原神の世界に通えるようになったので、モンドを拠点に異世界生活を楽しみます 作:ところてんの
休日の朝。
俺は机の上にノートを広げ、前回の販売結果を見直していた。
モンドで初めて商品を売った日。
日本から持ってきた飴やグミ、それから日用品を並べて、街の人たちに買ってもらった。
思っていたよりも興味を持ってくれる人はいたし、実際に商品を購入してくれた人もいた。
初めての販売としては、悪くなかったと思う。
ただ、売れたからといって、すべてがうまくいったわけではない。
「……値段、これでよかったのかな」
ノートに書き込んだ販売価格を見つめる。
商品を売る以上、値段を決めなければならない。
当たり前の話だ。
けれど、俺はモンドで暮らす人たちが、普段どのくらいの値段で買い物をしているのか、まだよく知らなかった。
日本なら、スーパーやコンビニに行けば商品の値段が分かる。普段から買い物をしていれば、食料品や日用品の相場も自然と頭に入ってくる。
もちろん、細かい値段まですべて覚えているわけではない。
それでも、普段買っているものなら、高いか安いかくらいは判断できる。
でも、モンドではそうはいかない。
ゲームを遊んでいたころは、店で商品を買うときに必要なモラを見ても、そこまで深く考えたことはなかった。
必要なものを買い、冒険に出る。
俺にとっては、それだけだったからだ。
しかし、今は自分が商品を売る側になっている。
売る側になれば、買う側だったときには気にしなかったことまで考えなければならない。
例えば、同じような用途の商品がいくらで売られているのか。
どのくらいの値段なら、買う人が手を伸ばしやすいのか。
そもそも、こちらの人たちが必要としている商品なのか。
考え始めると、気になることはいくらでも出てくる。
「まずは、モンドのお店を回ってみるか」
俺はノートの余白に、今日やることを書き込んだ。
食料品店で値段を調べる。
日用品店でも、似た用途の商品を探す。
店主に話を聞けそうなら、商品の売れ行きや値段の決め方も尋ねてみる。
それから、前回の販売で気になったことも整理する。
これなら、次に商品を売るときの参考になるはずだ。
もちろん、一日でモンドの物価をすべて把握できるとは思っていない。
それでも、何も知らないまま値段を決め続けるよりはいい。
俺はノートを閉じ、出かける準備を始めた。
今日も、異世界での商売の勉強だ。
……こう書くと、なんだか立派なことをしている気分になる。
実際にやることは、街のお店を回って話を聞くだけなんだけど。
「まあ、地道にやるしかないか」
俺はパソコンの前に座り、システムを操作した。
◇
モンドに着くと、見慣れた街並みが目に入った。
石畳の道を人々が行き交い、店先には商品が並んでいる。
何度か訪れた場所だけど、今日は少し違った見方をしてみることにした。
いつもなら、街を歩きながら気になる場所を見たり、買い物をしたりして過ごしている。
けれど、今日は商売をする側の目線で街を見てみたい。
どんな商品が並んでいるのか。
客は何を手に取っているのか。
商品はどんなふうに陳列されているのか。
普段なら気にせず通り過ぎてしまうことも、今日は気になった。
「こうして見ると、いろいろ違うもんだな」
商品を売るという目的があるだけで、街の見え方も変わってくるらしい。
とはいえ、いきなり商店に押しかけて値段を尋ねるのも、少し気が引ける。
まずは冒険者ギルドに寄って、キャサリンさんに相談してみることにした。
ギルドなら、これまでにも何度か利用している。
前回の販売を始める前にも相談したし、今回も何か参考になる話が聞けるかもしれない。
俺は人通りの多い道を進み、冒険者ギルドへ向かった。
◇
「おはようございます、キャサリンさん」
「おはようございます、悠真さん。本日はどのようなご用件でしょうか?」
受付にいたキャサリンさんが、いつもの落ち着いた笑顔で迎えてくれた。
「ちょっと聞きたいことがあって。前に商品を売ったじゃないですか」
「はい。販売を始められたのですね」
「それで、値段が適切だったのか気になってるんです。モンドの相場をよく知らないまま決めたので、今日は少し調べてみようと思って」
「なるほど。商売を続けるのであれば、大切なことですね」
「ですよね。安すぎても困るし、高すぎても売れないでしょうし」
「そうですね。ただ、商品の価格は店によっても異なります。取り扱う商品や仕入れの状況も違いますから」
「やっぱり、実際にお店を回ってみるしかないか」
「ええ。商店の方に尋ねてみるのがよいと思います。価格だけでなく、どのような商品がよく売れるのか聞いてみても参考になるでしょう」
「なるほど。値段だけ見ても分からないことがあるんですね」
「はい。商品の種類や品質、必要とする人がどれだけいるかによっても変わりますから」
キャサリンさんの話を聞きながら、俺はうなずいた。
考えてみれば、当然のことだ。
同じ用途の商品でも、品質や使いやすさが違えば値段も変わる。
珍しい商品だからといって、必ず高く売れるわけでもない。
ゲームでは店の商品を買うことはあっても、売る側の事情まで考える機会はなかった。
「分かりました。まずは何軒か回ってみます」
「それがよいと思います。調査、頑張ってくださいね」
「ありがとうございます」
キャサリンさんに礼を言って、ギルドを出た。
まずは食料品店からだ。
いきなり細かい数字を聞き出そうとするより、普段どんな商品が売れているのかを知るところから始めてみよう。
◇
食料品店の前には、野菜や果物など、日々の生活に必要なものが並んでいた。
俺は商品を眺めてから、店主に声をかけた。
「すみません。ちょっと聞いてもいいですか?」
「おう、いらっしゃい。何か買っていくかい?」
「今日は買い物というより、値段の調査なんです。自分でも商品を売り始めたんですけど、モンドの相場が分からなくて」
「へえ、商売を始めたのか」
「まだ始めたばかりです。前に一度売ってみたんですけど、値段が適切だったのか気になって」
「なるほどな。それなら、まずは普段からよく売れるものを見ておくといい」
店主は店先の商品を指さした。
「こういう食料品は、毎日のように買う人がいるだろう? 珍しいものだけ見ていても、普段の値段は分かりにくいからな」
「確かに。日常的に買うものの値段が分かれば、参考になりそうですね」
「そういうことだ。もっとも、同じ商品でも状態や仕入れによって値段が変わることはあるぞ」
「仕入れでも変わるんですか?」
「ああ。いつでも同じ量が手に入るわけじゃないからな。よく採れるときと、そうでないときでは違ってくる」
俺はメモを取りながら話を聞いた。
食料品は、いつでも同じ値段で仕入れられるとは限らない。
天候や収穫量によって、手に入る量が変わることもあるのだろう。
日本でも野菜の値段が変わることはあるけれど、こちらの事情までは分からない。
こういう話は、実際に商売をしている人に聞くのが一番だ。
「ちなみに、安くすれば売れやすくなるんでしょうか?」
「そりゃあ、値段を気にする客は多いさ。ただ、安ければ何でもいいってわけでもない」
「というと?」
「安すぎると、品質を疑われることもある。反対に、値段が高くても、それだけの価値があると思ってもらえれば買ってくれる人はいる」
「なるほど……。値段だけじゃなくて、商品そのものも見られるわけですね」
「そういうことだな」
俺はうなずいた。
自分が日本で買い物をするときのことを考えてみる。
安い商品を選ぶことはあるけれど、値段だけで決めているわけではない。
多少高くても、使いやすそうだったり、長持ちしそうだったりすれば、そちらを選ぶこともある。
モンドの人たちだって、きっと同じなのだろう。
「じゃあ、見たことのない食べ物を売るときは、どうしたらいいと思います?」
「まずは、どんな食べ物なのかを説明してやればいいんじゃないか?」
「味とか、そういうことですか?」
「そうだな。甘いのか、しょっぱいのか。どんな食感なのか。知らないものを買うのは、誰だって少し迷うだろう?」
「確かに、見た目だけじゃ分からないですもんね」
前回の販売を思い出す。
特にグミは、こちらでは見慣れない食感のお菓子だった。
興味を持って手に取ってくれた人はいたものの、しばらく眺めてから戻してしまう人もいた。
あのときは、値段が高かったのかもしれないと思った。
けれど、味や食感が分からなかったから、購入を迷った可能性もある。
実際に食べてみなければ、どんなものなのか想像しにくいのだろう。
「値段を変えるだけじゃなくて、説明も考えたほうがよさそうですね」
「そうだな。買う側が分からないことを、少しでも減らしてやるといい」
「参考になりました。ありがとうございます」
「おう。商売、頑張りな」
「あ、そうだ。これ、よかったらどうぞ」
俺は持ってきた飴を数個、店主に差し出した。
「ん? これは?」
「俺の故郷のお菓子です。今日は色々と教えてもらったので、お礼です」
「わざわざ悪いな。ありがたくもらっておくよ」
「いえ、時間を取ってもらいましたから」
店主は飴を受け取り、軽く手を振った。
「また分からないことがあったら聞きに来な」
「はい。そのときはお願いします」
店を離れながら、俺は少しだけ安心した。
今日の目的は、店主から話を聞くことだった。
そのお礼として、故郷のお菓子を渡す。
それだけのやり取りだけど、こういう小さな交流も悪くない。
もちろん、飴を渡したからといって、何か特別な情報を教えてもらえると期待しているわけではない。
話を聞かせてもらったことへの、純粋なお礼だ。
俺は歩きながら、忘れないうちにメモを見直した。
値段は品質や仕入れによって変わる。
安さだけでなく、商品そのものの価値も大切。
知らない食べ物は、味や食感を説明する。
次の販売で試せそうなことが、いくつか見つかった。
◇
次は日用品を扱う店だ。
前回の販売では、お菓子だけでなく、いくつかの日用品にも興味を持ってくれた人がいた。
ただ、全部が売れたわけではない。
どんな商品が必要とされているのかを知るためにも、こちらの話を聞いてみたい。
「こんにちは。少しお話を聞いてもいいですか?」
「いらっしゃい。何をお探しで?」
「今日は買い物じゃなくて、商品の値段を調べているんです。自分でも小さく商品を売っているので、参考にしたくて」
「そうかい。商売の勉強ってわけだな」
「そんなところです」
店主は笑いながら、店に並んでいる商品を見せてくれた。
俺が日本から持ってきた日用品と、用途が近そうなものもある。
もちろん、まったく同じ商品ではない。
素材も作り方も違うし、こちらの生活に合わせて作られたものもある。
それでも、比較するための参考にはなるだろう。
「日用品って、何を基準に値段を決めているんですか?」
「物によるな。丈夫さや使いやすさ、それから、どれだけ必要とされているかだ」
「必要とされているか、ですか」
「例えば、便利そうな道具でも、使い道が分からなければ買おうとは思わないだろう?」
「それはそうですね」
「反対に、普段から使うものなら、多少値段が違っても買う人はいる。使い慣れているものは安心できるからな」
俺は前回の販売を思い返した。
日本では当たり前のように使われている日用品でも、こちらの人たちにとってはそうではない。
便利だと思って持ってきたものでも、使い方が分からなければ買ってもらえない可能性がある。
日本で売れている商品だからといって、モンドでも売れるとは限らないのだ。
「じゃあ、珍しい商品を売るなら、最初は少しだけ用意したほうがいいですか?」
「そのほうがいいだろうな。売れるかどうか分からないうちから大量に仕入れても、売れ残ったら困るだろう?」
「ですよね。俺も、いきなりたくさん仕入れるつもりはないんです」
「なら、客の反応を見ながら少しずつ増やしていけばいい。商売を続けたいなら、無理はしないことだ」
「分かりました。まずは少量からですね」
店主の話を聞いて、改めてそう思った。
俺が日本で仕入れに使えるお金には限りがある。
それに、モンドで売上を得ても、手に入るのはモラだ。日本円に自動で換わるわけではない。
売れたからといって、そのお金を日本での仕入れに直接使えるわけではないのだ。
商売を続けるためには、売上だけでなく、仕入れにかかるお金も考えなければならない。
今はまだ、小さく始めるのが一番だろう。
「今日は色々と教えていただいて、ありがとうございました」
「いやいや、これくらいなら構わないよ」
「それで、これ。俺の故郷のお菓子なんですけど、よかったらどうぞ」
俺は個包装の飴を差し出した。
「おや、わざわざ悪いね。ありがたくいただくよ」
「こちらこそ、ありがとうございました」
店主は飴を受け取ると、包みを興味深そうに眺めた。
「ひとつずつ包んであるんだな。こういうのは持ち歩くのに便利そうだ」
「はい。食べるときも扱いやすいんです」
「なるほどな。味だけじゃなく、そういうところも商品の特徴になるんじゃないか?」
「……あ、それもそうですね」
俺は思わず声を上げた。
前回の販売では、飴の味について説明することは考えていた。
でも、個包装であることを、商品の特徴として意識したことはなかった。
アンバーも、前に買った飴は持ち歩きやすいと言っていた。
味だけではなく、仕事の合間に食べやすいことや、持ち運びやすいことも価値になるのだ。
「ありがとうございます。次に売るときは、そのあたりも説明してみます」
「おう。頑張りな」
店を出ると、俺は忘れないうちにメモを取った。
飴は個包装で持ち歩きやすい。
味だけでなく、扱いやすさも伝える。
ちょっとしたことだけど、次の販売で試してみる価値はありそうだ。
◇
ひと通り店を回ったところで、俺は広場の近くで休憩することにした。
さすがに、慣れない調査を続けていると疲れる。
ベンチに腰を下ろし、今日のメモを見直した。
食料品店では、値段と品質の釣り合いが大切だと教えてもらった。
日用品店では、使いやすさや必要性も購入の判断材料になると聞いた。
そして、珍しい商品を売るときは、使い道や特徴をきちんと説明する必要がある。
「値段を調べるだけのつもりだったんだけどな」
思った以上に、いろいろなことが分かった。
もちろん、今日一日でモンドの物価を把握できたわけではない。
店によって値段は違うし、扱っている商品も違う。すべてを調べようと思ったら、いくら時間があっても足りないだろう。
それでも、これから商売を続けていくための手掛かりは得られた。
俺はノートを閉じ、少しだけ休むことにした。
「おや、悠真?」
声をかけられて顔を上げると、アンバーが立っていた。
「こんにちは、アンバー」
「こんにちは! 今日は何をしているの?」
「商品の価格を調べてたんだ。前に売ったとき、値段が適切だったのか気になってさ」
「ああ、そういうことね!」
アンバーは納得したようにうなずいた。
「商売を続けるなら、そういうことも考えないといけないのね」
「そうみたいだね。実際に店の人に話を聞いてみると、値段だけじゃ駄目だって分かったよ」
「買う人が何を必要としているかも大切だものね」
「アンバーも、買い物をするときはそういうところを気にする?」
「もちろん! 冒険に使う道具なら、使いやすさや丈夫さは大事だし、普段の買い物なら予算も考えるわ」
「やっぱり、そうだよね」
自分が買う側だったときのことを考えてみる。
値段だけでなく、使いやすさや品質も気にする。
それなのに、自分が売る側になった途端、値段ばかり気にしていた。
少し視野が狭くなっていたのかもしれない。
「そういえば、前に買った飴はどうだった?」
「おいしかったわよ! 個包装になっているから、持ち歩きやすかったし」
「それならよかった」
「仕事の合間に食べるのにも便利だったわ。小さくて、すぐに食べられるのもいいわね」
「なるほど。味以外にも、そういうところがよかったんだね」
「そうね。ちょっとしたことだけど、便利だと思ったわ」
俺はうなずいた。
さっき日用品店の店主にも、同じようなことを言われたばかりだ。
個包装は、ただ飴を包んでいるだけではない。
持ち歩きやすく、食べるときにも扱いやすい。
それも商品の特徴として伝えられる。
「ありがとう。次に売るときの参考にするよ」
「うん! 商売も大変そうだけど、頑張ってね」
「うん。無理のない範囲で続けてみるよ」
「それじゃ、私はそろそろ行くわね。また会いましょう!」
「またね、アンバー」
アンバーは手を振って、街の中へ歩いていった。
俺はその背中を見送り、もう一度メモに目を落とした。
今回の調査で分かったのは、単純に値段を比べればいいわけではないということだ。
商品の特徴を知り、どんな人に必要とされるのかを考える。
そして、その特徴をきちんと伝える。
次の販売では、そこも意識してみよう。
◇
休憩を終えた俺は、もう少しだけ街を歩くことにした。
今度は、商品の値段だけでなく、店先の並べ方にも目を向けてみる。
同じように商品が並んでいても、店によって見せ方は違う。
目につきやすいところに置かれている商品もあれば、棚の奥に並んでいるものもある。
客が何を探しているのかによっても、手に取る商品は変わるのだろう。
俺が販売に使える場所は小さい。
大きな店のように、たくさんの商品を並べることはできない。
だからこそ、限られたスペースをどう使うかも考えたほうがよさそうだ。
「商品を並べるだけでも、いろいろ考えることがあるな……」
日本で買い物をしているときは、そこまで意識していなかった。
でも、自分で売る側になってみると、店先の小さな工夫にも目が向く。
最初から何もかもうまくできるとは思っていない。
実際に売ってみて、反応を見て、必要なところを少しずつ変えていけばいい。
いきなり大きな利益を狙う必要もない。
今はまだ、経験を積む段階だ。
売れた商品と売れなかった商品を記録し、値段を調べ、商品の特徴を説明してみる。
それを繰り返していけば、少しずつ自分なりの売り方が見えてくるはずだ。
「よし。今日はこれで十分かな」
日が傾き始めたころ、俺は調査を切り上げることにした。
今日一日で、モンドのすべての物価を把握できたわけではない。
それでも、店主たちの話を聞いたことで、次に何を考えればいいのかは見えてきた。
俺はシステムを操作し、ログアウトを選んだ。
◇
日本の自室に戻った俺は、机に座ってノートを開いた。
今日の情報を忘れないうちに、記録しておく。
食料品店では、商品の品質や仕入れの状況によって値段が変わることを教えてもらった。
安ければ必ず売れるわけではなく、値段と品質の釣り合いも大切。
日用品店では、使いやすさや必要性も購入の判断材料になると聞いた。
珍しい商品を扱う場合は、使い道や特徴を説明すること。
それから、個包装の飴は持ち歩きやすく、食べるときにも扱いやすい。
俺はひとつずつ書き留めた。
テイワットの文字は読むことができるが、自分で書くことはできない。
だから、こうして日本に戻ってから、日本語で記録するのが確実だった。
記録を終えたところで、前回の販売結果と今回の調査内容を並べてみる。
売上の数字だけを見ていたときよりも、考えられることが増えていた。
ただし、まだ具体的な販売価格を変更するには、判断材料が足りない。
店で見た商品と、日本から持ち込んだ商品は、まったく同じものではないからだ。
単純に価格を比べて決めるのではなく、商品の特徴や仕入れにかかった費用も考えなければならない。
それに、前回は販売を始めたばかりだった。
一度の販売結果だけで、売れる商品と売れない商品を決めつけるのも早いだろう。
「次は、もう一度売って反応を見てみるか」
俺はノートに書き込んだ。
飴については、味だけでなく、個包装で持ち歩きやすいことも伝えてみる。
グミについては、どんな食感なのかを分かりやすく説明する。
日用品は、使い道が伝わるように工夫してみる。
価格については、今回調べた相場と仕入れにかかった費用を参考に、無理のない範囲で考える。
全部を一度に変える必要はない。
商品ごとに試して、結果を記録する。
そうすれば、何がよかったのかも少しずつ分かってくるはずだ。
「焦らず、ひとつずつだな」
俺はノートを閉じた。
異世界で商売を始めたからといって、すぐに大きな利益が出るわけではない。
むしろ、今は分からないことだらけだ。
けれど、分からないことを調べて、実際に試してみるのは思っていたよりも面白い。
次にモンドへ行ったときは、今日の調査を活かして、もう一度商品を売ってみよう。
今度は、前回とは違う結果になるかもしれない。
そんなことを考えながら、俺は次の休日に向けて準備を始めた。
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