異邦魔王の違法魔法 作:冒険者小隊
休暇するサンブラル
微睡の中から俺は目覚めた。椅子に座ったままの状態で欠伸を噛み殺して側に立つ男に語りかける。城ごとの異世界転移により、ゆりかごのような振動で眠ってしまっていたようだ。
「やはり異世界転移の感覚は何度繰り返しても心地いいな。ご苦労、ウレイン。」
恭しく頭を下げてこちらに向き直る。
「些事でございますれば。では私も王と同じ一
月の休暇をいただきます。何かございましたら交信をいただけると。」
「そんなつまらん事はしねえよ、お前はキッカリと休暇を楽しみな。」
「承知いたしました。」
その言葉を最後に瞬間移動のようにまたどこか別の場所へ飛んでゆく。行き先は知らないが他人の旅行先に口を出す趣味もなく、一月後に土産でも献上されれば気にする事はなかった。それよりも自分のことだ。
「くくく…はははははっ!大型休暇だ!2年ぶりの!笑いが止まらんっ!」
2年間ひとときも離れることのなかった監視の目が無くなり、つい気分が高揚してしまう。即位後の国家平定業務に就いてからと言うもの、まとまった休みを取れず日々の作業に追われていたのがようやくひと段落し、王が採決を行う急を要する案件も消えたことにより休暇を要請することが出来たのだった。
「2年で国家平定が済んだのも一月の休暇が通ったのもそれもこれも勇者の奴が居なければ成り立たん事だ、あいつには感謝してもし足りんなぁ!」
魔人戦争の最後の決戦、先代魔王と勇者との戦いの果てに、終着点として人王との和平交渉の間を取り持った勇者には感謝の念があった。交渉材料として国庫からの出費をこれでもかと持っていった事でその件についての感謝は消えたが。まあそれでもどちらかが属国としてでは無く対等な立場としての国家間の関係を築けた事や2年間の執務の手伝いといい、あいつが居なければ軌道に乗るまであと何年かかっていただろうかと言う塩梅だ。
「あいつには何を土産にしようか…ところで、さっきから謁見室の扉の隙間から俺の様子を伺ってる奴ら、入ってきな。」
扉の向こうに感じていた気配が変わる。驚きから覚悟、4人の男が扉を空けて入ってくる。鎧に身を包んだ突撃槍の男、刺突剣を腰に携えた男、特徴的な先端を持つ槍の大柄な男、風除けを羽織り獲物が見えない男。
「勇者一行みたいな統一感の無さじゃねえか。お前ら軍属じゃあねえな?何者だ。」
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(やっべぇ、こいつの威圧感は半端じゃねえ。)
マントの中の武器を握り締めながらここまでの流れが頭の中で巡る。
この場所の発見報告があったのはつい1時間前の事だった。普段よくつるんで遊んでいる面子のうちの1人、「刺突剣のバロン」ことバヨネットに聞かされた突如現れた城に乗り込もうと言う誘いを受け、丁度メンバーも4人揃っていたので向かう事にしたのだ。
新しく作成した武器の試運転も兼ね、実験的な装備構築に変更する事にしたのは今思えば失敗だったかもしれない。インスタントダンジョンを生成するゲリラクエストについては何度も経験がある。しかし、それらは全て山中の洞窟や地下空洞、森の中に生成されたものだった。今回のように平原にいきなり建造物が発生するという例は見たことも聞いたこともない。それに人語を解するフロアボスだ、想定を上回る現象が発生しており、場の空気に呑まれそうになっている。
(まずさっきまでいた角の生えた女が一瞬にして消えたカラクリはなんだ…?詠唱やスクロールなしに瞬間移動できる技術を持った種族って事か…?もう1人の男も喋ってる以上2人ともボス格の存在ってことだよな。俺ら、もしかしてやべえとこに来ちまったんじゃねえのかよ…!)
数瞬の逡巡の間にバヨネットが喋り出した。
「失礼、街の近くの平原にて城が突如出現したとの事で調査に参った次第です。私は『フォーバロンズ』のバヨネット、それから鎧の男がシュバルツ、マントの男がガリアン、1番大きいのがベンケイです。以後お見知り置きを。」
「そうか、近隣の街からの使者と言うことか。」
その発言に訂正をかける。
「いいえ、街から送り込まれてきたわけではなく、独自的な調査として来ました。」
多分目の前の男は城主だ。それに対して正直にダンジョン攻略しに来ましたなんて言ったらいきなり戦闘が始まってしまう。一応ロールプレイ系ギルドのメンバーな以上、この場でロールプレイを行う事が必要であることは全員把握している。この場で俺たちがやる事は目の前の男の素性把握、そして関係の構築だ。
「貴方の名前をお聞かせ願えますか、城主よ。」
「サンブラルだ。魔族の王、魔王とも呼ばれている。」
魔王。魔王だと。過去に討伐したグリッサンドとは違う、新しい魔王と言うことか。だが彼は人間と同じ姿をしている。いや、角と耳は付いているが亜人の範疇だと考えていた。それに魔族とはなんだ。魔物の王が魔王っていう話はどこに行ったんだ。バヨネットが口を開く、そこらへんの情報を詰めようとしているのか。
「失礼ながら、私達は魔王と名乗る者を討伐した事があります。名前はグリッサンド、貴方は彼に連なる者…ですか?」
魔王を名乗る男は一度驚いたような表情をしながらも平然としていた。
「知らねえな。それと言い忘れてた、俺はこの世界に転移し、休暇を取りに来ただけだ。人間と争おうなんて思っちゃあいねえさ。」
一同、安堵した。いくら魔王討伐パーティとは言え、インスタントダンジョン潜るぞのテンションでいきなり魔王との戦いが始まろうとしていては準備が足りない。
「だが…」
だが?
「魔王を討伐したって言うその実力、気になるな。お前ら、ある程度は戦闘の準備はしてきているだろう、少し腕試しをしてみないか?もちろん褒美は考えてあるが。」
くらっときた。魔王との戦闘という恐れていた事が現実に起こってしまった事にもだが、それよりも現段階ではプレイヤーの誰も存在を知らないであろう異世界の魔王の褒美にだ。パーティの頭脳として冷静に考えなければいけない筈なのにどうしようもなくときめいてしまってる。メンバーを一瞥する。
「ちょっとだけ考える時間を頂いても…?」
「構わん、作戦会議の時間は5分やろう。」
戦う前提で話進んでるじゃねえか。
「よし、集合だ!」
集合して円陣を組む。俺たちのいつものスタイルだ。
「戦うぞ。俺たちはグリッサンドを倒した『フォーバロンズ』だ、やれるだけの事はやってみよう。」
そう言ったのはリーダー格のバヨネット。
「いつもの陣形ね。もう、さっきからワクワクして突っ込みたくなっちゃう♡」
続いて引きつけ役のシュバルツこと姐さん。
「俺はいつでも最大火力出せるように準備してるが…支援役は大丈夫なのか?」
ベンケイは強面だがパーティを気遣う事ができる男だ。
「気にしなくていい、勝てるなら多少のコストは気にしないさ。エリクサーの使いどきってやつだ。」
支援役こと俺、ガリアンは覚悟を決めた。
「よし、作戦の話に移ろう、まずは〜」
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固まって話を始めてから5分、音遮断の結界を解く。
「5分だ、終わったか?」
目の前の4人は陣形を組む。それは先ほどの問いに対する答えであり、準備が出来たことの合図だと感じ取った。
「では…行くぞッ!」
雷閃。隙の少ないタメと相手の感電による機動力の喪失を狙う一撃。左手に雷のエネルギを意識して、それを相手に放り投げるようなイメージで打ちつけたそれは、前衛の鎧の男が構える盾に当たり、そのまま男ごとダメージを浴びせたように思えた。しかし、
「ずぇりゃああああぁぁぁっ!」
鎧の男は雷閃を浴びたことに怯む事なくこちらに突撃を仕掛けてきた。短時間の痛覚への反応を遮断して向かってきているのか、それとも雷に対しての耐性を持っているのか。
「面白い!ならばこれだ。」
次に用意したのは炎の壁、これならばどちらであろうとも消し炭になり突撃が届く事はない。目の前が赤く燃え盛り、鎧の男の姿が隠れる。だがしかし、炎は数瞬のうちにかきけされる。その瞬間、風が頬を凪いだ。視界の端に映る刺突剣の男の持つ剣が風を纏っていた。
(素晴らしい判断力、そして対処できる状況の幅だ!)
思考も束の間、上からの殺気を感じる。大柄な男が槍の穂先を構え、こちら目掛けて急降下してきていた。そして突撃もほぼ同時に来ている。狙いはそれぞれ頭と胴。急所の2点同時攻撃だ。
「防御壁ィ!」
両手を前に突き出し自身の前面に対してシールドを貼る。ギリギリ間に合い、接触面が敵の武器を弾こうとする。空中からの槍の一撃は弾く事が出来た。しかし、突撃槍は止まらない。風という推進力、一直線に走り抜けた慣性、そして重装備がもたらす重さが今にもシールドを貫こうとしている。だが、槍に割いていたシールドの分をこちらに回す事でその突進力も防ぎ切る事が出来るはずだ。
「シールドバッシュ!」
だが、この場で突撃槍を凌ぎ切ることに全力を費やす事はできない。まだ1人、手の内を見せていない男がいる。そのため、突撃槍を弾き、少しでも早く息を整えなければいけない。
シールドバッシュで競り勝ち、鎧の男を吹き飛ばす事が出来た。瞬時にシールドを解除し、即座にマントの男目掛けて雷閃を放とうとする。しかし、
目の前に鞭のような剣が迫っていた。
「ぐがあああっ!」
咄嗟に腕を犠牲にする判断は正解だった。いや、それよりも前、初撃の段階で雷閃を突撃槍の男に当てていなければ加速度と初速が足りてシールドを貫かれていただろう。なんとか反応する時間を確保でき、心臓と引き換えに腕の一本で済む。抉り取るような刃の連鎖は肘から先を削り取り、床に落ちた。だが、未だ攻撃の連鎖は続こうとしていた。
先程弾いた槍の男が、空中で体制を立て直し着地した瞬間にこちらに向かって駆けてくる。
(こいつらの連携、留まる事を知らん!このまま押されている展開ではいずれ首を切られる、一旦体勢を立て直すぞ!)
残った方の指を弾く。瞬間、眼前の男たちは外へ転移される。無論、王としてこのまま引き下がる訳にはいかず、即座に自身も転移する。
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魔王との戦闘を行なっていた筈が、気がつけば外にいた。眼前には先ほどまでいた城。外は黄昏に染まり始めていた。
「どうなってる?」
ベンケイの声。振り上げた方天戟のおろしどころが見つからず困惑している。
「おそらく形態変化かそこらのイベント待ちだと考えられる、この間に一旦回復だ!シュバルツがSPを全部乗せして突撃したからスピリットポーションを飲ませてやれ、ガリアン!」
「ああ。」
シュバルツにスピリットポーションを飲ませながら、頭の中では魔王との戦闘を思い返していた。通常、攻撃魔法を使用する際には魔法構成時に少なくとも1秒以上の時間をおいて魔法陣が構成される筈だ。だが、あいつは魔法陣を展開する事なく魔術を使ってみせた。空を切る雷も、炎の壁も、シールドも。そしてあの転移魔法。
「助かるわァガリアンちゃん。にしてもあの野郎の雷、痛いったらないワよ。シールドも硬いし、こっちが先に壊れちゃいそ。」
あの姐さんが泣き言とは魔王の盾は余程硬かったのか。もし俺の蛇腹剣が当たってたら刃こぼれして俺は泣いてたかもしれない。
「姐さんがあの雷撃で仰け反ってたら俺らは壊滅してた、助かってるよ。」
「ありがと。そう言われたら、もうひと踏ん張りしたくなっちゃう♡」
姐さんは立ち上がる。向こうではベンケイがバヨネットと共に連携についての話をしているので合流する。
「回復したか。とりあえず俺たちのプランCは失敗だ。という事で次善策としてプランAの連携になるが。」
プランCとは先程のコンビネーション、相手の対応力を削り取る事で致命傷を与えるという連携だったが相手の対応力に上回られてしまった。そのため、長期戦も考慮できる基本陣形、プランAという事なのだろう。しかしそれには賛成できない。
「このまま続ければおそらく俺たちのうちの誰か、いや、最悪全員死ぬ。あのノータイムで発動する魔法に俺たちは対応しきれない。そもそも10秒かそこらで3つの魔法を使っていた相手だ、攻勢に回られた瞬間全員死ぬ事になる。」
「攻勢に回らせなきゃ良いんでしょ?」
姐さんは臆面もなく言う。しかしそれはデスペナに最も近くなると言う事だ。
「死ぬ気かよ姐さん。俺は反対だぜ。」
「俺も反対だな、お前らの力は十分見させてもらった。」
突如、空から声が聞こえた。奴だ。気がつけば声がした方向に反射的に蛇腹剣を振るっていた。
だが、先程のようにダメージを与えることは叶わず、弾かれる。
「先程の連携、見事だった。なので鎧の男…シュバルツだったか。連携の起点であるお前が手の届かんところに居るようにした。」
魔王は羽ばたくでもなく浮遊していた。有翼種が翼を用いて空を飛ぶ事はあれど、今の魔王のように翼も持たず空に浮いている現象については見たことが無い。
「そうね、文字通りお手上げって感じ。」
姐さんは引き際を理解していた。俺もこのまま続けていたとしても奴の対応力を上回る事は出来ないと感じた。武器を床に置き、降参のポーズを取る。
「俺も姐さんに賛成だ、これ以上やるメリットはない。」
「俺は魔王に良いところ見せられてないんだけどなあ、過半数決まってるならしょうがないか。」
「そうだな、シュバルツがああ言ってる以上、本当にどうにもならんって事だ。」
ベンケイとバヨネットも同じようにする。それを見て魔王は草原へ降り立った。
「ふん、引き際も弁えてるな。良いチームじゃねえか。」
心なしか満足そうだ。腕試しはこれで良かったのだろうか。
「死にたくは無いからな。それに、降参した相手に対して積極的に追い討ちを仕掛けるような卑劣なタイプとは思えなかった。」
バヨネットの相手を立てるムーブ。こう言った話し合いなどをそつなくこなすのがあいつの強みだ。
「ははは!そう褒めなくても褒美は取らせる。お前らは俺の腕を飛ばし、力を示したんだからな。」
そう言って腕を見てみるが、腕は新しく生えたのか、それともくっつけ直したのか存在していた。遠目で見ても欠損した後が残ってない事を見ると、やはりこの男の底が知れないと思った。
そのあと、魔王は俺たちの話が聞きたいと言った。俺たちについて、俺たちが討伐した魔王グリッサンドについて、この世界について。順を追って話していく。
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改めて全員が自己紹介をする流れになった。先程の戦闘で聞きたいことも増えたので悪く無い提案だと思えた。
「俺たちの名前はリーダーがもう言ったよな。ならもうちょっと詳しい自己紹介でも加えるか。
私はガリアンと申します。武器は蛇腹剣、自作の品です。固有魔法はウェポンメイカー、好みの形状の武器を生成できます。」
「本当か!」
つい昂ってしまった。落ち着こうとする。異なる世界なのだから当たり前だが、こうもいきなり知らない魔法や武器が出てくるとどうにも興奮してしまう。
「まさかあの剣の構造も自分で考えたってのかよ。」
「いえ、伸びる剣という原型自体は私が考えたものではありません。作成にあたってのギミックは自作ですが。」
そう言ってガリアンは背負っている物を降ろす。蛇腹剣と、それに接続された背中のバックパック。マントの中に隠れていたが、剣というにはあまりにも機工じみていた。背中に鉄のロープを何十メートル分も仕込み、巻き取れる形で剣に接続し剣先を伸ばしている仕組みのようだった。重量の点、メンテナンスの難しさなどから考えるに実用性などほとほと無いような仕組みだったが、ガリアンのこだわりを存分に感じ取れる良い武器だ。
「良い物を見させてもらった。」
「こちらは時間をかけて調整した分、思い入れがありますので、そう言っていただけて何よりです。」
ガリアンが言うには一部の試作品は構造を忘れないようにするために試作機として保存してあるらしい。いつかそれを見せてもらう約束をし、2人目、シュバルツに向き直る。
「さてと、シュバルツだったな。お前も良い働きをしていた。」
「お褒めに預かり光栄の至りにございます。」
「固くならなくてもよい。俺とお前達は対等で行こう。というか俺も大概威厳のない喋り方が根付いているからな、気にするな。」
「あら、それは有難いわねェ。ガリアンたら戦ってた時のテンションのまま敬語を使っていなかったから不敬なんじゃないかって不安になってたの。」
急に口調が変わり面食らった。オンとオフを切り替えられる人間のようだ。
「で、自己紹介。私はシュバルツ、武器は突撃槍。固有魔法は身体能力の強化、ビルドアッパー。ポピュラーすぎて地味かしらネ。」
「普遍である事が不利の要因にはなるまい。それよりも俺の雷閃を素で受け切ったことを賞賛しなきゃいけねえ。雷とは肉体に対してのダメージもさることながら内部や精神に対するダメージが絶大な属性だ。一撃で意識を焼き切ろうと放った一撃がただの精神力のみで耐え切られた事に驚いたぜ。」
「死線潜り抜けてきた分、意識を保つ事には慣れてるのよ。でもあんなに発生の早い魔法は初めて、さすがにちょっとヒヤッとしたワ。」
けらけらと笑ってはいるが、さらりと意識外の雷撃を耐え切ったという宣言。身構えていてもただの人間であれば失神しているであろう魔法に対して、彼はさらりと人間離れした行為をやってのけていた。
「お前が今回の一番の功労者だ、喜べよ。」
3人目の方を向く。
「槍の男…ベンケイだったか。」
「良いところなしで面目ないですが…ベンケイと申します。武器はまあ色々、固有魔法はその色々な武器をノータイムで持ち替えられるウェポンチェンジャーです。」
そう言って手に持った槍を棍、弓、薙刀、剣と持ち替えていく。
「ふむ、今回のお前が活躍できなかったのは仕方ないだろうよ。並の相手ならその膂力で首を狙われたら防げねえ。攻撃のタイミングもベストだった。強いて言えば上空からの攻撃だったのが悪かったな。頭と胴、2つの急所を狙う作戦は良かったが空中で踏ん張りが効かない分咄嗟の防御壁でも何とかなっちまったって所が惜しかったな。」
「なるほど…次はうまくやります。」
「俺はお前らともう戦いたくねえよ。というか本気でやるならどう足掻いても殺すところまで行っちまう、お前らを殺すのが惜しい。」
「最大級の褒め言葉、むず痒くなりますね。」
横からの声。
「リーダーの…バヨネットか。お前は恐らく戦術の要だな?プランを予定通りに遂行させるために俺の行動に対応するのが今回の役割だったが、対応が早い上に最低限の行動だけで済ませて俺の観察をしてやがったな。」
「はい、ただし完璧には見定められませんでした。私の固有魔法はスキャニング。対象の能力を確認できる能力ですが…意図的に隠している力については見通せないので。」
「ククク、力を隠していることがわかるならそれでも便利じゃねえか。良いぜお前ら、やっぱり面白い奴らだ!」
内心の喜びを隠すことができなかった。この世界に降り立って初めての存在がここまで味のある連中だとは思っていなかった。この世界にいる間、こいつらと共に過ごす事も良いんじゃないかと思い立つ。
「お前らが討伐した魔王の事について聞く前に、フォーバロンズ、提案がある。お前ら、一ヶ月俺の護衛をしろ。」
楽しみだった休暇に、更にアクセントが加わろうとしていた。