ペルソナ5R×無職転生 〜怪盗団と異世界からの来訪者〜 作:和井江一
大天使『サンダルフォン』と相対していた一幕。
そこに現れた二人は『怪盗団』の設立にも大きく関わっている初期メンバー……俺と同じ学校に通う、かけがえのない仲間達。
坂本竜司と高巻杏だ。
二人もここまで来てくれたらしい……疲労していた身体に活力が湧き上がる。
しかしまだ戦いは終わっていない。双葉が『サンダルフォン』の落下した地点へ目を向け警告する。
「スカルとパンサーが来てくれたのは嬉しいけど油断しないで、アイツまだピンピンしてる! 何かしてくるかも!」
「せっかくのアン殿との合流を喜ぶ暇もねぇってか!」
「いや俺との合流も喜べよ!!」
「喜んでるだろ!」
「今俺の名前出てなかったぞ!?」
「二人とも言い合いは後にして!」
竜司がモルガナと言い合いになりそうなところで杏が中断させる。
そして祐介がフッと笑みを溢し、
「迷子組合流だな」
「「迷子組言うな!!」」
「何があったんだよお前ら……」
詳しい事は後で聞くとしよう。
真と春の行方も気掛かりだが、二人とも暗い表情でなくいつもの調子ということは大丈夫なのだろう。
意識を切り替え眼前の敵に集中する。
大天使『サンダルフォン』は金色に輝く鋼の身体を宙に浮かせながら声に深い怒りを滲ませ。
『人間共よ……あくまで神に逆らう意思を曲げぬか。ヒトなどという、貴様らの様な、醜く野蛮な種が――』
――何だろうか。なにか、違和感を感じる。
統制神の配下を名乗るこいつらの言葉にはヤルダバオトの意思や思想が反映されているのだとは思うが……
ヤルダバオトは歪んだ平和思想を持つ悪神ではあったが……あそこまで人間そのものに過激な敵意を抱いてなどいただろうか。
「……モナ……」
モルガナに問いかけようとする前に、『サンダルフォン』が動き始めた。
その周囲に無数の火矢が宙に浮かびながら出現し、地上へ狙いを定め。
「来るぞ!」
『聖なる火矢――アグネヤストラよ。人間共に天罰を下せ』
双葉の声と共に一斉に降り注がれる火矢――
今、自分達がいる広場全域に降りかかるほどの規模だ。
「全員ここから動くな!」
「私も手伝う」
ルーデウスの号令の後に、ララも続き二種の魔術が同時に発動。
認知存在「シルフィ」とシャドウも含む、この場に居る全員を守護する大きなかまくら型の土のドームがルーデウスの魔術によって出現。
更に土のドームの周囲をララの魔術による氷壁が覆っていく。
そのすぐ後に大量の火矢が地上へと降り注がれ広範囲に渡り破壊をもたらしていく。
氷と土のドームの表面を砕かれるような破砕音が何度も鳴ったが、貫通にまではギリギリ至らなかった。
『愚かな、自ら逃げ道を塞がれた場所に隠れるとはな』
攻撃の最中『サンダルフォン』は地上へ降りており、四本の大剣を生み出しドームの穴に向かって射出した。
『天軍の剣よ、貫け!!』
「遅いわよ」
その中の一本を真っ先に外へ出たエリスが光速の剣閃で切り払う。
『なに!?』
「俺達がやらせねえよ!!」
「行くぞスカル」
更に竜司と祐介がペルソナと共に手に持った武器を振るい、大剣を二本とも力づくで弾き飛ばし――
「ジョーカー!」
「あぁ」
最後に飛んできた一本をペルソナ『コウリュウ』の念動力で受け止め、飛ばし返した。
『ぬっ!』
返された大剣を避けた『サンダルフォン』に、杏のペルソナが炎を撃つ。
「行っけー!」
『うぉぉッ!!』
全身を焼く魔法の炎にうめき声を上げながら上空へと避難していく。
――ダメージはあったはずだが……
「まだ今のじゃ全然足りない、ジョーカー。もっと攻撃しないと」
「そうみたいだな」
火傷跡がついたくらいで、まだ相手が倒れる気配は無い。おそらくメタトロンと同等の強さを持つ相手……
『何故そこまで抵抗する!? 貴様達には統制神の慈悲が分からんのか!? 不幸、戦争、差別、死と破壊しか生まない貴様ら愚かな人間共を統治し、平和な世界にしようとしているのだぞ!?』
また始まった大天使の演説……それを聞いたモルガナが微かに顔をしかめ。
「……ヤルダバオトの思想、なんか変わってねぇか?」
その言葉に同意だ。
「人間を統治する理由が変わっている」
「だよな、ジョーカー……」
そんなやり取りの最中、横から聞いていたらしいララと目が合った。
彼女はこちらには特に何も言わないまま目を離し、無言のまま足を進め……『サンダルフォン』の足元に立ち止まった。
その様子に杏が心配そうに口を開き、
「ね、ねえ、あの子、一人であんな近くに行かせて平気なの?」
「何か考えがあるんじゃない?」
「ララなら大丈夫だろう」
「そう……」
双葉と俺の返答に杏が心配そうにしながらも了承。
そしてララは『サンダルフォン』を見上げ――
「こんにちは。私はララ・グレイラットです」
「英語翻訳したみたいな挨拶したぞ……」
竜司がツッコミを溢す。
しかし何故いきなり敬語……あぁ、相手が怒っているから刺激しないよう下手に出ているつもりなのだろうか。
『貴様は、世界を破滅に導く悪魔の子か……!!』
「えぇ」
世界を破滅に導く悪魔の子……何を言っているんだろうか奴は。
ラヴェンツァからは、ララは世界を救う救世主と聞いたが……まあ考えるまでもなくラヴェンツァの言葉の方が信用できる。
返ってきた言葉にララも素で困惑の声を漏らしている。
そしてすぐ後ろに立つ親……ルーデウスとエリスがキレ気味の声で大天使を睨みつけ。
「ララが悪魔の子だと?」
「いい度胸してるわねアイツ」
「パパも赤ママも落ち着いて」
親二人を制止しながらララは会話を続ける。
「何故あなたはそんなに怒っているんですか?」
『何故だと? 貴様達が……愚かな人間共の癖に、統制神の意志に逆らい反抗的だからだ。本来ならば根絶やしにされても当然な野蛮人である貴様達人類を……』
「何故そこまで人間に怒っているんですか?」
更に切り込んでいく。
その質問に対し『サンダルフォン』は沸々と怒りを湧き上がらせていくように溢していく。
『貴様達人類は古来より今に至るまでヒト同士の争いを繰り返し、いくつもの不幸を撒き散らし、そこから反省や成長もせずいまだに愚かな歴史を重ね続けている……まさしく怠惰の権化だ』
「――その人類の愚かな歴史を具体的に教えてください」
『たくさんあるだろう。無くならない差別、殺戮、戦争……』
その後に続く発言に、俺達『怪盗団』は脳内を疑問符で支配される。
『例えば『人魔大戦』だ。人間共は戦争に勝っただけでは飽き足らず、魔族を奴隷扱いし迫害を始めた。そこから始まった差別意識は今もまだ根強く続いている……』
「あん? ……あぁ? 何だって?」
「『ジンマタイセン』……?」
「奴は何の話をしている?」
竜司、杏、祐介が全く話が理解できない反応を示している、もちろん自分もだ。
双葉はどうだろうか……いや、知らないようだ。「何言ってんだコイツ」という表情を向けている。
『それだけではない。同族同士でもだ。『転移事件』という犠牲者が多数出た悲惨な事件――その被害者である生存者に対し保護するでもなく私欲のままに残虐非道な行いをする者達もいたそうじゃないか。私は本当に、怒りしか感じなかったよ』
「な、なぁ……パンサー。アイツが何言ってるか分かんねぇの、俺が馬鹿だからじゃないよな?」
「ヤバい、私も全然わかんない……」
『いまだに亜人への差別も残っており、奴隷制度も当たり前の様に残っている……何故誰も疑問に思わないのだ。生命をなんだと思っている!! 貴様達人類は!!』
「な、なんかめちゃくちゃヒートアップしてる!」
「日本に奴隷制はないぞ!」
混乱する竜司と杏。怒気に慄く双葉と真面目に応える祐介に、ルーデウスが声を掛ける。
「落ち着けみんな。あんな歴史地球には無い……分からないのが普通だ。アレは、俺達が住んでいる異世界の話だ」
「……え?」
異世界の話……何故、ヤルダバオトの配下が、そんな別世界の話をして、あんなに怒っているんだ。
「どういう事だ、モナ」
「わ、ワガハイにも何がなんだか分からねぇ……」
あまりに突飛な話に困惑する中、ララは冷静な表情のまま小さく溜息をつき――
「そうだろうなとは思ってたけど、やっぱりヒトガミだな……何考えてこんなの吹き込んだんだか……」
「ヒトガミ?」
パレス内で何度か聞いたが……それが何を意味する名なのかは知らない。
そのララの口から出た名に、ルーデウスが反応を示す。
「ヒトガミ!? 待て、ララ、ヒトガミが干渉し操れるのは、ヒト族だけ……」
「統制神……悪神ヤルダバオトは人間の無意識の集合体。って、ラヴェンツァが言ってた」
「え、そうなの?」
「人間の無意識の集合体なら……ヒトとして判定されて、ヒトガミの能力で干渉出来ちゃったのかも」
「――嘘だろ……」
「でもそうでもなきゃ説明つかないよ。統制神本人も気づいてない間に、ヒトガミの使徒にされてる可能性もあるし……」
「あ、あの野郎……っ」
二人だけで進んでいく会話……内容がよく分からない。
ララへ問いかける。
「ヒトガミとは何だ?」
「……私達が住んでる世界に居る。めちゃくちゃ性格の悪い悪神だよ」