだろう。
――電車に乗り、渋谷へ到着して駅へ降りる。
人で溢れかえる中を歩いて行く中いいニオイにつられながらクレープ屋にふらふら近づいていくララを止めながら地上を目指す。
乗っているエスカレーターをマジマジと観察している姿を横目に地上へ出た。
「おぉ……」
高い建造物が立ち並ぶ景色にララは感嘆の息を漏らしながら景色と行き交う人波を見渡している。
「……これがパパの昔暮らしてた世界か……」
そう小さく漏らす声が聞こえた。
――――――――――
突入前に傷薬などの必要な品を購入。
地下鉄入口へと再度集まり近くに誰も居ない事を確認してから『イセカイナビ』を起動――メメントスへと突入する。
「レオ、お待たせ。お腹すいてない?」
「――!」
入るなりララはメメントス内で待たせていた白くてデカい犬レオに声を掛け、レオはララの元へと駆け寄って行く。
ラヴェンツァの話では『聖獣』と呼ばれる生き物らしいが大きさ以外は普通の犬に見える。
そして既に中で待っていた二人の姿が目に入った。
「ヨシザワにアケチ!」
「二人とも、私達より先に来てたのか」
モルガナと双葉に先ず芳澤が返事をする。
「はい。早く起きてしまって……あと、一匹で残されてるレオ君が寂しがってないかなとちょっと気になって……」
「なるほど、良い奴だなぁ芳澤」
「マジだ、ドッグフードの缶があるぜ……」
「……レオ、ご飯おいしかったってさ」
「本当ですかララさん! 良かったです!」
……一応、待たせいたレオにもご飯を用意していたのだが大丈夫そうだ。またお腹をすかせたら食べさせてやろう。
無言で見ていた明智と目が合う。
「……明智もレオが心配で早く来たのか?」
「ふざけるなよ」
冗談で言ったのにマジギレされた。
「そんなことより。僕達に残された時間は少ない……ララといったか。君は本当に頼りになるんだろうね」
「うん。私が居なきゃパレスの本体に入る事すら出来ない」
「……根拠を見せろと言っても仕方ないか。実際にこの目で見させてもらうとしよう」
ララはメメントス内に置いていた魔女帽を被り杖を手に持ち、レオに何かを伝えていた。
そして伝え終わったあとこちらに振り返り、
「後から来る『カイトウダン』はレオに誘導してもらうから。レオはここに待たせて私達で先に行こう」
「あぁ」
準備は整った。
先日のメンバーにララを加えてパレスへと再突入を開始した。
――――――――――
青空の下に果てしなく広がる荒野、草木のほとんど生えていない荒れた大地。地平線には枯れた山々がそびえ立つ……昨日とまったく同じ景色。
「昨日はここでシャドウに声を掛けられて、戦いになったんだよな」
「……その答えが原因で完全にパレスの主から拒絶されたと聞きましたが、今から何とか出来るんですか?」
双葉と芳澤に「うん」とララが応える。
「次ソイツに会ったら私が返答するから。任せて」
そう表明した直後、モルガナが前方からゆっくりと近づいてくるシャドウの気配に気がついた。
「うお、さっそく来やがったぜ……」
全身を引きずるようにしながらゆっくりゆっくりと距離を詰めてくる。
「……心の怨嗟の声が凄いな」
その姿を見ながらララがそう溢した。
「……そんなものがわかるのか?」
「うん。この世界は、念話で色々なモノが伝わってくる」
……念話なんてものが出来たのか。また新事実が明かされたが、今はそれどころではない。
先日と同じ形のシャドウはこちらを見つけた途端、接近する速度を上げながら叫んだ。
『ヒトガミの使徒どもが!! また来たのか!!』
反射的に戦闘態勢を取ったと同時、ララが先頭に立ちシャドウへ声を掛ける。
「待って」
『待たん!! ヒトガミの使徒は徹底的に叩き潰し――』
「待ってってば」
シャドウがララに襲い掛かろうとして守りに入ろうとしたその瞬間。
理性を失っているようにしか見えなかったシャドウの動きが……止まった。
動きの止まったシャドウの顔にララは手のひらを置く。
『……ロ、キ……シー……?』
「……ママじゃないけど。ヒトガミは、私が倒すから」
『……』
「ヒトガミは私が必ず倒すから。先に行かせて」
『……』
それから少しの沈黙が流れ、シャドウは黒い泥の様に溶け、その場から姿を消し……
「これで先行けるよ」
ララは変わらない無表情と軽い口調でこちらに振り返ってきた。
その直後。
「……あれ、皆さん! 見てください!」
「……!」
芳澤が遠くの空に向かって指を差しそこへ目を向ける。
すると、地平線の向こう側……遠い上空から、光の奔流が地面に向かって落ちてくる光景が目に入る。
アレは、まさか……
「おいおい、あれワガハイ達が追い出されたのと同じ奴じゃねえか!?」
「クソ、どういう事だ!?」
モルガナと明智がララに振り返り、双葉も焦ったようにララへ問い詰める。
「どうなってんの!? ララが居ればパレスの奥部に行けるって……!」
その焦る声と対照的にララは変わらない様子のまま応える。
「これでいいよ。大丈夫大丈夫」
何とも軽い返事。
「本当に大丈夫なのか――!?」
その直後――一帯はあの時と同じ強烈な閃光に包まれて……
―――――――――――
――光に包まれて数秒後……閉じていた瞼をゆっくりと開いていき。
目の前に広がる光景に目を見開いた。
「これは……」
目の前に広がるのは、前回とは全く違う景色だった。
目の前に広がるのは広大な街――だが、日本ではない。
外国の、中世の時代を思わせる雰囲気の街並みだ。
そして中世の街の中にメメントスと同じ赤い血管のようなものが張り巡らされている、異様な光景だった。
「まさか、これが……このパレスの中枢か?」
「そうだよジョーカー」
「疑ってごめん! 凄いな、本当に先に進めたんだ!」
「ワガハイ見直したぜ」
「ふふん。アケチも参ったか」
「素直にその力は認めるよ。その顔は少々腹立つけどね」
ララのドヤ顔が明智はお気に召さないらしい。
目の前に広がる異様な景色を眺めながら芳澤が口を開き。
「……これが、パレス主に関係が深い街、という事でしょうか」
「……魔法都市シャリーア。パパの家があって……私が生まれた場所」