どういうわけか、俺達は迷いの竹林へと進んだ。
竹が生い茂る此処は通った道すら記憶に残らず、迷子になりやすいのだ。それにしても、今日の竹林はいつにもましてわけがわからない。
「おい妹紅、何かおかしくないか?」
「そうだな」
すこし止まってみる。
後ろを振り向いてみる。
そしてふたたび前を向く。
するとどうだろう。先ほどと景色が変わっていた。
「恐ろしいな……ただ止まっているだけで帰り道すらわからなくなるぞ……これ」
さすが迷いの竹林、ということか。
「しかし、これはさすがに俺でもわかるぞ。幻術かなにかだろ?」
「そうだ。ここに侵入するものが一つの場所にたどりつけないようにしてあるんだ」
だが、それは逆に言うと、『黒幕の場所は此処です』と言っているようなものだ。
「妹紅、お前方向感覚は大丈夫か?」
「ああ。慣れているからな」
さすがだ。いろいろな事が起こっている今夜で一番安心した瞬間だった。
「動くと撃つ!」
ギクッ
体が一瞬で硬直した。
油断した瞬間なだけあって、鼓動はデットヒート。
気が付くと背後に何かの気配があった。
妹紅もそれに気づき、止まっている。
背後をとられた。一生の不覚。
俺は恐る恐る後ろを振り向く。
「また間違えた。撃つと動くだ。これから動く」
「って、魔理沙か?」
そこには我が師匠でもある魔理沙がいた。
しかし、目の前に構えているのは八卦炉だ。
「……なんのつもりだ?」
明らかに敵意むき出しだ。
高出力レーザーを打ち出す危険物、そして俺の杖についている八卦炉よりも高性能な八卦炉だ。ってか、俺って一度も八卦炉使った事なくね?
「いや……ここを進んでいたらな?霊夢と紫にあったんだ。知ってるか?」
あぁ、とうなずく。
「で、弾幕勝負を挑んで負けた。連れのアリスは先に帰っちまった」
……はぁ。
「で、途方にくれてた所でお前を見かけたということだ」
「お前は知り合いを見かけたら決闘を挑むのか」
「そうだな」
「……」
こいつも異変解決に来たんじゃないのか?
「だったら、一緒にいかないか?お前がいればより心強いだろ」
しかし
「悪いけど私も帰るつもりだ。霊夢達が動いたんだからもう解決したも同然だしな。それよりも暇つぶしの方が楽しいと思うのだけど?」
あくまで意見を貫くつもりか。
「すまない妹紅。ちょっとばかし待ってくれ」
妹紅は了解 と手を振って地面に腰を下ろしていた。
「お、やってくれるのか」
渋々付き合ってやる感を出しているが、実は俺も乗り気だ。
「ふっ。この前の俺と一緒にするなよ……」
俺は既に吸血鬼とも闘った経験があるのだしな。
「カードは3枚まで!面倒だから一回被弾で負けにしよう」
「……あぁ」
そこで俺は、これから行うのは弾幕ごっこなのだと気付く。
そう、俺はつい本気の戦いをするつもりだった。
数時間前の俺と逆転している。もっと言うなら戦闘に抵抗が無くなってしまったのだ。
その間に魔理沙は箒を操り、遠くに離れる。
「……仕方ないか」
そう思った時、すでに戦いの火ぶたは落とされている。
「うおっ」
ただ離れただけだと思ったが、トラップを仕掛けていた。
魔理沙から放たれた弾。そこからさらに弾幕が放たれている。
まるでファンネルみたいに。
縦横上下と飛び回る。目が疲れるな。
「お、あれをかわしたか~」
魔理沙は喜んでいる。
こっちは必死で動いているというのに。
しかしだ。
さっきみたいな死闘を終えた俺にとっては、なんとも生ぬるい戦いだった。
数日前、いや数時間前の俺ならすでに直撃していたのであろう。
俺は予想以上に強くなっていたようだった。
「……ぬわっ!」
なんて考えていたら、いつの間にか囲まれていた。
確かに俺は強くなった。しかし、弾幕ごっこがではなかった。
言うなれば、いくら喧嘩が強くともプロとボクシングルールでやりあえば勝てるわけがないのと同じだ。
「いつのまに……」
どんどん弾幕は増え、俺はそこから抜け出せなかった。
かわせるようにできてるんじゃなかったのかよ、そう訴えたくなった。
「よっしゃ!勝ちはもらったぜ!」
「ええい時よ止まれ!」
瞬間静寂が訪れる……しかし
「ん?私の弾幕が止まった?」
「は?」
時間が止まったのは俺の周囲の弾幕だけだった。
てっきり俺は咲夜みたいに全世界の時間を止められるのだと思っていたのだけど、なぜかそうはならない。使い方は合っているはずなのに。
「……ええい、考えていてもしょうがない!」
とにかく弾幕は止められたので、その間をくぐり抜けた。
俺が止められるのは、一定範囲の時間だけ。そういう結論で落ち着いた。
「なんだ?それはスペカなのか?ちゃんと宣言しねーと困るぞ」
「え?あぁ、スペカか……」
ならばさしずめ、
It's a small world って感じだな。(咲夜の『世界』とかけて)
「いや、すまんすま……げほげほ」
むせた。杖を持ったまま、手の甲で唾や諸々を受ける。
「どうした?体調が悪いのか?」
魔理沙は弾幕を止めて、近づいてくる。
大丈夫だ。とボディランゲージで伝えて、お返しの弾幕を放つ。
一球入魂で戦った後の弾幕は非常にやりづらい、そう思った。
魔理沙の弾幕の間をくぐり抜け、竹の裏に隠れる。
「ふぅ……」
一息つき、手に着いた血を拭う。
「……はぁ」
もう一度息を吐く。
どうやら、これは時間停止の代償らしい。気分が悪い。
今は吐血と鼻血だけで済んでいるが、全身の血管が膨張してるのがわかった。これは乱用は出来そうにない。そして
回復魔法を唱えてみた。だけど効果はなかった。
走って消費した体力と同じく、生力も魔法では治せないらしい。
しかし、妹紅が持っている例の梅干しで治るはず。となればこの勝負を終わらせる必要があった。
魔理沙にまで余計な気を遣わせる訳にはいかない。
俺は竹から体を乗り出す。
そして魔理沙に向かって弾幕を放つ。
とにかく、魔理沙に勝つ事。
俺は力を求めて魔法使いになった。
となれば、その一歩として、師匠である魔理沙は越えなければならない壁だろう。
「今夜!お前を越えてやる!」
――数分後、俺は完膚なきまで叩きのめされた。
※申し訳ありません。
悩んだ末、技の名前を変更させていただきました。