どこまで続くのかは未定。でも書けても空の範囲までかなぁ……という気持ちはあります。
「お前に、黒装束の連中の調査を任せたい」
「はぁ? なんで俺が……」
……そんな会話を横で聴きながら、俺、レイヤード・ハートリーは紙袋に入った焼き菓子をひとつ口に放り込んだ。
ボース市街の一角、たまたまタイミング良く出会った昔馴染み兼同僚と情報交換がてらにだべっているところへ突然現れたひとりの男。
軽薄そうで飄々としたその雰囲気に似合わない肩書きを持つ、一応は自分たちの先達であり師匠的存在にも当たる人物……カシウス・ブライトを前に俺はぱちりと目を瞬かせ、隣に立つ赤毛の男……アガット・クロスナーは嫌そうな顔を隠しもしない。
まあ、毎度毎度おちょくられては面倒事を回されている姿を見ているので嫌がる気持ちはわからんでもないけども。というか俺もよく巻き込まれてるし……
そんなことを知ってか知らずか……いやまあ絶対わかってやってるだろうな……さも当然のように会話に入り込んだ彼が放ったのが先の言葉、というわけだ。
ふたりの間でポンポンと交わされる言葉を横で流し聞いていれば、なるほどたしかに特定の支部に根付かないこいつ向けの内容ではあるのかもしれない。
ただ、それはそれとして。と、ふたりの会話が落ち着いたあたりで俺はそっと挙手をしながら声を上げた。
「あのー」
途端こちらへ向く視線の圧……主に隣のやつのせいだが。それに若干引きつつも流石に確認しないわけにもいかないのでなんとか言葉を続ける。
「それ、俺が聞いてても良かったやつなんです? 聞いた感じあんまり公言しない方が良さそうな気配してんですけど」
「うむ、確かに公言は控えておいた方がいいだろう。だがまあ……コイツはどうせ一人で無茶をするに決まっているからな。ならちゃんと事情を知っている者が周囲にいた方がよかろう、という俺の親心の現れだ」
「あぁ~~~……」
「おいコラおっさん何が親心だ気色悪ィ。ヤードも納得してんじゃねぇよ」
「いてっ」
確かに、と頷けばゴン、と後頭部に軽い衝撃。拳を落とされた頭を抑えながらアガットをジト目で見やる。
まあ実際、こいつの性格的にも人に知られていない限りはこの件で誰かに頼ったり巻き込んだりすることはまずないだろう。だからこそ先んじて共有者を作っておくことで無理をしないようストッパーをかける……というところか。その辺の調整はさすがの一言である。
「今はシェラザードも新人教育に忙しいからな。そうなるとお前ぐらいにしか頼めんのだ。任せたぞ、アガット。レイヤードも、可能な範囲で構わんから極力気を配ってやってくれ」
「チッ……仕方ねぇな」
「了解っす」
その返答に満足そうに頷き、話を終えたカシウスはさっさと立ち去っていった……方向的には発着場の方だし、多分もうすぐ出る便に乗るのだろう。相変わらず忙しそうだなぁ、とそれを見送る。
「……で、アガット。これからどうする?」
「そうだな……まあ、もうしばらくは
「あー、そっか。あっちが動かないことには何もわかんないから待つしかないのか……俺は明日にはルーアンに戻る予定だけど……たぶん時期的にもうそろそろ忙しくなると思うんだよなぁ」
「時期? ……ああ、学園の方か」
「そうそう。それで卒業生のお偉方とか来場者なんかが集まるから、その警備とか街道の整備依頼が増えるだろ? まーたメルツ共々ジャンにこき使われるのか……」
がっくり、とわざとらしく肩を落とせば、頭を抑えられガシガシと髪をかき回された。ぬわー! と上げた悲鳴は気ィ抜ける声出してんじゃねぇよとさらに荒っぽくぐしゃぐしゃに抑え込まれる。
しばらく好き勝手に撫でくりまわされて、ようやく開放され乱れた髪を直しながら相手を睨めつければ、若干呆れたような顔のアガットに見下ろされた。なんだそのやれやれみたいな顔は。口角上がってるの見えてんぞ。
「ま、こっちの手が空いて気が向いたら行ってやらんでもねぇから、そっちでもせいぜい気張れや」
「確約してはくれないんだ……」
「甘えんな、馬鹿」
翌日、ボースから街道経由でルーアンへと辿り着いた俺は、ちょうど街を発ったタイミングで飛空艇の行方不明事件が判明し騒ぎになっていたことを知るのだが、それはまた別の話。
とりあえずジャンに「あまりにも出立のタイミングが良すぎる」って笑われたのは許さない絶対にだ。
▽レイヤード・ハートリー 22歳♂
髪:ダークオリーブ 目:ライムグリーン
C級正遊撃士。1st時のアガットとシェラザードはたぶんC+だったんじゃないかな、という想定(ロランスが「近々昇級するらしいな」的なことを言っていたので)でそれよりは下のイメージ。
メインの活動域はボースとルーアン、時々王都。
出身はボース地方のラヴェンヌ村。アガットとはその頃からの昔馴染みであり、兄弟分のような関係。