おっさんが幻想入り   作:柊の花

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迷子

「……妹紅。お前さっきなんて言ったっけ?」

「……目的地には小一時間でつくと言った」

「……何時間たった?」

「……ざっと5時間くらいか」

 

私、沖田は藤原妹紅と共に遭難していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

約6時間前……あさ10時頃

 

 

土曜日の今日はオーナーから休みをいただいた。というのも、昨日慧音が――

 

「沖田、明日空いてるか?」

開けることはできるが、なぜだろう?

「いや明日、前から約束してた妹紅とのキャンプをやることになってな。」

「へぇ。じゃあ分かった。留守は任せておきな」

「あ、そうじゃなくて、お前も一緒にどうだ?」

「俺か?」

しかし、あいつはきっと二人きりで行きたいと考えていると思うんだが……

「あぁ。きっと妹紅もそう考えているだろう」

本当かどうかはさておき、俺も実は行きたかったりした。

「そうか?じゃあ、行ってもいいか?」

「あぁ。もちろん歓迎するさ」

 

 

 

 

 

当日。

「慧音。俺が持つぞ?重いだろう」

あきらかに10kgはありそうな荷物を抱えている慧音に声をかける。

「いやかまわん。そのかわりにこいつを持っていてくれ。」

弁当……まぁ大事だよな。

 

そして妹紅も合流。

「すまん、待ったか慧音、おっさん」

「いや、私たちも今来たところだ。」

「そうか。慧音、いつもの場所でいいんだよな?」

「あぁ。よし行こうか」

 

そして人里近くの山へと行った。どうやらここは妖怪が少ないので人間にも人気な場所らしい。

 

 

「おっさん、転ぶなよ」

「年寄り扱いするな」

「沖田、おまえガム持ってたよな。一つくれないか?」

「あぁ。わかった」

私はポケットからガムを取り出す。

「あ」

ついでに新しく買ったサイフが坂の下に転がってしまった。

「悪い取ってくる。先行っててくれ」

「じゃあ私が連れてってやる。慧音、すぐ追いつくな」

「すまないな。じゃあまたあとで」

妹紅はどうやら道を知っているらしい。心強い

 

「よし、じゃあ降りるか」

「気をつけろよ。結構急だから。」

「……すまない、手を貸してくれ」

「早いな」

妹紅につかまりながら、足を降ろす。

 

「!!」

「えっ……」

しかし、バランスを崩し、妹紅も巻き添えにして坂の下まで転がってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「いたたた」

「おっさん、大丈夫か?」

大丈夫なもんか、といいたいが、妹紅に傷がないのでまた歳のせいと馬鹿にされるだろう。

しかし、俺たちが落ちてきたところからかなり離れていて、上るのは困難そうだ。これは歳のせいじゃないぞ。

「それにしても、随分落ちたな」

「すまない妹紅。お前まで巻き込んでしまって」

「大丈夫だ。私だってこの山は何回も来ている。ここからなら目的地まで小一時間程度だろう」

「おぉありがたい」

 

 

 

 

そして、今に至る

 

「幸いなのはおっさんが弁当を持ってたことだな」

「慧音は夕飯用の食材で食べただろうしな」

しかし

「妹紅。こっちであってるのか?」

「わからんが、まっすぐ歩いていれば山から抜け出すことはできるだろう」

「そういうもんか?」

 

 

 

〜さらに3時間後〜

「暗くなってきたな」

「あ、あれ?こんなはずじゃ……」

「心なしかここもさっき通った気がしてきたぞ」

「あー!もうやめだ!今日は寝る!」

「寝る?ここでか?」

「あぁ。飯食って寝るぞ!」

あぁ、もういいや

「そうだな。もう食って寝よう。疲れた」

 

そして枯れ枝を集めて火を起こした。その際妹紅がなんか魔法っぽいの使ってビビった。この世界の常識なのか?人間が魔法を使うのは。

 

 

 

そういえば、こうやって妹紅と二人きりってのは久しぶりだよな。

「なぁ妹紅。おまえってあの家に住んでるんだよな」

「住んでるというか、空いてたから居座ったってとこだな」

「あんなとこできちんと生活できてるのか?」

「もちろんだ。住めば都だ」

「そうか?きちんと食べてるのか?」

「あぁ。それなりに」

まるで田舎のオカンだな、と思う。いやオトンか。

「……あまり食ってない感じがするんだが」

「私は食っても食っても太らない体質なんだ」

羨ましい限りだ。若さっていいな。

 

 

「そういやおっさん、財布は拾ったのか」

「……」

「いや、そんな顔するな。怖い」

うっかり何のために落ちたのかわからなくなっていた。

「まぁ、あれだ。金なら少しわけてやるよ」

いや……さすがにそれは……

「遠慮すんなよ?せっかく臨時収入があったんだから」

「臨時収入?」

「あぁ。たまたま外の世界の金を拾ったから香霖堂で換金してもらったのさ」

「それはそれは」

そういって妹紅は何故か見慣れたサイフを取り出す

「あぁ!それは俺の財布!!」

「はぁ?お前のはもっと安そうなのだったろう?」

「違う!俺の前の財布だ!!」

はぁ、これで金は一安心か。

「あー。よく見たら一銭も残ってないわ。返す」

「ちょ、おまえ……」

そして空の財布を手に入れた。

「まったく……ん?」

よく見ると、財布のポケットの間に紙切れが挟まっていた。その時

 

ズキン

「ッ!!!」

「お、おっさん!?」

頭痛。

今まで経験したことのないような激痛が走った。

 

……これは……生前の記憶……

流れるように思い出される記憶の動画。

その中で一番聞こえた。おそらく人名。それは

 

 

 

 

「……」

「落ち着いたか……一体どうしたんだ?」

 

この紙……これが俺の名前が記された名刺……

そして俺の名前は……

 

「……カズキ……」

「え?」

「俺の……下の名だ」

「沖田カズキ?いや、沖田は違うか」

 

もし、この名刺を見ることがあったら、もっといろんなことを思い出せるだろう。でも……

 

 

「上の名は?」

「……ダメだ」

「え?」

「俺はまだ沖田でいたい。帰るまでは、沖田でいさせてくれ」

もしこの名刺を見たら……確証は無いが、俺が俺じゃなくなる気がする。それはなんとなく嫌だ。せめてここにいるときは今のままがいい。

 

「俺は沖田だ。これからもそう呼んでくれ」

「あぁ。わかった」

しかし……

「腹減った……思い出すのにエネルギーをほとんど使っちまったようだ」

「じゃあ、弁当食うか。ついでにそこいらの山菜も取ってさ」

「おいおい、見分けつくのか?」

「任せろ。私が食ったことあるやつしか選ばん」

「そうか、それなら安心だ」

そういって弁当をあける。

「ん?なんか酢の匂いが強いな」

「きっと腐らないようにだろ。さっさと食べようぜ」

「あぁ」

 

とりあえず今日は寝る。異論は許さん。

 

 

 

 

そういや、なにか忘れてないか?

 

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