ペルソナ5R×無職転生 〜怪盗団と異世界からの来訪者〜 作:和井江一
十二月二十六日 午後
冬休みの三島由輝は友人の雨宮蓮に遊びの誘いの連絡を入れていた。
しかし返事が無いどころか既読すら付かない……
彼は知り合いも多いし多忙だろう。
連絡を入れたのも急だったし仕方ないかと考えながら電車に揺られて移動する。
何か面白い話が無いかと周りに耳を傾けてみるものの……
「あれ、お前黒木誠司じゃん。会うの中学以来じゃね」
「あ、うん。久しぶり」
「いつも一緒に居た篠原と七星はどうしたんだよ」
「それは……」
聞こえてくるのは知らない人達の知らない身内話だ。
――駅に着いて電車を降り、自動販売機でコーラを買いそれを飲みながら毎日の日課か手癖の様に『怪盗お願いチャンネル』を開く。
そして変わった書き込みがないかと目を凝らしていた――その時だった。
「ぶほぉあっ!?」
突如、彼がコーラを吹き出した原因は『怪盗お願いチャンネル』ではない。
スマホの外――目の前に広がる現実だった。
咳き込み、パニックになりそうな頭を何とか回しながら、目の前に広がる異様な景色を直視する。
「こ、これって……っ!?」
足元に浅く広がる透明な赤い水。
そして赤く染まっていく空、これは――
あの時と、ついこの前の世界がおかしくなった時と同じ景色だった。
自分以外の周りの人間が気にしていない、気づいていないように普通に歩いている姿も同じで――
その時、三島の肩にポンと何かが当たり、
「うわぁあっ!?」
「あっ、ごめんなさい!」
肩の感触に反射的に悲鳴をあげてしまったがそこに居たのは一人の美女――よく見ると東郷一二三だった。
女流棋士で、別の高校に通う雨宮蓮の友人の一人。
「驚かせてしまい申し訳ありません……突然コーラを吹き出したものですから、何事かと心配になり……。救急車などは……」
「だ、大丈夫……です。救急車も大丈夫。何でも、ない……」
どうやら心配して声をかけてくれたらしい。
だが、吹き出した理由は正直に言えなかった……この人にもさっきの景色は見えていないだろうと顔を上げ――
「……あれ?」
さっきの景色は消えていた。
赤い水も異様な雰囲気の空も無くなり、普通のいつもの街の景色に戻っていた。
さっきのは幻覚だったのだろうか……昨日寝不足だったせいかもしれない始めていると、
「あなたも……先程の景色が見えていたのですか?」
「……! まさか、君も?」
なんと彼女の目にも見えていたのだ。今の景色が。
つまり今のは、寝不足が原因の幻覚などではなく――
「やあ、三島くん」
「わぁっ!?」
背後から声がしてつい悲鳴を上げながら振り返る。
そこに居たのは、丸喜拓人だった。
「あ……丸喜先生」
「かなりビックリされてちょっと悲しいけど、急に後ろから声掛けたのもよくなかったね。驚かせてごめんね、三島くん」
「大丈夫です……僕もちょっと今過剰反応になっちゃってるだけなんで……変なのが見えて……いえ、何でもないです」
「……君達にも見えたんだね。さっきの光景が」
「え?」
それから丸喜はどこか遠くを見るようにしながら、誰にも聞こえない小さな声で囁く。
「現実世界の方は僕が見ておく……そっちは頼んだよ。怪盗団のみんな」
――――――――――
パレス内
「……私達が住んでる世界に居る。めちゃくちゃ性格の悪い悪神だよ」
『ヒトガミ』とは何なのか……その問いに返ってきた答えにモルガナが更に聞き返す。
「めちゃくちゃ性格の悪い悪神……? 人間を見下してて考えが独善的みたいな感じか?」
「そういう風に尊大なだけなら全然マシだよ。大層な思想があるでもなく、自分の生存と趣味の為に力を行使してるのがヒトガミ」
「趣味?」
「人を騙すこと。最初は友好的に接触して、自分を信じさせた人間を利用するだけしてから裏切って破滅させるのとか大好き」
……本当だとしたらろくでもなさすぎる神だ。
横から聞いていた杏は「うわ……」とドン引きした表情を浮かべ、竜司も嫌悪感を顔に丸出しにしながら「悪趣味すぎんだろ」と溢す。
「このパレス主のパパも『ヒトガミ』に騙された被害者。あと私も生まれる前に『ヒトガミ』に殺されかけたし」
「自分のハードな境遇ついでみたいにさらっと言うなよぉ」
さらっと出てきたララ自身が殺されかけたらしい話に双葉がそう返す。
「あんな人に憎しみ持たせるように仕向けてる目的も、どうせ何か思想や目的があるわけじゃないよ。くだらない理由だと思う」
そのララに続きルーデウスが『サンダルフォン』を見上げながら予想を口にした。
「……利用して捨てた後のあの天使達の反応を楽しむためとかじゃないか」
「ありえそうでヤダ」
そんな低俗としか思えない理由が「ありえそう」とは……
統制神を名乗り人を堕落させ支配しようとしていたあの悪神が、歪んでいながらも平和という目的があっただけ相対的にマシに思えて来る……我ながら驚きだ。
祐介も顔をしかめ、口を開き。
「聞くだにただの悪鬼外道としか思えんな――ソレは本当に神なのか?」
「めんどくさい事に能力も強さも本当に神の域にいるからね」
外道そのものな悪神以上の悪神が、強力な力を持って敵の裏に居る……事態は最初思っていたよりも、更に深刻なのかもしれない。
だが、それでも俺達のやることは変わらない。
「『ヒトガミ』とやらが裏に居ようと同じだ。悪神の好きにはさせない」
折れる気も諦める気も毛頭ない。
その意思を口にした直後。痺れを切らした『サンダルフォン』が怒声を上げ、ルーデウスが杖を構えた。
『何を私の足元でブツブツ会話している!! 話は終わりか!!』
「説得なんか聞く耳持たないだろうな。ストーンキャノンで撃ち落と――」
「待ってパパ。やっちゃ駄目。まだ煽らないと」
「……なんで!? いや本当になんで!?」
魔法を打ち止め、困惑しながら二回問いかける父にララは「わかってないなぁ」という表情を浮かべた。
俺にもその真意は分からない。
ララは変わらない表情で「サンダルフォン!」と大きな声を出して呼んだ。
『何だ悪魔の子よ!!』
「そう、この悪魔の子の言葉を聞け!」
「……ララ。なにをするつもりだ」
「まあ見てなよ、ジョーカー」
彼女は自分に親指を差し、ドヤ顔を浮かべながら宣言した。
「私はこれから統制神も世界も全てブチ壊す。完膚なきまでにブチ壊す」
『何だと貴様ぁ!!』
「次の標的は、ルーデウス・グレイラットの前世のシャドウが居る場所だ」
『……!! 予告のつもりか!?』
「そうだよ。こんなとこに居ないで一度戻って戦力整えた方がいいんじゃない? 私達の戦力はこれだけじゃないよ」
『ぬぅ……っ』
「守ってみなよ。悪魔の子の、この私から」
わざとらしい悪い笑みを浮かべそう溢すララ。
『サンダルフォン』は怒気を発しながらも、深く息を吐き――
『そうだな……このまま貴様らとやりあってもメリットは無い。いったん戦力を整えた方がよさそうだ』
そう静かに告げ、天使の羽根を広げながら飛んでいき、
『後悔するなよ!! 滅ぶのは貴様らの方だ!!』
「覚えておけ! 私はララ・グレイラットだ!」
ララはおかしなキャラ付けをしながら最後まで挑発的な言葉を発し――
大天使は退却し姿を消し去った。
「……ふう。顔の筋肉動かし過ぎた、喋り疲れた」
ララはいつもの調子に戻りその場に座り込む。
……何だったのだろうか、今の寸劇は。
ルーデウスもエリスも、モルガナも双葉もポカンとした表情を浮かべ……竜司と杏は「そういうキャラなの?」と言いたげな困惑した表情を浮かべていた。
「何だったんだ? 今のは」
その問いかけにララは「説明しなきゃ駄目か」と言いたげな溜息をついて。
その直後、ララに感謝の言葉を向ける存在が現れた。
『ありがとう……ララ。アイツらの意識を俺とシルフィから逸らすために、やってくれたんだな?』
「ん。そうだよ」
『ベルゼブブ』だったルーデウスのシャドウだ。眠ったままの認知存在のシルフィを両手で抱えながら、穏やかな笑みをララへ向けていた。
……なるほど。確かに『サンダルフォン』が最初に狙っていたのはシャドウとシルフィだった。
「そういう事だったのか」
真意に気づいたルーデウスはものすごく申し訳なさそうな表情へと変化していき、
「二人を守る為に、自分を犠牲にしてまで挑発しようとしてたのか! ごめんララ、気づいてやれなくて!」
「別いいよパパ。犠牲は言い過ぎだし」
その後、ルーデウスはシャドウへと振り返り。
「これから、どうするんだ?」
『……シルフィを静かな場所に寝かせてやりたい。それさえ出来たら、俺はもういい』
「……イヤリングを……」
『それは持っておいてくれ。俺はあくまでパレス主の方のルーデウスのシャドウだ。お前と一緒にはなれないが……そのイヤリングが力を貸してくれるかもしれん』
「……わかった」
『前世の俺のシャドウを……頼んだぞ』
「必ず説得して外に出してみせるよ」
『……エリスも、協力頼んだぞ』
「わかってるわ」
『ララ。一目でも、お前の顔を見れて良かった』
「うん……バイバイ」
それぞれ言葉を交わした後、シャドウはこちらへ目を向け、最後に小さく笑みを溢し。
「『怪盗団』も……頑張れよ」
「あぁ」
眠り続けるシルフィを抱え、シャドウはどこかへと去っていった。