時間はどんどん過ぎていき、俺たちはただ人里を目指して飛んでいた。
「心なしか、だんだん敵の攻撃が激しくなってきてないか?」
すでにヘトヘトな俺に対し、全然疲れというものを感じさせない妹紅は答える。
「そうか?」
と。
しかし、妹紅の言葉は本当だろう。
数々の弾丸をかわし、的確に妖怪に攻撃を当てている。こんな16才程度の少女がどうしてこんなに戦い慣れているのか。使っている技も魔理沙や俺とは違って魔法とは違う。そこで俺はある仮説を立てた。
それは妹紅が妖怪であるという事。
もしそうなら、妹紅のいままでの戦闘能力に説明はつく。外見が幼い妖怪がいるんだから、妹紅ぐらいの妖怪もいるだろう。
しかし、俺には聞くことはできない。もしその問いに対して、妹紅が「YES」と答えた時、俺はどう感じるか。
別に、妹紅が妖怪だからってここで縁を切るつもりはない。ただ、もし妹紅が妖怪だとしたら、これからもいままで通りの関係を保てるかどうか。やはり、距離ができるような気がしてならない。妹紅からすればそれは嫌なことだろう。もちろん俺もだ。
結局、知らぬが仏というやつだろうな。
「おい、何ボーっとしてんだ?」
「うおっ」
つい考え込んでしまった。こんな戦場で。
そして、我に帰った俺は気づいてしまった。
「……妹紅、その服はどうして破けてるんだ?」
袖の部分。位置からして敵からの被弾だろうか。よそ見してた俺を庇ったのかもしれない。
「あぁ、ちょいと掠ったんだ」
「そうか。それとも被弾した腕が治ったとか?」
つい口走ってしまった。余計なことを。
今の掠ったという傷だって妹紅は隠したかったのかもしれないのだ。
「あぁ、いや、なんでもなし」
とりあえず、ごまかしてみた。
……が、気になる。
俺は妹紅の横顔をみる。まだ余裕が感じられるその顔はまさに人間そのもの。歳にして高校生あたり。髪の色は白く染まっているが、現代にいても妖怪とは思われないであろう。
「うおっと」
俺のすぐそばを弾が通る。危うく被弾するところだった。
……だが、気になる。
ここまできたら、もう聞くしかない。
「妹紅……」
「ん、どうした」
俺は心の準備を整えるべく、深呼吸をする。
「お前……本当は妖怪……とか?」
「……」
何故だ……何故黙る。
まさか……本当に?
その時だけは周りの弾幕が止んだ気がした。
「どうして?」
「いや、お前の戦闘能力は普通の人間の少女にしたら強すぎる……そもそも空飛べるし……弾撃てるし」
「そうか。しかし残念だが私は妖怪じゃない」
「本当か!?」
「あぁ。それに、博麗の巫女やあんたの師匠の魔法使いだって妖怪じゃないだろ? 」
あぁ、そうか。そういえばあの二人は人間なのか。
しかし、これで俺の中の蟠りはなくなった。すっきりしたついでにもう一つの疑問も解消しておくか。
「そうだ、慧音は?」
「あいつは微妙だな」
「そうか……」
ん?
「……微妙って、なんだ?」
「あれ、お前慧音から聞いてないのか?」
何を?まさか?
「まぁいいや。丁度今日は満月の日だし、直接会えばわかるだろう」
何だよ、満月だとどうなんだよ!
「さ、んなこと言ってたら着いたぞ。人里に」
「……は?どこだ?」
「ここだ」
妹紅がいう場所。確かにここは距離的に人里だろう。
しかし、明らかにここは森林。民家のあとすらない。
「これは私だからわかることだが、ここにあった里は今はない」
「は?」
「それが慧音の能力。きっとここも妖怪が襲ってるんだろう。ついてきな、この能力の穴を教えてやるよ」
とりあえず、妹紅についていくことにした俺だったが。
頭の中では慧音人間説と妖怪説が議論をしていた。