ペルソナ5R×無職転生 〜怪盗団と異世界からの来訪者〜 作:和井江一
「待った待ったー! なんか門周りの雰囲気が変!」
門前を守る『アイシャ』『ザノバ』が撤退し、門を通ろうとした直前で双葉が進行を止める。
「どうした?」
「こっから見える敷地内の景色は普通の屋敷に見えるけど……よーく見ると門から外側と内側の境界線が歪んでるな」
その双葉の発言にララは納得したように「あー」と近づいて。
「本当だ……境界線の向こうから別の声が微かに聞こえる。セーフルームで仮眠してた時に一回見えた未来に繋がったらちょっとヤバいかも」
「……具体的にどう言う事だ?」
ルーデウスからの問いかけにララは振り返りながら答え、
「入った途端景色が一変して天使の軍団から一斉攻撃を受けるかもしれない。見えた通りなら数も多い」
「……! 敵が既に待ち構えてるのか」
「うん。モナ、猫になって中を見てみて」
「猫使いの荒い奴め……まあワガハイもそうするつもりだったけどな」
そう言いながら四足歩行の黒猫の姿へと変身する。
「気をつけて行ってこい」
「おうよ。飯の時間までには帰ってくるぜ、ジョーカー」
ここはモルガナに偵察を任せよう。
――――――――――
黒猫になったモルガナが門を通り抜けると、言われた通りそこは門の外から見えていた普通の屋敷の様な景色とは全然違った。
「何だありゃ……」
晴れ渡る青空の下、草花の生い茂るだだっ広い広場。
その中央にそびえ立つ、中世的な民家と現代日本の民家をごちゃ混ぜに組み合わせ継ぎ接ぎにした様な巨大な塔。
穏やかな自然が広がる景色の真ん中に君臨する歪な形の塔とは、なんとも噛み合わないおかしな光景だ。
「あの塔だけで一つの小さいパレスみたいだな」
そして塔の周辺にはおびただしい数の天使の軍団が控えており、それを指揮するのは大天使『サンダルフォン』だ。
あの大天使は大きな声で大人数の部下達に向け演説している。
更に地上の、塔の周辺にはジャアクフロストとマーラを中心としたシャドウの軍団が配置されていた。
「なるほどな……こりゃ確かに無策で突っ込むのはやばそうだ」
――――――――――
「お、戻って来た。無事かモナ!」
「あぁ。だが、中はとんでもない事になってたぞ」
数分後、偵察を終えたモルガナが戻って来る。
元の姿に戻ったモルガナは奥で見たモノを教えてくれた。
「……そんな事に、なってんのか……俺の前世のシャドウはたぶん、その巨塔に引きこもって……」
ルーデウスの後に、竜司が驚きを声に出し大きく反応を示す。
「パレスみたいなデカい塔が建ってて、天使の軍団やシャドウが大量に待ち構えてる!? マジかよ!?」
「……今のスカルの大声はあっちに聞こえてないよね? モナ」
「安心していい、パンサー。こっからも向こうに居るはずの『サンダルフォン』の声は聞こえないだろ?」
「確かに。でもララちゃんの念話ならちょっと聞こえるんでしょ?」
「私の念話も境界線から至近距離で聞けば微かに聞こえるくらい。今はアイツ、賊共を見つけ次第殲滅せよとか叫んでる」
「賊……誰の事かしら? ルーデウス」
「たぶん俺達の事だよエリス」
モルガナから聞いた話では『シャドウ』が引きこもっていると思われる巨大な塔は広大た敷地内の中央にそびえ立っている。
そして天使の軍団は空を飛びながら全体を監視しているのだろう……更に塔周りにはシャドウの群れ。
敷地内には草花が生い茂っているだけで隠れられる場所もない、敵の目を欺き身を隠しながらの塔侵入は厳しいだろう。
「しかし、摩訶不思議な事だな。ここから見える景色と中で見える景色が全然違うとは……」
「心の内を見られたくないって防衛本能もあるのかもな」
祐介の疑問に双葉が答え、彼は更に言葉を続ける。
「それに、巨大な塔とはな……よっぽど他者に近づいて欲しくないのか……」
「たぶん、それもあるだろうな。あと関係ないかもしれないけどタロットだと……」
「オイ、ナビ。関係ない話は後にしようぜ」
「そうだな、スカル。今は敵の大軍をどうするか考えなきゃだ」
敵は天使の軍団とシャドウの大群……だが、本命はそいつらではない、ルーデウスの『前世のシャドウ』への接触だ。
一度撤退した認知存在三人と塔内でまた遭遇だろう……それに、塔内では他にも強敵が居る可能性がある。
「……外の大軍だけに時間も体力も浪費していられませんよね、先輩」
「そうだな」
芳澤の言う通り、周りの敵だけに力を消耗するわけにはいかない。
しかし見つからずの潜入は出来そうにない……
「……何を迷う事がある、ジョーカー。ここには今、十一人もいる」
「明智……」
「全員で戦う必要は無い。外の敵共の相手と塔内への侵入に人員を分ければいいだろう。――大天使の相手には僕が残る」
―――――――――――
巨塔の周りの空を徘徊する天使の軍団を指揮する『サンダルフォン』の目的は怪盗団と協力者を打ち倒す事だ。
特にララ、ルーデウス……そして怪盗団のリーダー、ジョーカーは最も危険度が高い。見つけ次第、必ず排除しなければならない。
統制神の力の完全な復活に必要なパレス主と、それと関係の深いここに居る『シャドウ』を守る事も大きな目的であるが、何よりも神への逆賊を討たねばならないという使命感に燃えていた。
既に発見次第一斉に攻撃し殲滅する準備は整えてある。
上空から全方位に目を配らせ待機し続け――
侵入者が現れたのは、南側の正門からだった。
そこに居たのはララ、ルーデウス、エリス、ジョーカーにスカル、パンサー、フォックス――間違いない、奴等だ。
『正々堂々と正門から来たことは褒めてやろう! だが、ここで貴様らは終わりだ!!』
特に排除すべき三人も確認し、加減など一切ない全力の攻撃が放たれる。
『アグネヤストラ』
上空に現れる無数の破壊の火矢が天から地上へと降りかかる。
そして地上のジャアクフロスト軍団が氷結魔法を一斉に吐き出した。
考える時間を与えない、視界に入り次第即座に放たれる逃げ場のない天と地からの一斉放射。
天から降り注ぐ破壊の雨はルーデウスの作り出した土のかまくらが、地上のジャアクフロスト軍団の一斉放射はジョーカーの『キングフロスト』とフォックスの氷結魔法、パンサーの火炎魔法が防ぐ。
『第一波が防がれるのは想定通りだ』
どんな攻撃が来るのかをあらかじめ分かっていたような冷静な行動だったのは『サンダルフォン』は少し気掛かりだったが、それを気にして相手に反撃の隙を与えてはいけない。
このあとは間髪入れずに天からの天使の軍団の魔法による魔法一斉放射と地からマーラ軍団の一斉攻撃が同時に行われる。
そしてその後にはまた『アグネヤストラ』の繰り返し――防いだとしても終わらない波状攻撃。
大きな消耗を強いられるだろう。
相手の行動を許す前に天使の軍団による第二波を――
「射殺せぇえっ! ロビンフッド!!」
殺意を剥き出しにした声と強い殺気が西側から届いて来た。
西側の門壁の上に立つ、白い衣装を身に纏った男――明智が周囲の中空に黒い魔法陣を複数発生させ、叫ぶ。
「マハムドオォォォンッ!!」
魔法陣から射出された死の矢が一斉に放たれ空中に居た天使達を次々と穿ち消滅させていく。
「ハハハハハッ!! 最っ高ッの、気分だァッ!!」
突然の奇襲と悪魔としか思えないその笑い声に『サンダルフォン』は一瞬気を取られてしまった。
「セイテンタイセイ!!」
スカルがペルソナを召喚、広範囲に渡る電撃魔法で残る天使達の態勢を崩し魔法攻撃を中断させる。
それならばとマーラの軍団に指示を出そうとした時には既にエリスが単身で突っ込み、先頭のマーラから斬り伏せ隊列を掻き乱していた。
次に攻撃させる隊を分かって狙っている、こちらの出方を初めから知っていたような行動……先読みされている事に気がつき『サンダルフォン』はララを見下ろした。
『貴様、未来を見たのか! 悪魔の子よ――ボォッ!!?』
ララが「うん」と軽く返事したと同時、『サンダルフォン』は喋っている最中に魔法による攻撃を受け、その方向を見た。
――また、明智だ。
今度は全身黒い衣装に変わった姿で大天使を睨みつけ、叫ぶ。
「お前の相手は俺だろうが!!」
更に、天使の軍団とシャドウ軍団の指揮系統が乱れたその瞬間を狙い、正門から凄まじいスピードで突撃してくる存在が現れた。
「私の『プロメテウス』で強化した、スーパーモルガナカーだ!!」
車――モルガナカーとその中から聞こえるナビの声。
そして車の上に乗りながら現れた芳澤が、こちらに気付き攻撃をしようとしてきた天使達を銃撃で牽制する。
最終手段に侵入したジョーカー達の前でいったん停車し、ドアが開いてナビが四人の名を呼ぶ。
「ジョーカー、ララ! ララのお父さんと赤ママさんも乗って!」
「先輩達が乗り込んで潜入するまで、回りの敵は任せてください!」
芳澤は上空の敵へ魔法を放ちながら車上から降り、着地と同時に近づいて来ていたシャドウをレイピアで斬り捨てる。
スカル、フォックス、パンサーも天と地から襲いかかる敵を迎撃し、呼ばれた全員が乗り込んだ直後。
車と化したモルガナに更なる変化が訪れた。
「アースウォール」
「アースランサー」
ルーデウスが車体を土の壁で覆い装甲を強化し、その土壁からララの魔法でいくつもの強靭な土の槍を生やす。
全身凶器と化したモルガナカーは塔の周りを守る地上のシャドウの群れへと突撃していく。
「名付けて、スーパーデラックススーパーモルガナカーだ!!」
「もっとかっけー名前無かったのかよ!!」
「今スーパーが二個ついていなかったか?」
ナビとモルガナとジョーカーの気の抜けるようなやり取りとは裏腹に、あらゆる部分に強化を施されたその車体は迫りくるシャドウの群れを無傷で無慈悲に吹き飛ばしながら突き進む。
「目的地までのシャドウの配置が薄そうなルートは私が教える、とにかく突っ走ってモナ!!」
「任せろっ!!」
――そして、塔のすぐ目前まで迫った、その時だった。
『トランペッター隊!! 賊共を止めよ!!』
大天使の大声と共に現れた四体の増援――『トランペッター』
新しく現れた四体が、天を飛びながら一斉に手に持つトランペットを吹き鳴らした。
その直後。
モルガナカーのスピードが急激に減速した。
「――!? どうしたモナ! 遅くなってるぞ!?」
「クソッ……あのトランペットの音聞いたら、急に全身から力が抜ける様な感覚が……っ」
モルガナだけではない。
外に残ったスカル、フォックス、パンサー、明智、芳澤の全員があきらかに全身の力を抜き取られたかの様に身体の動きが重たくなっていた。
「何だこりゃ、クソ! 身体がすっげぇダリィ!」
「新たに現れたあのトランペッター達の仕業か……」
「どうしよう、モルガナカーも凄く遅くなってる……!」
トランペッター隊の一手により一気に形勢が傾き始めた。
大天使は全員を見下ろしながら口を開き。
『……私は、貴様らは嫌いだがその実力を侮ってはいない。最初の作戦が崩壊した場合の次の手札くらいは用意している』
それだけ言い、トランペッター隊に次の指示を出そうとしていた。
「いったん作戦は中断して俺達は降りた方がいいんじゃないか?」
「……そうだな……みんながやられる方がダメだ。ララのお父さんの言う通りにしよう、ジョーカー」
二人からの提案にジョーカーも乗ろうとしたその時。
ララが外へ目を向けながら呟いた。
「出なくて大丈夫。やっと来た」
その言葉のすぐ後、東側から門壁を飛び越えて新たな大きな影が現れた。
白い巨犬――『聖獣』と、その背中に跨る二人。
跳躍し中空にいる状態の『聖獣』の上から一人、黒いライダースーツを身に纏った女が飛び降りながら、ペルソナを呼ぶ。
「アナト!!」
ペルソナ『アナト』が召喚され、魔法を発動。
その力により全員の身体能力の低下を消しながら地面へ着地。
更に中空で『聖獣』に跨るもう一人、羽つき帽子に銃士風の装いをした女がペルソナを召喚。
「アスタルテ!」
ペルソナ『アスタルテ』の魔法を放ち、念動の衝撃波が四体のトランペッターを吹き飛ばして『聖獣』から飛び降りながら地へ降りる。
「遅れてごめんなさい!」
「私達も今から加勢するわよ!」
クイーンとノワールが合流した。