ペルソナ5R×無職転生 〜怪盗団と異世界からの来訪者〜 作:和井江一
「やるじゃねえか、ジョーカー! 全員化けの皮が剥がれやがったぜ!」
「これで気にするものも無くなった、アイツらが眠ってる今がチャンスだ!」
モルガナと双葉の声に続き、ララは正体を現した計七体のシャドウへ視線を突き付けながら杖を構え直した。
周囲に肌を刺すような冷気が漂い、魔法が放たれる。
「フロストノヴァ」
次の瞬間、冷気に当てられたシャドウ達は一斉に凍りついた。
五体のシャドウは完全に動きを停止した――が、まだ動ける二体が纏わりつく氷を破りながら目を覚ます。
『スカアハ』と『ティターニア』だ。
更に上空からも大天使の低い声が届いてくる。
「人間が……私の顔に傷をつけるか」
メタトロンは先刻の魔法で左目を潰されているものの、まだ削り切るには遠そうだ……が、倒せない敵では無いはずた。
ララと視線が合う。
表情には余裕が戻っているように見える、安心した。
「……ジョーカー、ありがとう。助かったよ」
「あぁ」
「ママに化けてたアイツは私が倒すから」
「分かった。任せる」
あのシャドウはララに任せるとしよう……
そこへ「手伝うぜ」とモルガナと双葉もララの隣に立つ。
「流石に二対一は厳しいだろ。ティターニアの方はワガハイに任せな」
「うん」
「私も二人をサポートする……ジョーカーは、明智と一緒にアイツを頼む」
「……メタトロンか」
「一番強いアイツを任せられるのは一番戦力として当てにしてるお前達だからな!」
「了解だ、ナビ」
上空に浮かぶ大天使と視線が交差する。
奴は強敵だ……向こうもこちらへ強い警戒心を向けている気がする。自分が相手をするべきだろう。
「俺達でやるぞ、クロウ」
「ふん……頼まれずともそのつもりだったよ」
横に立ち既に戦闘態勢に入っていた明智がそう応える。
二人で同時に武器を構えると、更に隣に芳澤が並び立った。
「私も援護しますよ先輩」
「あぁ。でも無理はするな」
「はいっ!」
頑張りすぎそうな返事で少し心配だが、彼女はペルソナを使った戦闘経験が少ない割に強いのも事実だ。
頼りにさせてもらおう。
「――あくまで逆らうか。逆賊共よ」
威圧感の籠もった声色で溢しながら、メタトロンの周囲に再び白い光が集まり始めた……『メギドラオン』だ。
アレを撃たせる訳にはいかない。
「エイガオン」
「――!」
ラウールを召喚したまま、闇の力を纏った魔法を天に向けて放つ。
すると、メタトロンは即座に魔法を中断しその一撃を回避した。
わざわざ攻撃を止めて回避に専念する程だ、やはりこの魔法が弱点らしい。
メタトロンは上空に留まったままこちらの行動を注視している。
ただでさえ強い敵が空に留まり続けるのは良くない……
「先ずは地上へ引きずり降ろす」
その言葉に続けて明智がペルソナ『ロキ』を召喚。
「奴の力を奪え! ロキィぃっ!!」
『ロキ』の力によって放たれた弱体化の魔法がメタトロンの動きを僅かに重たくする。
その僅かに出来上がった隙に、芳澤、明智と並び立ち銃を構える。
「撃つぞ!」
「はい!」
「落ちやがれェッ!!」
同時に連射で放たれた銃撃がメタトロンの片翼を穿つ。
複数の風穴を空けダメージはある――が、まだ落とし切れない。
「小賢しい真似を……」
メタトロンは攻撃方法を変え上空からこちらへ掌を向けてきた――その直後。
三人の足元に光る魔法陣が出現する。直感的に危険だと察した。
「避けろっ!!」
即座に号令を出し明智と芳澤も魔法陣から離れ、次の瞬間。三つの魔法陣は強烈な光を放ち空振りに終わる。
「我がマハンマオンを避けるか」
今のは一撃でも喰らえば生命力を奪われる魔法だ。
「真上から次が来るぞッ!!」
明智の声がした。
頭上を見上げる――すると、視線の先には空に浮かぶ複数の大剣が刃を向けて来ていた。
「天軍の剣よ。逆賊共を穿て」
その声と同時に頭上から十数本の大剣が一斉に降りかかり地上へと突き刺さっていく。一撃でも当たればひとたまりもない攻撃だ。
「くっ!」
「鬱陶しいんだよォッ!」
ラウールの力を借りながらでも回避に集中するだけで一杯いっぱいだ。明智も反撃の機を見出だせないでいる。
だが、芳澤は優れた身体能力と反射神経で回避をこなしていき、反撃に出た。
「サンドリヨン! 力を貸して!」
降り注ぐ大剣を回避すると同時に身体を回転させながら上空へレイピアを投げ付ける。
空を切りながら飛んでいく刀身はメタトロンの左肩を貫き突き刺さる。
「――っ!」
想定外の一撃にメタトロンのこちらに対する意識が緩んだ。
攻撃の手が止まったその間にワイヤーを射出し、機械の様な装甲の継ぎ目へと引っ掛ける。
「ラウール。俺に力を……!」
ラウールの力により反逆の意志が過熱する。一時的に全身の能力が上昇し、ワイヤーを使い上空へと飛び上がりながら空に鎮座する大天使へと接近していく。
気づき反撃に出ようとするメタトロンに、地上から飛んできた至高の魔弾が直撃しその動きを妨害した。
明智が放った一撃だ。
「行け、ジョーカー!!」
そのまま大きな鋼の右肩へと飛び乗り、ワイヤーを地上へと落としながらメタトロンに魔法をぶつけ――
「っ!」
魔法を撃とうしたその時。
中空、真横に『ハマオン』の魔法陣が出現し、飲み込もうとしてきた。
反射的に迫る魔法陣を片手で受け止め、その片腕に魂から焼かれる様な激痛が襲い掛かる。
「――くっ!」
痛苦に耐えながら、魔法陣に全身を呑み込まれる前に空いた片手で至近距離から魔法を発動。
『エイガオン』が大天使の胸部を貫き風穴を開け態勢を大きく崩させた。
「ぬぉぉォッ!」
苦鳴が轟きながら『ハマオン』が解除される。片腕の激痛はまだ収まらないが、意識を切り替えた。
メタトロンはまだ戦意を喪失していない。
「メギド」
大天使から放たれた広範囲に渡る閃光の爆裂。
『メギドラオン』より威力は大きく劣るが発動までの時間は早い様だ。
一帯に爆裂が発生し、巨体から振り落とされる。
メタトロンは地面に落ちかけた身体を再度翼を広げながら上空へと舞い上げ――
「行かせません!」
メギドの爆裂の中を潜り抜けながら、芳澤が上空へと飛び上がっていく。
先刻意図的に落としたワイヤーを受け取り、それを使いメタトロンの左肩を目掛けて上昇する。
「もう一発! 奪いやがれロキぃッ!!」
反撃しようとしたメタトロンに再度『ロキ』が弱体化の魔法を行使し身体能力を奪う。
それにより反応が遅れ、左肩への着地を許してしまう。
「しまっ――!」
「落ちてください!!」
左肩に突き刺さるレイピアを抜き取りながら『サンドリヨン』の力を借り、刃を振るって――大天使の片翼を斬り落とした。
「うぉぉッ!!」
翼を落とされたメタトロンは地上へと落下し、地を震わせながら着地する。
一方「どうやって着地しよう」と焦った顔をしながら一緒に落下してくる芳澤を両手で受け止めた。
「あ、ありがとうございます……」
「怪我は無さそうだな。よくやった」
芳澤の無事を確認したのと同時、明智が刃を握りしめながら突撃して行くのが見えた。
「これで同じ土俵で殺り合えるなぁッ!!」
「――聞け、明智吾郎。貴様は統制神様より選ばれし人間の一人だ。今ならまだ我が軍門へ下る機会を――」
「ゴチャゴチャうるさいんだよッ!!」
おそらく勧誘しようとしたのだろうがそんなもの明智が聞くわけなかった。
問題無用に『ロキ』の力を借りた特大の斬撃が振るわれる。
それを身体へ受けながら大きな切り傷を受けながら――メタトロンは反撃していた。
「愚かな」
「チッ!!」
動きを先読みし足元にいつの間にか設置されていた光の魔法陣が魂ごと焼き尽くさんと明智を呑み込もうとしていた。
「明智っ!」
「明智さん!」
「余計な事は考えるなよッ! 今の内にコイツを殺れ!」
「――!」
身を挺して助けに行くなど――明智は望まないだろう。それに明智なら自分で何とか出来るはずだ。
「行くぞ」
「――、はい!」
全速力で駆け抜ける。
上空から再び落下し地面へと突き刺さっていく複数の大剣を回避し、距離を詰め。
「はぁあっ!」
芳澤と二人で同時に大天使へと至近距離から魔法をぶつけた。
断末魔の如き声を上げながらメタトロンの巨体は粉砕されながら背中から地に伏せる。
――もう動かない、はずだ。
「やったか……全く。めんどくさい奴だったね」
「明智さん! 無事ですか!?」
「完全に呑み込まれずに済んだからね。これぐらいの痛みもどうって事はない……」
「それなら良かったが……」
気の緩みかけた、その時だった。
「ディアラハン」
「……!?」
全身が光に包まれながらメタトロンは立ち上がり、傷が修復していき、落とした羽根までも再生を始めていた。
「う、そ……」
「いい加減にしろよお前……」
まだ、終わらないのか。
再度武器を構え直し攻撃を警戒する――が、相手はこちらへ目を向けながら口を開き。
「――いや。これ以上は私も危険だ。一時退却するとしよう」
「なに?」
「……貴様達を逆賊と侮った事は詫びよう。だが、次は無い」
そう告げ翼を広げながら上空へと飛び上がり……その姿は遠くまで消えていった。
「チッ……深追いしても仕方ないか」
追いかけようとするかと思ったが明智も割と冷静らしい。
あれ以上戦わなくて済んだのは正直ホッとしたが……いや、まだだ。
ララ、モルガナ、双葉達の様子は――
「……こっちも終わったよ」
ララが振り返りながらそう応えてきた。
氷漬けにされたスカアハとティターニアが黒い泥へと変化しながら消滅していく光景が目に入った。
「みんな無事だったか!?」
心配して見に来たらむしろ双葉が心配しながら駆け寄って来た。
安心させるため無事を伝えようとした……その時。
「待て!」とモルガナが声を張り上げた。
「新しい敵が来やがった!」
「嘘、マジだ、新しく一体! また厄介な奴だ!」
モルガナと双葉の視線の先――敵の増援だった。
ヤルダバオトとの戦いの時にも現れた巨大なシャドウ――『アバドン』だ。
「背後からもシャドウの群れが近づいて来てるのを感じる……! どうしよう、ジョーカー……!」
「……流石に連戦はキツいぜ、目的を果たす前に力尽きちまう」
モルガナの言う通りだ……全部と戦っていたら力を使い果たしてしまう。とはいえ状況は挟み撃ちだ。
どうする――
「グォォォォォォッッ!!」
アバドンが大口を開き歯を見せつけながら襲い掛かって来た。
それをララが無言で凍りつかせるが、直ぐに氷を破り復帰してしまう。
「めんどくさ……」
こんな状況でもめんどくさいと言えるとは。
……もう、考えている時間は無い。
「仕方ない! みんな、やるぞ!」
「――大丈夫。来た」
「え!?」
覚悟を決め戦闘に入ろうとしたその時。
遠くから、大人の男の声がした。
「ストーンキャノン」
声がした直後、アバドンの頭部を横から一発の大きな石塊が貫通していき風穴を開ける。
絶叫を上げながらその動きを止め――
更にそこへ凄まじいスピードで赤い髪の女が現れ、ララに背中を向け真ん前に立った。
女は両手に握りしめた剣を振るい、絶叫を上げている途中のアバドンの大口を光速の一閃にて両断。
シャドウの巨体が泥の様に崩れ落ち消滅していき――
女は背後へ振り返り野性味を感じさせる笑みを浮かべ。
「待たせたわね、ララ!」
「げっ、赤ママ」
……どうやらララの身内の様だった。