ハリーポッターと頼れる天才従兄   作:夜幻

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第24話「禁じられた森と、夜に潜む影」

クリスマス休暇が終わり、ホグワーツに生徒たちが戻ってきた。

 

 雪に覆われた城の中は、休暇前とは少し違う賑やかさに包まれていた。久しぶりに顔を合わせた友人同士が話に花を咲かせ、廊下には笑い声が響いている。

 

「ハリー! あけましておめでとう!」

 

 グリフィンドールの談話室に入ってきたロンが、勢いよくハリーの肩を叩いた。

 

「わっ! ロン、痛いよ!」

 

「悪い悪い! それで、休暇はどうだった?」

 

「すっごく楽しかったよ! 母さんの料理はおいしかったし、父さんはまた変な魔法を使って母さんに怒られてたし!」

 

「ハハッ! やっぱりロイドさんは最高だな!」

 

「それでね、レオ兄さんからノートをもらったんだ!」

 

 ハリーは鞄から革張りの小さなノートを取り出した。表紙の銀色の刺繍が、暖炉の光を受けてきらりと輝く。

 

「おお、かっこいいな!」

 

「でしょ? 魔法の勉強で気づいたこととか、いろいろ書いてるんだ!」

 

「ちゃんと続いてるの?」

 

 後ろから聞こえた声に、ハリーはびくっと肩を震わせた。

 

「ハーマイオニー!」

 

 彼女は腕を組み、少し得意げに笑っている。

 

「日記やノートは、続けてこそ意味があるのよ。途中で放り出したら、せっかくの記録がもったいないでしょう?」

 

「うん! だから、毎日書くようにしてるんだ!」

 

「それはいいことね!」

 

 ハーマイオニーは満足そうに頷いた。

 

「……でも、授業のノートもちゃんと整理しているでしょうね?」

 

「えっ?」

 

「ハリー?」

 

「も、もちろん!」

 

 ハリーは慌てて鞄を抱きしめた。

 

 ロンが吹き出す。

 

「お前、絶対整理してないだろ!」

 

「そんなことないよ!」

 

「じゃあ、見せてみろよ!」

 

「い、今は駄目!」

 

「ほらな!」

 

「もう、二人とも! 朝から騒がしいわよ!」

 

 ハーマイオニーの声が談話室に響く。

 

 三人のやり取りを聞いていた周囲の生徒たちが、くすくすと笑った。

 

 そのとき、談話室の入口からレオが顔を出した。

 

「みんな、おはよう。元気そうでよかった」

 

「レオ兄さん!」

 

 ハリーがぱっと立ち上がる。

 

「レオ兄さんもおかえり! 休暇はどうだった?」

 

「僕も楽しかったよ。家の魔法生物たちが、ハリーがいないのを寂しがっていたかな」

 

「本当!? みんな、元気だった?」

 

「うん。特に、あの小さな羽根の生えた子は、ハリーが使っていた椅子の上からなかなか動かなかったよ」

 

「ええっ! 僕のこと覚えていてくれたんだ!」

 

 ハリーの顔が、ぱっと輝いた。

 

「帰ったら、いっぱい遊んであげなきゃ!」

 

「そうしてあげて。きっと喜ぶよ」

 

 レオは笑いながら頷いた。

 

 その様子を見ていたハーマイオニーは、胸の前でそっと手を握った。

 

 レオが家族や魔法生物の話をするときの表情は、とても優しい。

 

 知識が豊富で、どんな魔法でも簡単に使いこなしてしまうのに、身近な小さな命を大切にするところは、少しも変わらない。

 

 そんなところが、ハーマイオニーは好きだった。

 

「……レオ、あの」

 

「うん? どうしたの、ハーマイオニー?」

 

「休暇中に、古代ルーン文字の本を読んだの! 前に教えてもらった魔法陣の仕組みについても、少しだけ理解できた気がして……!」

 

 言いながら、ハーマイオニーは鞄からノートを取り出した。

 

「もしよかったら、あとで見てもらえないかしら?」

 

「もちろん。楽しみにしているよ」

 

「ほ、本当!? ありがとう!」

 

 ハーマイオニーは顔を輝かせた。

 

 ロンがハリーの耳元へ顔を寄せる。

 

「ハーマイオニー、レオ兄貴の前だと元気が倍になるよな」

 

「そうかな?」

 

「そうだって」

 

「二人とも、聞こえてるわよ!」

 

 ハーマイオニーが真っ赤になって叫び、また談話室に笑い声が広がった。

 

     *

 

 数日後。

 

 魔法薬学の授業を終えたハリーたちは、地下牢から階段を上っていた。

 

「今日の魔法薬、危なかったなあ……」

 

 ロンが肩を落とす。

 

「ロンが材料を入れる順番を間違えかけたからでしょう!」

 

「だって、あの材料、そっくりだったんだよ!」

 

「だから、ラベルを確認しなさいって言ったの!」

 

「はいはい……」

 

「返事は一回!」

 

「はい!」

 

 ロンがわざとらしく背筋を伸ばすと、ハリーが笑い出した。

 

「二人とも、仲がいいね!」

 

「どこがよ!」

 

「どこがだよ!」

 

 二人の声がぴったり重なった。

 

 そこへ、反対側の廊下からレオがやってきた。

 

「おや、何かあったの?」

 

「聞いてよ、レオ! ロンが魔法薬の材料を間違えそうになったのよ!」

 

「だって、あれは紛らわしいんだって!」

 

「授業の前に、先生が説明していたでしょう!」

 

「分かった、分かったから!」

 

 ロンは両手を上げた。

 

 レオは小さく笑ったあと、ハリーたちを見た。

 

「魔法薬は順番や分量を間違えると危ないからね。分からないときは、急いで進めずに確認するのが一番だよ」

 

「うん。僕も気をつける!」

 

 ハリーは真剣に頷いた。

 

 そのとき、廊下の向こうから大きな足音が聞こえた。

 

「おーい、みんな!」

 

 ハグリッドが手を振りながら歩いてくる。

 

「ハグリッド!」

 

 ハリーは嬉しそうに駆け寄った。

 

「元気そうだな、ハリー! ロンにハーマイオニー、それにレオも!」

 

「こんにちは、ハグリッド」

 

 レオが挨拶する。

 

「どうしたの?」

 

「いやな、ちょっと話しておきたいことがあってな。ハリー、おめえさん、最近は学校にも慣れたか?」

 

「うん! 友達もできたし、授業も楽しいよ!」

 

「そりゃよかった!」

 

 ハグリッドは大きな手でハリーの肩を叩いた。

 

「それでな、今度、俺の小屋に遊びに来ねえか? 温かい飲み物でも出してやるぞ」

 

「行きたい!」

 

 ハリーは即答した。

 

「いいの? ハグリッド!」

 

「もちろんだとも!」

 

「僕たちも行っていい?」

 

 ロンが尋ねる。

 

「おう、もちろんだ!」

 

「やった!」

 

 ロンも喜んだ。

 

「私も、魔法生物について聞きたいことがあるの!」

 

 ハーマイオニーもすぐに手を挙げた。

 

「おお、そいつはいいな!」

 

 ハグリッドは嬉しそうに笑った。

 

「じゃあ、授業のない日に来い。面白いものを見せてやるぞ」

 

「面白いもの?」

 

 ハリーが首を傾げる。

 

「そいつは来てからのお楽しみだ!」

 

 ハグリッドはそう言うと、大股で歩き去っていった。

 

 ハリーたちは顔を見合わせた。

 

「面白いものって何だろう?」

 

「魔法生物かもしれないわね!」

 

 ハーマイオニーの目が輝く。

 

「ハグリッドは珍しい生き物が好きだからなあ」

 

 ロンも楽しそうだった。

 

 レオは三人の様子を見て、穏やかに笑った。

 

「楽しみだね。ただ、ハグリッドの言う『面白いもの』は、少し予想外なこともあるから、驚きすぎないようにね」

 

「えっ、そうなの?」

 

 ハリーが目を丸くする。

 

「うん。前に、父さんと一緒に珍しい魔法生物を見に行ったことがあるんだけど……」

 

 レオは少し考え、苦笑した。

 

「説明するより、実際に見たほうが早いかな」

 

「何それ! 余計に気になるよ!」

 

 ハリーは期待に胸を膨らませた。

 

     *

 

 その日の夜。

 

 ハリーたちは夕食を終え、グリフィンドールの談話室でくつろいでいた。

 

 暖炉の火が赤く揺れ、窓の外では風が木々を揺らしている。

 

 ロンはチェス盤を広げ、ハリーと対局していた。

 

「そこだ、ハリー! その駒を動かせば、俺の騎士が……」

 

「ええと、こう?」

 

「違う! そっちじゃない!」

 

「うわあっ、取られた!」

 

 ハリーが頭を抱える。

 

「ハハハ! チェスでは、相手の次の手を考えるのが大事なんだよ!」

 

「うーん、難しいなあ……」

 

「じゃあ、もう一回だ!」

 

「よし、今度こそ勝つ!」

 

 二人が盤面に集中している横で、ハーマイオニーは本を読んでいた。

 

 けれど、ページをめくる手が時折止まる。

 

 ハグリッドの言っていた「面白いもの」が、どうしても気になって仕方がないのだ。

 

「ねえ、ハリー。ハグリッドの小屋へ行くの、いつにする?」

 

「明日、授業が終わってからはどうかな?」

 

「いいわね! 早めに行きましょう!」

 

「俺も賛成!」

 

 ロンがチェスの駒を置きながら頷いた。

 

「でも、レオ兄貴は来られるのかな?」

 

「僕も行けるよ」

 

 いつの間にか近くの椅子に座っていたレオが答えた。

 

「明日は午後の予定が空いているからね」

 

「やった!」

 

 ハリーは大喜びした。

 

「レオ兄さんも一緒なら、もっと楽しいね!」

 

「そう言ってもらえると嬉しいよ」

 

 レオは笑った。

 

 しばらくして、ハリーはあくびをした。

 

「ふわぁ……なんだか眠くなってきた」

 

「そろそろ寝たほうがいいんじゃないか?」

 

 ロンが言う。

 

「うん。明日はハグリッドのところに行くんだもんね!」

 

 ハリーはチェス盤を片づけ、ハーマイオニーにも手を振った。

 

「おやすみ、二人とも!」

 

「おやすみ、ハリー」

 

「おやすみなさい!」

 

 レオも立ち上がった。

 

「僕もそろそろ戻るよ。みんな、夜更かししすぎないようにね」

 

「はーい!」

 

 三人の返事を聞き、レオは談話室を後にした。

 

 廊下に出ると、城の中はすっかり静かになっていた。

 

 窓の外から、風が吹きつける音が聞こえる。

 

 レオは足を止め、遠くに見える森へ目を向けた。

 

 禁じられた森。

 

 ホグワーツの敷地に広がる、深い木々に覆われた場所。

 

 普段なら、生徒が近づくことは許されていない。

 

 しかし、森の奥には数多くの魔法生物が暮らしている。人間の目には恐ろしく見える生き物もいるが、そのすべてが危険なわけではない。

 

 レオは、窓越しに森の気配を感じ取るように、しばらく目を細めた。

 

 風の音に混じって、何かが動いたような気がした。

 

「……気のせいかな」

 

 そう呟き、レオは再び歩き始めた。

 

 今夜は、何も起こらない。

 

 そう思っていた。

 

     *

 

 翌日の午後。

 

 授業を終えたハリーたちは、ハグリッドの小屋へ向かっていた。

 

「ねえ、ハグリッドって、どんな魔法生物を飼っているのかな?」

 

 ハーマイオニーが期待に満ちた声で尋ねる。

 

「大きな犬なら見たことあるけどな」

 

 ロンが答える。

 

「でも、珍しい生き物もいるんじゃないか?」

 

「そうだといいなあ!」

 

 ハリーは足取りも軽く歩いていた。

 

 レオは三人の後ろを歩きながら、楽しそうに話を聞いていた。

 

 やがて、小屋の前に着くと、ハグリッドが扉を開けて出てきた。

 

「おう! よく来たな!」

 

「こんにちは、ハグリッド!」

 

「さあ、入れ入れ! 温かい飲み物を用意してあるぞ!」

 

 小屋の中には、暖炉の火が燃えていた。

 

 テーブルの上には大きなティーポットと、焼き菓子の皿が置かれている。

 

「わあ、おいしそう!」

 

 ハリーは椅子に座るなり、目を輝かせた。

 

「おう、たくさん食えよ!」

 

 ハグリッドは嬉しそうに笑った。

 

 しばらくお茶を飲みながら話していると、ハーマイオニーが身を乗り出した。

 

「それで、ハグリッド。面白いものって何なの?」

 

「おお、そうだったな!」

 

 ハグリッドは立ち上がり、小屋の奥から小さな木箱を持ってきた。

 

「これだ!」

 

 蓋を開けると、中には色鮮やかな羽根が一枚入っていた。

 

「これは……?」

 

 ハリーが目を丸くする。

 

「珍しい魔法生物の羽根だ。詳しいことはまだ分からねえが、普通の鳥のものじゃねえ」

 

 ハーマイオニーは慎重に箱を覗き込んだ。

 

「すごい……! 羽根の表面に、魔法の痕跡が残っているわ!」

 

「本当だね」

 

 レオも目を向ける。

 

 羽根の根元には、微かに光る筋が走っていた。

 

「これなら、どんな魔法生物のものか調べられるかもしれない」

 

「だろう?」

 

 ハグリッドは誇らしげに胸を張った。

 

「森の近くで見つけたんだ。落とし主がいるかもしれねえから、どうしたもんかと思ってな」

 

「禁じられた森で?」

 

 ロンが尋ねた。

 

「ああ。森の中には、まだまだ知られてねえ生き物がたくさんいるからな」

 

 ハグリッドは箱をそっと閉じた。

 

「だが、森は危ねえところでもある。生徒が勝手に入っちゃいけねえぞ」

 

「分かってるよ、ハグリッド!」

 

 ハリーは元気よく答えた。

 

「よし。ならいい!」

 

 ハグリッドは満足そうに頷いた。

 

 帰り道、ハリーたちは羽根のことで話が尽きなかった。

 

「どんな生き物の羽根なんだろう?」

 

「魔法の痕跡が残っていたのが気になるわね。普通の鳥とは違う可能性が高いわ」

 

「俺は、すごく大きな鳥なんじゃないかと思うな!」

 

 ロンが両手を広げる。

 

「こんなに大きな羽根なら、きっと大きな生き物だろ!」

 

「それなら、僕も見てみたいなあ!」

 

 ハリーは笑顔で頷いた。

 

 レオは羽根の根元にあった光の筋を思い返していた。

 

 あれは、自然に残った魔力の痕跡なのだろうか。

 

 それとも、何か別の理由があるのだろうか。

 

 今はまだ、分からない。

 

 レオは三人を見て、穏やかに笑った。

 

「いつか、正体が分かるといいね」

 

「うん!」

 

 ハリーたちは元気よく頷いた。

 

 夕暮れの空には、薄い雲が広がっていた。

 

 その向こうで、禁じられた森は静かに枝を揺らしている。

 

 森の奥には、まだ彼らの知らないものがたくさん眠っていた。

 

 そして、ホグワーツの夜は、少しずつ深まっていった。

 

 

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