ペルソナ5R×無職転生 〜怪盗団と異世界からの来訪者〜 作:和井江一
「大丈夫か、モナ。後は私達に任せろ!」
「頑張ってくれたモルガナには後で撫で撫でしてあげよう」
「あぁ。みんな頼んだぜ……撫で撫では別にいらんが」
『クー・フーリン』は祐介とエリスが戦ってくれている。
モルガナはいったん休ませ、双葉、ララと共にルーデウスと協力し俺達で『ベルゼブブ』の相手をする。
……だが、相手をする前に確認しなくてはならない。
「……ルーデウス。あのシャドウに、トドメを刺していいのか?」
「……俺にも君達にも帰るべき場所があるだろ。アイツは危険だ。誰も死なせる気はない、倒すしかないんだ」
その表情は、あきらかに無理をしているのが分かる顔だった。本心では、まだ話し足りないと思っているはずだ。
俺に続き、ララも彼へ問いかける。
「パパ。ここは本音で話すべき場所だから正直に答えて」
「ララ……」
「あのシャドウには色んな負の感情が詰め込まれてるから普通に倒してもパレスの警戒度は少し下がると思うけど……それでもいい?」
ルーデウスは頭を悩ませる様に沈黙した後、深く息を吐いて――「そうだな」と言葉を続けた。
「本当は、一度落ち着かせてまたちゃんと話したい」
その本音を聞いた俺とララは「分かった」と了承。
「つまり、あのシャドウはトドメを刺さない程度に力を奪えばいいんだな。ルーデウス」
「二人ともそんな即答で……普通に倒すより危険だと思うけど……」
「俺達も危険な目には何度も遭った。今更だ」
「……本当に高校生?」
ルーデウスと言葉を交わし、ナイフを構えながら先頭に立ち『ベルゼブブ』へ視線を突き付ける。
そして、背後から双葉の警告の声がした。
「さっきから動かないと思ったらソイツ杖に力を溜めてる! あまり溜めさせるとヤバいかも! ジョーカー、銃撃で中断させて!」
「――!」
双葉の声に従い銃を取り出し杖に向かって発砲する。
杖に直撃に力を溜める動作を中断させた――が、魔法の発動までは止められなかった。
『マハエイガオン』
闇の力を纏う呪怨の魔法が拡散され広範囲へと降り注ぎ、街の焼けにさらなる破壊を撒き散らす。
「ウォフ・マナフ!!」
光の力を宿した魔法で広範囲に渡って迎撃し、相殺しながら防ぐ。味方には当たらなかったが、焼けた建物や整備された道にぶつかり禍々しい色の焼け穴を残した。
「中断させてこの威力か――!」
そして相手の攻撃は止まらない。
むしろ……
『この杖を狙ったのか、貴様!! 許さん!! 許さん!!』
杖を狙われた事に怒り始めた。
……どういう事だ?
いや、じっくり考えている暇がない。
「次来る! この感じは、火炎だ!」
双葉の声に従いルーデウスが前に出る。
『ベルゼブブ』の怒声と彼の声が重なった。
『焼き尽くせ!! フラッシュオーバー!!』
「乱魔」
発動しようとした大規模な火炎攻撃はルーデウスにより止められる――が、
『イノセントタックッ!!』
『ベルゼブブ』は羽根を広げ、超低空飛行による高速の突進を繰り出してきた。
「何っ!?」
想定外の攻撃にルーデウスの反応が遅れガードが間に合わずに突進を受け吹き飛ばされてしまった。
そのままルーデウスにもう一度突進しようとする巨体を、ザオウゴンゲンを召喚し真正面から受け止める。
「ぐぅ……!」
凄まじい衝撃に身体が吹き飛ばされそうになるが、ペルソナの力を借りギリギリで足を踏み締め耐えた。
物理的な攻撃はしてこないと勝手に思い込んでいた、甘かった。
『死ねェ!! フラッ――』
『ベルゼブブ』が低空飛行状態から地に足を着き魔法を放とうとした直後。
「泥沼」
ララの声がした直後、両足を囲う程の沼が出現。シャドウの両足が沈み込み魔法が中断された。
『何ぃッ!?』
シャドウは焦った様にすぐさま羽根を広げ上空へ飛び脱出――その瞬間を狙い、ルーデウスが杖を構え。
「やるじゃないか、ララ」
「パパほどのじゃ無いけど」
親子の言葉が交わされながら、態勢を立て直したルーデウスにより魔法が放たれる。
「ストーンキャノン」
発射された石砲弾が中空の『ベルゼブブ』の片脚を抉って吹き飛ばし、更に貫通しながら尾に風穴を空けた。
『グォぉぉぉっ!!』
空中でのたうち回り無防備になった。今の内にペルソナ『オーディン』の魔法攻撃で撃ち落とす。
「エル・ジハード」
雷鳴が轟き、空中の相手を複数の雷撃が集束しながら全身を貫いていく。
身体中に傷がつき、羽根がボロボロになりながら、杖は強く握りしめたまま『ベルゼブブ』は地の上に落下していった。
「やったか!?」
「いや、まだだ!」
ルーデウスの言葉を双葉が即座に否定した。
その直後、地に倒れた『ベルゼブブ』の全身を白い光が覆い、数秒も掛からず瞬く間に傷が回復した。
欠損した部位までも、全て。
「クソ、回復、するのかよ……!」
連携で与えたダメージが全て無に帰し言葉を失うルーデウス。
一瞬で回復されては埒が明かない。
「双葉、あれも魔法か?」
「……いや、魔法とは、違うみたいだ。魔法というより……強烈な感情で『自分が瀕死状態』って認知を無理矢理書き換えてる、みたいな感じ? に見える」
「なんだと」
彼女の推察通り、魔法ではなく認知を無理矢理変えて回復しているとなれば……
「それ……魔法より厄介じゃないか?」
ルーデウスがそう溢す。
彼の言う通りだ、魔法ならば対抗手段は考えれるが認知の書き換えとなったら一気に対策が難しくなる。
双葉は更に話を続ける。
「……さっきの戦いであのシャドウがタックルして来た時に、杖に青い石が付いた装飾品が裏側に付いてるのが見えたんだ。『ベルゼブブ』が回復してた時、その装飾品の気配が急激に強まったのを感じたんだけど……」
その話の最中にルーデウスが食い付いた。
「青い石の装飾品……? まさか、イヤリングか!?」
「へっ!? あぁ……言われてみれば、イヤリングっぽかったかも……」
突然どうしたのかと思っていると、彼がその答えを口にする。
「青いイヤリングだとしたら妻に……シルフィに、プレゼントしたモノなんだ」
「え……」
「……このパレス主の方の俺は、シルフィを酷く傷つけ、裏切ってしまった。そしてシルフィはイヤリングを置いて家から出て行って……このままじゃいけないと、やり直そうと追いかけた時にはもう手遅れで、既にここで殺され死んでいたらしいんだ」
「そんな……」
「その強い無念でずっと身近な場所に付けているのだとしたら……込められている感情は、とてつもなく大きいだろうな」
双葉も言葉に詰まる。
パレス主には、そんなことがあったのか。
詳細は分からないが……大切な人と仲違いしたまま、目の前でその死体を見てしまったなど、確かに一生傷として残るようなトラウマになってしまうだろう。
先程の説明に続き、ララもシャドウの杖を眺めながら「なるほど」と口を開き。
「確かに、言われてみたら杖の裏側からパパの強い感情の気配を二つ感じる……その正体が白ママへのプレゼントとなれば、納得だね」
そう呟いたあと、彼女は父へと顔を向け。
「白ママのイヤリングも何とかしないと、終わらないよ」
「……」
娘の言葉に彼は苦渋の表情を浮かべ……決断したように、声を震わせながら。
「分かった。シルフィのイヤリングを、壊そう……」
「え、何で壊すの?」
「えっ!?」
ララの返事に梯子を外され驚いた声をあげるルーデウス。
しかし今回ばかりは、自分もララの気持ちは考えるまでもなく分かった。
「パパ。ここに居る人達は誰?」
「え……」
ルーデウスと、俺と双葉の目が合う。
そう。大切なモノを、わざわざ壊す必要など無いのだ。何故なら……
「私達は『怪盗団』だ!」
「傷を付けずに奪う役目は、俺達に任せてくれ」
大切な思い出の籠もった品。
傷付けずに頂戴する役……怪盗団が引き受けよう。