転生ガリア軍   作:筒手

4 / 4
護れ国境線

征暦1935年 夏が始まろうとしている頃

 

海軍主導の実験部隊航空機工場にて

最初の新型要撃機試作品が完成した。

形状は打って変わってエンテ翼と圧縮ラグナイトターボ機関というまた新しい形状、新しい機関のテストも兼ねているからである。

 

「離陸許可が出た!離陸命令信号旗!」

 

試作機が徐々に加速して離陸していくがしかし、プロペラが地面に接触。

前後のバランスを崩しそのまま爆発。

今回もまたリエラがテストパイロットとしてやっている。

多少負傷しながらも生還してきたことにぬか喜びし、新型要撃機の課題がまた一つ増えた。

 

「リエラの報告によると舵が重いそうだ」

「離陸に足り得る速度と揚力が足りない、何か根本的に変更すべきところがあるかと」

「ふーむ……これ以上ラグナイト機関をより凄い物にしても重量と排熱に対しての冷却が追いつかないのもある…」

 

各部下が話し合っているのもあるが、ラム技師長は残骸と次の完成した試作機をしっかり見物確認と調査をしている。

 

「……」

「何か分かったのですか技師長!」

 

彼に思う事がある。

陸上車両ならラジエーターは必要、プロペラ機も同様だ。

ではジェットエンジン方式としたら最低限の冷却で充分なのではと思っている。

 

「一か八かやってみる必要がある。付いて来い」

 

それから3機目の試作機はこれまでの常識とは大きく異なる機体となった。

 

「プロペラが無いのですが…」

「機体内部にある」

「ですが…それで飛ぶんでしょうか?」

「機体内部に何百枚も入っている」

「何百も!?」

「あとはしっかり加速してくれるかどうかだけだ」

 

開発陣も眺める中テストパイロットはリエラが休憩中だった為、セルベリアが担当することになっている。

最低限の訓練もさせたのでまあ何とかなるだろう…取り敢えず素人でも扱える機体にしなければならなかった。

 

「離陸信号旗が振られました!」

「よし、タービンに異音は無い!そのまま回転数を上げていけ」

 

ジェットエンジンの騒音で彼女には聞こえないが、それに応えるかのように試作機3号は滑走路を進む

排熱ラジエーターは最小限にして機体を大きく軽量化したのがあって更に加速していき、プロペラ径が無いので地面にも接触せずそのまま離陸。

 

「着陸脚を畳めるんだ…よしいいぞ!予想通りの上昇速度だ!」

 

上昇角度60゜速度535km/h

陸上時はまだ642km/hもあったが…高度5000mまでたった3秒で上昇している。

セルベリアの乗っている試作機からの通信報告はまだ続く

 

<高度8000、速度421。舵が重い>

「実験中止。失速速度だ!直ちに着陸態勢に移れ!」

 

更に数時間経って3機目の試作機は無傷のまま帰還した。

そこにさらなる改良を加え、吸引口に過給器の追加と大気中にあるラグナイト粒子を圧縮し増幅燃料として投入。

タービンの回転が安定するまでの加速力不足をファウゼン攻略時に使用した陸軍の大型ロケット弾と、海軍航空隊が使ったヴァルキュリア人限定であったもののラグナイト感知式誘導ミサイルが、実用段階に入っていたところに着目し新たに航空機用の緊急加速装置LATOを搭載。

 

そして有線方式の誘導ミサイル試作品を搭載、完全武装状態にしてカールにあの爆撃機を一撃で粉砕出来る火砲はあるかと聞けば

50ミリ砲があれば充分ですとの返答を貰い、陸軍で広まっている40ミリ高射機関砲と

海軍の75ミリ高射砲のいいところ取りをしようとしたが、流石に空の怪物を撃ち落とすまでには間に合わないとされ40ミリ機関砲で妥協した。

箱型弾倉だったところをベルト給弾に変更し、装弾数片舷20発…合計40発の新鋭機最終試験機が完成した。

 

担当はまたリエラである。ラム技師長は申し訳無さもある上、クルトアーヴィングの監視下で飛行試験が行われる。

それと同時にセルベリアにはもう一つ高高度迎撃機試作品のテストパイロットとして乗ってくれた。

 

「あれは何です?」

「東の国で呼ばれているサクラという要撃機だ」

「へぇ…そんな機体があったんですか」

「ああ、それを今回の作戦で使用する任務特化機となりえるものだ」

 

試作ロケット推進迎撃機サクラ、元は有人誘導爆弾であるが今時空によって成層圏未満で活動出来る短距離迎撃機として生まれ変わった。

エーデルワイス号の技術を応用した機首には75ミリ長砲身自動装填式のを搭載、装弾数はたったの8発

砲弾は近接信管の榴弾だ。

こちらはある世界で現型機が存在しているので問題なく飛行した。

あとは海軍が開発中の戦艦に既存の砲に搭載できる新型対空砲弾、熱気化榴散弾を量産体制に向けてボルグ宰相に安全性と環境配慮の説明をした上で採用へと持ち込む。

 

「技師長、もしあの新型推進器を搭載した要撃機が成功したら次の計画を用意しおります」

「遂に来たか…対外国総力戦計画」

 

その設計図には新型推進器を二つ搭載した重戦闘機でもあり艦載機でもある。

制空戦闘も行いながら爆撃対象の処理も行う近接航空支援や、最重要破壊対象へと集中爆撃攻撃による爆装特化も可能なマルチロール機の計画であった。

更に地上車両もついに更新期がやって来て、原作なら36年型戦車が生産ラインに本格的に入り込んだ。

そこでラム技師長は陸も進化を続けると悟り、高価だが大抵の任務を遂行出来る主力戦車の開発に踏み切ったのだ。

 

「複合装甲の一体化、エンジン、トランスミッションの同室空間収納…新型砲は125ミリでいいな?」

「それだと砲昇降速度が」

「エーデルワイス号の砲安定装置を量産体制に入れながら各車両全てに合わせて搭載するんだ」

 

そんな話をしている内に最終試験機は轟音を上げながら蒼い空に向かって上昇している。

 

<高度12000!速度512!舵が重く機首が下がらない!!>

「何とか水平飛行に戻せ」

 

その一言の後に速度が落ちながらも機首はゆっくりと下がり水平飛行が始まる。

報告通信は高度12600で限界高度を迎えて、速度は702km/hで落ち着いた。

空気密度が少なく舵は重いがこれを量産体制に入れば帝国の戦略爆撃機が飛んできても問題はないだろうと思った。

 

しかし数日後…帝国軍の爆撃隊と陸軍が更に押し上げてきて、海軍航空工場が占領されてしまった。

退避出来たのは数百の迎撃機と6機完成した新鋭要撃機だった。

 

「このままでは残りの街は火の海となるだろう…どうにか製造場所を確保しなければ……ん?」

 

ラム技師長の部下がひとつ閃く

早速彼は余った旧式の艦載用爆撃機を大量に確保してラム技師長に完成したものを見せた。

 

「これで飛行高度が足りずとも、また射程不足にも悩まされにくくなります!」

「おお!ここで斜銃という考えに至るかッ!よくやった!直ちに作業に取りかかれ!」

 

旧式艦載用爆撃機を左右からニコイチに接続し、後部防護機銃を取り払ってそこに40ミリ機関砲を左右仰角調整可能な状態で搭載。

砲手は相変わらず乗っており急造複座迎撃機として完成した。

こちらも飛行試験も粗方成功し直ぐに実戦配備となる。

 

さて新型の要撃機と迎撃機は海軍艦艇ドッグ横の整備工場でゆっくりと増産が行われている。

幸いにして材料は全て退避出来たのがとても大きかった事で、一気に数十機は無理だが予定には間に合う

 

さらに日数が過ぎてついに振り出しに戻った。

つまりまたランドグリーズ郊外戦である。

 

帝国は徹底的に潰そうと数を揃えて飛行船や戦略爆撃機を投入。

南方では連邦軍との小競り合いで飛行船が消耗しているのかこちらに回った帝国軍の爆撃飛行船は少なく、全て高射機関砲と高射砲で迎撃可能だった。

 

「むっ…来よったな」

「ダモン元帥、いよいよ空の雛鳥達が蒼き空の怪物を食い荒らすでしょう」

「完成したのか、アレを撃ち落とす新型機が」

「はて何のことか?砲声のせいで質問が聞こえなかったのでね」

 

ダモンは先の戦闘で階級が上がっており、全ての陸軍を統括すること…割と雑務が多くなった。

弾の無駄だと部下に高射砲部隊を黙らせろと命令を下した。

 

それと同時刻、ランドグリーズ城下町内に新設された飛行場から新鋭機三種が離陸しようとしている。

 

一つは発進カタパルトから

一つは双胴の航空機

一つは新式推進器による途轍もない轟音と衝撃波で後方にあるもの全てを吹き飛ばさん限りの勢いを上げている。

 

そして発進信号旗が振り下げられた。

まずは双胴の迎撃機が離陸し、カタパルトからはロケット推進迎撃機が次々と放たれた。

 

<新鋭機、ブルーガリア隊は北部から攻める帝国軍戦略爆撃機を一機たりとも残さず殲滅せよ!迎撃機、東部から侵入する戦略爆撃機を破壊し尽くせ!>

「了解、ブルーガリア隊タービン回転数を上げろ!緊急加速装置作動っ!」

 

双胴迎撃機36機、ロケット推進迎撃機14機、新鋭戦闘要撃機9機による帝国軍戦略爆撃機殲滅戦が始動した。

北部東部南部共に20機の合計60機がガリア公国上空9000mを飛んでいた。

 

…

……帝国軍戦略爆撃隊南部

…

 

「飛行船の時代は終わりだな、全くタイニー閣下の言う通りだ」

「世界初の高高度爆撃機は俺達帝国の特権だ!弱小ガリアや弱い者共の集まりである連邦もコイツで叩きのめそう!」

 

帝国兵は意気揚々とガリア軍からの攻撃が届かない高度を紅茶を呑みながら飛行していた。

機内の空調設備と気圧調整等もあってかなり快適である。

 

「おいおい見ろよ、高度5000メートルにガリア軍の航空機が頑張って高度を上げてウチ等を落とそうとしてるぞ」

「はっ?よく見れば旧式の海軍艦載爆撃機を二つ繋げただけじゃねえか!三下もいいところだ」

「おや?発砲炎が見えた。バカめ届く訳がないだッ!」

 

最後の言葉を言いかけた時に40ミリ機関砲弾が直撃し更に続け様に弾が命中と4発に1発だけ混ぜられた榴弾で、戦略爆撃機は前後真っ二つに割れて墜落していく

 

<クソッ!三番機が落とされた!>

<弾幕を張れ!近付かせるな!>

<駄目だ!こちらの射程が足りなくて当たってない!うわぁぁぁっ!>

<八番機!?クソッォ!隊長機もやられた!敵の弾幕が来たぞ!>

 

この瞬間にて三十分も経たずに南方戦略爆撃機隊は殲滅されていた。

先に離陸していたのもあってこの被撃墜報告は他の方面軍にも伝えられた。

 

…東部爆撃隊

 

「高度6000から高射機関砲で攻撃してきた新型迎撃機だとよ」

「けっ…だがガリア軍も必死でもうそれくらいしか出せない虫の息だ」

「そうに違いない…ん?空が何か光ったぞ!?」

「バカを言うな、帝国軍の新型戦闘機でさえまだ高度6000メートルが限界なんだぞ、俺達最新鋭戦略爆撃機以外あんな上空を飛べる機体なんて存在しない!」

「でも確かに上に何かいる!銀色の航空機が!」

 

未塗装錆止めだけ塗られたロケット推進迎撃機が段々と彼等の頭上を押さえてきて遂には太陽を上にして急速降下してきた。

同時刻北部でも新型戦闘要撃機による急降下一撃離脱戦法にて戦略爆撃機の殲滅を開始している。

 

「何だとッ!?ガリア軍の新型機だッ!?」

<右舷弾幕を展開しろ!>

<爆弾倉被弾!誘爆すうわぁっ!!>

「左舷何やっている!弾幕が薄いぞ!」

<駄目ですッ!奴等の速度が速すぎて捕捉出来ません!>

「取り敢えず撃て!撃ちまくれ!」

 

次々と戦略爆撃機が撃ち落とされる中、北部戦略爆撃隊はというと

…

……ガリア軍ブルーガリア隊+帝国軍戦略爆撃隊

…

 

「へっ!実験部隊御下がりの誘導ロケット弾を喰らえ!」

 

エンテ翼に吊り下がっていた有線方式誘導ロケット弾が発射された。

 

「何だあれは!急に曲がったりする!迎撃が困難だ!」

「うわぁぁぁ!こっちに当たるぞぉっ!」

 

着弾とその同時に巨大な爆発が起きて、たった一発で戦略爆撃機が同時に8機くらい粉々となって落下していく

 

「うひょぉー!これが小型圧縮ラグナイト機関の爆発威力か!」

 

<こちら管制塔。全機帰還せずこのまま連邦軍の爆撃隊を迎撃に移れ!ロケット推進迎撃機隊は燃料が心許ないだろう、直ちに帰還せよ!>

 

「了解っす、隊長。次の獲物がきやしたぜ!」

<ああ、高度優位で敵を殲滅する!行くぞブルーガリア隊前進!>

 

こうして新たにガリア軍に空軍という枠組みが成されて、独立行動権が与えられた。

それからにしてノーザンクロス作戦に使われる連邦海軍の艦艇群を全て鹵獲したガリア海軍の功績は非常に大きく、それら特殊艦艇の圧縮ラグナイト機関からヴァルキュリア人を救出保護下に入れた。

 

そしてガリア軍が航空主導権を握りまたしてもファウゼン攻略に航空隊が活躍、此処に来て二度も亡くなった将軍の命は今回は橋の爆破崩落ではなく

ラム技師長の部下が作り上げた新鋭マルチロール機によって徹底的に爆撃されたのである。

 

ガリア公国の航空優勢圏は次第に広がりかつ安定したものとなりつつあった。

そしてなんとそれに追い風が吹くかのように、帝国軍のイェーガー将軍がマクシミリアンを見限って離反しガリア公国に亡命した。

それからにして帝国軍は空の目から逃れるべく隠れながら進むしかない恐怖に掛かれられ、旧式爆撃機のサイレンからによる恐怖演出も行われガリア方面を抑えていた帝国軍は次々と後退し…逆にガリア公国が帝国領を進出していた。

更に言えば連邦軍も同様に空の脅威に必死に抗おうとするも無残な結果となる。

 

海上での戦いもガリア公国海軍の潜水艦に次々と沈められていた。

でもヨーロッパ大戦はまだ終わりを迎えずガリア公国は遂に連邦や帝国を凌ぐ大国に成り上がっていた。

 

 

時に征暦1935年、冬を迎えた。

原作で亡くなっている者達もある程度は生き残っている。

特にイサラ生存はかなり大きくある。

実験部隊以下研究開発部の人員の多くが有望なヴァルキュリア人やダルクス人で構成されていて、ラム技師長に付いてくる多くの弟子達もそれらであった。

ガリア人は意外にも少なかったのだ。

 

だがそれでも飛び抜けた発明をラム技師長に提示してくれた事が切っ掛けで飛行船時代に再び光が灯る。

 

「ほう…ラグナイト共鳴衝撃波を利用した浮遊機関ですか」

「どうでしょう技師長、更に指向性を持たせれば推進力にもなる筈です」

「よし、実用の暁には補助推進力としての採用だろう…もう一つ発表があるよな?」

 

それとは別で圧縮ラグナイト爆縮発電機といったさらなる新機関の開発にも着手している。

これもまた実験継続として許可を出した。

 

話しは変わってガリア公国、既に国土は全て取り返し帝国や連邦を更に押し返している。

しかし正規軍が新たに定めた定義として、義勇軍は国土防衛を主として

侵攻時には正規軍のみとする。

国土防衛の功績は正規軍ではなく義勇軍が持つものとなる。

 

 

…

……ガリア公国国境線外縁部・帝国方面軍

…

 

「よし義勇軍は直ちに後退せよ!ここからは俺達の仕事だ」

「しかし大佐、正規軍だけではとても兵力が少なすぎます!」

「上の命令だ。それに技術研究開発実験部隊に策ありとの通達もあるらしい」

「またあんな奴等ですか」

「あんなとは何だ。俺達の武器防具の全ては彼等が担保してくれてるのだぞ!義勇軍の武器防具もそうだ。彼等無しに弾薬も食料届かないんだぞ」

「何であんな部隊が全軍の兵站を握ってるんですかねぇ…」

 

実際実験部隊の多くは戦闘よりも物資が届きにくいところに届けさせる為の精鋭輜重部隊としの側面が濃く出ている。

戦闘は二の次で、大体実験と評して戦闘を行なっているのは僅か三名であった。

尤も孤立した補給待ちの部隊にはクルトアーヴィング主導の戦闘輜重兵隊が請け負っている。

実験部隊は基本的に裏方仕事であるものの、時には主力として前線に出ることもある。

 

 

その大半が空軍だ。

 

 

…

……ガリア公国中央部・航空基地

…

 

ナジアル砂漠の中央で巨大な航空基地と工場に飛行場がある。

大量に並ぶ格納庫もあって帝国方面軍や連邦方面軍の陸軍を支援すべく全ての方面空軍がここに集結し、燃料弾薬補給も行なっている。

そして護衛は殆どやることがなくなった義勇軍第7小隊とランシール士官学校の研修生が主に警備巡回している。

ランシール士官学校生に関しては対空砲の取り扱い訓練もさせている。

 

「ライバード隊全機機、離陸許可を出す。格納庫より出撃せよ」

 

管制塔内で司令官がそう言い放ち、横に居たカールとラム技師長はゆったりとコーヒーを呑んでいた。

 

「ここに勤務して2日だろう?どうだね兵舎の方は」

「帝国に居た頃よりずっとマシですねぇ、あの中に入ると夏の残暑は涼しくて今は暖かい」

「そりゃあ…まだ他の施設や民間には出回っていない冷暖房空調設備が設置されているからな、戦争が終われば民間革命となり得る物の開発が一気に注げれるぞぉい」

「って事はラムさん、貴方の戦いは?」

「ああ、本当の戦いは戦争が終わった後だよ。ガリア公国が世界中の生活の常識を変える。そうであるべきだ」

「それで…飛行場の第二線に何か巨大な物があるんですが?帝国の陸上艦でしょうか?」

 

カールが立ち上がって管制塔の窓に向かって指を指した。

それについてラム技師長は手招いて二人で外に出た。

 

「やっぱ出ると寒いなぁ〜」

「ああ、まだ雪は降っていないと言うのにな…帝国領の冬はもう雪が積もって氷が出来ているんだろ?」

「そうですね…帝都付近の海は50メートルくらいの厚い氷でしょうね」

 

そんな雑談を交わしながら実験部隊の大型物体に近付いた二人、ラム技師長の部下は彼等に軽く挨拶を交わした後その大型物体の中に入った。

 

「何だか凄そうなものですね」

「ああ、戦争の決戦兵器はヴァルキュリア人と言う帝国に終止符を打つ為の全金属製の飛行艦だよ」

「飛行…艦」

「搭載機関はまだ実験中のを試験搭載する形で行く予定だ。今は外殻が完成したに過ぎない、艦内の明かりは航空基地から延ばしてきたケーブルからの電力さ」

「本当に飛んだら世界が変わりそうですね…」

「まだ夢物語の段階だ。全く、いつか部下に追い抜かされそうだ。もう彼等に任せてもいいかもしれん」

 

未完成の飛行艦艦内を歩き続けて、食堂区画、機関室や酸素空調区画に製造工房区画。

作戦会議室や船員生活区画…その他色々と見に回っていると艦内放送が流れた。

 

<艦内のラム技師長、及びカールは直ちに戦闘指揮室に出頭せよ!>

「聞いたか?行くぞ」

「それ何処にあったの!?」

「かなり後ろの方にあったエレベーターだ」

「さっき乗った箱みたいなアレだったのが!?」

 

急いで二人は戦闘指揮室へと移動し、その区画に入ると製造部門の作業員達が集まっていた。

 

「技師長、上空に帝国軍の爆撃隊が」

「むっ…今は戦闘機隊は全部出払っている。それに対空砲も40ミリしかない、あの高度では届かん」

「常時滞在のロケット迎撃機が飛んでいますが、とても間に合いません」

「恐らく標的はコイツだろうな、よし今実験を行う!」

 

ラム技師長がそう叫ぶと作業員長が待ってと止める

 

「主機関も副動力もまだ搭載されてません!46センチ連装砲の砲弾もまだ製造中でここに送られてませんよ!」

「コイツの主砲には実験段階中の半エネルギー偏向機構があった筈だ。直ちに起動し照準を合わせろ」

「しかし電力が足りません!」

 

そう言った後に観測手が「到着予測まであと一分!」と戦闘指揮室に響き渡る。

 

「技師長命令だ。艦内エネルギーを主砲に送れ、艦内設備は全て非常電源のみで動かせ!」

「り…了解!充填時間40秒!」

「よし充分だ!カール、砲手席に着け!ここに乗っている兵士はお前しか居ないんだ!頼んだぞ!」

「えっ、あっはい」

 

充填中に砲仰角を敵爆撃機隊に合わせた。

 

…

……帝国軍戦略爆撃機隊 視点

…

 

「目的の飛行場まであと一分!」

「機長、飛行場に巨大な物体が確認されています」

「ガリア公国も陸上戦艦を作ろうとしているのか、まだ動く様子もない…全機目的を変更だ!飛行場よりあのデカブツを優先爆撃しろ!」

 

高度10000メートルを飛行する戦略爆撃機隊が悠々と飛行している。

 

「敵の迎撃機を発見!」

「よし、新型防護砲を撃て!」

 

機首に近接信管付きの85ミリ榴弾を放つ短砲身高射砲が設置されており、そこから放たれた砲弾がロケット推進迎撃機付近で大爆発を起こした。

 

<五番機、敵を4機撃墜!>

「中々だな、全機攻撃!」

 

5秒も掛からずに30機は居たはずの迎撃機が全て撃墜された。

何機かは交戦距離まで接近はしたが以前より濃い弾幕に阻まれ尚且つまだ上昇中の速度低下状態も相まって一方的に落ちていった。

 

「よーしあとはあの大型だ」

「ん?砲塔が動いてます機長!」

「なーに、たかが二門の主砲に何が出来る!」

 

高を括って鼻で笑う爆撃機隊司令官が後ろに居た。

そろそろ爆撃準備に入って爆弾倉が開かれる…そこにあったのは

 

…

……地上、実験艦

…

 

「アレは!?圧縮ラグナイト機関!」

「戦略大量破壊兵器として使い始めたか、アレが落ちる前に爆破しなければならない。カールよその一撃は世界の運命を決める一撃だ。しっかり決めろ」

「主砲エネルギー充填完了、引き続き主砲コンデンサーに予備エネルギー充填開始します!」

「ラム!」

 

カールが確認の為にラム技師長を見るが深く頷くだけだったが、それだけで充分であった。

 

「カール、撃て」

「発射ッ!」

 

主砲から放たれる蒼白い光線、二本の螺旋状に光が引き伸ばされた光線弾は吸い込まれるように一つの太い光線へと変化し爆撃隊に迫った。

 

そして数秒足らずに爆撃隊に命中し圧縮ラグナイト機関の大爆発が蒼い空で輝いたのだった。

 

「主砲高熱!冷却急げ!」

「排熱が間に合わない!放熱板緊急展開!」

「駄目だ!新しい放熱板を取り付けろ!現在の放熱板は射出!冷えた放熱板を装填しろ!」

 

作業員達が慌ただしく動き回って外作業員も新しい放熱板を取り付けていた。

 

「まだ問題は山積みだが…どうだ?新型砲、陽電子ビーム砲は」

「なんて凄まじい威力と熱量なんだ…しかし充填に凄い時間が掛かるんですね」

「うむ、主機関さえ完成すればその問題は解決する。それに戦争が終われば本艦の役目は世界中に電力を提供する事になる。」

「それは壮大な計画みたいそうですね…」

「取り敢えずお疲れ様だカール。家に帰ってセルベリアと久し振りに行ってこい」

 

ナジアル大爆発事件はこれにて閉幕

ガリア公国軍は新型兵器完成までに空軍主体の進撃を次々と行い、陸軍は最新鋭の35年型ラグナイトガスタービン主力戦車を駆って縦横無尽に戦場を食い荒らしていた。

 

…

連邦軍

 

「クソッ!弾が弾かれる!なんだあの加速力!?」

「まずい!回り込まれる!あの速度で物凄い命中精度だ!?いかん、ガリア軍の対戦車兵が接近してくる!」

 

連邦軍は数で劣るガリア公国新生正規軍に手を焼いており、対帝国戦線の戦力が徐々に減っていた。

一方で帝国も手招いて奥地までガリア公国軍を誘い込んで冬の嵐で仕留めようとしたが、その自然災害の戦略を圧倒的進軍速度と強力な兵站網によって強引に突破され帝都までに迫ろうとしていた。

その時帝都付近の海にはガリア海軍航空隊が今かと爆撃隊が爆弾の搭載作業をしていた。

 

…

……ガリア公国海軍、航空母艦

…

 

「いよいよだな、敵の軍需施設のみを精密爆撃するだけだ」

「ああ、アレを使わない事を願うばかりだ」

 

二人がその方向を見つめると…開発部から不良品として押し付けられてきた圧縮ラグナイト機関であった。

原作だと中に適性あるヴァルキュリア人を押し込んで制御核として利用した新型動力機関である。

しかし今世では完全機械化に成功しており、その不良品というより爆弾として再設計された圧縮ラグナイト爆弾である。

現実の物体で考えるならば戦術核兵器と同類と言える。

 

「そうだな…」

<爆撃隊は直ちに甲板に出ろ!発艦命令が出ている!>

「頑張れよ相棒!」

「そっちこそ帝国軍の122ミリ高射砲に落とされるんじゃないぞ!」

「帝都はたしか152ミリ高射砲があった筈だ。そいつに気を付ければ後は問題ない!」

 

世界を揺るがす最終決戦がもう直ぐ始まろうとしている。

しかし帝国東部で大きな動きが起きて、第二次ヨーロッパ大戦は45年まで続くようになったのは誰一人たりとも思わなかったのである。

 

 

後の征暦1936年から45年まで続いた。

第一次太平洋大戦の幕開けであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。