おっさんが幻想入り   作:柊の花

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目の前には一人の少女。

手に持っているのは、その持ち主の背丈の3倍はある槍のような形状の光の塊。

そして、それを向けられているのは、俺。

「お、お前は」

少女は不敵に笑った。

「私はレミリア・スカーレット。 わかりやすく言うと、吸血鬼よ」

吸血鬼——まさか本当にそうだったなんて。

いや、そもそも、コウモリのような翼や口元から覗く牙からもしかしたら……とは思ってたけど……

というか、名乗るってのは戦士としてのプライドか何かか?

「咲夜には悪いけど、貴方達は私の手で始末させてもらうわ。特にその娘は私の傷の御礼もしたいし」

慧音の事だ。

 

少女は一歩踏み出す。

ただそれだけの動作で、大気が震えた気がした。

さらに一歩、一歩と近づいてくる。

身にまとった妖気が具現化し、俺の目が直接捉える。

「…………」

正直、このレミリアには俺の攻撃はかすりもしないだろう。

だが、だからといってただ逃げるわけにもいかない。慧音だっているんだ。俺だって戦えるんだ。

「ファイガ!」

少し無理をして強力な魔法を放った。巨大な火の玉は近づくだけで火傷するほどの高温。それを惜しみなくレミリアに撃つ。

しかし、あくまで囮だと悟られないように。

本命はこっち、ブレイクだ。

「ブレ……」

そこまで言いかけて、俺はつい魔法の発動を止めてしまった。

 

直撃。

俺の放ったファイガはレミリアに直撃した。

かわすことも、はじくこともせず、少女は正面から受け止めた。

周りの木々は黒く焦げ、燃え上がっている。

しかしそこに一人、レミリアは仁王立ちのまま立っていた。

 

(バカな……あれは俺の本気だったはずだ……)

防いだわけではない。実際、この子の顔は火傷を負っていた。

しかし、それでも一歩、一歩と近づき、笑う。

幻覚か、顔が元の顔に戻っているように見えた。

 

 

いや、幻覚じゃない。

不死身。

直感でそう感じ取った。

俺の攻撃は全く効かない。

吸血鬼は決して人間が戦える相手じゃない。

妖怪なんかとは訳が違う。

 

しかし、だからといって負けが決まったわけでもない。

「ブレイク!」

唱えた時俺と少女の周りに、岩が出現。

この魔法、以前使って失敗した石化魔法。扱いがとても難しい。

しかし、そんな俺でも使える方法があった。

 

「くらえ!!」

――狙うのは、足。

「……」

これも直撃。岩はレミリアの足に直撃、そして同化した。

両足だけを石化させる。こういった工夫で使うことができたのだ。

「ど、どうだ、もしこれから俺達には手を出さず、帰るというならその足は治してやる」

そして交渉。やはり、最終的にはこの決断に落ち着く。

 

しかし——

「……ほぅ。貴様はたったこれだけでこのレミリアに対して有利になったと思っているわけか」

そういって、レミリアは両足を付け根から手刀で切断した

「そんなのありかい……」

そして、レミリアの足は新しく「生えた」。まるでところてんのように、あっという間に。

「やはり人間というのは情に流されやすいというか、なんというか……。圧倒的実力差で上回っていると確信できるとき以外は相手に情けをかける必要なんかないのよ。アホが」

 

そしてまた少女が歩き出す。

俺は一歩下がる。背中が木にぶつかった。

その一瞬の硬直で少女は地を蹴り、飛んでくる。

「貴様の血……もらった!!」

レミリアはさらに踏み出し、赤い槍ごと俺目掛けて飛んできた。

このスピードには反応しきれなかった。

「(かわせないッ!)バリア!!」

持てる全力でバリアを張った。それはレミリアの槍よりも一歩早く展開した。

 

 

しかし、そのバリア容易くは赤い槍に貫かれ、砕かれた。

「いただく!」

そして槍は俺の首に刺さった——

 

 

 

が、当たる直前――

 

ガキィィィン!!

 

そんな甲高い音がしたのだ。

俺の首からはそんな音はしない。これは金属音。

しかし、これもどこかで聞いたような金属音だった……

 

レミリアから延びる槍。それを止めたのは一本の刀。

あろうことかその刀は一度俺を殺そうとした刀だった。

「よ、妖夢か!?」

助けて切れたのは、幽々子と共にいた少女だった。

「大丈夫ですか、……えっと」

「沖田だ、忘れるな!」

妖夢は刀でレミリアの手を振り払い、距離をとる。

「いや、まさかまた会うとは思ってなかったもので」

「そ、そうだ。お前帰ったんじゃなかったのか?」

「そんな事より、助けてもらってお礼もなしですか」

そういっている今も妖夢はレミリアへの警戒を解いてない。

「助かった。すまない」

素直に礼を言う。にもかかわらず、妖夢は俺を無視して話し始める。

「……さて、レミリアさん。これはどういうつもりなんですか?」

「あぁ、お前は妖夢とか言ったわね。そういえばあなたって血は通っているのかしら?」

「……そんなこと、確かめてみてはいかがですか?」

お互いを挑発し合っているが、これはマズイ。さっき妖夢は妹紅と戦って、その疲労も残ってるはずなのだ。もし戦うのだとしたらまさに「死闘」必至だろう。人間(?)と吸血鬼では力が違いすぎる。さっき身を以て知った。だから俺にできる事と言えば、

「妖夢、俺はもう戦わん」

……別に逃げた訳ではないのだ。

「仕方ないですね。だったらせめてその人間を連れて遠くへ行ってください」

「お、おう……」

俺は妖夢の後ろを通り、慧音に向かって走る。

しかし、体は地面へと吸い寄せられた。

「あぁ、目眩が……」

 

つい俺は倒れ込んでしまった。

転んだ衝撃で杖が転がってしまい、すぐに立つのははたからみても無理だった。

運が悪いことに俺の目の前までレミリアは近づいていた。

「隙あり!」と言わんばかりの満面の笑み。ただ、無邪気な子供のそれとはかけ離れているのだが。

そして、再び槍が俺を刺そうと近づいてくる。

 

 

本当に運が悪い。

 

 

「お前がな、レミリアぁ! テレポ!!」

「……お?」

一瞬の速さで俺はレミリアの後ろに回り込み、呪文を唱える

「ドレイン、アスピル!」

「んん……これは?」

これだ。この瞬間を待っていた。

絶対に俺を殺せると思い、油断したこの瞬間。

こいつから魔力、体力を奪い取る!!

瞬間俺の体は今までにないくらいの力で満ちているのがわかった。

 

「小癪な……」

「フハハ!どうだ!逆にお前からエネルギーを頂いてやったぞ!」

吸血鬼の隙をつけたという事で、俺のテンションは上がってきた。

案外、いけるかもしれない——と

「俺も戦うぞ妖夢!! 勝負だ!レミリア!!」

「え、えぇ?」

混乱してる妖夢をよそに、俺は杖を拾い上げ、宣戦布告の如くレミリアに向ける。

そして吸血鬼と人間の、無謀ともいえた戦いが始まった。

 

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