ペルソナ5R×無職転生 〜怪盗団と異世界からの来訪者〜 作:和井江一
自分達『怪盗団』と異世界から来た人間達はセーフルームにて話し合いを続けていた。
「……俺が、パレスに介入か……ラヴェンツァからも言われたけど、よく分からないんだよな正直」
「私も別に詳しくないからそこまでは分かんない。モルガナに聞いて」
「ワガハイに丸投げかよ」
「そこの猫か……」
「言っておくがワガハイは猫じゃねぇぞ!?」
猫じゃないと言われルーデウスは「え、ごめん」と驚いた様な申し訳なさそうな声で返した。
更にその隣に座るエリスがキリッとした目をモルガナへ向け、
「猫じゃなくても何でもいいわ、どんな感触がするか触って確かめてもいい? 始めて見た時から我慢してたの」
これまでの口数少ない様子と違い何やら凄い熱を感じる喋りだ、彼女は獣が好きなのだろうか。
「……いや……遠慮する……何か本気で身の危険を感じる……」
いつもの騒がしい拒否と違い真面目な口調で断わった。
少し戦闘を見ただけだが、確かに彼女は素手でシャドウの顔を潰したりもしていた。危険を感じるのも仕方ない。
エリスを宥めながらルーデウスはララに向き合い、
「すまん、てっきりララは色々知っているものだと……何か、あの年老いた俺の事も知ってそうに喋ってたし……」
「あぁ。それはお婆ちゃんがパパの心から聞いた声を時間経ってから私も又聞きだけ。断片的なことしか知らないよ」
「あぁ……なるほど、ゼニス母さんか……。それにしてもララ、成長して凄い喋る様になったんだな」
「……実は結構念話で喋ってる。認知世界だと誰にでも通じるっぽいから」
「え、そうだったの!?」
「そうだったのか……」
……俺も知らなかった。俺達とパレスに入ってからララはずっと念話混じりで喋っていたのか。
「それより本題。パパには頑張ってパレスの警戒度を下げてもらう。今のままだとオルステッドに頼らなきゃ勝てない」
「その、オルステッドさんに頼ったら駄目なのは何故なんですか?」
芳澤が手を挙げて質問し、それにルーデウスとララ、オルステッドが答える。
「あぁ……君達には関係ない事だけど。こっちの世界にもロクでもない神が居て、将来起こるソイツとの戦いの為にオルステッドには魔力を温存しといてもらわないといけないんだ」
「呪いで魔力の回復がめちゃくちゃ遅いの」
「……そういう事だ」
「そうなんですか……」
詳しい事情は分からないが、魔力を温存しなければいけない状況であるらしい。
ならば全力で力を貸せなど頼むわけにはいかないか。
「しかし、警戒度を下げろと頼まれても具体的にどうすれば……」
ルーデウスがそう呟いた直後、自分の隣に座り何かを調べていた双葉が「おっ」と声を漏らす。
「どうした?」
「メメントスも合体してるからか広範囲のサーチが出来たんだけど……シャドウがウジャウジャ湧いてるし、罠みたいなのも多数出現してる。怪しい場所も見つけた」
「怪しい場所?」
「位置はだいぶ遠いけど……特に気配の場所が二箇所ある。地図でもあれば詳しい場所が……」
その双葉の発言を聞きながらララがローブの中からゴソゴソと折りたたまれた紙を取り出しテーブルの上に広げていた。
何とそれは地図だった。
それを見てルーデウスとエリスが反応を示す。
「ララ、お前シャリーアの地図なんて持って来てたのか!?」
「何かシャリーアみたいなとこに行く未来は何日か前から見えてたから一応」
「流石ララね! 一緒にレオの散歩に出た時におやつの持ち出し禁止したのにコッソリ持ち出してただけあるわ!」
「赤ママそれ褒めてる?」
あらかじめ地図を用意しておいたとは準備が良い。
双葉は「助かった!」と地図を受け取りそれを眺めながらポツリと呟く。
「ペン無いかな……」
「……使うか?」
その一言にすかさず上着の中から一本のペンを取り出したのは何とオルステッドだった。
……なんか如何にも高価そうな見た目をしたペンだ。使うのが怖いくらい高級そうだ。
ルーデウスが「また高いモンをホイホイ人に渡して……」と小さく呟くのが聞こえる。
普通のペンを求めていたであろう双葉も面食らった顔をしていたが御礼を返しながら恐る恐る受け取り慎重にペンを動かし始めた。
仏頂面な怖い顔だが親切な人なのはわかった。
「ここが現在地、で……歪みの特にデカい場所がこの二箇所だ」
そう言いながら双葉がマークを付けたのは地図上の二箇所だ。
一つは現在地からはだいぶ遠い位置にある都市の端……二つ目は最初のマークよりは近いが、来た道を引き返さないと辿り着けない。
「歪みの大きい場所は……確かに気になるな。ララはそこにお父さんを連れて行きたいのか?」
「うん。パレス主のパパの心の一番歪みが強い部分って事でもあるだろうからね」
俺の質問にララは首肯する。
だが――
「……どっちも歩いて行ってたら時間が無くなるんじゃないのかい?」
無言で話を聞き続けていた明智が、俺が思った事と同じ考えを口にする。
「確かに、明智の言う通りだ。ワガハイが車に変身してもいいけど……」
「車に変身――!?」
モルガナの言葉に驚いたルーデウスがツッコミを入れるが、それはララの発言に遮られた。
「フタバ。現在地と歪みの大きい地点の近くにある罠の配置は分かる?」
「ん? まあ、だいたいはな」
双葉はそう答え、更に罠のある位置に◯を入れていく。
「パレス全域に出てるし、探すまでも無く近くにもあるぞ」
「うん。たぶんこの罠は、転移魔法陣なんだけど……」
「てんいまほうじん?」
「◯に乗ったら別の◯のとこに移動する的な奴」
「あ〜、なるほどねぇ……ワープポイント的な。つまり転移魔法陣って書くのか」
「コレを利用すれば簡単に目的地まで行ける」
話の最中「ちょっと待て」とルーデウスが口を開き、
「ララ……転移魔法陣を利用するのは良い手だと思うが。どの魔法陣がどこに転移するのかは分からないんだろう?」
「そうだよ。だからパパが必要」
ララがそう答えた直後、モルガナが「そうか!」と声を上げ言葉を続ける。
「パレス主と同一人物であるララの親父さんなら、認知次第で転移魔法陣の移動先を自由に切り替えられるかもしれないのか!」
「その通り。パレス主のパパの強い感情も罠なんかには籠もってないだろうから簡単に書き換えられると思う」
「あぁ、なるほど……うん。何となくはわかった」
ちょっと自信なさそうに答えるルーデウス。
しかし……確かに認知を書き換え転移先を好きに切り替えられるなら移動時間がかなり激減する。
試す価値のある方法だ。
そこから更にモルガナが発言を続ける。
「おそらく『歪みの大きい場所』ってのもパレス主の心の歪みが特に影響している場所だ。そこにララの親父さんを連れて行って、良い方向に認知世界を変える事が出来ればいいんだが……」
「細かいとこは行ってみなきゃ分からないし。後はパパの現場での判断が重要になる」
「……そうか。責任、重大だな」
不安気に視線を俯かせる彼に、エリスが隣から強い信頼の目を向けながら声をかける。
「大丈夫よ、私が隣に居るから。それに……ルーデウスなら上手く行くに決まってるわ」
「……あぁ、ありがとう」
俺からも、声を掛けておこう。
少しでも彼の心が楽になるように。
「俺達もついている。力が必要なら頼ってくれ」
「君達もありがとうな」
彼は少しホッとした表情になった。
話に一段落ついたところでララはルーデウスの肩に手を置いて……
「という訳で、パパの活躍はここからだ」
「そんな打ち切り漫画みたいな言い方するなよ」
「ブホッ!! あ、ごめん……」
ララとルーデウスと吹き出した双葉の寸劇が終わり、セーフルームから出発する時間になった。
――――――――――
セーフルームに残るメンバーは芳澤、明智、そしてオルステッド。
モルガナ、双葉、ララ、ルーデウス、エリス、そして自分の計六人で近辺にある罠『転移魔法陣』を目指す。
すると歩いて五分程の位置に発見。青白く光る魔法陣が確かに存在した。
すぐに見つかるとは……本当にパレス中にたくさん配置されているのだろう。
双葉が地図を広げ、ララが転移魔法陣を点検し機能する事を確認してからエリスがルーデウスに声を掛ける。
「やれるわね、ルーデウス?」
「あぁ。やってみせる」
ルーデウスは転移魔法陣の前に立ち止まり、深呼吸。そして小さな声を漏らした。
「歪みの、一番大きな原因か……」
その後に、二人の名前が溢れ出る。
「……ロキシー……シルフィ……」
数秒の沈黙の後、覚悟を決めた様に彼は目を空けながら小さく息を吐き、足を一歩踏み出してエリスも続いた。
「皆も一緒に行くぞ」
ルーデウスに続き俺も全員へ号令をかける。
全員が転移魔法陣の上に乗り――次の瞬間。
一瞬の閃光と共に俺達は転移した。
――――――――――
転移魔法陣により転移した先――
そこに広がる光景は、先程までとは雰囲気が違った。
同じく中世風な景色の街並みではあるが――まるで別の場所の様にも見えた。
「ここは、同じパレス内なのか?」
「うん、ジョーカー。変わらず同じパレスだし、私が感知した歪みの大きい場所はここで間違いない」
俺と双葉のやり取りの横で、エリスとルーデウスが驚いた様な声をあげている。
「ルーデウス。ここ、アスラ王国よ!」
「あぁ、やっぱ、そうだよな。何で魔法都市シャリーアの一部がアスラになってんだ……?」
そこにモルガナが説明に入る。
「あくまでパレス主の心が生み出した世界だからな……何かの歪みで違う場所と合体してたって不思議じゃない」
その説明に「確かにそうか」と答えた直後、ルーデウスの表情が青くなって行くのが見えた。
「いや、話してる場合じゃない! 年老いた俺のパレスの、特に歪んでる場所で、アスラ王国……何が起きるかなんて一つしか無い!」
「何があるんだ?」
俺の問いかけに彼は走り出しながら答える。
「俺の妻……シルフィが死ぬ……!」
「――!?」
詳しい事は知らないが、切羽詰まった空気なのは伝わった。
「パパ、焦ったらダメ、落ち着いて。敵が居る」
「――っ!」
娘の声に彼は立ち止まり、周囲を見渡す。
すると挟み撃ちにする様に左右、そして背後から複数の剣を構えた人間が迫って来る。
「アレは全部シャドウだ!」
双葉がそう声を上げたと同時、左右が迫る軍勢が一斉に正体を現しシャドウとなる。
「邪魔をするな」
「ブリザードストーム」
ルーデウスとララが同時に同じ魔法を放ち、左側の軍勢へ一斉に氷槍の雨が襲い掛かる。
召喚した『オーディン』の雷撃とモルガナの疾風による魔法攻撃で右側から迫る軍勢を殲滅。
背後からの敵はエリスが全て返り討ちにし斬り伏せた。
「大したことない奴等だ、先行くぞ――」
そう、双葉が喋りかけた時だった。
エリスが突如、目を見開き叫ぶ。
「みんな、動いたら駄目よ!! 死ぬわ!!」
「え――!?」
突然どうしたのかと問いかける前に、正面から――老婆の声がした。
「――剥奪剣界」
剣を構えながら正面の離れた位置に現れた一人の老婆は、こちら全員に警告するように口を開く。
「アンタら全員射程圏内だ。死にたくなけりゃ動くんじゃないよ」
何故かは分からない――だが、本能的に危機を察知し、首元に刃を突きつけられているような錯覚に陥り、足を動かせなくなってしまった。
相手の姿を見たルーデウスは緊張感に冷や汗を浮かばせながら口だけを動かす。
「エリスの言う通り……みんな、絶対動くな……ララも、絶対動くなよ」
「わかってるよ。水神レイダでしょ、アレ」
「水神……レイダ?」
只者ではなさそうだ……何者かを問うと、ルーデウスが口を開く。
「剣士でもトップレベルの人間だ。認知存在なら本物程の強さじゃないだろうが……『剥奪剣界』の射程圏内で一歩でも動けば、一瞬で首が飛んで死ぬ」
「ひっ……!?」
その説明に双葉が恐怖に顔を真っ青にする。
本当だとしたらあまりに馬鹿げた、信じられない性能の技だ……
しかし、ルーデウスもエリスも余裕のない表情になっている本当なのだろう。
更に、状況はそれだけで終わらなかった。
「……後ろから、またウジャウジャとシャドウが湧いてきてる……!」
「こいつはマズイぜ、ジョーカー……! ワガハイ達は動けねぇってのに」
双葉とモルガナは背後から再び迫るシャドウの軍勢を感知した。
このままでは、本当にマズイ。俺達は身動き一つ取れない状況だ。
せめて、後ろを守ってくれる誰かがいれば――
「――大丈夫。私達は負けない」
こんな状況でも変わらず冷静な無表情のまま、ララがそう囁いた。
その直後だった。
距離を詰めてきていたシャドウの軍勢の先頭の列に、氷の塊が降り注がれその進行を妨害した。
「――っ!?」
突然の光景に意識が背後へと集中し――
そして、俺達の背後……シャドウの軍勢から守る様な立ち位置で一人の男が跳躍しながら舞い降りて来た。
腰に日本刀を携えた狐の仮面を着けた男……
その姿を見間違えるわけがない。俺の大事な仲間で、かけがえのない友人。
「フォックス!!」
「ジョーカー。助太刀に来た」
フォックス――喜多川祐介だ。
皆で助けに来てくれたのだろうか。
辺りを見渡す……が、祐介以外は仲間の姿は見えない。
「オイ、他の『怪盗団』の皆はどうした?」
そのモルガナの疑問の声に、祐介はキリッとした目をこちらへ向けながら答える。
「――皆とは……はぐれた。俺は迷子だ」
「最後までカッコつけろよオイナリ!!」
緊迫した状況の中、双葉の声を大にしたツッコミが響き渡っていた。