【ラブライブ!×イデオン】サンライズ50周年記念『伝説ラブライブ!』~ソロシップと呼ばれたロケバスと因果の地平~ 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
夜空を焼き尽くす真っ赤な炎と、街中に響き渡る無数のサイレンの叫び。
にこ先輩が解き放った自己増殖型プログラムと名跡の呪いは、もはや一連のスクールアイドル騒動という枠組みを遥かに超え、この国のエンターテインメント業界そのものを根底から瓦解させる致命的な巨大津波へと化していた。
「見てみなさいよ、穂乃果……! これが、あたしたちを面汚しだの犯罪者だのと言って踏みにじった社会の、哀れな末路よ!!」
崩落した高架下の暗闇。
にこ先輩は血と煤に汚れた手で小型端末を掲げ、歪んだ狂気の笑みを浮かべながら絶叫した。
画面に次々と躍り出るのは、日本の主要メディアや報道機関が蜂の巣をつついたような大パニックに陥っている様だった。
『緊急報道:大手芸能プロダクションおよびTV局のサーバーが一斉ダウン』
『伝統芸能一門と裏社会の莫大な裏取引データ、全ネットへ無差別流出』
『スポンサー企業の相次ぐ撤退と株価暴落、スクールアイドル事業は全面停止・永久廃止へ』
私たちが名跡を追われ、泥を啜り、身と尊厳を切り売りして逃げ回っていた間に、大人たちが裏でむさぼっていた不快な利権と汚職。
そのすべてが『2代目 μ's』の名において全世界へ完全暴露されたのだ。
テレビ画面の向こうでは、かつて私たちを不法者と糾弾し、裏で買い叩こうとした有名プロデューサーや幹部たちが、無数の報道陣のフラッシュの中で青ざめ、土下座を繰り返していた。
だが、一度燃え上がった群衆の怒りと野次馬の狂乱は、そんなパフォーマンスでは到底収まらない。
「嫌……嫌ぁぁぁっ! 街が……街が燃えてるよぉっ!」
膝を折り、両耳を塞いでがたがたと震えているのは、精神の糸が完全に切れかけた真姫ちゃんだった。
街頭の大型ビジョンには、暴徒化したファンやアンチ、そして社会への不満を爆発させた群衆が、主要なライブハウスやプロダクションのビルを取り囲み、火炎瓶を投げつけて破壊し尽くす地獄絵図が映し出されていた。
スクールアイドルという、かつて少女たちが眩しい夢を抱いた文化。
それは今や、誰かを呪い、傷つけ、引きずり降ろすための最悪の兵器へと成り果てていた。
「どうして……どうしてこんなことになっちゃったの……?」
私は涙で歪む視界の中で、虚空を見つめて呟いた。
「私たちは……ただ歌いたかっただけなのに。一番になりたくて……みんなで輝きたかっただけなのに……っ!」
「綺麗事を言わないで!!」
にこ先輩が私の胸元を力任せに掴み上げ、血走った目を至近距離で突きたててきた。
その顔には、かつて宇宙一のアイドルを目指していた頃の面影は一切ない。
ただ、自分を拒絶した世界すべてを道連れにして死のうとする、哀しき悪魔の表情だった。
「最初から輝きなんて、こんな泥と血の底にしか存在しなかったのよ! あたしたちを愛さなかった世界が悪いんじゃない! だったら、あたしたちの手で全部終わらせてあげるのが、本当の愛でしょうが!!」
にこ先輩の激しい怒号と、破滅的な色気。
私はもう、その狂気から逃げ出すことすらできなかった。
その時だった。
崩れかけた高架下の路上に、数台の黒塗りの高級外車と、警察の大型特殊車両が滑り込んできた。
ドアが一斉に開き、降り立ってきたのは――もはや制服の品格すら失い、絶望と憎悪に顔を歪めた絢瀬絵里と園田海未だった。
背後の車両からは、彼女たちを護衛していたはずのパトロンの男たちや裏社会の回収屋たちが、手に手に鉄パイプや凶器を握りしめて降りてくる。
「矢澤にこ……高坂穂乃果……っ!」
絵里先輩のポニーテールは乱れ、美しい顔立ちには血と煤の痕が痛々しく残っていた。
彼女が大切に守ろうとした伝統、生徒会としての誇り、本家としての権威……そのすべては、にこ先輩の解き放った『名跡の刃』によって完璧に惨殺されたのだ。
「あなたたちのせいで……私たちの誇りも、スクールアイドルという文化のすべてが……破壊されたわ……っ!」
「誇り? 伝統? 恥知らずな偽善者が良く言うわね!」
にこ先輩が前へ踏み出し、へたり込む私たちを庇うように立ち塞がった。
「あんたたちが固執したその汚い看板のせいで、花陽も、凛も、真姫も……あたしたち全員の人生が狂ったのよ! 壊れたんじゃないわ、あたしたちが壊してやったのよ!!」
「黙りなさい……ッ!!」
海未先輩が正気を失った叫びを上げ、崩れた瓦礫の中から拾い上げた鋭い鉄パイプを強く握りしめた。
もはや、そこに「正しい指導者」の姿はない。
ただ、すべてを奪われた人間の、生々しい殺意だけがそこにあった。
「言葉など、最初から無用でした……。あなたたちをこの手で殺し……私たちもここで果てる! それが、崩壊した一門の最後の責任です!!」
「ハハハッ! 望むところよ、正義の味方さん!!」
にこ先輩もまた、足元に転がっていた重い金属支柱を拾い上げ、狂喜の笑みを浮かべて構えた。
周囲の街が炎に包まれ、芸能界という巨大な幻影が崩れ去っていく中で。
すべてを失った少女たちは、お互いを刺し違えて完全な「無」へと還るため、決戦の地――あの野外ステージ(第20話・第21話)へと吸い寄せられるように走り出したのだった――!
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