ふぅと雪ノ下が一息つく
「ここら辺もあらかた終わったわね」
「じゃー私もうちょっと向こう見てくるねー」
由比ヶ浜が早足で駆けていった
「まて、もーそろそろ時間じゃねーの?っていっちまったか」
先生達はまだ来ないのか?一色はともかく、めぐり先輩もフォローしてたのにどんだけ落ち込んでんだよ先生・・・
「ほんむ、ほんむ我の時間管理神経もそろそろだと騒いでおる、暫く待たれよ、師に確かめに行ってくる」
お前のはただの腹時計だろ・・・少し入り組んでいるせいか先生達の姿は見えなかった
「二人になってしまったわね」
疲れたのか雪ノ下が伏目がちに言う
「まぁしょーがねーんじゃねーの?由比ヶ浜が戻ってくるまでまとーぜ」
材木座は待たなくても別に良いし
「そうね・・・」
部室ではそんなこと無いんだが、外だと緊張するな・・・二人とも本が無くて間が持たないからか?
雪ノ下を見ると顔が上気している・・・まぁ基本体力無いからなぁ
しかし美人の上気してる顔って・・・
「ヒッキー、ゆきのんちょっと来て!」
駆け足で戻って来た由比ヶ浜にいきなり声をかけられた
びっくりしたー、心臓が止まるかと思ったぜ、雪ノ下も驚いたのか一瞬身体を硬直させた
由比ヶ浜の顔を見ると、なんか涙目なんだけど・・・無駄にうるうるさせるなよドキドキするだろ
「どうかしたのか?」
「いいからこっち!」
由比ヶ浜に手を引っ張られ駆け出す。それを見た雪ノ下も続いて走りだした。
「ほら、アレ!」
由比ヶ浜が指差す方向を見ると、木の枝に猫が乗ってニーと鳴いていた。結構高い・・・
「ヒッキーどうにかして!」
「いきなりな無茶ぶりだなおい、それにお前猫・・・」
「別に嫌いな分けじゃないもん、ただ・・・」
ただ、思い出してしまうのだろう・・・
雪ノ下も心配そうな顔で猫を見つめている
いるよね、高い木に登ったはいいけど降りれなく猫とか、高い目標を持ったが為に人の輪に入れない雪ノ下とか
助けられるならそれに越した事は無い、か・・・まぁ片方は助けなんていらないだろうが
「ふぅ、よし、じゃー登るか」
雪ノ下が自分でやる、と言い出さないうちにやってしまおう。女子にさせることじゃないしな、幸いなんとか登れそうだし。
「ヒッキーがんばって」
「あいよ」
「比企谷君、もしダメだった場合分かってるわよね」
「ぜ、善処します」
怖い、怖いから、普通に脅迫するとかどうなの?
登り始めると少し木が揺れた。
「あっ」と二人から声が漏れる。
危ない危ない、もう少し慎重に登らないと揺れで猫が落ちてしまいそうだ
・・・まぁそうなったらそうなったで、にゃんぱらりとちゃんと着地してくれそうではあるけど
段々と猫に近づいていく・・・んだが
「シャー」
と威嚇の声を出してる、何なの?ああ~分かった分かった、あれだろ?俺の目が蛇にでも見えたんだろ?・・・くっ
後もう少し、手を伸ばせば届きそう、という所で猫が後ずさり枝から落ちた
ザッっと雪ノ下が猫の着地点に入る、ジャージの裾を持ち前に広げる
雪ノ下は衝撃を緩める為に猫がジャージに着地した瞬間ゆっくり座る。
流石すぎる
「ぷはー、あぶねーナイスキャッチ」
と気を緩めた瞬間、俺が木から滑り落ちた
「ヒッキー!」
「比企谷君!」
叫び声が聞こえた
俺は何とか足から着地したのだが衝撃を逃しきれず後ろに倒れてしまった
「いててて」
「ヒッキー大丈夫?」
心配そうな顔で由比ヶ浜が駆け寄る
雪ノ下は、と見るとぽわーっとした顔で猫を抱っこして撫でている、猫も心地良さそうに目を細める
「自分から登っておいて猫一匹助けられないとか、自業自得ね」
「へいへい」
まぁ・・・いいんだけど
さて、流石にもう戻る時間だろう・・・
雪ノ下はまだ猫を撫でていた。
冷静な表情と弛んだ表情を交互に続けている、どうでもいいけど忙しいなぁお前
「・・・おい、雪ノ下猫放してやれよ」
いきなり雪ノ下が厳しい表情になり言う
「はい?何を言ってるのかしらゴミ企谷君」
俺に厳しすぎるだろ・・・
「ふぅ、猫は元々帰巣本能が薄いのよ、だから余り遠くまで来てしまうと家に戻れなくなってしまうことがあるの」
「首輪のタグに連絡先と住所が載っていので先生に言って連絡を取ってもらうわ」
流石猫ペディアさん、猫と由比ヶ浜には甘甘だな・・・
ふとジャージの裾が引っ張られる感じがする、見ると由比ヶ浜が猫から隠れるように俺の背中に居た。
どしたー?と問うと、ううん、と悲しそうに笑っていた。
元の場所に戻ると先生達が待っていたのだが、俺たちが消えたことで材木座がオロオロしていた
「はちま~ん、何処へ行っておったのだ!」
俺たちを見つけると材木座が俺へ擦り寄る、うざっ
「あ~猫だーかわいいですねー」
と一色がニコっと笑い雪ノ下が抱いている猫の頭を撫でる。
出た、猫がかわいいと言う私かわいいでしょ、というあざといアピール
「この猫ちゃんどうしたの?」
めぐり先輩が猫の前足をぷにぷにしながら言う、ああ、癒される。
雪ノ下が事情を話すと、先生が携帯で連絡先に電話をかけた
「・・・ダメだ、誰も出んな、んーどうしたものか・・・」
一瞬考えると
「雪ノ下、この住所の場所分かるか?」
猫にじゃれつかれていた雪ノ下がコクコク頷く、どうやら雪ナビさんは分かるようだ
何なのお前の頭の中はグーグルマップでも入ってるの?
「ふむそうか、なら奉仕部にこの猫を届けることを依頼するとしよう。ここからそれ程遠くも無いようだしな。」
「分かりました。」
即答だった、なんなら命に代えてもって言葉まで出てきそうだった。
「・・・良いかしら、比企谷君、由比ヶ浜さん」
「事後承諾かよ、まぁいいけど」
・・・?由比ヶ浜からの返事が無い
「由比ヶ浜さん?」
「ああ、うん、なんだっけ?たははは」
乾いた笑い声だった
「猫をお届けするのだけど・・・由比ヶ浜さん、無理なら・・・」
「ううん、大丈夫大丈夫、ちょっと疲れちゃっただけ、私も奉仕部の一員だもん」
ニコっと笑った
「ふぬんぬふぬんぬ、それでは我m」
「ダメだ、これは部活動として特例で行かせるんだ、他の者は学外清掃の予定通り私と学校へ戻るぞ」
平塚先生が材木座の言葉を遮り言った
「任せたぞ雪ノ下」
「はい、命に代えても」
言っちゃったよ・・・
猫の頭を撫でながら歩く雪ノ下の後に無言で続く。由比ヶ浜はまだ俺のジャージの裾を握っていた。
書かれた住所に着くと白い一軒家が立っていた。
「電気が点いてねぇな」
「まだ戻ってないのかしら」
チャイムを押してみた、ピーンポーンと家の中で音がする
反応が無いので門の扉を開け庭に入いろうとした、小さくあっと言って由比ヶ浜が裾を離した
「ちょっと比企谷君、不法侵入よ、おやめなさい」
はぁ相変わらず変なとこで頑固だな・・・
「ちょっと周り見るだけだって」
出窓の所を見ると少し窓が開いていた。あーここか。
門の所に戻ると雪ノ下は猫と向き合って猫をまた撫でていた。もう猫飼っちゃえよ・・・
由比ヶ浜は俯いて猫から目を反らしていた
「ほら猫貸せ」
雪ノ下が溜息をつきながら言った
「はぁ、犯罪者に渡したくは無いのだけれど・・・あそこの窓が開いていたのかしら?」
ただ猫から離れたく無いだけのように見えるんですが・・・ここからも見えるんだなあの窓
「そうだよ、そこからこいつを入れて窓閉めてお終い」
「さすがに鍵は閉められないが窓を閉めとけば出てこないだろ」
まぁ窓とか扉を開ける猫とか良くTVで見るけどな、俺達に出来るのはこれくらいだろう
「そう、そうね、あまり納得は出来ないけれど、時間も時間だし」
と不満そうに猫を渡した
窓から猫を入れる時門の方を見ると、雪ノ下の後ろで由比ヶ浜もきちんと見届けていた
あたりはだいぶ暗くなっていた
「さて戻りましょうか」
雪ナビさんが先頭にたち後ろに俺と由比ヶ浜が続く
「あー・・・大丈夫か、由比ヶ浜」
由比ヶ浜だけに聞こえるように言った
「あ、う、うん・・・」
消え入りそうな声で答えた
「ヒッキ-ってさ、優しいよね」
やぶからぼうに言われた
「そんなことは無いだろ、普通だよ、もしくは普通以下、きっと葉山ならもっと気が利くし優しいさ」
比べる対象が大きすぎたかもしれない、こういう時はもっと小さな対称にして自分の矮小感を出さないとあまり意味が無いな
「ううん・・・そんなことない、優しいよ・・・」
小さく微笑みながら言うと
「あのさ、今だけ、、、ちょっとだけいいよね・・・」
と訳の判らない事を言った
何のことだと問おうとした時、手を後ろにとられぎゅっと握られた。
え、ちょ、ま、、、自然に心臓が高鳴る・・・不意に水滴が手に当ると小さく鼻をすする音がした
団地に住んでいた時の猫の事を思い出しているのだろうか・・・
しょうがない、俺の手は小町専用なんだが、今だけ、ちょっとだけ貸しておいてやろう
無言の時間が流れる
やがて学校に近づくと校門に人影が見えた