ペルソナ5R×無職転生 〜怪盗団と異世界からの来訪者〜 作:和井江一
ベルベットルームに現れた知らない人物。
青い髪を三つ編みにした少女……名はララ・グレイラットと呼ばれた。
彼女はラヴェンツァを見てこちらを指差しながら「こいつ?」と聞いている。こいつ呼ばわりか……
「コイツではありません。彼こそが私の言っていたトリックスター……彼ならば貴女をここから連れ出せるでしょう」
……話について行けない。詳しく聞こう。
「君は何者なんだ?」
「あー……どっから話そう……めんどくさ……ラヴェンツァ、代わりに説明頼んだ」
「まったく……ならば取引です。聖獣の白い毛並みを堪能させてください」
「いいよ」
「……」
自分への問いかけの答えをラヴェンツァに丸投げした。ララと呼ばれたこの少女……本当に大丈夫なのだろうか。
そしてラヴェンツァはララに枕にされている白い大きな犬へと近づき撫でながらこちらへ真剣な眼差しを向けた。
毛並みがフワフワしていて気持ちよさそうだ……自分も触りたいが今は話を聞こう。
「あの子の住んでいた『異世界』とはパレスの事なのか?」
「確かにそこから説明が必要ですね、パレスやメメントスとは全くの別物です。『六面世界』……そこではあなた方の住む世界と同じように、様々な種の生き物が生き独自の文明を築いて生活しています」
「それが……どう俺達の世界で起きている事に繋がるんだ?」
「先程も言いましたが……日本に住む人間に、死んで『六面世界』へ転生した人間が居ます」
「……双葉が好きそうな、アニメみたいな話だな」
「アニメはよく知りませんが。その転生した人間は前世で……メメントスにシャドウを持っていました」
「……!」
「一度死んで本来消えるはずだったシャドウが『転生』というイレギュラーによって消えずに残った。日本と『六面世界』の次元の狭間に」
「そんなことが、あるのか?」
「私も初めての事なのでビックリしています……。そして、転生し第二の人生を歩んでいたその者は時空を超える魔術を開発し、過去に戻るためそれを実行しようとした」
「……」
「その時です。過去を戻る魔術を行使した事により、時空が歪み、次元の境界線が不安定になりました。あなた方に打倒されたヤルダバオトが消滅する寸前に不安定になった境界線を突き破り、次元の狭間に居たシャドウに接触……更にシャドウを通じてその主である本人にも接触し、日本のメメントスまで連れ去った」
「……それが、今存在するメメントスとパレスの正体か」
「はい。パレスの主の名は……ルーデウス・グレイラット」
――グレイラット。ついさっき、聞いたばかりの名字だ。
青い髪の少女へ目を向ける。
「彼女、ララ・グレイラットの父親です」
「……つまり。父親を助けに来たのか?」
その問いかけに対しララはゆっくりと立ち上がりながら「うん」と答え、
「まあ……その連れ去られたパパが居る世界線じゃ私は生まれてないっぽいんだけど……」
「……は?」
「この話はいいや。……私は、パパのしてきた事を無駄にしたくないだけだから」
……言葉が足りなさ過ぎてよく分からないが、
その目からは先程までの無気力そうな表情と違い真剣なのが伝わった。
「今、日本と『六面世界』の境界線は大きく歪み、様々な時間や時空の繋がりまでもが混線しています。放置すれば互いの世界にどのような悪影響を及ぼすか分かりません。迅速に解決する必要があります」
「……時間の猶予はどれくらいある?」
「遅くとも今からあと36時間……一日半ですね。取り返しのつかない程に混線し歪めば、もう元には戻りません」
期限はたった一日半。
それまでにパレスを攻略し解決しなければならない……
「大丈夫、安心して仮面マン。その為に私が来た」
ララがドヤ顔でこちらを見てきた。仮面マンとは自分のことか……変なあだ名をつけるな。
「……転移した結果このベルベットルームに迷い込んで暫く出られなくなっていましたけどね」
「ぶっつけ本番だったから仕方ない……それに仮面マンと一緒ならここ出られるんでしょ」
「仮面マンはやめてくれ」
「じゃあ何て呼べばいいの」
「雨宮蓮……いや、ジョーカーと呼んでくれ」
「本名とあだ名が別人過ぎる」
仮面マンと呼んできた口で言われるとは……そもそもあだ名でなくコードネームなのだが、まあいい。
ラヴェンツァと視線が合う。変わらず白い犬を撫で回している彼女に問いかける。
「この子、ララとベルベットルームから出て一緒にパレスを攻略すればいいのか?」
「はい。パレスの攻略には、彼女の力が必要となるでしょう」
――正直不安だ。いまだにララは変な子という印象しか無い……頼りになるのだろうか。
「ご安心ください。……彼女は頼りになりますよ」
「百人力」
ラヴェンツァに応えるように一言溢しながら親指を立てるララ。
ラヴェンツァが言うのなら信じよう。
一通り話が終わったところで「ふふふ」と老人――イゴールの笑い声が聞こえてきた。
「残された時間は少ない……そろそろ出発された方がよろしいでしょう」
イゴールの言う通りだ、猶予はあと少ししかない。のんびりはしていられない。
「そうだね、鼻のおっちゃん。短い間だったけどありがとう」
「えぇ。健闘をお祈りしていますよ、ララ・グレイラット様」
鼻のおっちゃん……フレンドリーな呼び方だ。自分が来るまでにいったいどんな話をしていたのだろうか。
ララは魔女の様な帽子を頭に被り、杖を持って白い犬と共に立ち上がった。
そしてラヴェンツァへと目を向けて、
「でも、私だけじゃまだ足りない。パパ達の力も必要」
「えぇ……今の境界線が不安定な状態ならお呼び出来ると思います」
「わかった、そっちは頼んだよ」
そうやり取りを交わした後、白い犬と共に隣へ来たララはこちらを見上げ。
「行こう、仮め……ジョーカー」
「あぁ」
今なにか言いかけたのはスルーし、ベルベットルームの出口へと向かう。
「あなたのお仲間が目覚めを待っております。さあ、お行きなさい」
イゴールの声とラヴェンツァの視線に見送られ、出発した。