ペルソナ5R×無職転生 〜怪盗団と異世界からの来訪者〜 作:和井江一
アスラ王国だったその場所は魔法都市シャリーアへと形を変えていた。
大きな歪みが元に戻ったのだろう。
次の目的地へと向かう前に、竜司と杏、異世界組の軽い自己紹介が交わされ、先ずはセーフルームへと戻る事にする。
その道中、怪盗団のメンバーがパレス内に入ってからの事を聞いた。
新島真を臨時のリーダーにして、メメントスで白い犬(聖獣レオ)と合流。
あらかじめレオの事は聞いていたが、本当に大丈夫な存在なのかを確かめるため竜司と祐介がお座りやお手をさせたところ素直に従い、なんと三回回ってワンも華麗にこなしてみせた。
最終的に奥村春の「可愛いから大丈夫だよ」との意見により安全だと判断。
「どんな判断の仕方だよ」
「クイーンも同じツッコミしてたよ、モナ」
「その場のクイーンの顔が目に浮かぶようだな……」
ツッコミはさておき、そしてパレスへと侵入。
最初はレオがシャドウや危険な場所を探しそこを避けながら順調に進んでいたものの、道中でいきなりパレスの雰囲気が激変。
シャドウの気配が罠(転移魔法陣)が地面のそこら中に現れ、運悪くも転移魔法陣の一つが祐介の足元に出現。
杏が咄嗟に祐介の腕を掴み引き離そうとしたが間に合わず二人同時に姿を消してしてしまう。
そして、それを見た竜司は消えてしまった仲間二人の名を叫びながら魔法陣の中へ飛び込んでしまった――という訳らしい。
「心配だったのは分かるけど、もう少し冷静に行動するべきだったな」
「何も言い返せぇよ」
双葉からの言葉に申し訳なさそうにシュンとなる竜司。
そして飛ばされた先が、アスラ王国と化していた地区だ。
それから竜司、杏、祐介の三人で行動していたのだが度重なる雑魚シャドウの群れの襲撃に対応していた最中、祐介はウッカリ後ろにあった転移魔法陣を踏んでしまったらしい。
「あん時は俺らマジでビックリしたし焦ったぜ」
「ジョーカー達と一緒にしたから安心したけどね……」
「あぁ、心配かけてすまなかった。転移した場所が遠くない場所だったのが不幸中の幸いだったな」
仲間達のここまでの動向は理解した。
真と春が気掛かりだが……
「レオが付いているなら安心していいよ。私のニオイ辿りながら安全なルート探して来るだろうから」
「そうか。それならいいが」
実際、転移魔法陣が不意打ちの様に現れるまでは敵との遭遇もほとんど無く済んでいたようだし……信じよう。
「……そろそろクイーンとノワールとも合流出来るといいな」
「そうだな、ナビ」
一通り仲間達の確認は終わり「てかよぉ……」と竜司が口を開き、先頭を歩くルーデウスとエリス、そして双葉と並び歩くララへと視線を移しながら。
「異世界から来た人間ってマジなんだな。日本人の顔つきじゃねえし。まさにファンタジーって感じの魔法使い二人に女剣士って……ワクワクしねぇ?」
「ワクワクって、遊びに来たんじゃないんだよ……気持ちはまあ分からなくも無いけど。ルーデウスさんとララちゃんの魔法もすごかったしね」
「一瞬でデケー土のドーム作るのカッコよかったよな!!」
「ふむ……確かにあの造形はなかなかに素晴らしかった」
そんな竜司と杏、祐介の会話を聞いてかルーデウスが少しソワソワしている気がする。
それを見たララが竜司を見上げ声を掛ける。
「リュージ。パパがまた調子に乗るから程々にしといて」
「オイオイ、あんな見るからにクールな魔法使いって感じの人が俺みたいに調子になんか乗らないだろ……」
その返答にララはめんどくさ気な表情へと代わり。
「…………ああ、うん、そうだよ。パパはいつ如何なる時も超クールで、その冷静な佇まいと容赦の無い戦い方から『氷葬のルーデウス』と呼ばれている」
「スゲー!! かっけぇーッ!!」
「更に超クールなパパは敵を倒す時も鮮やかに決め台詞を……」
何だか見ていて面白くなって来たので口を挟まずに聞いているとルーデウスが振り返り、
「ちょっとララ!? 変なキャラ付け捏造するのやめて!?」
その顔はクールな顔でなく、娘にイタズラされて恥ずかしがる父の顔だった。
――――――――――
セーフルーム
「先輩方、お疲れ様です!」
「見てない間にゾロゾロとお仲間が増えた様だね」
セーフルームに入るなり先ず怖い顔のオルステッドと目が合い、芳澤と明智がそれぞれ声を掛けて来た。
「……話には聞いてたが、マジでお前も居るんだな明智」
「なにか文句でも?」
「文句は無いが……俺達に協力するなど、どういう風の吹き回しだ?」
「別に君達と仲間になった訳じゃない。世界が壊れてしまったら獅堂を牢獄へ放り込む事も出来なくなるだろ?」
竜司と祐介はまだ明智への警戒心があるが……まあそれは当然の事だろう。やった事がやった事だ。
「芳澤さんも来てくれてたんだね」
「はい。先輩達もお元気そうで良かったです!」
杏は芳澤と挨拶を交わした後、テーブルの端に座る男……オルステッドへと心配そうに視線を向け隣に立つ双葉に問いかける。
「あの人も……異世界から来た人だよね? 何だか不機嫌そうな顔してるけど何かあったの?」
「んや、あの人は元々だから……顔は怖いけど欲しい時にノータイムでペン貸してくれる良い人だから」
「へえ、そうなんだ」
その双葉の返答に続き芳澤も「そうです!」と言葉を続け、
「オルステッドさんも自分の顔の事は気にしているんです。皆さんが出ている間に表情についてオルステッドさんから私、相談されましたし……」
「……芳澤。それは本人の前で他人に言わない方がいいと思うぞ」
「はっ、すみませんジョーカー先輩、誤解を解きたいあまりつい! ごめんなさい、オルステッドさん!」
「……いい。気にしていない」
オルステッドは変わらない仏頂面のままそう答えた。
それにしてもコッソリ芳澤に相談していたのか……確かに表情豊かだしな。
その後、オルステッドはルーデウスへと視線を移し口を開いた。
「――ルーデウス。何か報告がありそうだな」
「……はい」
その後、ルーデウスの口から『ヒトガミ』の干渉の可能性が語られた。
それを聞いていたオルステッドの顔に、本気の怒気が一瞬刻まれたのを感じ取った……なにがあったのかは知らないが、『ヒトガミ』への敵意が凄まじい事は察せられる。
「ヒトガミめ……今回は傍観しているだけかと思っていたが。しかも人の無意識の集合体を操れるとなれば……絶対に阻止せねば最悪の未来が想像できるな」
「どういう事ですか?」
「想像してみろ。人の無意識の集合体ということは、大多数の人間の意識にも繋がっているかもしれん。もし『ヤルダバオト』を通して大多数の人間の意識に干渉することが出来れば……」
「あ……ま、まさか……」
ルーデウスの言葉の続きを、ララが口にする。
「『ヤルダバオト』を通してとんでもない数の『ヒトガミの使徒』が生まれるかもしれない」
「……そうだ。おそらく、今回の奴の最終的な目的は『ヤルダバオト』を六面世界へ連れ帰る事だろう」
「そんな事、させちゃダメだ……!」
「そうだ、ルーデウス」
あっちの世界の事情は詳しくは分からない。
だが、人間の意識に干渉でき性格が破綻しているらしい『ヒトガミ』が、人の無意識の集合体である『ヤルダバオト』を利用したら恐ろしい未来が待ち受けていそうな事は想像に難くない。
「両方の悪神を、この世界から追い払うぞジョーカー」
モルガナの言葉に首肯して応えた後、ルーデウスとオルステッドに顔を向け宣言する。
「俺達『怪盗団』も全力で協力する」
「うん。ありがとう」
――ルーデウスのオルステッドへの報告も終わり、次に行く場所に関しての話し合いが行われた。
おそらく一筋縄ではいかない場所で敵の戦力も多い……暫く休憩してもらった芳澤と明智も付いてきてくれる事になった。
「――あなたの前世のシャドウと一緒に居るロキシーという人物。重要なのだろう、どの様な姿なのかを教えてもらいたい」
その祐介の発言に対しルーデウスは「そうだな」と返した後、手の平をテーブルの上に向け――
「こういう見た目だ」
そう呟き、次の瞬間。
なんとテーブルの上に土で作られた人形――ロキシーのフィギュアが出来上がっていた。しかもカッコよく杖を構えたポーズ付きだ。
よく出来ていてつい目を奪われる。
竜司も「お、すげぇ!」と反応を示している
そして「わっ、すごい、フィギュアだ!」と双葉が食いつき、祐介は「む!」と目を見開きながらまじまじとフィギュアを見つめ。
「これは……髪や服の揺れ、表情、細かい部分まで作り込まれているな……作り手の熱意を感じる、神々しさすら思わせる造形物だ!」
「可愛い! かっこいい! 欲しい!」
二人の反応にルーデウスは今までにない表情を見せ、
「フッ、フフ……そうか、二人にも分かるか、この神像の美しさが……祐介くん、君とは気が合いそうだな。双葉ちゃんにもこのフィギュアを一つあげよう」
「よっしゃあ! 他にもある!?」
双葉はたくさん貰って持って帰ってしまいそうな勢いだ……困った顔をする惣治郎の顔が浮かんだ。止めておこう。
「……一つまでにしておけ」
「ちぇ〜、ジョーカーのケチ」
ルーデウスの、ロキシーが褒められて嬉しいという気持ちが出まくった表情を見てララが一言呟いた。
「……顔が気持ち悪くなってるよパパ」
ララの一言でシュンとなった後、ルーデウスは真面目な表情に戻り作戦会議を続けた。
そして束の間の休息の後、オルステッドを残し俺達は次の目的地へと出発した。
――――――――――
ルーデウス視点
――もう一つの歪みが大きな場所。
絶望し自暴自棄になった俺の前世のシャドウがロキシーと共に引きこもっていると聞いた場所。
どんな歪んだ、禍々しい姿なのかと覚悟を決めながら、転移魔法陣を使い目的の地点へと転移した。
……転移した先の風景は、やはりシャリーアでは無かった。
けど、想像とは全然違った。
もっと禍々しく歪んだものを想定していたのに、この景色は――
「なんか、変なのに……綺麗だな」
モルガナがそう溢すのが聞こえる。
そう、綺麗なのだ。
見た目は、今住んでいる異世界と日本が入り混じっている……おかしな世界。
俺達以外の音も声もしない静かな世界。
ブエナ村の綺麗な麦畑に、前世のアニキと昔よく菓子を買いに行ったあの店が並んでいるような一見歪な光景だ……
それなのに、俺は自然と涙が出そうになっていた。
あぁ、そうか、これは……
「俺の中の、綺麗な記憶だけを継ぎ接ぎにした場所か……」
綺麗な記憶しかない……それもまた歪な世界か。
エリスと並び先頭に立ち、ララと『怪盗団』を引き連れながらそんな景色の中を真っ直ぐ進んで行き……
やがて、屋敷らしき敷地の門が見えた。
そして、その門の前に立つ姿が二人――
「……ルーデウス。あの二人は……」
「あぁ」
エリスと一緒に、門の前に立ちはだかる人物と相対する。
『来ると思ったよ、お兄ちゃん』
『……例えあなたでも。ここから先はお通しできませんな』
「アイシャ……ザノバ……」
そう。大人になったアイシャと、ザノバだった。
あの二人が、俺達の行方を阻んでいた。
「……あれも、知り合いの認知存在か、ルーデウス」
「そうだ、ジョーカー。……先ずは俺が話してみるから、待っててくれ」
「分かった」
エリスと並びながら前に出て、二人に喋りかける。
聞いてくれるかは分からないが、説得する。
例え認知存在でも、アイシャともザノバとも戦いたくない。
「……聞いてくれ。俺は、前世の俺のシャドウを倒しに来たんじゃない……説得しに来たんだ。そこをどいてくれ」
『無理。お兄ちゃんこそ帰って』
『何を言われようとここを退くことは出来ません』
……クソ。アイシャも、ザノバも、全然言うことを聞いてくれない。
「……お願いだ。本当に、ただ説得するだけなんだ! アイツは、俺のシャドウは、何より尊敬してるはずのロキシーを都合よく改変して一緒に引きこもってるって聞いた!」
『……そうだね』
「それを、やめさせてやりたいだけなんだ! お願いだから通してくれ! アイシャともザノバとも戦いたくないんだよ!!」
『さっきも言ったよね。無理』
『私の意思も変わりません』
「な……っ。なんで……!」
クソ、どうすればいいんだよ、こんなの……
やっぱり、アイシャもザノバも、俺の前世のシャドウが……
「都合よく、認知を改変して……」
そう言い掛けたところで、『あのさあ』とアイシャの声が割り込んで来る。
『お兄ちゃん何か勘違いしてない?』
……勘違い?
どういう事だ?
『確かに、ロキシー姉は都合よく改変されてるね……でも仕方ないじゃん。そうしなきゃ、この先に引きこもってる『お兄ちゃん』の心が保たないんだよ。見逃してあげてよ』
「アイ、シャ……?」
『お兄ちゃんは私とザノバさんも都合のいい認知存在にされてると思ってるかもしれないけどさ……』
続く台詞に、俺は言葉を失った。
『私達はね、自分の意思でここに立ってるんだよ』
「――――」
アイシャに続き、ザノバも口を開き応える。
『お前達だけでも、最後まで味方でいてくれと、あの方に泣きながら懇願されました……どうしてその想いを無下にできましょうか』
「――――」
……本気だ。
アイシャもザノバも、本気で俺を、俺達を通さないつもりだ。
嘘だろ、戦わなくちゃいけないのか、この二人と……
「……ルーデウスっ!」
「……っ!」
エリスの声で意識が現実に引き戻された。
その直後、白い閃光の爆裂が広範囲に渡り巻き起こる。
「これは……!?」
怪我人はいない、今のはおそらくわざと外した。――警告だ。
そして、その警告を放ったのは……
『メギド……こっちの世界の魔法だよ。ちょっと勉強したら覚えちゃった』
「アイシャ……っ!」
『邪魔はさせないよ。例えお兄ちゃんが相手でもね』