ラブコメ世界のかませ友人キャラに転生して、ヤンデレヒロインにかました結果www 作:ねこスマ
私はテーブルの上に置かれていお札を財布の中に入れた。今日は1週間に一度母が家に帰ってくる日でお金が置いてあった。米、卵、などの消費する物も補充されており、夕飯の材料をスーパーへ買いに行く。
「……あ」
なんてことない住宅街の道にいつもいる男性の人影が立っている。顔を見れば靄のようになっており生者でないことが一目でわかった。
こういう亡くなった人と会話するのは中学の頃から避けていたが、私なんかに話しかけてくれる野口くんに影響されて、私も久しぶりに話しかけてみることにした。
(あの、ここで何をされているんですか?)
『はい?えっと、なんですかね?』
(ここにずっといらっしゃるようなので)
『営業でこの街に来ただけですよ、後輩が車を持っているので拾ってもらおうと』
(どのくらい待っているんですか?)
『そういえば何日待っても来ないな……アイツなにしてんだよ」
(何日もずっと外で待ち続ける、おかしいと思いませんか)
『……言われてみれば……俺はずっとここで何していたんだ?』
(辛いことを言いますが、あなたはもう亡くなっています)
『……亡くなってる?俺はもう死んでいたのか……』
ほとんどの霊はただそこに居るだけの善良な人ばかりだ、自分が死んだことに気付いてない人、ただそこに居たい人、後者なら放っておくが前者なら気付いて
『あの、俺ってこれからどうしたらいいですかね』
(成仏できますか?私はただお話しすることしか出来ないので)
『出来るとは思います…ただ、自分という存在が消えていくような感覚がして……』
(ずっと独りでここにいることになりますけど……それでもいいなら無理しなくていいと思います)
『そうですか、分かりました。看取ってくださってありがとうございます』
フッ
目の前にいたボヤけた男性の人影は霧散し消えていなくなった。
もし成仏しなかったら束の間の自由の後、再び記憶を忘れ後輩を待つためにあの場に戻り、存在が擦り切れるまで留まっていただろう。
私の心の中に少し暖かいものが広がり、野口くんがしてくれたように同じことが出来て嬉しかった。
・・・
暗闇の中でギョロっとした無数の剥き出しの眼球が私を一点に凝視している。まるで私が蔑まれているのに、外から見ていただけの他のクラスメイトみたいな哀れみと好奇心が混じったような傍観者の目。
『みるなみるなみるなみるなみるな』
「ハァッ!…はぁっ…誰……」
私の心を多数の誰かに覗かれたような不快な感覚、まるで心を丸裸にして見透かしているかのような……。
生汗を掻き不快感を感じながらも、ベッドから起き上がり台所で水を飲んだ。時間はまだ早朝の四時だが、さっきの悪夢で再び寝つけそうにはない。
(変なの呼び寄せちゃったかな……)
私は動きやすい服に着替えて外を走ることにした。さっきから嫌な感覚がずっと消えなくてどうにもジッとしている方が不快だ。
(野口くん……)
彼の陽気な声が聞きたくなった、だけどまだ連絡先は交換していない。私から連絡先を教えてと言ったら野口くんは二つ返事で教えてくれそうだけど、野口くんから私に聞いてほしいなぁ…なんて。髪を切って私が喋るようになると野口くんから再び付き合ってもいいと言われた…軽い感じで。女子に対して節操がなく自由な彼を縛りつけるには、もっと私を心の底から必要だと想ってもらわないと、私の愛だけが一方的に重く感じ、すぐに破局するかもしれない。『悪い、やっぱ俺たち別れよう』なんて言われた日には私は本当に壊れてしまう。もう私の中で野口くんだけが特別な存在なのだ、私の髪型が変わり周りも変化したように、何かの切っ掛で人は他人を容赦なく攻撃する。友達だと思っていた女の子がイジメる側に回った時に私は人を信用出来なくなっていた。広場君、虹村さん、小風さんも所詮は野口くん経由で知り合った赤の他人。本当は野口くんの周りの関係を全て絶って縛りつけたいけど、彼は私の心の闇に薄々気付いており、深く踏み込んでこない。そんな彼を今の段階で周りの交流を阻害するのは愚か者だし、もし今私が野口くんと付き合うのなら我慢出来なくて色々束縛してしまうと思う。私が野口くんに寄り添うか、彼を引き摺り込むか。強行しても悪手なのはさっき思ったとおり、野口くんが女誑しで重い女を嫌ってそうなところ、私が普通の女の子みたいになれるといいけど、女の陰がチラつくと力の制御もままならず、彼を何度か傷つけてしまった。その時私はアイツらと同じ所に堕ちてしまっただんだと悲しく感じつつも、笑って受け流してくれる彼に私の心は二度救われたのだ。野口くんの心奥に私という存在を刻み込まないといけない。私は嫉妬深く疑い深い性格だと思う、だからこそ今は付き合う時ではない。簡単に別れようななんて言われないように、でも私なしで野口くんが生きていけないようにするビジョンは全然視えていない、彼は彼女に何を求めているのか、私の何を何処まで捧げれば引かれないのか、まだまだ計りかねている段階であった。
(懐かしい、あの大岩を壊したの私だっけ)
誰かが私の前に生身で飛び出してきたら轢き殺してしまう速度を出しながら、渓谷まで走ってきた。切り立った岩壁の間からは綺麗な川が流れている。
自然の力というよりは、人の負の澱みが無い場所を借りたかった。靴を脱いで川の中へ入っていき膝上まで浸かる所まで進んで周囲を見渡した。
(ずっと私を見てる……悪霊……?)
拳を握り腕を引き、水面に勢いよく叩きつける。
ザバァァァァッッッ!!
拳の一撃にとって十数メートルの高さまで水飛沫が舞い上がり、その衝撃と音により二度とソレが近づくことはなかった。