就職
俺の名前は沖田(仮)。32歳だ。
ついこの間まで普通に生活していたのだが、ある日自殺を謀った。しかし、死んだと思ったら「幻想郷」という別の世界に来てしまったらしい。
もう一週間も経ってしまったが。
帰るためには満月の夜まで待たなければいけない。なんでも、俺のような外の世界の者が増えたため、帰省に規制をかけたそうだ。管理者も大変だな。
そこで俺は人里の上白沢慧音の家に居候させてもらうことにした。
(まぁ、あの後相当説教を食らったが)
今回はそのことで問題があった。
「じゃあ、先に寝るな」
「あぁ、おやすみ」
いつものように、あいさつを交わし、俺は床につく。
慧音はなにやら仕事が残っているらしく、毎晩遅くまで起きている。
別に気にはならなかったが、その夜は特別のどが渇いた。
私は水を飲むために慧音のいる居間へといく。
「ん」
慧音が疲れたらしく机に突っ伏し寝ていた。
「世話が焼けるな」
私は布団をかけてやった。
そこでチラっと慧音の下にあるメモ帳に目がいった。
ちょっとした好奇心で見てみた。
そこには数字が書かれていた。
「……まったく、どっちが世話焼けるんだか」
ここ最近の家計簿だった。
俺が来てから、いままでの生活を改めたらしく、どうやら赤字らしい。そしてこんなに遅くまで頭を悩ませていたのか。
おれはいたたまれない気持ちになった。
俺は毎日人里やその周辺を散歩し、慧音に小遣いももらい飯を食っているのだが、そうしている間にも慧音は働き、俺のためにがんばってくれている。
俺よりも若いであろう慧音に働かせて自分は何をしているのか……
そして俺は決心した
「再就職してやる」
翌朝、俺はいつもより早く起きる。
「じゃあ、行ってくる」
慧音が寺子屋へ行く時間だ
「ああ、気を付けて」
いつものあいさつを交わし、いつものように俺も家を出た。
しかし、今日の俺は違う。
就職場所を探すのだ。
ある程度人里には慣れてきて、俺の顔も知っている人が多くなった。そこで俺を雇ってくれるところを探すってわけだ。
しかし、まぁここの住民はすごいわけで、少人数でもやっていけるように工夫されている箇所がほとんど。雇う必要がない、逆に人を雇うと赤字になるなど、ほとんどが失敗となった。
昼だ。腹減った。
しかし、今日は食べない。
なぜなら自分の分は自分で稼いだ金で食うと決めたから。さすがに朝飯と夕飯はいただくが。
飯……めし……
ふと、俺は昔を思い出す。
そう昔、実は「焼き鳥屋」に憧れていた。
動機も単純で、たまたま見たドラマで、ラストが必ず焼き鳥屋で酒を飲むシーンだった。そこがとにかく楽しみだった。おいしそうに焼き鳥をほおばりながらビールを飲む。そして店主の愛想の良さ。俺は絶対に焼き鳥屋になってやる!そう考えた。
しかしまぁ現実で言うと、焼き鳥屋で食っていくなんて、成功者にならないといけない。高校の頃、なりたい職業で焼き鳥屋と書いてバカにされたのもいい思い出。
結局その夢は社会人になって仕事終わりにおでんの屋台で酒を飲むという形で叶った。
そして、今が本当の意味で夢をかなえる絶好のチャンス。俺はいつも人里の隅に開いてある屋台へと来た。
「ん?またあんたかい。昼はまだやってないよ」
そして店主、ミスティアが経営する「八目鰻屋台」へと来ていた。子供にみえるが、実にしっかりしている子だ。果たして俺を雇ってくれるだろうか。
「今日は食事に来たんじゃないんだ」
「ん?」
「ここで働かせてもらえないか?」
ここで働き、俺の長年の夢をかなえるんだ。そういう思いもこぼさずに伝えた。
そしたら
「……あんまり人を雇うつもりはないんだけどね……まぁ、雑用でよかったら使わせてよ」
「あ、ありがとう!ミスティア」
「ところで、あんたの夢って八目鰻屋の店主かい(笑)」
冗談めかしてミスティアは笑う。
「いや、焼き鳥屋だ」
「なんだって!?」
その瞬間思い切り殴られた。
「……ん、ここは」
「あぁ、起きたか。先ほどはすまなかったね」
どうやら気絶したらしく、夕方になっていた。
我慢することなく昼飯の時間を終えられたと考えればうれしい。
じゃなくて
「なんでいきなり殴ったんだよ」
そう、そこ。
「だって私に堂々と焼き鳥とかいうんだから」
「なんだ?鳥が嫌いなのか?」
「……」
あきれた様子で背中を見せる
「……きれいな羽だな」
コスプレなのだろうか
「見て分かる通り、私は夜雀の妖怪だ。まさか知らなかったのか?」
妖怪?
「おい、あんたが妖怪だって?妖怪ってのはもっと不気味で……そう、この前黒い塊の奴に会った。ああいうのが妖怪というんだ」
「それは偏見だ(きっとルーミアか)。外の世界の常識はここでは通用しないことを覚えておきな」
人に似ている……て事?……
「まさか、ここにいる人って全員……」
「アホ、ここは人里、人間に決まっているだろう(一部を除いては……)」
「そ、そうか」
安心した。慧音が妖怪だったらどうしようかと思った。どうもしないが。
「ともかく、焼き鳥屋をやるつもりなら他を当たりな。うちは八目鰻が主役なんだから」
「いや待ってくれ!分かった!焼き鳥屋でなく、この店で働かせてくれ!」
ミスティアは一つため息をつき、仕方がないという顔をした。
「まったく、最初からそういえばいいんだ」
「いいのか!?」
「あぁ。ただ今日はやることはないぞ。明日の朝、9時にここに来てくれ。」
「分かった。ミスティア」
「オーナーと呼んでくれ」
案外乗り気で助かった。
しかし、わたくし沖田。めでたく再就職が決まった。
これからは私が慧音を支えていかなくてはな。
余談だが、妹紅は問題ないのだろうか。
おっさんスペック
中肉中背(175くらいの身長)
何処にでも居そうな顔で、告白されたことは一度もない。
体を動かすのが得意ではないが、生前は食生活やジム通いなど健康面に気を使う性格。
学歴は一応大卒。