原神の世界に通えるようになったので、モンドを拠点に異世界生活を楽しみます 作:ところてんの
その日も俺は、冒険者ギルドの近くに露店を出していた。
モンドで小さな商売を始めてから、何度か同じ場所で商品を売っている。最初はどの程度の人が足を止めてくれるのかも分からなかったが、最近では露店の前を通りかかった人が、並べている商品を眺めていくことも珍しくなくなってきた。
もちろん、毎回たくさん売れるわけではない。
よく売れる日もあれば、思ったほど売れない日もある。商品によって反応も違うし、足を止めても買わずに立ち去る人もいる。
そのあたりは、実際に商売をしてみないと分からないものだった。
「よし、こんなもんかな」
俺は商品の並びを確認した。
今日の中心は、これまで何度か試しに販売してきた飴とイチゴ味のグミだ。どちらも小さく、持ち運びやすい。飴は一つずつ個包装されていて、グミは独特の柔らかい食感が特徴になっている。
ほかにも、いくつかの日用品を並べている。
派手な品物があるわけではない。珍しい道具や高価な装飾品を売っているわけでもない。
それでも、普段このあたりの店では見かけない商品というだけで、興味を持ってくれる人はいる。
実際、前に買ってくれた人が、もう一度立ち寄ってくれたこともあった。
そういう反応があると、やっぱり嬉しい。
「さて、今日はどれくらい売れるかな」
俺はそう呟き、露店の前を行き交う人たちに目を向けた。
冒険者ギルドへ向かう人。依頼を終えて街へ戻ってきた人。買い物袋を持って歩く住民。
モンドの街は、今日もいつもどおりの賑わいを見せている。
俺もその日常の片隅で、地道に商売を続けるだけだ。
そう考えていたときだった。
「わあっ! これ、なあに?」
元気な声が聞こえた。
顔を上げると、露店の前に小さな女の子が立っていた。
赤い帽子に、赤を基調とした服装。背中には大きな鞄を背負っている。
見覚えのある姿だった。
というか、見覚えがありすぎた。
――クレーだ。
原神を遊んでいた俺なら、見間違えるはずもない。
西風騎士団に所属する、元気いっぱいの女の子。そして、爆発物を扱うことが大好きで、何かと騒動を起こすことでも知られている。
もちろん、ここはゲームの画面の中ではない。
目の前にいるのは、実際に息をして、俺の露店に興味津々の視線を向けているクレー本人だ。
「これはお菓子だよ」
「おかし!」
俺が答えると、クレーの目がぱっと輝いた。
「こっちは?」
「飴。こっちはグミっていうお菓子だな」
「ぐみ?」
クレーは、商品を一つずつ眺めている。
特に興味を引かれたのは、イチゴ味のグミらしい。
透明な袋越しに中身を確認しながら、不思議そうに首を傾げていた。
「これ、柔らかいの?」
「うん。普通の飴とは違って、噛むと柔らかいんだ」
「噛めるの?」
「噛めるよ。もちろん、食べ物だからね」
「へえー!」
クレーはグミの袋をじっと見つめた。
その反応があまりにも素直なので、思わず笑ってしまう。
ゲームでも元気な子だとは思っていたが、こうして実際に会ってみると、画面越しに見ていたときとは印象が違う。
興味を持ったものに対して、全身で好奇心を表現しているような感じだ。
「これ、食べてみたい!」
「買ってくれるのか?」
「うん!」
クレーは元気よく頷いた。
ただ、そこで俺は少しだけ考える。
相手は子供だ。本人が欲しがっているからといって、何でもそのまま売ればいいというものでもないだろう。
「そういえば、君の名前は?」
「クレーだよ! クレーはクレーだよ!」
「クレーか。俺は悠真。よろしくな」
「うん! よろしくね、悠真!」
「そっか。お金は持ってる?」
「うん! お買い物できるよ!」
クレーは鞄の中を確認しようとした。
俺はその様子を見ながら、念のため尋ねる。
「今日は一人で買い物に来たのか?」
「えっとね……」
クレーは少しだけ考えるように視線を上げた。
「クレー、ちゃんとお買い物できるよ!」
どうやら、質問への答えとしては少しずれているらしい。
ただ、少なくとも本人は買い物をする気満々だ。
「分かった。じゃあ、買うものを決めようか」
「これがいい!」
クレーが指さしたのは、イチゴ味のグミだった。
「二つ買ってもいい?」
「もちろん。二つならこの値段だよ」
俺は価格を伝えた。
クレーは少し考えてから、鞄の中からお金を取り出した。金額を確認して、俺に渡してくる。
俺は受け取ったお金を確かめ、グミを二袋、クレーに渡した。
「はい。二つね」
「ありがとう!」
クレーは両手でグミを受け取った。
買い物ができたことが嬉しいのか、表情が明るい。
「これ、どうやって作るの?」
「作り方か……。材料を混ぜたり、固めたりして作るんだよ」
「材料を混ぜるの?」
「そう。いくつかの材料を使って、あの柔らかい食感にするんだ」
俺は、細かい製法までは説明せず、簡単に答えた。
この世界で同じものを作れるかどうかは分からないし、俺自身、グミを製造する方法を詳しく知っているわけでもない。
食べる側として知っていることと、作る側として必要な知識は別物だ。
「ふうん……。混ぜるんだ……」
クレーは何やら真剣な顔で考え込んでいる。
その表情を見て、少しだけ嫌な予感がした。
「ねえねえ。混ぜると、爆発する?」
「しないよ」
「そっかあ……」
クレーの声が、ほんの少しだけ残念そうになった。
……いや、そこは残念がらなくていいからな?
お菓子を買いに来た子供に、まさか爆発するかどうかを確認されるとは思わなかった。
しかも、爆発しないと答えたら残念そうにされる。
さすがクレーである。
俺は心の中でそう納得した。
「食べ物だからね。普通に食べて楽しむものだよ」
「うん! 分かった!」
クレーは元気よく返事をした。
本当に分かってくれたのか、少しだけ不安が残る。
ただ、買ったお菓子をその場でどうこうする様子はない。クレーはグミの袋を大切そうに持ちながら、今度は飴のほうへ視線を移した。
「こっちもお菓子?」
「そうだよ。飴っていうんだ」
「グミとは違うの?」
「うん。こっちは口の中でゆっくり溶かして食べるものだな」
「へえー。いろんなお菓子があるんだね!」
「そうだな」
クレーは露店の商品を順番に見ていった。
日用品にも目を向け、これは何に使うのか、どうしてこんな形をしているのかと質問してくる。
俺が説明できる範囲で答えると、クレーはそのたびに興味深そうな反応を返してくれた。
どうやら、知らないものを見るのが好きらしい。
もちろん、お菓子への関心が一番強いのは間違いないのだが。
「ねえ、悠真!」
「ん?」
「このお菓子、また買いに来てもいい?」
「ああ。売り切れていなければ、いつでもどうぞ」
「やったー!」
クレーは嬉しそうに声を上げた。
その笑顔を見て、俺も自然と頬が緩んだ。
自分が用意した商品を喜んでもらえる。
商売をするうえで、それは素直に嬉しいことだった。
売れた金額だけでは分からない、別の手応えがある。
こういう反応を積み重ねていけば、どんな商品に需要があるのかも少しずつ見えてくるだろう。
もっとも、今はクレーの好奇心に振り回されているだけのような気もするが。
「クレー、そろそろ行きましょうか」
そのとき、少し離れたところから女性の声が聞こえた。
クレーがぱっと振り返る。
「あっ、お母さん!」
……お母さん?
その言葉を聞いた瞬間、俺は思わず声のしたほうへ視線を向けた。
そこに立っていたのは、一人の女性だった。
長い髪に、整った顔立ち。落ち着いた雰囲気をまといながらも、どこか普通の人とは違う存在感がある。
身につけている服装も印象的だった。
そして何より、頭のあたりにある飾りが目に入った。
――いや、美人すぎない?
整った顔立ちもそうだが、表情や立ち居振る舞いまで含めて、妙に目を引く。
それに、あの頭の飾り。
……やっぱり、ゲームで見たとおりなんだな。
頭に固定されているようには見えない不思議な飾りが、当たり前のように彼女の頭上にある。
画面越しに見ていたときも気になっていたが、実物を目の前にすると、妙な感動があった。
そして、もう一つ。
俺はアリスとクレーを見比べた。
……なるほど。確かに親子だ。
顔立ちや雰囲気に、どこか共通するものがある。二人が並んでいる姿を見ると、そう思えるだけの納得感があった。
女性はクレーのもとへ歩いてくると、俺の露店に並んだ商品へ目を向けた。
「お買い物をしていたのね、クレー」
「うん! 見て見て、お母さん! グミを買ったんだよ!」
クレーは買ったばかりのグミを掲げて見せた。
「まあ、グミ?」
「噛むと柔らかいんだって! それでね、材料を混ぜて作るんだって!」
「あら、そうなの」
女性は楽しそうに微笑んだ。
それから、こちらへ視線を向ける。
「この子がお世話になったみたいね。ありがとう」
「いえ、そんな。お客さんですから」
「ふふっ。そういうことにしておきましょうか」
柔らかい口調だった。
ただ、その目はよく周囲を見ているように感じられる。
俺が返事をする間にも、女性は露店の商品や並べ方、俺の様子を自然に観察していた。
その視線に気づいたのか、クレーが母親の服を引っ張った。
「お母さんも見て! いろんなものがあるんだよ!」
「そうね。せっかくだから、少し見ていこうかしら」
女性はそう言って、俺に向き直った。
「私はアリス。あの子の母親よ」
――アリス。
名前を聞いた瞬間、頭の中でゲームの知識がつながった。
原神を遊んでいた俺にとって、知らない名前ではない。
むしろ、名前だけでも存在感の大きい人物だ。
そして、今、俺の目の前にいる。
ゲームで知っていた人物と実際に会うことには、何度経験しても不思議な感覚があった。
画面の中で見ていたキャラクターが、今は目の前で普通に話している。
しかも、相手はあのアリスだ。
そんな相手を前にして、いつまでも見とれているわけにもいかない。
俺は慌てて挨拶をした。
「い、いえ。初めまして。悠真といいます」
少しだけ返事が遅れた。
じろじろ見てしまった自覚があるので、内心では少し焦っている。
アリスは、俺の反応を見て楽しそうに目を細めた。
「初めまして、悠真。クレーが楽しそうにしていたから、どんな人なのかと思っていたの」
「そうだったんですか」
「ええ。この子、興味を持ったものを見つけると、夢中になってしまうでしょう?」
「……そうですね」
俺はクレーへ視線を向けた。
クレーは、母親と俺が話している間もグミを手にして、嬉しそうにしている。
確かに、興味を持ったものへの集中力はすごい。
ただ、興味の対象が爆発物に向いたときのことを考えると、周囲の人が気を配る理由も分かる気がした。
「今日はお菓子が気になったみたいね」
「うん! だって、見たことないお菓子だったんだもん!」
クレーが元気よく答えた。
「それに、グミっていうのがすごいんだよ! 柔らかくて、噛めるんだって!」
「ふふっ。そんなに気に入ったの?」
「うん!」
アリスは娘の様子を見て、穏やかに微笑んだ。
それから、露店に並ぶ商品を改めて眺め始める。
「ほかにも、いろいろあるのね」
「はい。お菓子のほかに、日用品も少し置いています」
「なるほど。小さな露店だけれど、品揃えには工夫があるのね」
「まだ試しながら、少しずつ増やしているところです」
「最初から大きく始めるより、そのほうがよさそうね。何が売れるのか、実際に確かめられるもの」
アリスの言葉には、単に商品を眺めているだけではないような響きがあった。
俺は少し意外に思いながら、頷いた。
「そうですね。売ってみないと分からないことも多いですから」
「お客さんの反応を見て、次に何を用意するか決める。そういうことかしら?」
「はい。今は、どんな商品に興味を持ってもらえるのかを調べているところです」
「いい考えだと思うわ」
アリスは商品を一つずつ見ていった。
飴の個包装に目を留め、手に取って確かめる。
「これは、一つずつ包んであるのね」
「はい。持ち運びやすいですし、食べたいときに一つずつ開けられますから」
「確かに便利ね。鞄に入れておいても、ほかのものと直接触れにくいし」
「そういう使い方もできますね」
アリスは包みを軽く眺めたあと、飴を一つ購入した。
俺は代金を受け取り、商品を渡す。
「ありがとうございます」
「こちらこそ。どんな味なのか、試してみるわね」
アリスは飴を手に取り、包装を確認してから、鞄へしまった。
その様子を見て、俺は内心で少し感心する。
クレーは食べることそのものに興味があったようだが、アリスは商品としての使いやすさにも目を向けている。
同じお菓子を見ていても、気になる部分は人によって違うらしい。
こういう違いを知ることも、商売を続けるうえでは大事なのだろう。
「ところで、悠真」
「はい?」
「この露店は、いつもここで出しているの?」
「基本的にはそうですね。冒険者ギルドの近くなら、人通りもありますし」
「なるほど。確かに、依頼を受けに来た人や、街を歩いている人が立ち寄りやすい場所ね」
「ただ、通行の邪魔にならないようには気をつけています。場所についても、事前に確認してあります」
「それなら安心ね。商売をするなら、周囲の人たちとの関係も大切だもの」
アリスはそう言って、街の様子を眺めた。
露店の前を、何人もの人が行き交っている。
その中には商品を眺めていく人もいれば、こちらに気づかず通り過ぎていく人もいる。
誰もが買い物を目的に歩いているわけではない。
それでも、たまたま目に留まったものに興味を持ち、足を止めてくれることはある。
俺が今やっているのは、そうした機会を少しずつ増やしていくことなのだと思う。
「最初から思ったとおりにいくとは限らないでしょう?」
「そうですね。売れると思っていたものがあまり売れなかったり、逆に予想していなかったものが気に入られたりします」
「ふふっ。それも商売の面白さね」
「まだ面白さを実感できるほど余裕があるわけじゃないですけど」
「あら、そうなの?」
「毎回、売れ残ったらどうしようとは考えますよ」
正直に答えると、アリスは小さく笑った。
「それは当然でしょうね。どんなことでも、実際に始めてみれば心配事は出てくるものよ」
「ですね」
「でも、失敗を恐れて何もしなければ、分からないこともそのまま。少しずつ試して、結果を見て、次に生かしていけばいいんじゃないかしら」
穏やかな口調だった。
特別な助言というわけではない。
けれど、今の俺にとっては、素直に受け止められる言葉だった。
俺はまだ商売を始めたばかりだ。
どんな商品が売れるのかも、どれくらいの量を仕入れるべきなのかも、十分に分かっているとは言えない。
だからこそ、少量から始めて、反応を確かめながら進めている。
今のやり方が正解なのかどうかは、まだ分からない。
それでも、少なくとも何もせずに悩んでいるよりは、実際に動いてみたほうが得られるものは多いだろう。
「ありがとうございます。参考になります」
「どういたしまして」
アリスは楽しそうに微笑んだ。
その横で、クレーがグミの袋を抱えながら口を開く。
「ねえ、お母さん! またここに来てもいい?」
「そうね。お店の人に迷惑をかけないようにするなら、いいんじゃないかしら」
「うん! クレー、ちゃんとする!」
クレーは元気よく頷いた。
俺はその様子を見ながら、少しだけ笑った。
「また来てくれるのは歓迎だよ。ほかにも気になるものがあったら、見ていってくれ」
「ほんと? やったー!」
クレーは嬉しそうに声を上げた。
その反応を見ていると、こちらまで楽しくなってくる。
ただし、次に来たときもグミが爆発するかどうかを聞かれる可能性はある。
そこだけは、あらかじめ覚悟しておこう。
「それじゃあ、そろそろ行きましょうか、クレー」
「はーい!」
アリスが促すと、クレーは返事をした。
去り際、クレーはもう一度こちらを振り返った。
「悠真、またね!」
「ああ。またな、クレー」
「また会いましょう、悠真」
「はい。ありがとうございました」
アリスは軽く手を振り、クレーと一緒に歩いていった。
俺は二人の姿が人混みに紛れていくまで、しばらくその背中を見送っていた。
そして、ようやく息を吐く。
「……いやあ」
思わず声が漏れた。
まさか、今日の露店でクレーとアリスに会うことになるとは。
クレーが来た時点でも驚いたが、まさか母親まで一緒に現れるとは思っていなかった。
しかも、アリス本人と話すことになるとは。
ゲームの知識があるから、名前も姿も知っている。
けれど、実際に会って話をすると、やっぱり違うものだ。
特に、あの頭の飾り。
……本当に不思議なものだな。
どういう仕組みなのか、気にならないと言えば嘘になる。
ただ、あれを本人に尋ねていいものなのかは分からない。
初対面でいきなり頭の飾りについて質問するのも、少し失礼な気がする。
それに、アリスは俺のことを観察しているようにも感じられた。
こちらの様子を見て、何かに気づいたのか。それとも、単純に初めて見る露店の店主に興味を持っただけなのか。
今の段階では、判断できない。
少なくとも、俺が余計なことを話さなければ、問題はないだろう。
自分がどこから来たのか、どうして珍しい商品を持っているのか。
そういった事情については、これまでどおり必要以上に話さない。
商売のために商品を説明することと、自分の事情を明かすことは別だ。
そこはきちんと分けておく必要がある。
「……さて、仕事に戻るか」
俺は小さく首を振り、露店の商品へ視線を戻した。
クレーが買ってくれたグミは二袋。
アリスが買ってくれた飴は一つ。
売上としては、決して大きなものではない。
それでも、今日の出来事には金額だけでは測れない意味があった。
クレーはグミの食感に興味を持ち、作り方まで尋ねてきた。
アリスは個包装の便利さや、商売の進め方に目を向けていた。
同じ露店を見ても、関心を持つところは違う。
そうした違いを知ることができたのは、いい経験だったと思う。
俺は近くに置いていた記録用の紙を取り出し、今日の出来事を簡単に書き留めた。
クレーがグミを二袋購入。
食感と製法に強い興味を示す。爆発するかどうかも質問された。
……最後の一文は、書いていて少し笑ってしまった。
続けて、アリスが飴を一つ購入したこと、個包装の使いやすさに関心を示したことも記録する。
商品を売るだけなら、売上の金額を記録しておけばいい。
でも、今後も商売を続けていくなら、客が何に興味を持ったのか、どんな質問をしたのかも残しておいたほうがいいだろう。
すぐに役立つとは限らない。
それでも、何度か記録を重ねていけば、商品を選ぶときの参考になるはずだ。
俺は紙をしまい、改めて露店の前に立った。
まだ日は高い。
商品も残っているし、商売を終えるには早すぎる。
さっきの出会いをいつまでも考えているわけにもいかない。
次のお客さんが来るかもしれないのだから。
俺は気持ちを切り替え、通りを行き交う人たちへ目を向けた。
すると、ちょうど一人の女性が露店の前で足を止めた。
「これは、何かしら?」
「はい。こちらは――」
俺は笑顔で商品の説明を始めた。
モンドでの生活は、まだまだ続いていく。
今日のような思いがけない出会いも含めて、少しずつ、この世界での暮らしを楽しんでいこう。
そんなことを考えながら、俺は次のお客さんを迎えた。
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