ペルソナ5R×無職転生 〜怪盗団と異世界からの来訪者〜 作:和井江一
――時は少し遡る
「到着しました、ルーデウス・グレイラット」
ラヴェンツァに誘導されて青い扉を潜り抜けた先――そこに広がる光景はあまりにも異様な空間だった。
共に来たエリスとオルステッドも物珍しそうに周りを眺めている。
「お前やナナホシの元居た世界とは…………禍々しい雰囲気の場所なんだな……」
「あ、いえ。ここは違うんですオルステッド様」
勘違いされている様なので説明しようとしたら「私が説明します」とラヴェンツァが代わってくれた。
しかし、日本にこんな場所が存在していたなど俺自身も驚きだ。
薄暗い地下鉄。
その床や壁、天井に張り巡らされた赤い血管模様、数十年かぶりに見たエスカレーター。
そして……おすわりしている大きな白い犬。
「……なんか見覚えのある犬が居るな……」
「レオじゃないの」
エリスの言う通りどっからどう見てもレオだ。
家を守護する聖獣というよりペットみたいになっている我が家のレオだ。
白いワンコはこちらへ駆け寄って来た、間違いない。
「大きくなったわねレオ!」
うん、大きく……ん? 大きくなったのか? 元から大きいからよく分からない。まあエリスが言うのなら大きくなったのだろう。
おそらくこのレオは未来の世界から来た方だろう。
頭をなでてやりながら問いかける。
「元気そうで何よりだレオ。ララは一緒じゃないのか?」
レオは二、三回吠えてから降りのエスカレーターへと視線を向けた。
先に中へ行ったという事だろうか、たぶん。
「ララは怪盗団と一緒に下へ降りてパレスに行った様ですね。彼は残りの怪盗団を待っているらしいです」
「え、分かるの?」
まさかのラヴェンツァが通訳をしてくれた。
結局この子は何者なんだ……位の高い存在であろう事は察しがつくが。
「ねぇ、ラヴェンツァ。下に行くと『パレス』って奴に行くなら上はどこへ行くの?」
「日本の渋谷駅前です」
「にほん……?」
「俺とナナホシの、故郷だよエリス」
そうか……上がりのエスカレーターを登れば日本へ行けるのか。
一瞬アニキの姿が脳裏を過ぎったが……今は時間が無い。
「ララも先に向かったなら俺達も早く行くぞルーデウス」
「はい。エリスも準備はいいな?」
「いつでも行けるわよ!」
俺、エリス、オルステッドの三人でパレスの中へと突入する。
「私が御案内できるのはここまでです……ご武運を」
ラヴェンツァに見送られながら――
「ねぇ、ルーデウス。この階段動いてるわよ」
「何かの罠では無いだろうな?」
「罠では無いです」
降りながら二人は興味深そうにエスカレーターを観察していた。
――――――――――
そして降りた先――ラヴェンツァの口から『パレス』と告げられたその場所の正体は、メメントスと同様の禍々しい血管模様が張り巡る魔法都市シャリーアだった。
「街が大変だわ! 早く家に帰らなきゃ!」とエリスが剣を持って突っ走り掛けたのをオルステッドに止めてもらってから説明。
状況を理解してもらい三人で先へ進んで行く。
たびたび現れ襲い掛かってくる敵――『シャドウ』を返り討ちにしながら進んで行ったその先で。
ついに、見つけた。
知らない人間達――おそらく『怪盗団』と呼ばれる者達であろう中に混じる娘の姿を。
「ララ……!」
ミグルド族の特徴である小柄な体格と青い髪。何よりあのムスッとした顔。
ロキシーの帽子に、俺が愛用していた杖アクア・ハーティアを持っている……未来で俺達が渡したのだろうか。
などと感慨に耽っている場合では無い。
先ずは娘に襲い掛かる名前も知らない顔デカモンスターを倒す。
「ストーンキャノン」
無詠唱、高速で放たれた石塊の砲弾がデカい顔を穿ち大きな風穴を空けた。
更に横に居たはずのエリスはいつの間にかララの目の前まで剣を抜きながら駆けつけており、大口を開いた顔デカモンスターを一撃で一刀両断にしていた。
そして背後へとニヤリと笑いながら振り返り。
「待たせたわね、ララ!」
「げっ、赤ママ」
「……」
ララ。げって何だ、ママに対してげって。
「ララ、大きくなったわね!」
「うん。赤ママと会えたのは嬉しいけどお尻の古傷が痛む」
あぁ……なるほど……イタズラしまくってそのたびにエリスにお尻ペンペンされてたもんな……姉弟で一番されてたもんな。
(エリス基準で)手加減してたから傷は無いだろうけど……
「……行かなくていいのかルーデウス」
反対方向から迫っていたシャドウ数体を素手で瞬殺してきたらしいオルステッドが戻って来て、後ろから声を掛けられた。
「行きますよ」
もちろん行くさ。今すぐララに駆け寄りたい……けど正直緊張するんだ。未来から来た娘とか何から話したらいいんだ。
どんな反応をされるだろうか、実は反抗期でパパ近寄らないでとか言われたらどうしよう……
「パパ何してんの? 居るの分かってるんだからこっち来なよ」
ララの方から声を掛けられた。
―――――――――――
「ララ。元気そうで良かった。怪我は無いか」
「怪我はないし私はいつでも元気だよ」
「俺達はラヴェンツァって子から案内されて来て……」
「知ってる」
未来から来た、成長した娘と対面するとは奇妙な感覚だ……ついさっきまで俺の中のララはもっと小さかったから。
「その帽子や杖……俺やママのだろ」
「うん。ローブもだよ」
普段から何考えてるか分からないよく分からない子だったが、貰ったモノを大事にしてくれているようだ。
レオと一緒とはいえ一人でこんなとこまで来て頑張って……涙が込み上げてきた。
「成長したなぁ、ララ……」
「パパは昔から変わらないなぁ」
「うん……パパは変わらな……ん?」
……待て、今の変わらないは褒められてるのか?
まあいいや。今は出会えたことを喜ぼう。
「オルステッドまで来たんだ」
「あぁ……」
「……パパ、オルステッドに魔力は使わせたらダメだよ?」
「分かってるよ」
今の声はララにしてはガチトーンだった気がする。
例えオルステッドが駄々をこねても使わせないようにしよう。
そしてララと一緒に居た五人組へと目を向ける。
仮面を着けた変わった格好の集団……一瞬ペルギウスの精霊の仲間かと思ったが違うだろう。
何か二頭身の猫っぽいの居るし。
「俺はルーデウス・グレイラット。君たちが『怪盗団』か」
「そうだ。俺は雨宮蓮……ジョーカーと呼んでくれ。あなたがララの父親か」
「うん……あ、このパレスの主の方じゃないよ?」
「あぁ、わかってる」
「ワガハイ達が怪盗団ってよくわかったな」
「ラヴェンツァから話はだいたい聞いたからね」
「ラヴェンツァ殿が……なら大丈夫か」
黒いロングコートを羽織った仮面の少年と二頭身の猫が応えた。猫喋れるのか。
ロングコートのリーダーっぽい少年は、口数が少なく見た目の年齢の割に非常に落ち着いた雰囲気だ。
そしてその少年の後ろから茶髪の少女が僅かに身を隠しながらこちらを見ている。人見知りなのだろう。
「大丈夫だよフタバ。パパは怖くないよ」
「お、おう、ララ……えっと、はっ、はじめまして……」
「はじめまして。うちの娘と仲良くしてくれてありがとう」
「あ、ひゃいっ。ども……よろしくです……。――どうだジョーカー、ちゃんと知らない大人に挨拶出来たぞ私っ」
「そうだな。よく出来た」
「えへへ」
何だか見ていて微笑ましい二人だな。
「ララさんのお父様ですね、よろしくお願いします! ララさんにはとても助けられていまして……!」
更に赤髪の少女はものすごく丁寧に挨拶してきた。反射的にこちらも丁寧なお辞儀を返していた。
ララが『怪盗団』なんて呼ばれている者と一緒にいると聞いてどんな奴等かと少し不安もあったが、皆いい子そうだしマスコットみたいな猫も居るし安心だ……
そう思っていた時だった。
「ルーデウス。残ってる奴が居たわ」
「え?」
エリスの声を聞き目を向ける――するとそこには怪盗団の真後ろから迫る黒い一体のシャドウが居た。
「危ない!」
声を上げ杖を構えた直後。
銃声が鳴り響いた。
「ヒャはハハハッ!! 蜂の巣にしてやるッ!!」
カラスのくちばしみたいな黒い仮面の男が、極悪さに満ちた目つきと声で笑いながらシャドウを撃ち抜き、剣で真っ二つにしていた。
――俺の直感が告げている。アレは敵だと。
「そこを動くな、娘に近づいたらストーンキャノンぶち込むぞ!」
「待ってパパ。アケチも私達と協力してくれてる。ちゃんと味方」
「……え?」
味方? 今ので? マジで?
周りの反応も……いつものことみたいな感じでマジっぽいな……
……そうか……
「ララ……友達は、選びなさい……」
「え〜」
「待て。僕はララと友達なんかになったつもりは無いけど?」
こうして俺達はララと『怪盗団』と合流した。