ペルソナ5R×無職転生 〜怪盗団と異世界からの来訪者〜 作:和井江一
「カムスサノヲ!」
祐介はペルソナの名を叫び、氷結の波を巻き起こす。
度重なる負傷により回避に間に合わなかった『クー・フーリン』は右腕を長槍ごと氷に捕らわれる。
『――!』
その好機に、エリスが剣を握りしめながら祐介を呼びながら突貫する。
「よくやったわ狐男!」
「狐男!? 捻りの無い呼び名だ!」
不満気に返しながら祐介も剣を構え魔法で速度を上昇させながら突撃。
高速の二振りの刃が迫り――
対する『クー・フーリン』は凍らされた右手を左手で長槍ごと引きちぎり、それを武器にカウンターの構えを取った。
「自分の腕を千切ったですって……!?」
衝撃の光景だが、立ち止まっている暇はない。
エリスと祐介の剣閃が真っ直ぐシャドウへ突きつけられ、『クー・フーリン』の長槍からカウンターが放たれる――
飛び交う血飛沫、祐介の右腕とエリスの肩に切り傷か刻み込まれ――
シャドウ『クー・フーリン』は身体を左肩から両断されていた。
祐介は刀をしまいながら、黒い泥の様に溶けていくシャドウへ言葉を向ける。
「自らの身体の犠牲にしてまで立ち向かう覚悟、敵ながら天晴だ」
――――――――――
「怪盗らしい出番となれば……ワガハイものんびり寝ちゃいられないな」
「モナ!」
「……大丈夫なのか?」
「あぁ! ワガハイも手伝うぜジョーカー!」
休ませていたモルガナが立ち上がり、横に並び立つ。
そして小さい腕を組み目の前のベルゼブブへ視線を突き付けながら、
「まずは『ソイツを盗る』って事を直接アイツに予告するぞ」
「それは……なんでだ?」
ルーデウスの問いかけにモルガナが答える。
「今のままだとあのシャドウに籠められているパレス主の感情が強過ぎて奪えないかもしれない……だが、予告する事で『奪われるかもしれない』って認知に変える事ができるんだ」
「認知を変えるか……暴走気味の相手に、本当に出来るのか?」
「お前達は一度アイツを追い詰めただろ。そんな相手から言われるんだ、『奪われるかもしれない可能性』を無視は出来ないはずだ」
「そうか……分かった。そっちは頼んだ、ジョーカー」
「よし、ジョーカー! 予告はリーダーのお前に任せたぜ!」
ルーデウスとモルガナに応え、前に出て先頭に立ち『ベルゼブブ』と相対し声を上げた。
「聞けっ!」
目の前のシャドウは歪んでしまってはいるが、私利私欲や悪意を持って暴走しているわけではない。
先ずは対話のテーブルに引きずり降ろすため……
「悲しみに歪み暴走したお前を止めるため。そのイヤリングを……俺達が頂戴する!」
ジョーカーからの直接の予告を聞き、シャドウの感情がますます昂るのを感じた。
『俺とシルフィの、唯一の繋がりを奪うだと!? 死にたいのか、賊がぁッ!!』
「ほ、本当に大丈夫なのか!? ますますキレてないか!?」
不安を隠せないルーデウスにララが冷静な表情を保ったまま告げる。
「……念話で聞いてみた感じ、あのシャドウの激情は白ママのイヤリングの影響に強く左右されてる。先ず奪わないと冷静な話し合いも出来ないと思う」
「……そうか……。頼むぞ、怪盗団! 相手から魔法が来るぞ、気をつけろ!」
「あぁ」
ルーデウスの言葉と共に前を向き――同時に『ベルゼブブ』は怒声を上げながら魔法を放つ態勢に入った。
『シルフィの命を侮辱する奴を、賊共を、全員燃やし尽くせェッ!!』
「この感覚、炎か。俺の乱魔で――」
「待ってパパ、アレは乱魔じゃ止めれない。『フラッシュオーバー』とこの世界の魔法との――混合魔術だよ」
「何!?」
シャドウの魔法発動の直前、双葉の警告が響き渡る。
「注意しろ、属性の合体した大規模攻撃が、地面から来るぞ!!」
『呪怨閃光炎!!!!』
地面の上に数十にも及ぶ闇色の魔法陣が出現。
次の瞬間、全ての魔法陣から禍々しい黒い炎が一斉に放出され、焼かれた街を黒炎で覆いさらなる地獄の様相へと変貌していく。
「プロメテウス! みんなを超強化だーー!」
「撃ち返せ、ウォフ・マナフ!!」
「ララ、一緒にやるぞ!」
「うん」
双葉のペルソナ『プロメテウス』の力により全員の身体能力、動体視力が上昇。
更に『ウォフ・マナフ』の光の魔法攻撃とルーデウスとララの親子による水魔術が同時に放たれ、『ベルゼブブ』の放った混合魔術の黒炎の威力は大幅に抑えられた。
それでも、街は漆黒の火の海の中だ。
「怪我人はいないが、こんな規模のを連発されたら対処が追いつかなくなるぜ、ジョーカー!!」
「だからこそ、短期決戦で行こう」
モルガナにそう返し、更に隣にもう一人並び立っって来た。
怪盗団の仲間、喜多川祐介だ。
「フォックス! あっちは勝ったんだな!」
「あぁ、エリスも無事だ。俺も手を貸すぞ、ジョーカー」
「頼む」
俺達の目的はイヤリングの奪取。ただ力をぶつけるだけでの攻撃ではダメだ。
相手の動きを制限し、無防備にさせる必要がある。
『奪えるものなら奪ってみろ!!』
そう叫びながら羽根を広げ上空へ上がる『ベルゼブブ』――そして、上からまた魔法を放つ態勢に入ったのを感じた。
「さっきの混合魔術の対処は俺達に任せて、怪盗団は行ってくれ!!」
ルーデウスがそう声を向け、ララは無言で親指を立てて来て、戦闘力の無い双葉の隣にはエリスが立った。
言われた通り、他の事を気にせず奪取のみに集中しよう。
『呪怨閃光炎』
「モルガナ、全力の風魔法で俺達を上に打ち上げろ!」
「おっ!? だいたんな事考えるな!?」
複数の魔法陣が地面から出現し、黒炎が放たれる――それと同時にモルガナが自分達三人を巻き込みながら風魔法を放ち上空へと打ち上げられた。
下からはルーデウスとララの魔術の気配がするが、俺達の相手は目の前に居る『ベルゼブブ』だ。
『追ってくるかぁッ!!』
相手は怒声を発しながら一本の火柱を左手から放ち迎え撃ってくる。
強力な魔術の直後は大規模な攻撃は出来ないのだろうか。
「俺に任せろ」
そう言いながら祐介が突風に乗ったまま上空から落ちてくる火柱へ手をかざし『カムスサノヲ』を召喚。
ペルソナから放たれた強烈な冷気が火柱を凍らせ美しく輝く氷の柱へと生まれ変わる。
「飛び移れ、ジョーカー!」
「ワガハイ達の剣を足場にして行け!」
「あぁ!」
突風の中から祐介とモルガナの二人の剣を足場にして跳躍――氷柱へと飛び乗り、落下していく氷柱の上を駆け上がる。
『まだ来るか賊がぁッ!!!!』
迎撃として『ベルゼブブ』の左手から放たれた雷撃。
「防げ!」
即座にペルソナ『コウリュウ』を召喚。
黄金に輝く巨体が雷撃を防ぎ、そして念動の力を行使をする。
「コウリュウ、念動の力で氷柱を操れ!」
ペルソナ『コウリュウ』の力が落下途中の炎の氷柱を操り、上空の『ベルゼブブ』へ向かって飛んで行く。
そしてワイヤーを放ち『ベルゼブブ』の首飾りへと引っ掛け、一気に接近し――
『呪怨閃光炎』
「――!?」
杖を握りしめた右腕から呪怨と火炎の混合魔術を、放ってきた。
そして気付いた。
先程から威力が抑えめの魔法を放ってきていたのは、強力な魔術を撃ったことによる反動ではなかった……
右腕に溜めていた本命から意識を逸らすために左手で小さい魔法を連続的に撃ってきていたのだ。
地上に複数と、俺の目の前に闇色の魔法陣が出現。
一斉に禍々しい黒炎が放出され、全身を魂ごと焼かれる様な感覚に襲われながら落下してしまった。
――――――――――
禍々しい炎が天と地を真っ黒な炎の海へと変えていく。
『愚かな賊が!! そのまま落ちて死ね――』
「ディープミスト」
少女の声と共に、『ベルゼブブ』の周囲一帯に濃い白い霧が発生する。
『なっ――!?』
すぐに白い霧を払いながら『ベルゼブブ』は声がした方向を見る――すると、その視線の先は建造物の上。
そこには、地面に居たはずのララ・グレイラットが杖を構え立っていた。
「ディープミスト」
連続的に放たれる白い霧。
それをシャドウは『鬱陶しい!!』と振り払い……
「へっへっへ、油断したな。私の事は完全に眼中に無かったろ」
『――!』
シャドウのすぐ背後、そこにはペルソナ『プロメテウス』の上に乗り浮遊する双葉が、杖の裏に飾られた青いイヤリングへと手を伸ばし外そうとしていた。
『なに――ッ!!』
接近に気が付き捕らえようと反撃に向けた左爪――それを『プロメテウス』の上に同乗していたジョーカーがペルソナ『ラウール』の力を借り受け止め、二人でイヤリングを杖から外した。
「頂いていく」
『――――ッ!! 貴様等ぁッッ!!』
「ジョーカー!」
双葉が魔法攻撃の前兆を感知。それに従いワイヤーを遠くの建造物へと引っ掛けた。
魔法による反撃に巻き込まれる前に双葉を片腕に抱えながらワイヤーで宙を移動しシャドウから距離を取って退避していく。
『シルフィぃっ!! シルフィーーッッ!!』
「……」
せめて傷は付けないようにと、丁重にこの手に握りしめる。
『ベルゼブブ』の泣き叫ぶような声に、双葉は微かに悲しそうな表情を浮かべていた。