「……寒い!」
地下へ続く石段を下りながら、ロン・ウィーズリーが肩をすくめた。
「なんで魔法薬学の教室って地下にあるんだよ? 上の階じゃ駄目なのか?」
「材料の保管に適した場所なのかもしれないわ。魔法薬の中には、光や温度に気をつけなければいけないものもあるし……」
ハーマイオニー・グレンジャーは、抱えていた教科書を開きながら答えた。
「それに、地下は気温が比較的安定しているでしょう?」
「へえ。じゃあ、寒いのも勉強のためってことか?」
「そ、そういう意味じゃないわよ!」
ハーマイオニーは頬を膨らませた。
「もう、ロンったら! 何でもかんでも文句を言うんだから!」
「だって寒いものは寒いだろ!」
「二人とも、階段で言い争うと危ないよ」
ハリー・ポッターが慌てて二人の間に入った。
「ほら、もうすぐ教室みたいだし!」
石造りの廊下の先には、重厚な扉があった。壁には薬草や動物の標本が飾られ、棚の向こうには奇妙な液体の入った瓶が並んでいる。
ハリーは扉の隙間から中を覗き込んだ。
「わあ……! あれ、何だろう? 瓶の中で何か動いてる!」
「見てみたいけど、勝手に触っちゃ駄目よ。何が入っているかわからないんだから」
「うん! 先生に聞いてみる!」
ハリーが元気よく頷いたところで、少し後ろから落ち着いた声がした。
「その判断は正しいね。魔法薬の材料には、触れるだけで危険なものもあるから」
振り返ると、レオ・エヴァンズ・スキャマンダーが立っていた。
「レオ兄さん!」
ハリーは嬉しそうに駆け寄った。
「レオ兄さんも、この教室なの?」
「ううん。僕の授業は別の教室だよ。少し時間があったから、君たちが迷っていないか見に来たんだ」
「ありがとう! 僕、ちゃんと教室まで来られたよ!」
「うん。偉いね」
レオが笑顔で褒めると、ハリーは照れくさそうに頭をかいた。
「えへへ……」
ロンが二人の様子を見て、感心したように言った。
「レオ兄貴、本当にハリーのことが心配なんだな」
「もちろん。大切な従弟だからね」
「レオ兄さん……!」
ハリーは目を輝かせ、レオの腕にぎゅっと抱きついた。
「僕もレオ兄さんが大好き!」
「ありがとう、ハリー」
レオは笑いながら、ハリーの頭をぽんぽんと撫でた。
その様子を見ていたハーマイオニーは、胸の前で教科書を抱え直した。
(……優しいなあ)
思わず頬が緩みかける。
しかし、すぐにハッとして、彼女は小さく首を振った。
(だめだめ! 今は授業に集中するの! 魔法薬学の予習だって、ちゃんとしてきたんだから!)
「じゃあ、僕は行くね。みんな、授業を楽しんで」
「うん! またあとでね、レオ兄さん!」
「またな、レオ兄貴!」
「レオ、またお話を聞かせてください!」
ハーマイオニーは勢いよく言ってから、自分の声の大きさに気づき、慌てて口を押さえた。
「……あっ! その、古代ルーン文字のことも……!」
「もちろん。時間があるときに話そう」
レオが微笑むと、ハーマイオニーの顔は一気に赤くなった。
「は、はいっ!」
レオは三人に手を振り、廊下を歩いていった。
ハリーはその背中が見えなくなるまで手を振り続けた。
「……さて、俺たちも入るか」
ロンが扉を押した。
その瞬間、教室の空気がひやりと肌に触れた。
棚には干からびた植物や奇妙な瓶が並び、壁には大きな黒い鍋がいくつも掛けられている。教室の奥には、黒いローブをまとった男が立っていた。
黒い髪。青白い顔。冷たい目。
セブルス・スネイプだった。
「遅い」
低い声が、教室に響いた。
「席につきなさい」
三人は慌てて空いている席へ向かった。
ハリーが腰を下ろした瞬間、スネイプの視線がこちらへ向いた。
「さて。魔法薬学という授業では、杖を振り回すだけでは何も解決しない」
スネイプは教壇の前をゆっくり歩いた。
「材料の性質、分量、投入する順番、火加減。わずかな違いが、薬の出来を大きく左右する。いい加減な手順で作れば、失敗するだけでは済まないこともある」
生徒たちは緊張した様子で耳を傾けた。
「私は、無意味に杖を振り回して騒ぎを起こす者や、教科書をろくに読まずに授業へ来る者を好まない」
ロンが隣で小さく息を呑んだ。
ハリーは背筋を伸ばした。
スネイプは教室を見渡し、ゆっくりと口を開いた。
「では、簡単な質問をしよう」
その視線が、ハリーに止まった。
「ポッター」
「は、はい!」
ハリーは慌てて立ち上がった。
「ベゾアール石とは何か」
「えっと……」
ハリーは目を瞬かせた。
「……石、ですか?」
ロンが隣で顔を覆った。
ハーマイオニーは思わず手を挙げた。
「先生! ベゾアール石は山羊の胃から取り出される石で、多くの毒に対する解毒剤として使われます!」
スネイプは彼女を一瞥した。
「私は、グレンジャー嬢に質問した覚えはない」
ハーマイオニーはびくっと肩を揺らし、慌てて手を下ろした。
「……申し訳ありません」
「座りなさい」
ハーマイオニーが腰を下ろすと、スネイプは再びハリーを見た。
「では、ポッター。ディタニーとは何か。どのような性質を持つ?」
「えっと……植物の名前、でしょうか?」
ハリーは困ったように眉を下げた。
「すみません。まだ、そこまでは覚えていません」
スネイプの口元がわずかに歪んだ。
「なるほど。つまり、ポッターは名声を得ることには慣れていても、教科書を読むことには慣れていないらしい」
教室のあちこちから、小さな笑い声が漏れた。
ハリーは頬を赤くした。
「……僕、まだ勉強を始めたばかりです」
「言い訳は結構だ」
スネイプは冷たく言い放った。
「座りなさい」
ハリーはゆっくりと腰を下ろした。
隣でロンが小声で囁いた。
「気にするなよ、ハリー。あの先生、初日から厳しすぎるって」
「うん……でも、僕が知らなかったのは本当だし」
ハリーは少しだけしょんぼりしたものの、すぐに教科書を開いた。
「次は答えられるように、ちゃんと覚えるよ」
その言葉に、ロンは目を丸くした。
「お前、本当に前向きだな……」
「だって、知らないことがわかったんだから、これから覚えればいいんだよ!」
ハリーが笑うと、ロンも小さく笑い返した。
一方、ハーマイオニーは膝の上で拳を握っていた。
(ハリーは悪くないわ。初めての授業なんだから、知らないことがあって当然よ。それなのに、あんな言い方をしなくても……!)
彼女は悔しそうに唇を結んだ。
けれど、先生に言い返す勇気はまだなかった。
「今日の課題は、簡単な治癒薬の調合だ」
スネイプは黒板に手順を書き出した。
「材料は机の上に用意してある。教科書の指示を正確に守りなさい。勝手な工夫は必要ない。まずは基本を身につけることだ」
生徒たちは一斉に教科書を開いた。
ハーマイオニーはすぐに手順を確認し、材料を並べ始めた。
「最初に乾燥したイラクサを量って、それから蛇の牙を加えるのね。順番を間違えると、反応が変わる可能性があるわ」
「ハーマイオニー、そんなに急がなくても大丈夫だよ」
ハリーが声をかけた。
「急いでいるんじゃないわ。間違えないように確認しているの!」
「そっか。じゃあ、僕も一緒に確認するね!」
ハリーは教科書を覗き込んだ。
ハーマイオニーは一瞬だけ目を見開いたが、すぐに表情を和らげた。
「……ええ。じゃあ、まずは材料の分量を確認しましょう」
ロンも鍋の前に立った。
「よし、俺たちもやるぞ。ええと、最初は……」
「乾燥したイラクサを三つまみよ」
ハーマイオニーが即座に答えた。
「三つまみ……これくらいか?」
ロンが材料をつまむ。
「ちょっと多いわ!」
「ええっ!? どこが!?」
「ほら、教科書を見て! 指先で軽くつまむ程度って書いてあるでしょう!」
「そんな細かいところまで見るのかよ!」
「当然よ!」
二人が言い合いを始めたところで、ハリーが慌てて割って入った。
「ま、待って! けんかしないで! 僕が量るから!」
ハリーは小さな秤を引き寄せ、材料を慎重に乗せた。
「えっと……これで三つまみ分かな?」
ハーマイオニーは秤を覗き込み、少し考えてから頷いた。
「うん、それなら大丈夫そう。ありがとう、ハリー」
「よかった!」
ハリーはほっと息を吐いた。
三人は協力しながら材料を鍋へ入れていった。
ところが、火にかけてしばらくすると、ハリーの鍋から妙な泡が出始めた。
「……あれ?」
ハリーは鍋を覗き込んだ。
泡は小さく弾け、液体が少しずつ濁っていく。
「ハーマイオニー、これって普通?」
「えっ?」
ハーマイオニーが振り返った。
「あっ! 火が強すぎるわ!」
彼女は慌てて火加減を調整した。
「ロン、材料を入れるのは少し待って! 今は反応が落ち着くまで……」
「わ、わかった!」
ロンは材料を持ったまま固まった。
ハリーは鍋を見つめ、心配そうに眉を下げた。
「僕、何か間違えたかな……」
「まだ失敗って決まったわけじゃないわ!」
ハーマイオニーは必死に鍋の様子を観察した。
「泡の色と大きさを見る限り、火を弱めれば落ち着くはずよ。慌てずに待って……」
彼女の額には、小さな汗が浮かんでいた。
そのとき、鍋の泡がひときわ大きく膨らんだ。
「わっ!」
ハリーが思わず後ずさる。
だが、次の瞬間、泡は弾けることなく小さく縮み、液体の色がゆっくりと元に戻り始めた。
「……あ」
ハーマイオニーが息を吐いた。
「よかった……!」
ロンも肩の力を抜いた。
「びっくりしたあ……。鍋が爆発するかと思ったぞ!」
「私もよ……!」
ハーマイオニーは胸を押さえた。
ハリーは鍋の中を覗き込み、目を輝かせた。
「すごい! 色が変わったよ!」
「ええ。火加減を調整したから、反応が落ち着いたのね」
ハーマイオニーは少し誇らしげに説明した。
「魔法薬は、ただ材料を入れればいいわけじゃないの。反応を見ながら、手順を守ることが大切なのよ」
「なるほど……!」
ハリーは真剣に頷いた。
「次は、泡が出たときに慌てないようにするね!」
「うん。でも、危険な反応が出たら、すぐに先生を呼ぶこと。無理に自分たちだけで何とかしようとしないでね」
「わかった!」
そのやり取りを、少し離れた場所からスネイプが見ていた。
彼はハリーたちの鍋を一瞥し、鼻を鳴らした。
「少なくとも、鍋を爆発させずに済んだようだな」
「は、はい!」
ハリーは慌てて背筋を伸ばした。
「ですが、ポッター。鍋の中を覗き込む前に、火加減を確認するべきだ。薬の反応を見たいという好奇心だけで顔を近づければ、火傷をすることもある」
「……はい。気をつけます」
ハリーは真剣な顔で頷いた。
スネイプはそれ以上何も言わず、次の机へ向かった。
ロンは小声で息を吐いた。
「怖いな、あの先生……」
「でも、言われたことは覚えておこうよ」
ハリーが答えた。
「次からは、もっと安全にできるようにするんだ」
「……そうだな」
ロンは頷いた。
ハーマイオニーも、ほっとしたように微笑んだ。
「そうよ。失敗しそうになった原因がわかれば、次は改善できるもの」
三人は鍋へ向き直り、慎重に調合を続けた。
授業の終わりが近づいた頃、教室の後ろから小さな騒ぎが起こった。
「うわっ! 何だこれ!?」
男子生徒の声が響いた。
振り返ると、机の上の鍋から紫色の煙が立ち上っていた。生徒たちは慌てて椅子を引き、煙を避けようとしている。
スネイプが素早く近づいた。
「全員、鍋から離れなさい!」
低い声が教室に響く。
彼は杖を振り、煙を消し去った。
「材料の投入順を間違えたな。教科書を読まずに作業を進めた結果だ」
失敗した生徒は、真っ赤な顔で俯いた。
ハリーはその様子を見て、胸の奥が少しだけ痛んだ。
自分も、さっきは鍋を危険な状態にしかけたのだ。
「……僕も、もっと気をつけなくちゃ」
ハリーが呟くと、ロンが頷いた。
「そうだな。俺も、次は手順をちゃんと確認するよ」
「私も、もっと注意深く見るわ」
ハーマイオニーは教科書を閉じながら言った。
「覚えているつもりでも、確認を怠ったら意味がないものね」
その言葉に、レオが以前話してくれたことを思い出す。
――わからないときは、勝手に進めず先生に確認しよう。
ハリーはうんうんと頷いた。
「よし! 次の授業では、もっと上手に作れるように頑張ろう!」
「おう!」
ロンが拳を握った。
「今度こそ、完璧な魔法薬を作ってやる!」
「完璧かどうかはともかく、基本を守ることが大切よ!」
ハーマイオニーがすかさず言い返す。
「わかってるって!」
三人のやり取りに、近くの生徒がくすくすと笑った。
教室の空気が、少しだけ和らいだ。
授業が終わり、ハリーたちは地下牢を出た。
廊下の空気は教室よりもずっと暖かく感じられた。ハリーは大きく伸びをし、肩を回した。
「ふわあ……。魔法薬学って、思っていたより大変なんだね」
「材料の扱いもあるし、手順も細かいからな」
ロンが答えた。
「俺、次はもっと予習してくるよ。ハーマイオニーに怒られる前にな」
「誰がいつも怒っているっていうのよ!」
ハーマイオニーは頬を膨らませた。
「私は、あなたたちが失敗しないように教えてあげているだけでしょう!」
「はいはい、ありがとうな」
「ロン!」
ハーマイオニーが追いかけようとすると、ロンは笑いながら逃げた。
「待ちなさい!」
「うわっ、ハーマイオニー、速いって!」
二人が廊下を走りかけたところで、ハリーが慌てて声を上げた。
「二人とも! 廊下は走っちゃ駄目だって、レオ兄さんが言ってたよ!」
「……あっ!」
ロンとハーマイオニーは、ぴたりと足を止めた。
互いに顔を見合わせ、気まずそうに咳払いをする。
「……そうだったな」
「そ、そうね。危ないものね!」
ハリーは満足そうに頷いた。
「よかった! これで先生に怒られずに済むね!」
ロンは思わず笑い出した。
「ははっ! ハリー、お前、レオ兄貴の言うことは本当によく覚えてるな!」
「だって、レオ兄さんの言うことは役に立つんだもん!」
ハリーは胸を張った。
そのとき、廊下の向こうからレオが歩いてきた。
「あれ、みんな。魔法薬学はどうだった?」
「レオ兄さん!」
ハリーは嬉しそうに駆け寄った。
「魔法薬学、すごく大変だったよ! 鍋が泡だらけになったり、煙が出たりして!」
「煙?」
レオは少し驚いた顔をした。
「うん。でも、先生がすぐに消してくれたんだ。僕たちの鍋は、何とか大丈夫だったよ!」
「そうか。無事でよかった」
レオは安心したように頷いた。
ロンが肩をすくめる。
「俺たち、次はもっとちゃんと予習するよ。材料の量とか、順番とかさ」
「それはいい考えだね。でも、初めての授業なんだから、失敗することもあるよ。大事なのは、何が起きたのかを理解して、次に生かすことだと思う」
ハリーは目を輝かせた。
「やっぱりレオ兄さんも、そう思うんだね!」
「うん。もちろん、安全には気をつけないといけないけどね」
ハーマイオニーは少し迷ったあと、一歩前へ出た。
「あの、レオ」
「うん?」
「魔法薬学でも、材料の性質を理解することが大切だと感じたんです。呪文や変身術と同じように、ただ手順を覚えるだけでは足りないんですね」
「そうだね。手順を覚えることは大切だけれど、どうしてその順番なのか、何が起きているのかを考えられると、理解が深まると思うよ」
「……やっぱり!」
ハーマイオニーは勢いよく頷いた。
「私、もっと勉強します! 魔法薬学も、変身術も、呪文学も! 全部、きちんと理解できるようになりたいんです!」
彼女は胸の前で拳を握った。
「それに……いつか、レオの研究についても、もっと詳しく知りたいです!」
言い終えた瞬間、ハーマイオニーは顔を真っ赤にした。
「あっ! その、研究に興味があるという意味で! もちろん、それだけじゃなくて、魔法全体について……!」
「うん。わかっているよ」
レオは優しく笑った。
「勉強したいことが増えるのは、いいことだね。僕に答えられることなら、いつでも聞いて」
「……ありがとうございます!」
ハーマイオニーは嬉しそうに笑った。
ロンはその様子を見て、ハリーの耳元で囁いた。
「なあ、ハリー。ハーマイオニーって、レオ兄貴と話すとき、なんかいつもと違わないか?」
「そうかな?」
「そうだって。さっきなんか、顔が真っ赤だったぞ」
「えっ!? ハーマイオニー、熱があるの?」
ハリーは本気で心配そうに彼女を見た。
「ち、違うわよ!」
ハーマイオニーが慌てて叫んだ。
「熱なんてないから! もう、二人とも何を話しているのよ!」
「ご、ごめん!」
ハリーはすぐに謝った。
ロンは口元を押さえて笑いをこらえている。
レオは三人のやり取りを見て、くすくすと笑った。
「みんな、仲がいいね」
「どこがよ!」
ハーマイオニーが叫ぶ。
「俺たちは普通だって!」
ロンも言い返す。
「僕たち、もう友達だもんね!」
ハリーは嬉しそうに二人の肩を抱いた。
「……まあ、それはそうね」
ハーマイオニーは少し照れくさそうに頷いた。
ロンも、今度は素直に笑った。
「そうだな。これからもよろしくな、二人とも」
「うん!」
ハリーは元気よく返事をした。
レオはそんな三人を見守りながら、次の授業の教室へ向かう時間を確かめた。
「じゃあ、僕はそろそろ行くね。みんなも次の授業に遅れないように」
「うん! またね、レオ兄さん!」
「またな、レオ兄貴!」
「またお話を聞かせてください、レオ!」
三人が手を振る。
レオも笑顔で手を振り返し、廊下を歩いていった。
ハリーはその背中を見送り、ぐっと拳を握った。
「よし! 僕も頑張るぞ!」
「おう!」
ロンが答える。
ハーマイオニーも教科書を抱え直した。
「次の授業は、絶対に遅れないようにしましょう!」
「うん!」
三人は並んで歩き出した。
魔法薬学は難しかった。スネイプ先生は怖かったし、知らないこともたくさんあった。
それでも、ハリーは落ち込んでいなかった。
わからないことがあれば、覚えればいい。失敗したら、次は気をつければいい。そして、一緒に頑張ってくれる友達がいる。
それが、ハリーにとってのホグワーツだった。
一方、遠ざかっていくレオの足取りも、いつも通り穏やかだった。
彼は新入生たちが初めての授業に奮闘していることを嬉しく思いながら、自分の教室へ向かっていた。
ハリーが自分の力で友達を作り、自分の足で前へ進んでいく。
その姿を見守れることが、レオには何より嬉しかった。
「……さて、僕も今日の授業を頑張ろうかな」
レオは小さく呟き、窓から差し込む光の中へ歩いていった。