本作『ハリー・ポッターと頼れる天才従兄』を読みに来てくださり、ありがとうございます。
本作は、もしもハリー・ポッターが愛情いっぱいの家庭で育ち、頼れる天才の従兄と一緒にホグワーツへ入学していたら――という独自設定の二次創作です。
ハリーの従兄であるレオ・エヴァンズ・スキャマンダーを中心に、原作とは少し違った出会いや日常、友情、魔法の数々を描いていきます。
原作の世界観やキャラクターを大切にしながら、ハリーが家族や友人たちに支えられて成長していく、温かく楽しい物語を目指しています。
※本作にはオリジナルキャラクターや独自設定が含まれます。
※AIを利用して本文を作成しています。
それでは、もう一つのハリー・ポッターの物語をお楽しみください!
1981年10月31日。イギリスの小さな魔法使いの村、ゴドリックの谷に、冷たい風が吹いていた。
ハロウィンの夜。通りにはカボチャのランタンが飾られ、窓の向こうからは家族の笑い声が聞こえてくる。魔法界の人々は、長く続いた恐怖がようやく終わったことを、まだ知らなかった。
村の外れに建つ一軒の家。その窓ガラスは割れ、玄関の扉は内側から吹き飛ばされていた。
ジェームズ・ポッターとリリー・ポッター。
二人は、幼い息子を守るために命を落とした。
そして、二階の子供部屋には、額に稲妻形の傷を負った赤ん坊が、泣き声を上げていた。
「……なんということじゃ」
少しして到着したアルバス・ダンブルドアは、破壊された家の前で立ち止まった。
長い銀白色の髭を風に揺らしながら、彼は静かに眼鏡を押し上げる。普段なら穏やかな青い瞳に、今夜ばかりは深い悲しみが滲んでいた。
ヴォルデモートが消えた。
魔法界に広がっていた闇の支配が終わり、各地で歓声が上がっているという報告も届いている。
けれど、目の前に残されたものを見れば、とても喜ぶ気持ちにはなれなかった。
「ハリー……」
赤ん坊を抱き上げたダンブルドアは、小さな身体を包む毛布をそっと整えた。
ハリーは涙で濡れた頬をくしゃくしゃにしながら、しゃくり上げている。
「大丈夫じゃ。もう大丈夫じゃよ」
もちろん、返事はない。
ダンブルドアはしばらく、その小さな顔を見つめていた。
やがて、彼は懐から羊皮紙を取り出した。
そこには、あらかじめ書き留められた二つの名前があった。
ペチュニア・ダーズリー。
そして、アリシア・エバンズ・スキャマンダー。
リリーの姉妹である二人のうち、どちらにハリーを託すべきか。
これまでの計画では、ペチュニアの家が候補になっていた。リリーと血を分けた姉のもとなら、母親が遺した守護の魔法を利用できる。魔法界から距離を置いた生活も、身を隠すには都合がいい。
しかし、ダンブルドアは知っていた。
アリシアはリリーと同じように、よく笑う女性だった。少々風変わりな魔法生物研究家のロイド・スキャマンダーと結婚し、彼と一緒に暮らしている。
そして、その家にはもう一人の子供がいた。
レオン・エバンズ・スキャマンダー。
リリーの甥であり、ハリーの従兄にあたる少年だ。
「……そうじゃな」
ダンブルドアは、腕の中のハリーに目を落とした。
「君には、ただ安全な場所というだけではなく、愛してくれる家族が必要じゃ」
小さな指が、老人のローブをぎゅっと握った。
その仕草に、ダンブルドアの口元がわずかに緩む。
「よし。行こうか、ハリー」
◇
スキャマンダー家は、ロンドンから少し離れた緑豊かな土地にあった。
広い庭には、季節外れの花が咲いている。生け垣の向こうでは、青い羽根を持つ小鳥に似た魔法生物が枝を揺らし、納屋の屋根からは何かの尻尾が垂れ下がっていた。
玄関の脇には、見慣れない形の足跡がいくつも残っている。
ダンブルドアが玄関扉をノックすると、すぐに慌ただしい足音が返ってきた。
「はい、どなた――まあ!」
扉を開けたアリシアは、ダンブルドアの腕に抱かれた赤ん坊を見るなり、両手で口を覆った。
「ハリー……!」
声が震えた。
彼女は目に涙を浮かべ、すぐさま赤ん坊へと手を伸ばしかける。しかし、触れる直前に動きを止めた。
「リリーは……ジェームズは……?」
ダンブルドアは、静かに首を横に振った。
アリシアの顔が歪んだ。
「そんな……リリー……」
彼女は扉の縁を握りしめたまま、しばらく動けなかった。
その背後から、背の高い男性が姿を現した。少し乱れた髪に、穏やかな目。研究用の上着には、羽毛と草の種がいくつも付着している。
「アリシア? どうしたんだい……」
ロイドは妻の肩越しに赤ん坊を見て、すぐに表情を変えた。
「……ハリー君か」
「ロイドさん。突然の訪問を許してほしい」
「何を言ってるんです、ダンブルドア先生」
ロイドは扉を大きく開けた。
「こんな寒いところで話すことじゃない。さあ、中へ。アリシア、ハリー君を抱いてあげて」
「ええ……ええ、そうね」
アリシアは震える腕で赤ん坊を受け取った。
ハリーは一瞬、泣き声を止めた。
彼女の顔を見上げ、濡れた睫毛をぱちぱちと動かす。
「ハリー。私よ。あなたのお母さんのお姉さんなの」
アリシアの頬を涙が伝った。
「あなたのお母さんは、とっても素敵な人だったのよ。よく笑って、強くて、優しくて……」
言葉が途切れる。
それでも彼女は、ハリーを抱く腕に力を込めた。
「だから、あなたも……これから、いっぱい笑っていいのよ」
ロイドがそっと妻の背中に手を添えた。
「もちろん、僕たちが一緒にいる。心配しなくていい」
ダンブルドアは二人を見つめ、深く頷いた。
「ハリーを、君たちに託したい。魔法界にはまだ危険が残っている。彼の存在を狙う者が、再び現れる可能性もあるじゃろう」
「それでも、です」
ロイドは迷わず答えた。
「この子はリリーの息子で、アリシアの甥です。僕たちの家族ですよ」
「そうです。どんなことがあっても、この子を一人になんてさせません」
アリシアは涙を拭い、ハリーの額にそっと唇を寄せた。
「約束するわ」
ダンブルドアは目を細めた。
「ありがとう。君たちなら、きっと……」
そのときだった。
廊下の奥から、ぱたぱたと軽い足音が聞こえてきた。
「パパ? ママ? お客さん?」
姿を現したのは、まだ幼い少年だった。
柔らかな黒髪に、夕暮れの空を思わせる深い紫色の瞳。寝起きだったのか、片手で目をこすりながら歩いてくる。
レオン・エバンズ・スキャマンダー。
家族からは、レオと呼ばれていた。
「レオ、起きてしまったのかい?」
「うん。玄関の音がしたから……あれ?」
レオは母の腕の中を覗き込んだ。
そこにいた赤ん坊が、きょとんとした顔で自分を見つめている。
「赤ちゃん?」
「そうよ、レオ」
アリシアは息子を手招きした。
「あなたの従兄弟よ。ハリーっていうの」
「ハリー……」
レオは名前を繰り返した。
そして、赤ん坊の小さな手に自分の人差し指を近づける。
ハリーの指が、ぎゅっと握り返した。
「わっ、つかまった!」
レオの目がぱっと輝いた。
「ママ、この子、僕の指をつかんだよ!」
「ふふっ。そうね」
「すごいなあ。僕のこと、気に入ってくれたのかな?」
レオは嬉しそうに笑った。
ハリーは握った指を離さない。小さな手の温かさが、レオの指先に伝わってくる。
「ねえ、ハリー。僕がレオだよ」
レオは膝をつき、赤ん坊と目線を合わせた。
「僕、お兄ちゃんになるんだね。ハリーのこと、いっぱい遊んであげる。魔法生物も見せてあげるし、本も読んであげるよ。あっ、でも、庭の奥にいる子たちはまだ危ないから、もう少し大きくなってからね」
「レオったら、もう予定を立てているの?」
「だって、ハリーと一緒にできること、たくさんあるよ!」
あまりにも嬉しそうな顔だったので、アリシアはとうとう笑ってしまった。
目にはまだ涙が残っていた。それでも、その笑顔は確かに本物だった。
ロイドも息子の頭を優しく撫でる。
「そうだな。ハリーが大きくなったら、二人で庭を探検するといい」
「うん! 約束だよ、パパ!」
レオはハリーに向き直った。
「ハリー、これからよろしくね!」
赤ん坊は、返事の代わりに小さく声を上げた。
それを聞いたレオは、まるで最高の返事をもらったかのように頬を緩めた。
「えへへ。よろしくって言ってくれたのかな?」
「そうかもしれないわね」
「じゃあ、僕、ハリーのお兄ちゃんとして頑張る!」
ダンブルドアは、その光景を黙って見守っていた。
彼が知っているハリー・ポッターの未来は、両親を失い、親戚の家で孤独に育ち、自分の価値さえ知らずに魔法界へ足を踏み入れるものだった。
けれど、今、目の前にあるのは違う光景だ。
ハリーを抱く母親がいて、そばには父親がいる。そして、赤ん坊の指を握り返しながら、嬉しそうに話しかける従兄がいる。
この家なら、ハリーは愛情を知って育つだろう。
自分が大切にされていることを、疑わずに済むだろう。
「ダンブルドア先生」
ロイドが、ふと思い出したように声をかけた。
「ハリーの安全については、こちらでも十分に対策を取ります。ですが、一つお願いがあります」
「何かな?」
「この子に、両親のことを隠しすぎないでください。いつか自分で知りたいと思ったときには、きちんと話してやりたいんです」
アリシアも頷いた。
「ハリーはリリーの子ですもの。お母さんがどんな人だったのか、ちゃんと知ってほしいわ」
「……分かった。約束しよう」
ダンブルドアは、二人の誠実な眼差しを受け止めた。
それから、レオへと視線を移す。
「レオン君。ハリーのことを、よろしく頼むよ」
「はい!」
レオは元気よく返事をした。
「僕、ハリーといっぱい遊びます! 泣いちゃったら抱っこしてあげるし、転んだら助けてあげるし、おやつも半分こします!」
「おやつも半分こか。素晴らしい兄さんじゃな」
「でしょう?」
レオは得意げに胸を張ったあと、ふと真剣な顔になった。
「でも、ハリーが全部食べたいときは、半分こしなくてもいいよ。僕、ハリーが嬉しいほうがいいから」
その言葉に、アリシアは再び目を潤ませた。
「もう……レオったら」
「え? ママ、どうしてまた泣いてるの?」
「嬉しいからよ」
「そっか!」
レオは納得したように頷いた。
「じゃあ、僕も嬉しい!」
小さな家の中に、笑い声が広がった。
◇
その夜、ダンブルドアが帰ったあとも、スキャマンダー家の明かりは消えなかった。
ハリーは柔らかな毛布に包まれ、アリシアの腕の中で眠っていた。
寝室の窓辺には、庭から迷い込んだ小さな羽虫のような魔法生物が、淡い光を灯して飛んでいる。ロイドが窓を少し開けて逃がしてやると、そいつは夜空へと消えていった。
「……リリー」
アリシアは眠る甥の頬を撫でた。
「この子は大丈夫よ。私たちが守るから」
隣に座ったロイドが、妻の肩を抱き寄せる。
「レオもいる。あの子はハリーを気に入ったみたいだしね」
「ええ。あんなに嬉しそうなレオ、久しぶりに見たわ」
二人は、ベビーベッドで眠るハリーを見つめた。
その少し離れたところでは、レオが自分の枕を抱えて立っていた。
「ママ、僕、ハリーのそばで寝てもいい?」
「レオ、あなたは自分のベッドで寝なさい」
「ええっ、どうして?」
「ハリーはまだ赤ちゃんでしょう? あなたが寝返りを打ったら危ないわ」
「そっか……」
レオはしゅんと肩を落とした。
しかし、すぐに顔を上げる。
「じゃあ、ハリーが起きたら呼んでね! 僕、すぐ来るから!」
「分かったわ。おやすみ、レオ」
「おやすみ、ママ。おやすみ、ハリー!」
レオはベッドに近づき、眠る従兄の手をそっと握った。
「明日も一緒にいようね」
小さな声でそう告げてから、ようやく自分の部屋へ戻っていった。
その寝顔には、不安も恐れもなかった。
ハリー・ポッターは、まだ何も知らない。
自分が魔法界でどんな存在なのかも、額の傷が何を意味するのかも、これからどんな冒険が待っているのかも。
ただ、温かな毛布に包まれ、愛情に満ちた家の中で眠っている。
そして、そのすぐそばには、彼を守ることを心から喜ぶ家族がいた。
レオ・スキャマンダーは、まだ幼い少年だった。
けれど、彼の胸にはもう一つ、はっきりした願いが生まれていた。
ハリーに、たくさん笑ってほしい。
困ったときには助けてあげたい。
悲しいことがあったら、一緒に泣いてあげたい。
そして、いつか大きくなったら、二人で世界中を冒険したい。
そのために何ができるのか、レオはまだ知らない。
ただ一つ確かなのは、ハリーの手を握ったときの温かさを、きっと忘れないということだった。
窓の外では、秋の風が木々を揺らしている。
魔法界の長い夜は、少しずつ明けようとしていた。
ハリー・ポッターの新しい人生は、愛する家族のいる家で、静かに始まった。