今日は集めたメンバーの顔合わせなのだが俺は今、秋葉原に来ていた。
目的は練習用のアンプを改造するための買い物。電気街なだけあって必要なモノは容易に揃った。電子部品が入った袋を持って店を出る。
このままライブハウスで合流するために駅に向かうのだが、その途中で柱の影から金髪の女の子が飛び出してきたのだ。
「うおっ!」
「ぎゃっ!」
相手の頭突きが胸に突き刺さり少し後ろに下がるが少女の方は俺に弾かれる形で尻もちをついてしまった。
「ごめんなさい。大丈夫――か……!」
「うぅ……ご、ごめんな……さい……えっ」
俺は彼女を知っている。
幼い頃の面影はある。だがあの印象に残っていたツインテールはやめて髪をおろしていた。
「
「っ!」
俺が彼女の名前を告げると彼女はすぐさま立ち上がって走り去ってしまう。
「おい! 待――速っ……」
あっという間に見えなくなってしまった。
だが、足元に少し古びた人形が落ちていた。
たしかマジるるとかいう魔法少女アニメのキャラクターだったはず。かなり古くで大切モノであるはずなのだがとりあえず預かる形で拾う。
昔の快活さが嘘のように暗くなっていた。
最後に会ったのは白髪になる前だった。向こうは気づいていないかもしれないと思いながら踵を返してその場を去るしかなかった。できれば昔の様に話せることを願いながら。
ちょっとしたアクシデントに見舞われたが予定よりも五分も遅れてスタジオ入りすることになってしまった。
「悪い、遅れた」
「珍しいな。お前が遅刻するなんてな」
「知り合いに……会ったんだ」
「……大丈夫か?」
「ああ、ごめん。大丈夫」
とりあえず近くの椅子に座るのだがあと二人の姿が見えなかった。
「二人は?」
「飲み物を買いに行ったよ」
「ごめ~ん。飲み物買ってきたよ」
「あ、淵藤さんも来てたんですね」
「二人とも、遅れてごめん」
「いえ、大丈夫ですよ! 命留さん、お茶をどうぞ」
「ありがとう」
俺はお茶のペットボトルを受け取り、少し口に含んで飲み込む。
乾いた喉が潤い、軽く息を吐いて集まったメンバーを見る。
「まぁ、とりあえず自己紹介をしようか」
「なら、俺からだな」
そう言って飛鳥が立ち上がる。
「神田音大二年の沖浪飛鳥だ。担当はドラムで命留とはバンドの助っ人で出会った。よろしくな」
「じゃあ次は私、羽丘女子学園一年の沢城れいな。ベース担当。命留さんにスカウトされたリスナーです」
「僕は汐見誠杜と言います。芸術学院中等部の二年生です……。命留さんには動画投稿サイトのDMでやり取りをする関係です」
「いいなぁ。汐見くんや沖浪さんは命留さんとそれなりの関係値があるんですね」
沢城さんは羨ましそうに言うが俺はそう思わない。
「そう? 俺は沢城さんともそれなりに高くなったと思うよ?」
「そうですか?」
「うん。幼馴染バンド時代から見てくれたんだろ? 俺たちにとっては大切なリスナーだしこれからは、大事な仲間だからね」
そして、最後に残った俺の番になった。
「よし、最後は俺だな。フリーのシンガーソングライターの淵藤命留です。年齢は
そう言うと三人は『えっ?』という顔をした。
互いに顔を合わせながら無言のアイコンタクトを取っているのだが俺は何か変なことを行ったのだろうか。
「どうした?」
「いや、どうしたも何も命留、お前学校は行ってないのか?」
「え……もう卒業したけど……」
「命留さん、中学校の話じゃないですよ?」
「だから卒業したって……」
「もしかして、高卒認定試験の話をしてるんですか?」
「そんなわけないだろう。ちゃんと高校も出てフリーなんだよ」
『?』
あれ、もしかしてこれはちゃんと説明しないといけないことだな。
「あ~なるほどね。悪かった……俺、大学まで卒業しちゃったんだ」
「……? 命留何を言ってる」
飛鳥は俺がどれだけ非常識なことをしているのか理解に苦しんでいる様子で、中高生の二人は何を言っているんだ状態。その中で沢城さんは現役大学生の飛鳥の方を向く。
「ねぇ、沖浪さん。大学ってそんな簡単に卒業って出来るんですか?」
「んなわけねぇ。やるべきことは多いし調子に乗って単位を落とせば留年だぞ?」
「えっと、命留さん。どういうことですか?」
「そうだな……俺の通ってた大学って進学に実績が必要なんだ」
「実績ですか?」
「そう。誠杜くんで言えばピアノの発表会で金を取るとかそういう感じだね」
「じゃあ、命留さんはどうやって卒業したの?」
沢城さんに聞かれ、俺は携帯でいくつかのページを共有する。
「えっと……これは曲?」
「そう。そいつらが俺のヒット曲」
「アニソンにバラード……ジャンルにまとまりがないですけど多くの人が知ってる曲ですね」
「まぁ、簡単に言うと俺より実績のある先生が居ないから学校側から『さっさと卒業しろ!』って逆ギレしてきて俺は野に放たれたって訳」
自分でも何を言っているのかたまにわからなくなるが実際にそうだ。
実績がない奴に何を教わるんだって話で予定よりも資金を使わずに済んだことが利点だが、それ以外は特にない。
「まぁ、俺の話はこの辺にして……練習始めるよ」
「むしろ俺はお前のその破天荒ぶりが治ってないようで気が気でないよ」
「飛鳥、頼むからそこらへんは掘り起こさないでくれ……」
「え~何ですか? 命留さんにそんなすごい話があるんですか?」
「は~い。今度話すから今は練習に集中してくれ」
「分かりました~」
「……僕も少し気になります」
誠杜くん。君もか。
この先、俺の黒歴史とか掘り起こされることが無いように祈りながら練習を始める羽目になった。