独りでいることに慣れてしまったのは何時からだったろうか。
俺がかき鳴らすギターと音程と曲調を制御してリードしてくれるベースの音、それらをまとめてくれてテンションを上げてくれるドラム。
幼馴染三人で組んだバンドだった。ただ、好きなように合わせて自由に鳴らす音が好きだった。
あの日が来るまでは――。
「悪い……もうお前らとはできない」
「は?」
最初の離脱者はベースだった。
「え……だって、まだ受験には猶予が……」
「ごめん。お前らが悪い訳じゃないんだ! ただ、俺がヘマしたから……」
「もう……もう、引けないのか?」
「ああ。だから俺はここまで……だから、俺の分まで……」
「分かったよ」
円満に分かれることができたが、それから数か月後に凶報が俺の耳に入った。
学校に行ってドラムの奴が珍しく休みでその時から嫌な予感があった。だから放課後にあいつの家に行こうとしたところで担任に呼び出された。
嫌な予感がした。嫌に喉が渇き、全身から冷や汗が止まらなかった。
「……は?」
「すまない。あの子は事故に合って……」
「それは分かりますよ! だから『は?』って言ったんですよ!」
「彼の両親から君当てに預かりものをしてる」
そう言って渡されたのは潰れた箱。
少し黒く乾いた血が付いておりこれが夢ではなくで現実何だと突き付けられた気分だった。
呼吸が浅くなり、目尻から涙が溢れる。
嘘だ。
だってあいつはこんな……こんなことで……嫌だ。嫌だよ。俺を一人にしないでくれよ。
「ああっ……!」
中にあったのは新しいピックと俺の欲しかったアンプだった。
そこから俺は独りになり、がむしゃらに彼らの意志を継ぐために走った。
半年経つ頃には体格は一回り大きくなりストレスによって髪の色素が抜け落ちて真っ白になったまま戻らなくなったりした。
なまじ身体が人よりも丈夫で無茶無謀ができるが故に次第に周囲からは幼馴染の死を越えて輝く『天才シンガーソングライター』と持て囃されるようになった。
だが、そんなことを言われても俺の心には一切響かなかった。
俺を見ろ。
俺とあいつらの目指した頂点。それを目指し、超える。その為に俺の音に魅了されて狂え。
次第にテレビに引っ張りだこになりギターに触れる時間が少し減るようになり凄まじいストレスを受けたこともあった。
落ち着きを取り戻したところで一番いやなタイミングで不幸がやってくる。
「何で……なんでだよ」
俺は墓石の前で一人立ち尽くしていた。
「俺を置いて逝くんだよ」
ベースの奴が死んだ。
刺殺だった。
あいつは幼馴染の中でも一番の音楽好きで誰よりも楽しそうに弾いていた。それを何処との誰かも分からない奴に殺された。
裁判に参加し、容疑者の理由を聞いて俺は我を保てなかった。
『幸せそうだったから殺した』
『は?』
だたそれだけで?
そんなことであいつは死ななければならなかったのか。
『――さけんな』
ふざけるなよ。
『お前! ふざけんな! そんなことで殺しやがって! あいつは……! あいつはそんなことで死ななきゃならなかったのかよ! ふざけるのも大概にしろ!』
周囲の人間が俺を止めてくるが俺はもう自分を抑えられなかった。
こいつを殺す。
そうでなきゃならない。この殺人鬼は殺さなきゃいけないと思った。
だが、怒り狂う俺にアイツの親父は俺を殴ってでも止めてくれた。
『頼む、君は……君だけはあんな奴の為に手を汚さないでくれ。あの子たちもそれを望んでいるはずだ』
『あ……』
それを言われ、俺は初めて涙が出た。
今まで急き止めていた感情が溢れた。
あれから俺は毎年、命日に花を添える。
俺は元気でやってる。悔しさも悲しさも怒りも全部乗せて歌ってるよ。
「何年たっても慣れねぇな。やっぱ……お前らが居ないと寂しいよ」
曇り空の間から差し込む光に向けて手を伸ばす。
「まぁ、俺は俺で頑張ってるからさ……見守っていてくれよ」