ペルソナ5R×無職転生 〜怪盗団と異世界からの来訪者〜 作:和井江一
突如現れた認知存在、水神レイダの『剥奪剣界』……更に身動き出来ない状況で背後から襲い掛かって来るシャドウの群れ。
そして緊迫した状況の中、助太刀に現れた『怪盗団』の一人フォックス――喜多川祐介。
出会うなり「迷子だ」と言い放つ変わらずっぷりだが、彼は心強い。
「アンタ。誰かは知らないけど、それ以上私達の方に近づいたら駄目よ。レイダの剣が届くわ」
エリスの警告。
それに対し祐介は「わかった」と即答。
「誰なのかもどこの国から来た者達かも知らないが、彼等と一緒にいるなら味方なのだろう。言うことを聞こう。……ジョーカー、俺はどうすればいい?」
「先ずはシャドウを殲滅してくれ。ソイツらの強さは大したことない」
「承知した」
返答と同時に祐介は氷結魔法を地面に向かって発動。
地表を凍結させシャドウ達を一時的に足止めながらアサルトライフルを取り出し連射、シャドウにダメージを与えていく。
一方、いくつかのシャドウが足止めを食らいながら火炎魔法を放ち反撃をしてきた。
「遅い――」
燃え上がる複数の火炎を祐介は完全に見切り、回避しながら日本刀を構える。
そして、ペルソナを召喚した。
「カムスサノヲ」
ペルソナの力により祐介のスピードと剣速が上昇し、刀を振り抜く。
そこから放たれる、空間を支配するかの如き超高速の剣閃が四方八方からシャドウの群れを蹂躙し、制圧した。
「相手にならん」
そう呟き刀を仕舞いながら振り返り、認知存在『水神レイダ』と視線が交差していた。
「やるようだね。けど、雑魚を蹴散らしたからってどうなるのさ……あんたもあと数歩近づけば、この剣が届く」
「……うむ。俺のカムスサノヲもこれ以上近づく事を危険と感じている様だ。だが、遠距離からの魔法ならばどうだ?」
魔法を使おうとした祐介に、ルーデウスが「ダメだ!」と口を出し止めに入る。
「水神流という流派は、物理的なものだけでなく魔法もカウンターの対象だ。俺達に魔法が跳ね返って来て余計状況が悪くなる」
「魔法も、だと……? 剣で魔法を跳ね返すとは……恐ろしい敵だな。美を感じる技でもあるが」
「えぇ……」
祐介の発言に混ざるマイペースな一言にララですら困惑の声を漏らしていた。
「はっ、自分が向けられてる剣に対して美しさを感じるなんて面白い奴じゃないのさ。アンタみたいなのは嫌いじゃない……そいつらと一緒に死んでもらうけどね」
「悪いが、俺は死なん」
祐介は即答し真っ向から言い返しながら剣の柄に手を置いた。
立ち向かおうとする彼に対し、双葉は不安気に声を掛ける。
「フォックス。レイダの剣は射程圏内に入ったら一歩の身動きでも斬撃が飛んで来て首を撥ねられるらしいんだぞ……策はあるのか?」
「ある」
「あるんだ!?」
堂々と策はあると返す祐介。
モルガナも少し不安そうな声で確認する。
「本当に、大丈夫なんだろうな?」
「あぁ、上手く行けば逆転は可能だ」
祐介と、視線が合う。
「ジョーカー。俺に任せてもらえるな?」
正直、不安はある……俺達全員が手出し出来ない状況で、祐介一人で大丈夫なのだろうかと。
だが……「俺を信じろ」という熱い意思が彼の双眸から伝わってくる。
リーダーとしてやるべきは心配でも制止でもないだろう。
「任せたフォックス。信じている」
「あぁ」
ふ、と笑みを溢し……鋭い目つきへと変えながら一歩前に踏み出していく。
「本当に、大丈夫なのか?」
心配するルーデウスに「あぁ」と俺は返した。
「フォックスならやれる」
「……わかった。俺も、信じるとするよ」
根拠は無いが、そう言い切った。
しかし、ルーデウスはそれでも落ち着けない表情をしていた……
初対面の相手を全面的に信頼しろという方が難しい。その反応も仕方ないだろう。
そんな彼に、ララが横から声をかける。
「大丈夫だよ、パパ。あの狐の仮面も、未来にちゃんと居たから」
「え?」
ララの言葉が聞こえた後、祐介はいつでも刀を抜ける様に構えながらまた一歩前に踏み出した。
一帯は無音になったかの様に静かになる。
「行くぞ、カムスサノヲ」
静寂の中で、祐介は静かにペルソナを召喚した。
そして……更に一歩、足を前へと踏み入れ――
レイダと祐介の声が重なった。
「入った」
「跳ね返せ!!」
『剥奪剣界』の射程圏内に踏み入った祐介に音速の斬撃が飛んで来た――普通ならば避けられない、気付いた時には既に身体がバラバラにされている一撃。
しかし、その一撃は祐介の首へと到達する前に――ペルソナ『カムスサノヲ』が飛ぶ斬撃を更に弾き返していた。
「何っ!?」
弾き返された斬撃は驚愕の声を漏らすレイダの右肩を深く斬りつけ、体勢が大きく崩れた。
その光景に双葉とモルガナが感嘆の声を漏らした。
「フォックスの奴、カウンター技をカウンターで返したぞ!」
「マジかよアイツ!」
フォックスに労いの言葉を向けながら、交代する。
「よくやってくれた、フォックス」
「あぁ」
自由になった身体を動かし、ペルソナを交代。
「撃て、ラウール」
『ラウール』を召喚、魔法を放ちレイダの右手に持つ剣を撃ち抜き、弾き飛ばした。
それと同時に、身体が自由になったエリスが駆け出し剣を抜き……
次の瞬間、放たれた光速の一閃がレイダの身体を上下真っ二つに両断する。
「アンタは、何者……」
その発言を聞いたエリスは崩れ行く認知存在『水神レイダ』を見下ろしながら……どこか淋しげに呟いた。
「……やっぱ。ただの偽物なのね」
――――――――――
それから、喜多川祐介を新たに加えた一行は焦燥感を隠せないルーデウスの後を追うようにして移動を続けた。
本物のアスラ王国とはかなり地形が違っているらしい。
他の仲間達の事や祐介がどこから来たのかも聞きたいが、そういう空気ではない。
落ち着いた後で聞くとしよう。
都市の中を彷徨う道中、激しい戦いがあったのか瓦礫や破壊の跡が散乱し、多数の死体が倒れている。
あくまで認知上の、本物の死体ではないとはいえ……気分の良いものではない。
「これは、酷いな……」
「ララの親父さんの話だと、クーデターだかで戦いがあったらしいな」
祐介とモルガナは顔をしかめながら歩き、双葉が怯えた様子で腕を掴んできた。
「ごめん、私、無理……こういうの見れない……」
「無理はするな。手を握ってやるから、目を瞑っていろ」
「うん、ジョーカー」
凄惨な戦いの跡を進んでいた最中、ルーデウスが道端に倒れていた一人の男に反応を示した。
認知存在であろう彼に「ルーク」と呼び掛け、反応を示した事に安堵の表情を浮かべていた。
そして探している人物がいる道を聞き出し、その方向へ駆け出していく。
周りの死体が無くなり狭い路地を進んで行く道中、双葉が声を出し全員へ呼びかけた。
「この狭い路地を抜けた先に、何かの気配が三つある。何かあるかも」
「わかった――行ってみよう」
先頭に立つルーデウスとエリスに続き真っ直ぐ進み路地を抜ける。
すると、都市の開けた場所へ出た。
その広場には認知存在であろう人々の群衆が群がっており、その中心部に……磔にされている一人の姿が見えた。
白髪と長耳が特徴的な女性だ。両耳にはイヤリングが付いていたであろう跡が確認できる。
「シルフィ!!」
その姿を見たルーデウスが大声で名を呼び、続いてエリスも声を上げる。
「まだ生きてるわ、ルーデウス!」
「あぁ、助けるぞ!!」
声を上げながら杖を構えるルーデウスとエリス――
その二人の服を後ろからララが引っ張り引き止めた。
「駄目。まだ白ママに近づかないで」
「な、何でだ!?」
「目的を忘れないで……ただ助けるだけじゃ、パレス主のパパの怒りは収まらない」
「え……どういう、事だ……?」
「助ければ収まるんじゃないの?」
ルーデウスとエリスの反応にララは小さく溜息をついた後「あのね……」と言葉を続けようとした……その時だった。
「待って! 動かないで! 上から……強力なシャドウの気配が来てる!!」
「――!」
双葉の声に従い上空を見上げる――
すると、そこには一体の巨大な蠅の姿をしたシャドウが杖を片手に持ち羽を広げながら飛んで来た。
「ベルゼブブか……!!」
モルガナのその台詞と同時にシャドウ『ベルゼブブ』が広場へと勢いよく着地した。
磔にされた、シルフィの前に。
周囲に群がっていた認知存在の群衆は怯えながら遠くまで逃げていく。
「何だお前は、そこをどけ」
怒りの混じったルーデウスの声……それに対し『ベルゼブブ』は、更に激しい怒りの籠もった声を返した。
『退け、だと? シルフィに近づくな。俺のシルフィに近づく奴は誰だろうと全員……死ねばいい……!』
「え……」
まさかの返答だった。『ベルゼブブ』はシルフィを襲いに来たのではない……守りに来たのだ。
「……あの蠅のシャドウからは、パレス主のパパの心と魔力が籠もってるのを感じる。本人ではないけど、その影響を強く受けてるね」
そのララの一言にルーデウスは暫し沈黙してから『ベルゼブブ』へ言葉を返した。
「待ってくれ、俺達はシルフィに危害を加えるために来たんじゃない! 助けに来たんだ!!」
『……助けに?』
「そうだ! だから安心してくれ! シルフィを死なせはしないから――」
『……お前は何を言っているんだ?』
「――え?」
シャドウの反応は……話せば話すほど怒りを増しているのが声色から分かった。
そして、強い憎しみと悲しみが籠もった声で、言った。
『シルフィはもう死んだだろう?』
沈黙が、その場を支配した。
「な……でも……」
『まさか認知存在のシルフィを救えばシルフィが生き返ると思っているのか?』
「そ、れは……っ」
怒りが頂点に達した『ベルゼブブ』は怨嗟の声を撒き散らす。
『ふざけるなよ!! シルフィは死んだんだ!! 俺の目の前でな!! 認知存在を救う!? 馬鹿にしているのか!? 死んだ人間は生き返らないんだよ!! シルフィの死を、侮辱するなぁっ!!!!』
空気を震わせる勢いで怒声を上げながら『ベルゼブブ』は魔法を発動、大規模に広がる火炎がシルフィを避けながら周囲の認知存在の群衆を焼き、街を火の海へと変えた。