ハリーポッターと頼れる天才従兄   作:夜幻

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第22話「ニコラス・フラメルと、謎めいたカード」

 クリスマス休暇が近づくにつれ、ホグワーツの廊下は少しずつ浮き立った雰囲気に包まれていた。

 

 大広間には冬らしい飾りつけが増え、窓の向こうには冷たい風が吹いている。授業の合間には、休暇をどこで過ごすかという話題があちこちから聞こえてきた。

 

「ハリー、クリスマスは家に帰るの?」

 

 朝食の席で、ロンが尋ねた。

 

「うん! アリシア母さんとロイド父さん、それからレオ兄さんにも会いたいしね!」

 

「そっか。俺はホグワーツに残るんだ。家族はみんな帰ってくるらしいけど、パーシーはどうせ監督生の仕事で忙しいだろうし」

 

 ロンはソーセージを切りながら、少しだけ寂しそうな顔をした。

 

「ロンも帰りたくなったら、うちに来ればいいよ!」

 

「えっ?」

 

「僕の家、魔法生物がいっぱいいるんだ! 冬になると、暖かいところに集まってくる子たちもいるんだよ。きっと楽しいよ!」

 

「魔法生物がいっぱい……!」

 

 ロンの目が輝いた。

 

「なあ、それって、どんな生き物がいるんだ?」

 

「ええとね、ふわふわの毛が生えていて、木の実が大好きな子とか、羽が透き通っている小鳥とか……」

 

「待って、ハリー。それって、どの魔法生物のこと?」

 

 ハーマイオニーがすかさず尋ねた。

 

「名前はまだ覚えてないんだ。でも、みんなかわいいよ!」

 

「名前も覚えていないのに、かわいいって……」

 

 ハーマイオニーは呆れたように息を吐いたが、すぐに表情を明るくした。

 

「でも、珍しい魔法生物がいるなら、私も見てみたいわ!」

 

「じゃあ、いつか一緒に来ればいいよ!」

 

「本当に? ありがとう、ハリー!」

 

 ハーマイオニーが笑顔になる。

 

 そのとき、少し離れた席からレオがやってきた。

 

「おはよう、みんな。クリスマスの話?」

 

「レオ兄さん! ロンがホグワーツに残るって言うから、うちに遊びに来ればいいって話してたんだ!」

 

「そうなんだ。ロン、もしよかったら、休暇中に遊びに来るといいよ。母さんも喜ぶと思う」

 

「えっ、いいのか?」

 

「もちろん。僕たちの家は、いつだって歓迎だよ」

 

 レオが穏やかに笑うと、ロンはぱっと顔を輝かせた。

 

「やった! じゃあ、母さんに手紙を書いてみるよ!」

 

「うん。返事が来たら教えてね」

 

 ハリーも嬉しそうに頷いた。

 

 家族と友達が仲良くなってくれるのは、ハリーにとって何より嬉しいことだった。

 

     *

 

 その日の午後、ハリーたちは図書館で宿題を進めていた。

 

「うーん……」

 

 ハリーが羽根ペンを持ったまま、唸り声を上げる。

 

「どうしたの、ハリー?」

 

「この課題、どうしても最後のところが分からないんだ。先生は簡単だって言ってたのに……」

 

「どれ? 見せて」

 

 ハーマイオニーが隣からノートを覗き込んだ。

 

「ここは、呪文の効果がどのように発生するかを説明するところでしょう? まず、授業で習った基本の仕組みを書いて、それから具体例を挙げればいいのよ」

 

「なるほど! ありがとう、ハーマイオニー!」

 

「どういたしまして。……でも、授業中に先生の説明をちゃんと聞いていれば、もっと早くできたはずよ?」

 

「うっ……それは、そうかもしれない」

 

 ハリーは苦笑いを浮かべた。

 

「次からは気をつけるよ!」

 

「本当に?」

 

「うん!」

 

 ハーマイオニーはじっとハリーの顔を見つめたあと、結局、笑ってしまった。

 

「もう。あなたって、本当に前向きなんだから!」

 

「そうかな?」

 

「そうよ!」

 

 ロンは二人のやり取りを聞きながら、チェスの駒を指先で弄んでいた。

 

「俺には、ハリーが宿題を忘れないようになる未来が見えないな」

 

「ロン!」

 

「ハハッ、冗談だって!」

 

 小さな笑い声が図書館の静けさに溶けていく。

 

 そのとき、レオが分厚い本を抱えて戻ってきた。

 

「お待たせ。少し探していた本が見つかったよ」

 

「レオ、何の本を探していたの?」

 

 ハーマイオニーが興味津々で尋ねた。

 

「魔法薬と錬金術に関する本だよ。古い記録に、少し気になる名前があってね」

 

「名前?」

 

「ニコラス・フラメル」

 

 その名前を聞いたハーマイオニーは、ぱちりと目を瞬かせた。

 

「ニコラス・フラメル……どこかで聞いたことがあるような……」

 

「知ってるのか?」

 

 ロンが尋ねる。

 

「いいえ。名前だけ、何かの本で見たような気がするの。でも、何をした人だったかまでは思い出せないわ」

 

 ハーマイオニーは悔しそうに唇を尖らせた。

 

「私、知らないことがあると気になって仕方がないのよ!」

 

「じゃあ、一緒に調べてみようか」

 

 レオが本を机に置いた。

 

「古い錬金術師についての資料なら、この辺りにまとまっているはずだよ」

 

「ぜひ!」

 

 ハーマイオニーは勢いよく立ち上がり、近くの本棚へ向かった。

 

「ニコラス・フラメル……ニコラス・フラメル……」

 

 彼女は背表紙を目で追いながら、次々と本を引き出していく。

 

「錬金術の歴史、魔法薬の発展、著名な魔法使いの伝記……あっ、これかしら?」

 

 ようやく一冊を見つけた彼女は、両手で抱えて机に戻ってきた。

 

 しかし、ページをめくっても、目当ての名前はなかなか見つからない。

 

「おかしいわね……索引には載っているのに、説明がほとんどないわ」

 

「別の本に詳しい記録があるのかもしれないね」

 

 レオはそう言いながら、手元の資料を確認した。

 

「ニコラス・フラメルという人物が実在したことは確かだよ。錬金術に関係する人物として、古い記録に名前が残っている」

 

「でも、それだけじゃ何も分からないじゃない!」

 

 ハーマイオニーは本を閉じ、悔しそうに頬を膨らませた。

 

「どんな功績を残したのか、何を研究していたのか、そういうことが知りたいのに!」

 

「気になるね」

 

 レオは穏やかに頷いた。

 

「ただ、情報が少ないということ自体、何か理由があるのかもしれない。今の段階では、無理に結論を出さないほうがいいと思うよ」

 

「……そうね」

 

 ハーマイオニーは少し考えてから、再び本を開いた。

 

「別の資料も探してみるわ。きっと、どこかに手がかりがあるはずよ!」

 

「俺は名前を聞いたこともないんだけどなあ」

 

 ロンがぼやく。

 

「ロンも少しは興味を持ちなさい!」

 

「持ってるよ! ただ、古い本を読むのが好きじゃないだけで!」

 

「それを興味がないって言うのよ!」

 

「二人とも、図書館だから少し声を抑えてね」

 

 レオが小声で注意すると、二人は同時に口を閉じた。

 

「……ごめんなさい」

 

「悪かった」

 

 ハリーはそんな二人を見て、肩を震わせながら笑いをこらえていた。

 

     *

 

 数日後。

 

 ハリーたちは、図書館で借りた本を返しに行く途中、廊下の掲示板の前で足を止めた。

 

「ねえ、ハリー。これ、見た?」

 

 ハーマイオニーが掲示板を指差す。

 

「何?」

 

「クリスマス休暇中に、図書館の一部が整理されるらしいわ。古い資料の閲覧には司書の許可が必要だって」

 

「へえ。大掃除でもするのかな?」

 

「そうかもしれないわね。でも、古い資料を調べるなら、早めに行ったほうがよさそう」

 

 ハーマイオニーは真剣な顔で頷いた。

 

 そこへ、レオが階段を上ってきた。

 

「みんな、何を見ているの?」

 

「レオ! ニコラス・フラメルについて、もう少し調べたいと思っていたところなの。休暇前に、もう一度図書館へ行こうと思って」

 

「いいと思うよ。僕も、見つけられなかった資料があるからね」

 

「本当? じゃあ、一緒に……!」

 

 ハーマイオニーは言いかけて、はっと口を押さえた。

 

「……い、一緒に調べられたら、効率がいいと思うわ!」

 

「そうだね。何人かで手分けしたほうが、早く見つかるかもしれない」

 

 レオが自然に答えると、ハーマイオニーは少しだけ肩を落とした。

 

 もちろん、みんなで調べるのは嬉しい。

 

 けれど、ほんの少しだけ、二人きりで本を読める時間を期待してしまったのだ。

 

「……私、何を考えているのかしら」

 

 ハーマイオニーは頬を押さえ、小さく呟いた。

 

「ハーマイオニー、どうしたの?」

 

「な、何でもないわ、ハリー!」

 

 慌てて顔を上げる。

 

「それより、図書館へ行きましょう! 時間がもったいないわ!」

 

「うん!」

 

 ハリーは元気よく頷き、ロンも肩をすくめながらついていった。

 

 四人は図書館へ向かい、それぞれの資料を探し始めた。

 

 やがて、窓の外が夕暮れの色に染まり始める。

 

「今日はここまでかな」

 

 レオが本を閉じた。

 

「まだ調べたいことはあるけど、続きは明日にしよう」

 

「そうね……。でも、あと一冊だけ!」

 

 ハーマイオニーが棚へ向かおうとする。

 

「ハーマイオニー、もう夕食の時間だよ」

 

「えっ、もうそんな時間!?」

 

 彼女は時計を見て、目を丸くした。

 

「うそでしょう? まだ全然調べ足りないのに!」

 

「お腹が空いたままじゃ、頭も働かないよ」

 

 レオが笑いながら言う。

 

「夕食を食べて、それから考えよう」

 

「……分かったわ」

 

 ハーマイオニーは名残惜しそうに本を棚へ戻した。

 

 その様子を見ていたロンが、にやりと笑う。

 

「レオ兄貴に言われると、素直に言うことを聞くんだな」

 

「ロン!」

 

「痛っ! 叩くなって!」

 

 ハーマイオニーがロンの腕を軽く叩き、ハリーが声を上げて笑う。

 

 レオも楽しそうに笑いながら、三人と一緒に図書館を出た。

 

 ニコラス・フラメルという名前。

 

 古い錬金術の記録に残された、謎めいた人物。

 

 まだ分からないことばかりだったが、ハリーたちはそれを不思議に思いながらも、今はいつもどおりの学生生活を楽しんでいた。

 

 やがて訪れるクリスマス。

 

 そして、まだ誰も知らないホグワーツの秘密。

 

 その手がかりは、静かな図書館の奥で、少しずつ彼らの前に姿を現そうとしていた。

 

 

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