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ボースから離れた途端にそちらで大きな事件が起きるという、あまりにも嬉しくない危機回避性能を見せて暫く。
戻ろうにも定期船は運休だし、こっちの依頼は積まれていてそもそも離れられないし……仕方がないのでギルド経由で情報をせびって調査の進展を教えてもらうことしかできない日々。
その一件があちらで無事解決したらしい、と聞いてほっと胸を撫で下ろした俺に、ルーアン支部受付のジャンは容赦なく依頼の束を積み上げて笑う。憂いが晴れたからって追加で押し付けていいとは言ってねーぞ! やっぱりこいついっぺんシバくか……
……まあ結局、拒否しきれずにすべて受けることにはなったのだが。
そんなこんなで忙しい時を過ごす中、今日もいくつかの依頼を終えて報告のためギルドへと向かう。
時刻は昼過ぎ。報告が終わったら昼飯にでもするかなぁ……などと考えながらまっすぐに向かった先の扉を押し開けた。
「うーっす。ジャン、報告ー……ん?」
「ああ、レイヤードかい。ジャンなら今上だよ」
入ってすぐ、掲示板の前にいたらしい青髪の同業者……カルナがこちらへ声をかけてくる。
確かにいつもの姿が受付に見当たらない。そういえば今日はルーアン市にとんでもないお偉方が来るとかでその打ち合わせが入るかも、とか言っていたことを思い出した。
「あー、マジか。じゃあ暫くは待機だな。……で、」
ガシガシと頭をかいて、もうひとつ目に付いていた少年少女たちへと視線を向ける。
そのうちのひとり、ジェニス王立学園の制服を纏った紫髪の少女とは何度かそちらでの依頼を請け負った時に顔を合わせた記憶がある。確か、クローゼとか言ったか。こちらの視線に気付いたのかぺこりと頭を下げるので軽く手を振っておいた。
そしてその前に並んで立っている、彼女と同年代に見える男女のペア。長い栗色のツインテール少女と、ここらでは珍しい黒髪の少年。
この辺りでは見覚えがないそのふたりの腰元に光るのは準遊撃士を示す紋章で、どうやらここへ来たばかりのニュービーたちようだ、と当たりをつける。
「そっちのふたりは新人か? そういやジャンがなんか言ってたっけな……」
「そ、そんなに噂になってるんだ……あたしはエステル。それと……」
「僕はヨシュアと言います」
「噂っつーかあいつが言いふらしてるだけっつーか……なるほど。お前らがねぇ……俺はレイヤード・ハートリー。お前らやカルナの姐さんと同じく遊撃士だ。よろしくな、期待の大型新人くん」
どうやら話にあったロレントから来るという準遊撃士コンビはかれらのことで合っていたらしい。
つまりはこのふたりがあの空賊事件の解決に携わっていたということか。案外世界は狭いもんだなぁ……
その件に関してはタイミング良く……悪く? 自分で受けれなかった負い目と、地元民として無事解決してくれた事への感謝の気持ちがある。ふたりにはいつか飯でも奢ってやろう、と心の中でメモを残しておいた。
「まあでも、よろしくする為にはまず転属手続きをする必要があるんだけど……そっちはジャンの用事が終わらないとダメだねぇ」
「確かになぁ……まだ上、時間かかりそうなんだろ? ふむ……なら今のうちに街を回ってきたらどうだ? しばらくここで働く予定なら、ある程度土地に慣れておく方がいいだろ」
「そうですね……ただ待っているだけもなんですし」
「あたしも賛成!」
そのままクローゼを誘って3人で街の見物に行くことにしたらしいかれらがギルドから出るのを見送って、俺は報告をまとめるために自身の手帳を開く。依頼中めちゃくちゃに走り書きしたメモを読みといて読める文章に変換する……なんだかんだ、ここがいちばん面倒なところなんだよな、と俺はひとつ息を吐き出した。
「……そういや、あいつらに『倉庫区画の奥にはあんま近付くな』って言うの忘れてたな」
「あ。……まあ、連中程度ならあの子らでもどうにかできるさ、たぶんね」
やっと打ち合わせが終わって降りてきたジャンへ一通りの報告を済ませて、午後の分の仕事をこなす前の腹ごしらえに南街区へ……向かう途中でエステルたちとすれ違った際に確認すれば、やはりレイヴンの連中に絡まれていたらしい。伝え忘れていたことを謝りつつ、そのままアクアロッサでだいぶ遅い昼飯を取る。
そうして腹を満たした俺が向かう先はアイナ街道。午後いっぱいはこっち方面の巡回と魔物の間引きが主な作業だ。下手をすれば今夜はエア=レッテンで一泊になるかもしれない。
まあ、それも仕方の無いことと肩を落として、仕事をこなすために武器を構えるのだった。