ハリーポッターと頼れる天才従兄   作:夜幻

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第28話「賢者の石と、炎の向こうにある謎」

 翌朝。

 

 グリフィンドールの談話室には、朝食へ向かう生徒たちの声が響いていた。

 

「ハリー、昨日の夜、どこに行ってたんだ?」

 

 ロンがパンを頬張りながら尋ねた。

 

 向かいに座っていたハリーは、カボチャジュースのカップを置き、少しだけ目を輝かせた。

 

「それがね、すごいものを見つけたんだ!」

 

「すごいもの?」

 

「うん! 古い教室に、大きな鏡があってさ!」

 

「鏡? それなら女子寮の洗面所にもあるぞ」

 

「普通の鏡じゃないんだよ、ロン!」

 

 ハリーは身を乗り出した。興奮を抑えきれないのか、両手まで忙しく動いている。

 

「その鏡には、お父さんとお母さんが映ってたんだ!」

 

 ロンはパンを飲み込むのを忘れ、目を丸くした。

 

「えっ!? ジェームズさんとリリーさんが!?」

 

「そうなんだ! 僕、写真でしか知らなかったから、もうびっくりしちゃって!」

 

「待って、ハリー。それって、魔法で昔の姿を映しているとか?」

 

 隣に座っていたハーマイオニーも、驚いた顔で尋ねた。

 

「分からないんだ。鏡の前に立ったら、いきなり映ってね。僕、二人にいっぱい話しかけちゃった!」

 

「いっぱいって、何を話したんだ?」

 

「学校のこととか、友達ができたこととか! あ、レオ兄さんも来てくれたんだよ!」

 

 ハリーは隣の席に座るレオを振り返った。

 

 レオは紅茶を一口飲んでから、穏やかにうなずいた。

 

「うん。夜中にハリーがいなくなっていたから、少し心配になってね。古い教室で、あの鏡を見つけたんだ」

 

「どんな鏡だったの?」

 

 ハーマイオニーは身を乗り出した。目がきらきらと輝いている。魔法の仕組みを知りたいという好奇心が、顔いっぱいに表れていた。

 

「大きくて、金色の額縁がついていたよ。縁には文字も刻まれていたけれど、暗くて全部は読めなかったな」

 

「文字が刻まれていたのね! 古代ルーン文字かしら? それとも、別の魔法文字?」

 

「その可能性もあるね。明るいときに確認すれば、何か分かるかもしれない」

 

「私も見たい!」

 

 ハーマイオニーは勢いよく言い、すぐに頬を赤くした。

 

「い、いえ、もちろん、魔法の研究としてよ! 珍しい魔法道具なら、調べる価値があるもの!」

 

「うん。僕も、どんな仕組みなのか気になるよ」

 

 レオが自然に答えると、ハーマイオニーは嬉しそうに微笑んだ。

 

 その横で、ロンは腕を組んだ。

 

「でもさ、鏡に死んだ人が映るなんて、ちょっと不思議だよな。幽霊とは違うんだろ?」

 

「うん。お父さんもお母さんも、鏡の中で普通に笑っていたよ。僕のことを見てくれていたんだ」

 

 ハリーの顔が、また嬉しそうにほころんだ。

 

 ロンはそれ以上、何も言わなかった。

 

 ハリーがどんな気持ちでその鏡を見つめていたのか、想像できたからだ。

 

「……今度、俺たちも一緒に見に行こうぜ」

 

「いいの?」

 

「当たり前だろ! 友達なんだから!」

 

「ありがとう、ロン!」

 

 ハリーは満面の笑みを浮かべた。

 

 その様子を見て、レオも柔らかく目を細めた。

 

「じゃあ、授業が終わってからにしよう。まずは朝食を食べて、今日の予定をこなさないとね」

 

「はーい!」

 

「分かったわ!」

 

「俺、今日は魔法薬学があるんだよなぁ……」

 

 ロンだけが、少しだけ肩を落とした。

 

「ロン、昨日の宿題は終わったの?」

 

「……ハーマイオニー、それは今聞くことじゃないだろ!」

 

「終わってないのね!」

 

「まだ時間はある!」

 

「授業が始まるまで、あと二十分よ!」

 

「うわっ、急がないと!」

 

 慌ててパンを口に押し込むロンを見て、ハリーは声を上げて笑った。

 

     *

 

 その日の午後。

 

 ハリー、ロン、ハーマイオニーの三人は、図書館で調べものをしていた。

 

 机の上には、錬金術に関する本や魔法史の資料が何冊も広げられている。窓から差し込む冬の日差しが、羊皮紙の上に淡い光を落としていた。

 

「ニコラス・フラメル……やっぱり、名前が出てくるのは錬金術の本ばかりね」

 

 ハーマイオニーは索引を指で追いながら、眉を寄せた。

 

「しかも、詳しい経歴がほとんど載っていないわ。普通、歴史に名を残すほどの人物なら、もっと記録があってもいいはずなのに」

 

「有名なのに、記録が少ないってことか?」

 

 ロンが首を傾げる。

 

「そう。何か理由があるのかもしれないわ」

 

「秘密主義だったとか?」

 

「可能性はあるけれど、今の段階では何とも言えないわね」

 

 ハーマイオニーは悔しそうに唇を尖らせた。

 

「あと少しで何か分かりそうなのに……!」

 

「焦らなくても大丈夫だよ、ハーマイオニー」

 

 隣で別の資料を読んでいたレオが顔を上げた。

 

「情報が少ないときは、見つかった記述を一つずつ整理していくといいよ。関係のない情報に見えても、別の資料とつながることがあるからね」

 

「なるほど……! そうね、記述された年代や出典も比べてみれば、何か共通点が見つかるかもしれないわ!」

 

 ハーマイオニーは急に元気を取り戻した。

 

 彼女は羊皮紙を引き寄せ、見つかった情報を丁寧に書き出していく。先ほどまでの悔しそうな顔が嘘のように、今度は集中してペンを走らせていた。

 

「レオ、これも見てもらえる? 別の本にあった記述なんだけど、さっきの本と関係があると思うの!」

 

「どれどれ……」

 

 レオが隣へ身を寄せる。

 

 肩が触れそうな距離になり、ハーマイオニーのペン先がぴたりと止まった。

 

「……っ」

 

「この記述だね。うん、確かに関連がありそうだ。年代を並べてみると、少し見え方が変わるかもしれない」

 

「そ、そうよね! 私もそう思っていたの!」

 

 ハーマイオニーは勢いよくうなずいたものの、耳まで赤くなっていた。

 

 ロンがその顔を見て、にやけそうになる。

 

 しかし、ハーマイオニーがちらりと視線を向けると、彼は慌てて本を開いた。

 

「俺も何か探す! ええと……錬金術、錬金術……」

 

「ロン、目次を逆さまに見ているわよ」

 

「うそだろ!?」

 

 ハリーが吹き出した。

 

 レオも声を立てて笑い、図書館の司書に注意されないよう、すぐに口元を押さえた。

 

 四人はそれぞれ本に向き直り、再び調査を始めた。

 

 けれど、どれだけページをめくっても、ニコラス・フラメルについての決定的な情報は見つからなかった。

 

 残ったのは、いくつかの断片的な記述と、解けない疑問ばかりだった。

 

     *

 

 夕方。

 

 授業と調べものを終えた四人は、人気の少ない廊下を歩いていた。

 

「結局、今日もフラメルについてはほとんど分からなかったなぁ」

 

 ロンが大きく伸びをした。

 

「でも、何も分からなかったわけじゃないわ。記述の年代には、少し気になる共通点があったもの」

 

「それって、何かの手がかりになるの?」

 

 ハリーが尋ねる。

 

「まだ断言できないわ。でも、もう少し資料を集めれば、確かめられると思う」

 

「じゃあ、明日も調べよう!」

 

 ハリーが元気よく言った。

 

 ロンは一瞬だけ顔をしかめたが、すぐに笑った。

 

「分かったよ。俺も手伝う。けど、その前に夕食な!」

 

「賛成!」

 

 ハリーが大きくうなずく。

 

 レオは三人の様子を眺めながら、ゆっくりと歩いていた。

 

「ところで、ハリー。昨日の鏡のことだけど」

 

「うん?」

 

「あの鏡が何を映すのか、まだ分かっていないよね。だから、もしまた行くなら、一人で確かめようとせず、僕たちにも声をかけてほしい」

 

「分かってるよ、レオ兄さん!」

 

 ハリーは素直にうなずいた。

 

「僕も、みんなと一緒に見たいんだ。昨日はびっくりして、夢中になっちゃったけど……今度は、ロンやハーマイオニーにも見てほしい!」

 

「そうね。私も、あの鏡について調べてみたいわ」

 

 ハーマイオニーは真剣な表情で答えた。

 

「古い魔法道具なら、図書館に関連する記録が残っている可能性もあるもの」

 

「よし、じゃあ明日は鏡についても調べようぜ!」

 

 ロンが拳を握る。

 

「ただし、夕食のあとすぐに図書館へ戻るのはなしな。俺、今日はもう本を見たくない!」

 

「ロン!」

 

「だって本当に疲れたんだよ!」

 

 ハーマイオニーが呆れ、ハリーが笑う。

 

 レオも楽しそうに微笑んだ。

 

 四人の声が、夕暮れの廊下に明るく響いていく。

 

 賢者の石をめぐる謎も、古い鏡の秘密も、まだ答えは見つかっていない。

 

 それでも、ハリーは一人ではなかった。

 

 不思議なものを見つけたとき、一緒に驚いてくれる友達がいる。分からないことを、一緒に考えてくれる仲間がいる。

 

 そして、どんなときでも自分を気にかけてくれるレオがいる。

 

「ねえ、みんな! 明日も頑張ろうね!」

 

 ハリーが振り返って笑った。

 

「もちろん!」

 

 ハーマイオニーが元気よく答える。

 

「ほどほどにな!」

 

 ロンが付け加えた。

 

「うん。無理せず、一つずつ進めていこう」

 

 レオの声に、三人はそろってうなずいた。

 

 窓の外では、冬の空がゆっくりと藍色に染まり始めていた。

 

 

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