原神の世界に通えるようになったので、モンドを拠点に異世界生活を楽しみます 作:ところてんの
休日の朝。
俺はモンドの街を歩いていた。
前回は特に予定を決めず、街を散策した。
橋ではティミーと話をして、鳩に餌をあげた。広場ではウェンティの演奏を聞き、少しばかり会話も楽しんだ。
商売や依頼のことを考えずに過ごす休日も、なかなか悪くなかった。
そして今日は、少しだけ目的がある。
騎士団の仕事について、もう少し知っておきたいのだ。
第6話でジンさんやガイアさんから話を聞いたとき、騎士団が街の安全を守るためにさまざまな仕事をしていることは分かった。
ただ、あのときは俺自身の生活や、冒険者ギルドでの活動について相談するのが中心だった。
今回は、騎士団の人たちが普段どんなことをしているのか、もう少し詳しく聞いてみたい。
街の中を歩いているだけでも、騎士団員が住民と話している姿を見かけることがある。
魔物と戦ったり、事件に対応したりするだけが仕事ではないはずだ。
そうした日々の仕事を知れば、モンドで暮らすうえでも役に立つだろう。
「まずは、騎士団本部に行ってみるか」
俺は街の中央を抜け、騎士団本部へ向かった。
◆
騎士団本部に到着すると、入口で受付を済ませた。
以前にも訪れた場所なので、今回はそれほど緊張しない。
案内された先で、ジンさんが書類に目を通していた。
「こんにちは、ジンさん」
「悠真さん。こんにちは。今日はどうされましたか?」
「少しお話を聞きたくて。騎士団の普段の仕事について、もう少し知っておきたいんです」
「騎士団の仕事について、ですか」
ジンさんは手元の書類をまとめ、こちらへ向き直った。
「以前、街で生活するうえで気をつけることをお話ししましたね」
「はい。冒険者ギルドの依頼を受けたり、商品を販売したりするなら、街の決まりを確認しておくようにと」
「そのとおりです。今の活動で何か困ったことがありましたか?」
「いえ、今のところは大丈夫です。今回は、単純に騎士団がどんな仕事をしているのか知りたくなったんです。街を歩いていると、騎士団の人が住民の方と話しているところを見かけるので」
ジンさんは少し考えてから、穏やかに頷いた。
「そうですね。騎士団の仕事は、魔物への対処や街の警備だけではありません。住民からの相談を受けたり、街の中で起きている問題を確認したりすることもあります」
「やっぱり、そういう仕事もあるんですね」
「はい。例えば、街の設備に不具合があった場合や、住民同士の問題について相談があった場合などです。内容によっては担当者が対応しますし、専門的な知識が必要なら、適切な相手へつなぐこともあります」
なるほど。
騎士団がすべての問題を直接解決するわけではないらしい。
問題の内容を確認し、必要な対応を考え、場合によっては別の担当者に引き継ぐ。
考えてみれば、組織として仕事をするなら当然のことだろう。
「街の中だけでも、いろいろなことが起きるんですね」
「ええ。大きな事件が起きていない日でも、確認しておくべきことはあります。日々の巡回も、そのための大切な仕事です」
「巡回というと、街の中を歩いて異常がないか確認する感じですか?」
「それもあります。住民の様子を見たり、困っている人がいないか確認したりすることもありますね。ただし、巡回だけで街のすべてを把握できるわけではありません。住民からの報告や、ほかの騎士たちとの情報共有も重要です」
ジンさんの説明を聞きながら、俺は頷いた。
街を歩いていると、騎士団員が住民と話している光景を見かける。
あれは単なる世間話ではなく、必要な情報を集めたり、相談に対応したりしている場合もあるのだろう。
「騎士団の仕事って、思っていた以上に幅広いんですね」
「そうかもしれませんね。騎士団だけで街の暮らしを支えているわけではありませんが、住民の方々が安心して生活できるよう、できる限りのことをしています」
ジンさんはそう答えた。
その表情には、騎士団を率いる立場としての責任感が感じられた。
ただ、すべてを騎士団だけで解決しようとしているわけではない。
住民の協力や、ほかの組織との連携も必要なのだ。
俺が今利用している冒険者ギルドも、その一つだろう。
「冒険者ギルドとも協力することがあるんですか?」
「もちろんです。依頼の内容によっては、冒険者の方々に協力していただくこともあります。ただし、依頼を受けるかどうかは本人の判断ですし、能力や経験に合った仕事を選ぶことが大切です」
「自分にできる範囲の依頼を受ける、ということですね」
「はい。無理をして危険な仕事を引き受ける必要はありません。困ったときには、ギルドの方にも相談してください」
「分かりました。ありがとうございます」
俺は素直に礼を言った。
冒険者として実績を積みたいわけではない俺にとって、無理をしないという考え方はありがたい。
生活費を稼ぐことだけが目的なら、もっと効率を重視する方法もあるかもしれない。
けれど、こちらでの暮らしを楽しみたい俺としては、安全に続けられることの方が大切だ。
「それから、悠真さん」
ジンさんが、少しだけ表情を和らげた。
「街で活動する際には、何か変わったことがあれば、早めに相談してください。商品を販売する場所や取り扱う品物など、活動内容が変わる場合も、必要に応じて確認していただければと思います」
「はい。勝手に範囲を広げたりせず、確認するようにします」
「それなら安心です」
ジンさんは小さく頷いた。
俺は改めて礼を言い、部屋を出ようとした。
そのとき、廊下の向こうから聞き覚えのある声がした。
「おや? これは珍しい客人だね」
振り向くと、ガイアさんがこちらへ歩いてきていた。
◆
「こんにちは、ガイアさん」
「やあ、悠真。今日は何の用かな? また街で何か問題でも起きたのかい?」
「いえ、問題があったわけじゃないです。ジンさんに、騎士団の普段の仕事について話を聞いていたところです」
「なるほど。真面目なことだね」
ガイアさんは、どこか面白そうに笑った。
「それで、何か参考になる話は聞けたかな?」
「はい。巡回や住民からの相談への対応など、街の中でもいろいろな仕事をしているんだと分かりました」
「そうだ。騎士団の仕事は、目立つものばかりじゃないからな」
ガイアさんは壁に寄りかかり、腕を組んだ。
「街の安全を守るには、問題が起きたときに対処するだけでは足りない。普段から情報を集めて、何か起きそうな兆候がないか確認しておくことも大切なんだ」
「情報を集める、ですか」
「例えば、街の外で魔物の動きが変わったという話があれば、周辺を確認する必要がある。商人が普段と違うことを見かけたなら、その話が重要な手がかりになることもある。もちろん、聞いた話をそのまま信じるわけにはいかないけれどね」
「確かに、噂だけで判断するのは危ないですね」
「そのとおり。情報というのは、集めるだけじゃなく、確かめることも大切なのさ」
ガイアさんは片目を細めた。
「誰かが何かを見たと言っても、見間違いかもしれない。話が伝わるうちに内容が変わっていることもある。だから、複数の情報を照らし合わせたり、実際に確認したりする必要があるんだ」
俺はその話を聞いて、なるほどと思った。
街で暮らしていれば、いろいろな噂を耳にすることもあるだろう。
冒険者ギルドで依頼を受けるときにも、依頼内容を確認することは大切だ。
ただ、俺は騎士団のように情報を扱う仕事をするわけではない。
むやみに噂を広めず、必要なときには信頼できる相手に確認するくらいでいいだろう。
「冒険者ギルドでも、依頼を受ける前に内容を確認した方がよさそうですね」
「もちろん。依頼書に書かれていることだけでは、分からない場合もあるからね。疑問があれば、受付で確認するといい」
「分かりました」
「それと、悠真。君は街で商品を売っているんだったね?」
「はい。まだ少しずつですけど」
「なら、街の人たちの様子をよく見るといい。何に困っているのか、どんなものを必要としているのか。そういうことは、話を聞くだけでなく、普段の暮らしを見ていると分かる場合もある」
「商売の参考になりそうですね」
「そういうことさ。ただし、観察するのと、相手の事情に勝手に踏み込むのは別だからね。そこは気をつけた方がいい」
ガイアさんは軽く笑った。
「まあ、君なら大丈夫だと思うけどね」
「ありがとうございます。気をつけます」
ガイアさんの話は、ジンさんの説明とは少し違った角度から参考になった。
ジンさんは騎士団の仕事や住民への対応について、具体的に説明してくれた。
一方、ガイアさんは情報を集めることや、実際に確認することの重要性を教えてくれた。
同じ騎士団でも、立場や担当によって見ているものが違うのかもしれない。
「そういえば、ガイアさんは普段、どんな仕事をしているんですか?」
俺が尋ねると、ガイアさんは少しだけ笑みを深めた。
「さて、何だと思う?」
「……巡回とか、情報収集とか?」
「ははっ。まあ、間違いではないね。実際には、それ以外にもいろいろあるけれど」
どうやら、細かい仕事内容を全部教えてくれるつもりはないらしい。
まあ、騎士団の仕事には、あまり詳しく話せない内容もあるのだろう。
「騎士団の仕事も大変ですね」
「どんな仕事でも、大変なところはあるさ。大切なのは、自分の役割を理解して、必要なときに適切な判断をすることだよ」
ガイアさんはそう言って、俺の肩を軽く叩いた。
「君も、自分にできることを少しずつやっていけばいい。何もかも一度に覚える必要はないからな」
「そうします」
「うん。それじゃあ、俺は仕事に戻るとしよう。君も街を楽しんでおいで」
「ありがとうございました」
ガイアさんに頭を下げ、俺は騎士団本部を後にした。
◆
本部を出て街へ戻ると、ちょうど昼前だった。
俺は広場の方へ歩きながら、ジンさんとガイアさんの話を思い返した。
騎士団の仕事は、魔物との戦闘や警備だけではない。
住民の相談に対応し、街の様子を確認し、必要な情報を集める。
問題が起きたときには、内容を確認し、適切な対応を考える。
そのためには、住民やほかの組織との協力も欠かせない。
聞いた話をそのまま信じず、必要なら確認することも大切だ。
どれも、考えてみれば当然のことかもしれない。
それでも、実際に仕事をしている人たちから話を聞くと、理解しやすかった。
俺は街の中央を歩きながら、周囲の様子を眺めた。
露店では商人が商品を並べ、買い物客が品物を選んでいる。
店先では店員が荷物を運び、別の通りでは職人らしい男性が道具を手入れしていた。
少し離れたところでは、子どもたちが楽しそうに話している。
こうして見ると、街の中にはいろいろな仕事がある。
騎士団だけではない。
商人が商品を仕入れ、店員が客に対応し、職人が道具や品物を作る。
料理人が食事を用意し、冒険者が街の外で素材を集めたり、危険な場所の調査をしたりする。
それぞれの仕事がつながることで、街の暮らしが成り立っているのだろう。
俺自身も、今はその中に少しずつ関わり始めている。
冒険者ギルドで依頼を受けることも、日本から持ってきた商品を販売することも、街の暮らしの一部だ。
まだ小さな活動ではあるが、だからこそ周囲の人たちに迷惑をかけないようにしたい。
そんなことを考えながら歩いていると、通りの向こうに見覚えのある姿があった。
赤い服に弓を背負った少女。
アンバーだ。
◆
「アンバー!」
声をかけると、アンバーは振り返った。
「あっ、悠真! こんにちは!」
「こんにちは。今日は巡回中?」
「うん。街の様子を確認しているところだよ。何か変わったことがないか、住民の人たちにも話を聞いているの」
「なるほど。俺もさっき、騎士団本部で話を聞いてきたところなんだ」
「騎士団本部? ジンさんたちに会ってきたの?」
「うん。ジンさんに騎士団の普段の仕事について聞いて、そのあとガイアさんから情報収集の話も聞いたよ」
「そっか! それなら、いろいろ勉強になったんじゃない?」
「なったよ。騎士団の仕事って、魔物と戦ったり街を警備したりするだけじゃないんだね」
「もちろん! 街の中でも、確認しておきたいことはたくさんあるからね」
アンバーは周囲を見回した。
「例えば、道に荷物が置かれたままになっていたり、困っている人がいたり。小さなことでも、放っておくと困る人が出てくることがあるんだ」
「確かに。道が塞がれていたら、通る人も大変だしね」
「そうそう。もちろん、全部を騎士団だけで解決できるわけじゃないけど、できることはしておきたいんだ」
アンバーは明るい口調で話していたが、その言葉には仕事に対する真剣さが感じられた。
普段は気さくで話しやすい彼女も、騎士団員として街を守るときには、しっかりと周囲を見ているのだろう。
「アンバーは、巡回以外にもいろいろな仕事をするの?」
「うん。街の外へ出て周辺を確認することもあるし、弓の腕を生かして訓練することもあるよ。仕事によって内容は違うけどね」
「結構忙しそうだ」
「忙しいときもあるけど、街の人たちが安心して暮らせるなら、頑張りたいって思うよ」
アンバーはそう言って笑った。
その笑顔を見ていると、彼女が騎士団の仕事を好きなのだということが伝わってくる。
単に決められた仕事をこなしているだけではない。
自分が守りたいものがあるからこそ、毎日の仕事にも意味を見いだしているのだろう。
「そういえば、悠真は冒険者ギルドの依頼も受けているんだよね?」
「うん。簡単な配達とか、できそうな依頼を少しずつね」
「それなら、街の外へ出ることもあるのかな?」
「今のところは、あまり遠くへ行くつもりはないよ。自分にできる範囲でやるつもり」
「それがいいと思う。無理をして危険な場所へ行く必要はないからね」
アンバーは真面目な顔で頷いた。
「魔物が出る場所もあるし、道が分かりにくいところもあるから。分からないことがあったら、ギルドで確認してね」
「分かった。ありがとう」
「どういたしまして!」
アンバーは明るい笑顔に戻った。
彼女の言うとおり、今の俺に必要なのは、できることを少しずつ増やしていくことだろう。
無理に危険な依頼を受けたり、実力以上のことをしようとしたりする必要はない。
俺には俺の生活がある。
日本での仕事も続けなければならないし、こちらでは商売の準備も進めている。
冒険者として名を上げたいわけでも、騎士団に認められたいわけでもない。
まずは、この世界で安全に暮らしていくことが大切だ。
「そういえば、アンバーはこのあとも巡回?」
「うん。もう少し街を回ったら、報告に戻る予定だよ」
「そっか。仕事中に引き止めてごめんね」
「ううん、少し話すくらいなら大丈夫! でも、そろそろ行かないとね」
アンバーは手を振った。
「またね、悠真!」
「うん。またね」
アンバーは通りの向こうへ歩いていった。
その背中を見送りながら、俺は少しだけ考えた。
彼女は、俺が街で商品を売っていることも、冒険者ギルドで依頼を受けていることも知っている。
これまで何度か顔を合わせてきたからこそ、こうして自然に話ができるようになった。
最初は知らない世界で、誰に話しかければいいのかも分からなかった。
今では、街を歩いていれば挨拶を交わす相手が少しずつ増えている。
そうした変化も、異世界で暮らしている実感につながっている気がした。
◆
アンバーと別れた俺は、街の中をもう少し歩いてみることにした。
通りには、買い物をする人や、荷物を運ぶ人、店先で会話を楽しむ人たちがいる。
その中で、騎士団員が住民に道を尋ねられている場面を見かけた。
騎士は相手の話を聞き、行き先を確認してから、分かりやすいように道順を説明していた。
尋ねていた女性は何度か頷き、礼を言って歩き出した。
こうしたやり取りも、街の一部なのだろう。
住民が安心して暮らせるというのは、危険が完全になくなるという意味ではない。
困ったときに相談できる相手がいること。
何か起きたときに対応してくれる人がいること。
普段から街の様子を見てくれる人がいること。
そうした積み重ねが、安心につながっているのだと思う。
俺は自分の生活についても考えた。
日本にいた頃は、警察や役所、地域の人たちが何かをしてくれていることを、あまり意識していなかった。
もちろん、ニュースなどで仕事の内容を知ることはあった。
それでも、普段の生活の中では、特に気に留めることもなかった。
ここでも同じだ。
何事もなく街を歩けるのは、誰かが日々仕事をしているからなのだろう。
そんなことを考えながら歩いていると、店先から香ばしい匂いが漂ってきた。
「……あ、これ、おいしそうだな」
仕事について考えていたはずなのに、結局、食べ物の匂いに引き寄せられてしまった。
まあ、休日なのだから、それくらいはいいだろう。
店先には、焼きたての軽食が並んでいた。
俺は少し迷ってから、一つ購入した。
「はいよ。熱いから気をつけてな」
「ありがとうございます」
受け取った軽食を手に、俺は通りの邪魔にならない場所へ移動した。
ひと口食べると、香ばしさと温かさが口の中に広がった。
「うん、おいしい」
思わず笑みがこぼれる。
こうして街を歩き、食べ物を買い、気に入った味を見つける。
それも、こちらで暮らす楽しみの一つだ。
俺はゆっくりと食べながら、通りを行き交う人たちを眺めた。
騎士団員も、商人も、料理を作る人も、荷物を運ぶ人も、それぞれの仕事をしている。
誰か一人だけで街が成り立っているわけではない。
いろいろな人が、それぞれの役割を果たしているからこそ、日常が続いていく。
俺も、これからこの街で暮らしていく一人だ。
大きなことをするつもりはない。
まずは冒険者ギルドの依頼を受けながら、街のことを知っていく。
日本から持ってきた商品を少しずつ販売し、こちらの生活に合うものを探していく。
その合間に、こうして街を歩き、人々と交流する。
今は、それで十分だと思う。
◆
日が傾き始めた頃、俺は広場の近くで足を止めた。
そこでは、子どもたちが楽しそうに話をしている。
少し離れた場所には、荷物を持った商人がいて、店員と商品の受け渡しをしていた。
そのさらに向こうを、騎士団員が歩いていく。
特別な出来事は何も起きていない。
けれど、街の中にはいろいろな人がいて、それぞれの生活を送っている。
今日、俺が見た騎士団の仕事も、その日常の一部だった。
街を守るというのは、いつも剣を持って魔物と戦うことだけではない。
住民の話を聞き、困り事を確認し、必要なときに手を貸す。
そして、問題が起きないように日頃から街を見て回る。
そうした仕事があるからこそ、住民たちは普段どおりに暮らせるのだろう。
「……勉強になったな」
俺は小さく呟いた。
今日は騎士団の訓練を見学したわけでもなければ、特別な事件に遭遇したわけでもない。
ジンさんとガイアさんから話を聞き、街で働く人たちの様子を見て、アンバーとも話をした。
それだけでも、騎士団の仕事が少し身近になった気がする。
説明を聞くだけでは、どうしても仕事の内容を大まかにしか理解できない。
けれど、実際に街を歩き、そこで働く人たちを見れば、普段の暮らしがどのように支えられているのかが見えてくる。
俺は最後にもう一度、広場を見回した。
今日もモンドは穏やかだ。
この穏やかな日常を守るために、騎士団の人たちは働いている。
そう思うと、街の景色が少し違って見えた。
◆
そろそろ日本へ戻る時間だ。
俺は人通りの少ない場所へ移動し、視界の端に表示されているシステムメニューを開いた。
表示された項目から「ログアウト」を選択する。
次の瞬間、モンドの景色が消えた。
◆
日本の自室に戻った俺は、椅子に腰を下ろした。
「……ふう」
今日も、なかなか充実した休日だった。
俺はノートを開き、日本語で今日の出来事を書き留めていく。
ジンさんから聞いた、住民への対応や日々の巡回についての話。
ガイアさんから聞いた、情報収集や確認の重要性。
そして、巡回中のアンバーとの会話。
騎士団は、魔物への対処や警備だけでなく、住民の困り事に対応したり、街の安全を確認したりする仕事もしている。
また、情報を集めるだけでなく、その内容を確かめることも重要だという。
当たり前のことかもしれないが、実際に仕事をしている人たちから話を聞くと印象が違った。
アンバーも、普段の明るい雰囲気のまま、仕事については真剣に考えていた。
街の人たちが安心して暮らせるようにしたい。
その気持ちが、彼女の言葉から伝わってきた。
俺はそこまで書き、ペンを置いた。
こうして記録しておけば、あとから思い返すこともできる。
それに、現地の文字は読めても書けない俺にとって、日本語で記録する方法は都合がよかった。
ノートを閉じ、椅子の背もたれに体を預ける。
次の休日は、何をしようか。
そういえば、街で働いている人たちのことを知りたいと思ったとき、ノエルのことも頭に浮かんでいた。
彼女は騎士団のメイドとして働いている。
街の人たちのために、いろいろな仕事を引き受けているはずだ。
もし会う機会があれば、どんな仕事をしているのか聞いてみるのもいいかもしれない。
ただし、無理に仕事を増やしたり、彼女の負担になったりするのは避けたい。
できることがあれば手伝う。
それくらいの気持ちでいよう。
「さて、次の休日も楽しみだな」
俺は立ち上がり、机の上を片づけた。
異世界での生活は、少しずつ広がっている。
商売をする日もあれば、依頼を受ける日もある。
そして、街を歩いて人々の暮らしを知る日もある。
何か大きなことを成し遂げなくても、こうした日々を積み重ねていけばいい。
俺はそんなことを考えながら、次の休日を楽しみにするのだった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
感想や評価をいただけると、執筆のモチベーションにつながります。
よろしければ、気軽に感想や評価を残していただけるとうれしいです。
これからもよろしくお願いします!