【ラブライブ!×伝説巨神イデオン】伝説ラブライブ! イデオン ~サンライズ50周年記念・因果の地平へ~ 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
山道の冷たい雨がようやく上がる頃、私たちは本家側の執拗な追撃車両をなんとか振り切り、地方の小さな港町にある古びた雑居ビルへと身を潜めていた。
暗く、独特の潮風とカビの臭いが漂う地下の廃ホール。
そこが、私たちの新たな隠れ家だった。
「はぁ……っ、はぁ……っ、なんとか、撒けた……みたいね……」
ロケバスから重い機材を運び込み、コンクリートの床へとへたり込む真姫ちゃんと凛ちゃん。
連日の過酷な逃避行と終わりのない警戒心で、全員の精神と肉体はすでに限界を超えて悲鳴を上げていた。
「みんな、スマホを見て……! ネットのトレンド、今ぜんぶ私たちのことになってる……!」
隅っこで端末を握り締めていた凛ちゃんが、恐怖に引きつった声で呟いた。
震える手でスマートフォンの画面をスクロールする。そこに広がっていたのは、まさにネット社会という名の地獄絵図だった。
昨日、地方駅前で強行したゲリラ路上ライブの映像。
私たちが破門され、警察に追われながらも生肌を晒し、汗を飛び散らせて狂ったように歌い踊る姿。
そして、そのパフォーマンスの最中に発生した将棋倒しの混乱と、アスファルトに残された血みどろの現場。
その動画はTikTokやX(旧Twitter)で数百万回以上再生され、日本中に爆発的な勢いで拡散されていた。
『不法襲名グループ、警察から逃亡中に路上暴動を起こす』
『μ'sの名跡を汚す偽物たちの最悪の末路』
『2代目矢澤にこ、ヤバすぎるエロ動画風ライブで大炎上』
コメント欄には、数万件を超えるアンチからの痛烈な批判、罵詈雑言、そして殺意に満ちた中傷が滝のように殺到していた。
「全員今すぐ警察に突き出して逮捕しろ」
「アイドルを名乗るな、ただの性犯罪者集団だろ」
「こんな奴らにμ'sを名乗る資格なんて一片もない」
「ひっ……! 嫌……嫌あぁぁぁっ! 私たちの名前も、学校も、顔も、全部さらされてる……っ!」
真姫ちゃんが頭を両手で抱え、錯乱したように叫び声を上げた。
しかし、ネットの底なしの海に渦巻いていたのは、冷徹な批判や悪意だけではなかった。
「待て待て、この『にこ』って奴の色気と狂気、ヤバくないか?」
「本家のお上品な生ぬるいライブより、100倍刺さるんだが……」
「犯罪者だとしても最高にエロいし、逆に推せるわ」
「もっとこの歪んだパフォーマンスを生で見せろよ」
炎上の爆発と同時に、アンチの悪意を遥かに上回るスピードで膨れ上がっていたのは、過激で、倫理観が完全に麻痺した狂信的なファンたちの存在だった。
「ふ……ふふっ……あはははははっ!」
薄暗いホールの中心で、スマートフォンの青白い光を見つめていたにこ先輩が、突如としてけたたましく笑い出した。
「に……にこ先輩……?」
「見たかしら、穂乃果!? 再生数500万回よ! 本家の公式チャンネルの100倍以上の勢いで伸び続けてるわ!」
にこ先輩の瞳には、黒くドロドロとした歓喜と、狂おしいまでの自己愛が爛々と渦巻いていた。
「アンチも、警察も、本家の頭の固い連中も……みんなあたしたちの虜じゃない! 批判だろうが罵倒だろうが関係ないわ! 世界中の視線が、今この瞬間に矢澤にこだけに注がれているのよ!!」
「でも……! 昨日のライブじゃ怪我人だって出て、警察にも正式に指名手配されてるのに……!」
「だから何だっていうのよ、そんなの!?」
にこ先輩が私の肩を両手で強く掴み、顔を急接近させた。
乱れた制服の胸元から覗く白桃色の肌と、興奮で激しく上気した頬。
息が触れ合うほどの至近距離で放たれる圧倒的な色気と威圧感に、私の思考回路はまたしても麻痺していく。
「あたしたちは輝いているの! この歪んだ狂気の輝きこそが、綺麗事の本物より強いあたしたちの証明なのよ! 恐れることなんて何もないわ。もっと煽って、もっと世界を狂わせてやるのよ!!」
にこ先輩の放つ狂気的な情熱――いわゆる『イデのゲージ』が、私の、そして真姫や凛たちの胸の奥底に眠っていた承認欲求と、抑圧された破壊衝動を激しく刺激する。
ゾクゾクとするような背徳の快感が、全身の血を熱く滾らせていく。
(あ……あはっ……! すごい……私、にこ先輩となら、世界中を敵に回してもいい……っ!)
私たちはその場で、さらなる過激で退廃的なパフォーマンス動画の撮影を自ら開始した。
暗い地下ホールのコンクリートの上。
汗で濡れた肌を挑発的に晒し、カメラを舐めるような淫らな視線で、本家への宣戦布告と、狂気を孕んだ歌声を吹き込んでいく。
「見なさいよ本家幹部! あたしたちの輝きに、泥まみれになってひれ伏しなさい!!」
その動画をネットの海へと投下した瞬間、ネットの狂乱は、留まることを知らない文字通りの爆発を起こした。
動画の再生数はわずか数時間で1000万回を突破。
コメント欄は、アンチと狂信的なファンたちの罵詈雑言と歪んだ熱量が激突し、サーバーをパンクさせるほどの巨大な大炎上へと発展していった。
『この動画は倫理的にヤバすぎる』
『本家は今すぐ警察と組んでこいつらを潰せ』
『いや、2代目こそが真のμ'sだ! 神格化しろ!』
狂気のゲージが、許容限界を軽々と超えて跳ね上がっていく。
しかし、私たちがネットの狂乱と承認欲求の暴走に酔いしれていた、まさにその時だった。
ドカンッ――!!
地下ホールの重厚な鉄の扉が、外部からの強烈で暴力的な衝撃によって、蝶番ごと完全に吹き飛んだ!
「きゃああああっ!?」
耳を劈く爆風と煙が充満する中、崩れ落ちた扉の向こうから姿を現したのは――。
警察の特殊部隊などではなかった。
それは、私たちがネットに自ら投下した過激な動画と位置情報の罠に狂わされ、ここを血眼で突き止めた数百人の、狂信的なファンと過激なアンチが入り交じった最悪の暴徒の群れだった!
「にこちゃぁぁぁん! 会いに来たよぉぉっ、俺の嫁になれぇ!」
「犯罪者集団が! 二度とネットから表に出てくるな!!」
手に鉄パイプやカメラ、赤く燻る発煙筒を持った狂乱の集団が、欲望と憎悪の血走った目を剥き出しにしながら、地下ホールへと一斉になだれ込んできた!
「ひっ……!? 人が……こんなにたくさん……っ!」
真姫ちゃんが悲鳴を上げて後退し、凛ちゃんが私の腕に泣きつきながらしがみつく。
「な……何なのよこいつらは!? 来ないでよ、来ないでぇっ!」
にこ先輩さすがに顔を蒼白にするが、時すでに遅かった。
熱狂したファンと、激怒したアンチがホール内で激しく揉み合いを始め、その場で凄まじい殴り合いの暴動が発生する。
投げつけられたパイプ椅子が古いスピーカーを粉々に破壊し、投げ込まれた発煙筒が目に染みる煙を吐き出し始める。
私たちが自分たちの手で煽り立てた狂乱の炎が、今度は私たち自身を呑み込もうと、制御不能な暴走を始めていたのだ!
「逃げるわよ穂乃果! ロケバスへ戻るのよ!!」
「にこ先輩、機材が……! 真姫ちゃんたちが押し潰されそうに……っ!」
「構うな、走れぇぇぇっ!!」
煙と血煙が充満する地下ホールで、押し寄せる暴徒たちの数え切れない手が私たちの制服を掴み、引き裂こうと飢えた獣のように伸びてくる。
その狂気に満ちた男たちの欲望の眼差しと、遠くから近づいてくる新たな警察車両のサイレンの音。
世界全体が、私たちが放った狂気の暴走によって、完全なる地獄の坩堝へと叩き落とされようとしていた――。
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